遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第55話【ブリンクアウト】

真なる炎を生み出し、破壊ではなく世界を再生する為に生まれた真炎竜(しんえんりゅう)アルビオンは、暗き闇に覆われた世界を照らし、新たなる夜明けを導く。

 

その輝きに、誰もが希望に溢れる未来を夢見たが……邪な意思でその輝きを求めた者も居た。

 

そう。教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)が呼び出した凶導の白き天底(ドラグマのアルバ・ゾア)を乗っ取る形で、この世界に顕現した白き竜王もまたその一つであった。

 

凶導の白き天底(ドラグマのアルバ・ゾア)の力を吸収し、深淵の神獣(ビーステッド)ディス・パテルと化した白き竜王は、異形の体で咆哮を上げながらアルビオンに迫る。

 

「アルバス! エクレシア!」

 

キットは、遥か上空で完全に停止しながら光を放ち続けるアルビオンを見上げて叫び、リンドブルムを空に向かわせる。

 

しかし、キットの声が届いてるのか、届いていないのか、アルビオンは空に停止したまま世界を光で照らし続けているのだった。

 

『まずいよ。キット。エクレシアが! 僕のお嫁さんが!』

 

『じゃあもっと力を出しなさいよ! 飛ぶ速度が遅くなってるわよ!』

 

『僕だって頑張ってるんだ! レッドがもっと頑張ってよ!』

 

後ろから聞こえるブルーとレッドの喧嘩を聞きながら、キットはどうすれば良いんだと上空を睨みつけた。

 

しかし、リンドブルムの進む速度を考えれば、ディス・パテルの方が間違いなく先にアルビオンへ到達してしまう。

 

アレが何を目的としているのか、それは分からないが、ろくなことにならない事は確かであった。

 

その為、キットは急いでいるのだが、リンドブルムにも限界はあるのだ。

 

「うー! もっと力があれば!」

 

「なら……僕の力も使えば良い」

 

「っ!? き、君は!」

 

「アルベルだ。君という名前じゃない」

 

空を飛び、キットの駆るリンドブルムに降り立ったアルベルは憎々しい顔を上空に向けながらぶっきらぼうにそう言い放ち、冷たい目をキットに向ける。

 

「どうした。早くしろ。あの場所へ行くんだろう?」

 

「それは、そうだけど……! 貴方の事は信用できない」

 

『そうだ! そうだ! お前! 竜王の子供だろ!』

 

『同じ力を感じるわ! キット騙されちゃ駄目よ! コイツは敵! 間違いないわ』

 

「下らないな」

 

「っ!」

 

『な、なにー!?』

 

『何よコイツ! 竜王の子供の癖に!』

 

アルベルはブルーたちの言葉にも一切動じる事はなく、静かにキットを見据えた。

 

その真っすぐな瞳に、キットはゴクリと唾を飲み込む。

 

「一つだけ聞かせて」

 

「なんだ」

 

「貴方の目的は……」

 

「カルテシア……いや、エクレシアを助ける。あの男に渡す事だけは絶対に出来ない」

 

「……っ」

 

その燃える様な瞳に、キットは何も言えず小さく頷いて微笑んだ。

 

「じゃあお願い」

 

「決断が遅い」

 

アルベルはキットの言葉に怒りで返しながら、リンドブルムに触れて力を送り始める。

 

アルバスから力を奪ったことで目覚め、アルバスに力を奪われる事で使える様になった《烙印》の力を。

 

『キット!?』

 

『なんでこんな奴の言う事聞いちゃうの!?』

 

「同じ目をしてたんだよ」

 

「……」

 

『同じ目?』

 

『誰と』

 

「アルバス」

 

「っ!」

 

キットは空で輝きを放ち続けるアルビオンを見て、笑った。

 

そう。砂漠で出会った時、エクレシアと共に日々を過ごしている中で、アルバスの中にあった熱が、アルベルの中にもあった。

 

それはきっと、エクレシアを真っすぐに見て、エクレシアを大切に想う人の輝きなんだとキットは考える。

 

「だから、この人はきっとエクレシアを傷つけない!! 私には分かるんだ!」

 

キットの呑気な言葉にブルーもレッドも呆れてしまうが、それはアルベルも同じであった。

 

特に最悪の場合は、キットを殺してでもリンドブルムを奪い取ろうと考えていたからこそ。

 

その言葉は強くアルベルに刺さる。

 

「エクレシアを傷つけない人、か」

 

「うん!」

 

「……そうか」

 

おそらくキットの命をアルベルが奪っていれば、エクレシアは悲しんだだろう。

 

深く傷ついただろう。

 

アルベルは、僅かだがアルバスが何故エクレシアに選ばれたのか分かった様な気がした。

 

自分とアルバスの違いが見えた様な気がした。

 

「いや、だとしても……僕がそれを認めるワケにはいかないんだ」

 

アルベルは一人言葉を呟いて、ジッと空を見据えるのだった。

 

 

 

先ほどまでとは比べ物にならない程に加速したリンドブルムはディス・パテルよりも早くアルビオンの元へたどり着き、雷光を放つ為の砲をディス・パテルに向ける。

 

「主砲発射準備!」

 

『エネルギー! 充填かんりょー!』

 

『収束率安定。いつでも撃てるわよ! キット!』

 

「じゃあ、発射ー!」

 

キットの言葉に合わせて、リンドブルムから主砲が放たれ、それがディス・パテルに命中する。

 

その影響でディス・パテルは悲鳴の様な声を上げながら口から泥の様な血を吐いた。

 

しかし、それだけだ。

 

リンドブルムの主砲はディス・パテルの動きを完全に止めるまでは至らず、ディス・パテルは構わずキット達に向かって突っ込んでくる。

 

「キット!!」

 

『キット!!』

 

誰かの叫びが響いた瞬間、リンドブルムはディス・パテルによって完全に破壊され、キットは空に投げ出された。

 

しかし、ディス・パテルの攻撃はそれで終わらず、自分に刃を向けた者を決して許さないとばかりに、落ちてゆくキットを睨みつける。

 

空を揺らす様な咆哮と共に、アルビオンからキットにターゲットを変えたディス・パテルは真っすぐキットへ突っ込んで来るが、その突進を食い止めた者がいた。

 

「おぉぉおおおお!!! キットに触れさせるかよぉお!!!!」

 

「サルガス!! もっと力を入れろ!! そんな物か! お前の力は!」

 

「んなワケねぇだろうが!!」

 

キットを救う為に現れた救世主。

 

それはサルガスとレギュラスが一つのなった姿……ギガンティック“チャンピオン”サルガスであった。

 

圧倒的な力で深淵の獣(ビーステッド)アルバ・ロスをも粉砕したギガンティック“チャンピオン”サルガスが今度はディス・パテルをも倒そうと戦いに挑む。

 

しかし、ディス・パテルはアルバ・ロスよりも圧倒的な力を持っており、少しずつだが、ギガンティック“チャンピオン”サルガスが押されてゆくのだった。

 

そして、遂にその時が訪れた。

 

「「ぐぁぁああああ!!」」

 

「キャプテン!!!」

 

キットの悲鳴の様な声が空に響き、ギガンティック“チャンピオン”サルガスはディス・パテルによって破壊され、空にまき散らされた。

 

数多の破片が落ちてゆくのを見ながらキットは涙を溢れさせる。

 

しかし、泣いている場合では無いのも事実だ。

 

何故なら、ディス・パテルは変わらず落ちてゆくキットを狙っているし、落下してゆくキットよりも空を飛べるディス・パテルの方が速いのだから。

 

「っ!」

 

キットは迫りくるディス・パテルの大きな口に、死を意識した。

 

しかし、ディス・パテルがキットを食べようと口を開き、それを閉じた瞬間、そこには何もいなかった。

 

そう。サルガスたちと同じタイミングにキットを助けるべく飛び込んできた男が居たのだ。

 

|鉄獣戦線 凶鳥のシュライグ《トライブリゲード きょうちょうのシュライグ》。

 

機械の羽と、鳥獣の翼をもつその男は、気絶してしまったキットを抱きかかえながら怒りに震える瞳をディス・パテルに向けた。

 

そして、シュライグと同様に、我が物顔で暴れまわるディス・パテルに怒りを示している存在が居た。

 

『先ほどから、随分とやりたい放題やってるじゃないか。キットもエクレシアも僕らのお嫁さんにするんだぞ。傷ついたらどうするつもりだ』

 

深淵の獣(ビーステッド)ルベリオンの様な鎧を身に纏い、青と赤の魂が宿った、サルガスとキットの友として立った者。

 

かつてスプライトという種族を束ねていたアルギロスが庶子の子との間に産んだ双子。

 

【アルギロスの落胤(らくいん)

 

ブルーとレッドは怒りに燃える瞳で、雷を全身に纏いながら、ディス・パテルを睨みつけるのだった。

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