遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
終わる事のない戦場の真ん中で、少女は愛する少年と共に、多くの姉と対話をしていた。
『私は反対しないケド。可愛いじゃん。エクレシアとお似合いでさ』
『……』
『そうそう。私なんて、空でエクレシアに向かっていく姿を見て、泣きそうになっちゃったもんね』
『……』
『分かるわー。私なんて思わず叫んじゃったわ。いけー! そこだー! いけー! ってさ』
『……』
『だからさ、いい加減認めてあげなよ。フルルドリス』
『フン』
「……お姉様」
両手を握り合わせて、祈る様にフルルドリスを見つめるエクレシアに、フルルドリスは一瞬動きを止めたが、隣に立っているアルバスを見て、首を勢いよく振った。
不屈の精神である。
『別に認めないとは言っていない』
「お姉様……!」
『……だが、認めるとも言っていない』
『もー! フルルドリス! いい加減にしなよ!』
『やかましい! エクレシアは私の妹だ。私の妹だったんだぞ! それが急に現れた男に奪われて……! 喜べるものか!』
『でも、エクレシアを幸せに出来るんだよ。アルバスは』
『私だって出来る! こんな小僧よりも確実に! もっと幸せにしてやれる!!』
「……お姉様」
『あ、いや。違うんだ。エクレシア。こんな小僧とは言ったが、アルバスは良い男だ。それはよく分かっている』
「では」
『……だが、認めるとも言っていない』
フルルドリスの態度に、周囲を囲んでいた聖女達は呆れた様な声を出しながら頭を抱えた。
未だ外の世界では争いが続いているというのに、彼女たちが何をやっているのかと問われれば……エクレシアの今後についての話し合いである。
そう。
アルビオンの輝きは世界を照らし、呪いの中に囚われていた聖女達の魂も解放しているのだが……、一部の聖女がエクレシアの中に残ると言い始め、気が付けば全ての聖女達が残る事になり、それはそれとしてアルバスとの関係はどうなんだと話が始まり。
フルルドリスが猛反対して現在に至る。
『とにかくだ。エクレシアにはまだ早い』
『いやいや。外を見てみなよ。あの白いのが暴れて大変なんだよ? ここはエクレシアとアルバスの力でサクッと解決しようよ』
『駄目だ!!』
『フルルドリス……』
「お姉様……」
『駄目だ駄目だ! その様な顔をしても駄目だ! あのドラゴンが脅威だという事は分かるが、それで何故エクレシアとこの小僧が……キ、キッ……口と口を合わせる様な行為をしなければならない!』
『そりゃ、それが一番想いを通わせることが出来るからさ』
『っ! エクレシア! 本当に良いのか!? こんな小僧……いやアルバスで!』
「わ、私は……はい。アルバス君が良ければ」
フルルドリスは衝撃に手を震わせながら隣に居るアルバス君とやらを見る。
いや、もはや睨みつける様な勢いだが、アルバスを鋭い視線で貫いた。
『お前は、どうなんだ』
「俺は、エクレシアなら、嬉しい」
「……っ! アルバス君」
嬉しそうな顔でアルバスを見るエクレシアを見て、フルルドリスは冷水をかけられた様な気分になった。
そして、震える様な恐怖を覚えて、エクレシアとアルバスの間に入り込んで、エクレシアを抱きしめる。
『やはり駄目だ!!』
『ならどうする? 外のアレは』
グッと、フルルドリスは一瞬言葉に詰まってから、覚悟を決めた。
エクレシアの純潔を守る為ならばこの命惜しくはないと。
『ならば……私が行く』
『フルルドリス! それは!』
『なんだ。それならば問題あるまい。私があのドラゴンを打ち倒せば、エクレシアは無理に結ばれる必要など無いのだ』
「お姉様! それは危険です!」
『構わない』
エクレシアがフルルドリスの腕を掴みながら叫ぶが、フルルドリスは気にしない。
そうだ。全てはこの状況が悪いのだと頷いた。
世界だ、人だと、誰かの為にエクレシアが進まなくてもいい道を進もうとしている。
ならばそれを打ち砕けば良いとフルルドリスは微笑んだ。
『エクレシア。ゆっくりと考えれば良いんだ。未来の事は』
「……」
『勢いのまま焦り、出した結論はいつか後悔に繋がるかもしれない。だから、何も焦らず、ゆっくりと決めれば良い』
「……お姉様」
『だから、この世界に残る……エクレシアを悲しませる脅威は全て。この私が打ち倒そう!』
フルルドリスは叫びと共に、ホールを開き、深い眠りの中にある己の体に魂を再び宿すと、そのまま戦場へと直接ホールを通って移動した。
空から舞い降りながら、両手に握った剣に雷を通す。
全てを焼き尽くす力を。
「撃ち抜け! 雷光!!」
そして、フルルドリスの叫びと共に
「フン」
フルルドリスは剣を振り下ろしながら、油断なくディス・パテルを見据えた。
その姿はかつてドラグマで最強と呼ばれた騎士の姿と然程変わらないものであり、全身にみなぎる力にはフルルドリス以外の聖女の力も含まれている。
聖痕の力と、
【
聖と邪と、妹への愛を胸に、フルルドリスは剣を握りしめて構えた。
「さて。お前が居ると話がややこしくなる。早々に退場して貰いたいものだな」
フルルドリスの言葉に、ディス・パテルは全身を焼かれたまま咆哮し、フルルドリスを強く睨みつけた。
そして、その巨体には似合わぬ俊敏な動きでフルルドリスに迫ると、その巨大な口でフルルドリスに喰らいつこうと迫るのだった。
しかしそんなフルルドリスの手を掴み、空に導いた者が居た。
「……すまないな。シュライグ」
「いや、構わん。というか、お前生きていたんだな」
「当然だ。エクレシアを一人残して死ぬものか!」
フルルドリスはシュライグの言葉にニヤリと笑いながら言葉を返し、空中でシュライグの手を離すと、そのまま地上に落ちながら次なる雷をディス・パテルに放とうとした。
「む?」
『面白い力を使うね』
「なんだ? お前たちは」
『僕はブルー』
『アタシはレッド』
『僕たちはスプライト。アルギロスの
「なるほど。それで?」
『『力を貸すよ』』
「それは……ありがたいな!!」
フルルドリスはブルーとレッドが言葉と共に、二種類の雷光を剣に纏わせたのを確認し、そのままディス・パテルを切り裂くべく空中を走り、首に剣を振り下ろした。
残念ながらその剣はディス・パテルの首を落とす事は出来なかったが、三種の雷光がディス・パテルの体を焼き、ダメージを与える。
一歩、一歩と確実にディス・パテルは追い詰められていた。
しかしそれでも諦めず、腕を振り回し、戦う意思を示し続けるのはその身の内に眠る白き竜王の意思だろうか。
もしくは、娘を想い、消えていった男の執念だろうか。
その真意は分からないが、少なくともこの白く化け物は完全に息の根を止めなくては止まらないのだと、フルルドリスたちは理解した。
だからこそ、フルルドリスはシュライグとブルー・レッドと共に、化け物を確実に仕留める為の戦いへと向かう。
「シュライグ」
「あぁ」
「それに、ブルーとレッド」
『おー!』
『えぇ』
「少々協力して貰うぞ。この巨大なゴミを掃除する」
フルルドリスは笑みを作りながら並び立つ者達に告げ、苦しみながらも起き上がるディス・パテルを見据えた。
全てはエクレシアの純潔を守る為。
フルルドリスは決して負けられない戦いに魂を燃やして剣を強く握りしめるのだった。