遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
ディス・パテルの放つ一撃は、地を砕き、山を削り、空を割る。
そしてその強固な体は生半可な攻撃を通さず、何度か放っている必殺技も、ディス・パテルに警戒されてしまえば放つのが難しくなってしまうのだった。
そんなこの世の終わりとでもいう様な戦場の中、フルルドリス達とは別の戦場で戦っている者達も居た。
そう。
「動ける人は、けが人に手を貸して! 急いで! 逃げるのよ!」
「走れぬ者は私に掴まれ! 拾った命を捨てる必要は無い!」
「ちっ! アイツが動くだけで破片がとんでもねぇ数飛んでくるぞ!」
「怖いなら、逃げても良いんだよ? オジサーン。きゃはは。こんなのファムちゃんだけでよゆーだからさっ!」
「元気なガキだな。ここは俺とルガルに任せて後ろに下がれよ」
「誰がチビだ!? オジサンたちの方がよわよわなんだからねっ!?」
人も獣人も獣も機械生命体も、その出自は関係なく、勢力も関係なく、この場に居る全ての者が一つとなってディス・パテルという災害から友を守る為に戦っていた。
何の為に戦う事を選び、戦場へ向かったのか、その意味を思い出し、胸に抱きながら彼らは歯を食いしばって立ち向かう。
「キャプテン!! レギュラス!」
そして、既に砕かれた者達も、少女の涙を、嘆きの声を聞いて立ち上がっていた。
「ぐっ、ぁあ、怪我はないか? キット」
「っ、キャプテン……!」
既に合体は出来ず、体の殆どが破壊されている様な状況の中、サルガスは少女の為に立ち上がり、笑う。
そして、そんなサルガスと魂を共有した友もまた、上半身の右側半分を完全に破壊され、火花を散らしながら立ち上がった。
「どうにか無事だった様だな。キット」
「レギュラス! 二人とも、無理しないで!」
「無理はするな。だってよ、レギュラス」
「ならば問題はないだろう。我々は何も無理などしていないのだからな」
どう考えても立ち上がる事すら難しい様な姿で強がりを言う二人に、キットは涙を流し、首を振った。
だが、そんな少女を守る為に立ち上がった二人にとって、何よりも大事な事はキットを守る事なのだ。
止まることなどあり得ない。
「じゃあ、行くか。レギュラス。とにかく今は逃げなきゃな」
「キングとしては悔しいが、最優先はプライドよりも命だ。サルガスの意見に従おう」
「よっしゃじゃあ行くか!」
サルガスは半壊状態のままキットを大切に抱き上げると、そのまま走り始めた。
無論ダメージを負っている状態では走るだけで火花が散るが、関係ない。
そして、レギュラスはそんなサルガスの背に付いて走り、飛来する物体をサルガスから遠ざけてゆく。
「止めて! 自分で走れるよ! 大丈夫だから!」
「足元は瓦礫ばっかりで危ないからな大人しくしてろ。暴れてると余計に遅くなるからな」
「っ!」
「そうだ。キット。この戦いが無事に終わったら、俺とサルガスの体を直してくれ」
「う、うん、直す! 必ず直すよ!」
「そうか……それは良かった」
「だから、レギュラスも無理しないで……! ね、レギュラス! レギュラス!?」
サルガスの体でよく見えないが、キットは後方から聞こえてくるレギュラスの声に言葉を返す。
だが、レギュラスの声は途中から聞こえなくなり、サルガスの体を通して飛来物がサルガスに当たる音が聞こえる様になる。
それが何を意味するのか、キットには分かってしまった。
だから、サルガスに縋りつきながら泣き、自分を捨てて早く逃げてと願うが、その願いが叶う事はなかった。
そして、サルガスはようやく目的の人間を見つけたと、殆ど人の残っていない場所で指示を出している女性の名を呼んだ。
「フェリジット!!」
「っ!? サルガス! それに、キット!!?」
「り、リズねえちゃん」
サルガスはフェリジットに泣いているキットを託すと、そのままキット達に背を向けてディス・パテルの方を向いた。
「じゃ、キットの事は任せたぜ。フェリジット」
「サルガス……! あなた」
「まだ俺様には仕事があるからな。全部終わったらまた会おう」
「っ! やだ! キャプテン! やだよ!!」
「行け! フェリジット!! 後はお前たちだけだ!!」
サルガスの声に、フェリジットは一瞬体を震わせてからキットを強く抱きしめて走り始めた。
遠くへ。
ディス・パテルの力の届かない遠くへ。
キットはディス・パテルに抱きしめられたままサルガスへ手を伸ばすが、その手が届く事はなく、キットの視界の中で、サルガスはレギュラス達と戦った時の様に己の限界を超えて、力を発揮し空へ跳んだ。
フェリジットたちへ向かう物を全て破壊し、傷一つ付けないのだという覚悟で戦い……そして、最後には砕けてしまうのだった。
「キャプテン!!!」
キットの声を遥か遠くでディス・パテルと戦いながら聞いたシュライグは、その言葉の意味を察して怒りと共に咆哮を上げた。
これまで多くの物を奪われてきた。
平穏な暮らしも、家も、家族も、仲間も、何もかも!!
そして、今……古き時代からの友が散った。
「シュライグ!!」
「これ以上、何も!! 奪わせてなるものか!!」
「バカ! シュライグ! 前に出過ぎだ! ブルー! レッド!」
『わわ、わ』
『何トロトロしてるの! 行くわよ!』
特攻するかの様な勢いで突っ込むシュライグに、フルルドリスが雷の様な速さで追いかけて、ディス・パテルの注意を引こうとした。
とにかくシュライグに意識を向けてはいけないと。
しかし、何度も同じ事を繰り返されてきたディス・パテルに同じ作戦は効かず、ディス・パテルは自分に向けて飛び込んできたシュライグに目を向けた。
そして……!
「キット!! お前に借りた力! 再び使わせてもらうぞ!!」
「っ!?」
「|鉄獣式強襲機動兵装改“BucephalusⅡ”《トライブリゲード・アームズ“ブーケファルスツー”》!! 最大出力!! あの闇を!! 吹き飛ばせ!!」
ディス・パテルの顔面に向けて放たれた白い閃光は、シュライグ自身の体を焼き尽くしながら、ディス・パテルを破壊してゆく。
痛みや苦しみに声を上げる事も出来ないままディス・パテルは地に落ちて僅かに息を吐いた。
「これで、全ての戦いが終わる!! 受けろ雷光!!」
『ブルー最強あたっくー!』
『いっせんー!』
不揃いな掛け声と共に、放たれた最大威力の攻撃はディス・パテルの全身を焼き尽くして、完全にその命を絶つのだった。
ドロドロと流れる泥の様な血液は、少しずつディス・パテルの体温を奪って行き、体も少しずつ固くなってゆく。
「これで……終わりか」
『はふー』
『つかれ、た』
フルルドリスは戦いで負った大小さまざまな傷をそのままにディス・パテルの様に血を流しながらディス・パテルの上に倒れこんだ。
同じ様に力を使い果たしたブルーやレッドと共に。
そして。
そして、これで全ての戦いが終わった。
かと思われた。
しかし、まだ一つ。
まだ一人、この結末に納得出来ていない者が居た。
白き竜王の息子。
デスピアの道化。
愛する者と理不尽な離別をした少年。
アルベル。
彼はアルビオンから人間の姿に戻ったアルバスとエクレシアを見つめて静かに口を開いた。
「さぁ。最後の決着を付けよう。アルバス」
「……アルベル」
誰も居なくなった砂漠で、一人の少女に見守られた二人の男の戦いが静かに始まる。