遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
周囲はすっかり日が落ちて、世界は闇に包まれている。
しかしそんな中でも、アルバス達は変わらず戦いを続けており、その様子は遥か遠くからでも確認出来るのだった。
『キャプテン! ヤバいゼ! もう始まってる!』
「だー! くっそ! 遅れたか! すまん! キット」
「しょうがないよ。ギリギリまで調整は必要だったし。でも、そのお陰で万全な状態で送り出せる」
「そうだな」
サルガスとキットは砂漠の上を爆走するスプリガンズ・シップ エクスブロウラーの上で、遠くの空を見ながら言葉をかわす。
そして、管制室から聞こえて来た声に耳を傾けながら、その時を待った。
「んー。そろそろか? そっちの様子はどうだ? ピード」
『問題ないゼ! いつでも行ける!』
「よし。なら行くか!! メリーメイカー!!」
「おうよ!」
サルガスはメリーメイカーを呼び、エクスブロウラーの上でミサイルの発射台を戦場に向けているメリーメイカーの上に飛び乗った。
それからサルガスと同じ様にエクスブロウラーの上に居た者達も、メリーメイカーの上に乗って、まだ遠い場所に見える戦場を見据える。
「えー? まさかこのミサイルに乗っていくの? アタシ、嫌なんだけど」
「なんだ。怖いのか? ファム」
「はぁー!? 怖いとか! 誰も言ってないんですケド!! アインこそ、ミサイルから落ちない様に気を付けた方が良いんじゃないの!?」
「お前じゃあるまいし」
「なぬぃー!?」
「ふふ。元気な子達ね」
「ボレア」
「……なぁに? レギュラス」
「現地では、俺はサルガスと共に行く。ファムとアインの事は任せた」
「えぇ。分かったわ。貴方こそ気を付けてね」
「あぁ」
それぞれが、メリーメイカーから出ているミサイルに手を掛けて、発射の準備を待っていた。
サルガス、ファム、アイン、ボレア、レギュラス……そして、スプライト・ブルーやスプライト・レッドと共に新たな武器を手に入れたキット。
六人はそれぞれの想いを胸に、その時を待っていた。
そして……。
『キャプテン!』
「よっしゃ!! 行くぞ!! 総員発進だ!!」
サルガスの言葉を合図として、メリーメイカーの中にミサイルとして格納されている者達が自身に火をつけた。
無論、ミサイルを操っているのは、《スプリガンズ》達だ。
彼らの誘導で、ギリギリまで攻撃を避けながら戦場のど真ん中に、ド派手に搭乗するのが彼らの計画である。
「では、先に行かせてもらうぞ! サルガス! セリオンズ“ブルズ”アイン行くぞ!」
「じゃ! 向こうで会おうね! ってぇ! 煙凄い! ファムちゃん汚れちゃうんだけど! あー! もう! セリオンズ“リーパー”ファムいっちゃいまーす!」
「セリオンズ“リリー”ボレア。行くわ」
「ユール。エクスブロウラーは任せたぞ。セリオンズ“キング”レギュラス! 出る!!」
我先にと飛び出して行った、《セリオンズ》達を見送りながら、サルガスもまた、出撃の為の準備を終えて空に向かって飛び出した。
「スプリガンズ・キャプテン サルガス! 行くぜ!!」
そして、最後に遺されたキットは、ミサイルをロケットブースターに見立てて、最終調整を終えてから、エンジンとなっている二人に声を掛ける。
「ブルー! レッド! 準備は良い?」
『構わないぞ! 良好だ!』
『さっさと行って、全部終わらせましょ!』
「そうだね! じゃあ、『スプライト・ブルー!』『スプライト・レッド!』
キットの言葉を合図として火が付いたミサイルの加速で空に飛び出したキットの新作【
激しいスパークでどんどん加速しながら、戦場へと突き進んでゆく。
既に風圧で目を開ける事すら難しい状況だが、キットはあらかじめゴーグルをつけていた為、問題なく先を見ることが出来ているのだった。
「アルバス……! それにシュライグはどこ?」
そして、キットは戦場に近づきながらアルバスとシュライグの姿を探し、巨大な敵が蠢く空を跳び続ける。
『ムムム! 見つけたゾ! キット!』
「ホントに!?」
メリーメイカーから発射されたミサイルの中に居た《スプリガンズ》の一体は、キットに二人の居場所を教え、キットもまたその声に地上を見て二人の姿を見つけた。
「よし! 行こう!」
キットは合図と共にリンドブルムを地上に向けて下ろし、爆走しながら戦場を駆ける。
「シュライグ!! アルバス!!」
そして、駆けながら二人の名を叫び、その名に気づいた二人をリンドブルムの上に乗せ、再び大空へと舞い上がるのだった。
「良かった! 二人とも!」
「キット! どうしてここに!」
「ようやく完成したんだ! リンドブルムが! だから……!」
「そういう事を言ってるんじゃない! どうして戦場に来たのかと言ってるんだ!」
シュライグはにこやかに話すキットに怒鳴りつけ、キットはそのシュライグの剣幕に涙を滲ませながら視線をさ迷わせる。
しかし、言われるままになっているキットを哀れに思ったのか、リンドブルムのエンジンから二つの雷が飛び出してきた。
『ちょっとぉー! 黙って聞いてれば何なのよアンタ! キットはねぇ!』
『そうだそうだ! お前ら! シュライグって奴とアルバスって奴だろ! キットはお前らの事が心配で、いつも一人で泣いてたんだぞ! それをなんだ!』
『ちょっと! 今アタシが話してるんだから! ブルーは黙っててよ!』
『なにー!? 僕だってこいつ等に言いたい事があるんだぞ!』
『だから!』
『『キットには傷一つ付けさせやしないから! 大人しく助けられろ!!』』
ブルーとレッドは声を揃えて、シュライグとアルバスに怒鳴りつけ、シュライグは唖然としてしまい、アルバスは僅かに吹き出す。
「アルバス!」
「いや、すまない。シュライグ。だが、これ以上ない援軍だと俺は思う」
「しかし……」
「それに大丈夫だ。キットの事は俺も守る。エクレシアの大切な友達を傷つけさせやしない」
「……アルバス」
シュライグはアルバスの言葉に唇を噛み締めてから、キットを見つめた。
そして、分かったと小さく頷いた。
「キット」
「っ! な、なに!? シュライグ!」
「お前の助けは心強い。だが、あまり危険な事はしないでくれ」
「……じゃあ」
「あぁ。共に戦おう。キット」
「~~!! ありがとう!! シュライグ!」
恐らくは、ずっとこの瞬間をキットは待ち望んでいた。
サルガスの元へ預けられた時から、ずっと。
そして、キットは溢れる涙を拭って、リンドブルムを操り一つの武装をシュライグに見せた。
「シュライグ! これを使って!」
「……これは!」
「【|鉄獣式強襲機動兵装改“BucephalusⅡ”《トライブリゲード・アームズ“ブーケファルスツー”》】! 私が作った最高傑作だ! きっとシュライグの役に立ってくれる!」
「ありがとう。キット」
シュライグはキットから新武装を受け取り、それを身に着けてゆく。
「じゃあ、ジェットさん。シュライグの事、お願い」
『まぁ良いでしょう。キットさんはブルー坊ちゃんとレッドお嬢さんのお気に入りですからね。この程度の手伝いならしてあげましょう』
ジェットはキットの言葉に頷き、雷となってシュライグの新武装に入り込むと、そのまま武装のシステムを起動させる。
『さぁ、行きますよ! シュライグさん!』
「分かった。では俺は行くぞ」
シュライグは翼を広げ、空に飛びあがると、そのまま戦場へと戻っていった。
そして、キットはアルバスに向かって頷きながら、言葉を投げる。
「じゃあ、アルバス。私達も行こう!」
「あぁ、頼む」
「勿論だよ!」
キットはリンドブルムを起動させると、巨大な姿で立ち上がり、キットたちを睨みつけるアルベルを見据えるのだった。