遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第5話【鉄獣の戦線(トライブリゲード・ライン)

偶然か必然か、戦場の中出会った黒衣の少年とエクレシアは僅かな間穏やかな時間を過ごしていた。

 

しかし、いつまでもその時間が続く事は無い。

 

何故ならこの場所は未だ戦場であるからだ。

 

そして、エクレシアと名も無き少年は自分たちの元へ向かってくる多くの足音からこの事実を思い出すのだった。

 

「っ!?」

 

「これは……」

 

黒衣の少年は敵意が向かってくる気配に身を起こそうとするが、まだ痛みが消えていない体ではそれも出来ず、蹲ってしまう。

 

そんな少年を見て、エクレシアは黒衣の少年を庇う様に右手に持った武器を鉄獣戦線(トライブリゲード)の者たち、そして左手は教導の神徒(ハッシャーシーン・ドラグマ)の部隊に向けて、何とか争いを止めようと強い意思で訴えるのだった。

 

「止まって下さい! ここには怪我をした人がいます。子供です。この様な争いが何を産むというのでしょうか!」

 

「少女……?」

 

「額に刻まれた呪いの証……! コイツもくそったれの邪神を信仰するドラグマの騎士団か!?」

 

「落ち着け! おそらくは彼女に戦闘の意思はない。こちらから仕掛けるな!」

 

先行部隊を率いていたケンタウロスの獣人【鉄獣戦線(トライブリゲード) フラクトール】は、部隊の者たちを制しながら状況を見据える。

 

フラクトールの目から見ても、少女は真実争いを止めようとしている様に見えたからだ。

 

それに、鉄獣戦線(トライブリゲード) の目的は神を自称し、世界を支配しようと企む者たちの討伐であり、争いを望まぬ者たちを傷つける事ではない。

 

故に、彼らは進行を止めた。

 

止めたが、このまま何もしないというわけではない。

 

フラクトールは隠密行動に長けた黒い鳥の獣人【鉄獣戦線(トライブリゲード) ナーベル】に後方で未だ《教導騎士団》の主戦力と争っているルガルやフェリジット達への連絡を頼み、牛の獣人である【鉄獣戦線(トライブリゲード) ケラス】には目の前に見えているドラグマの部隊へ奇襲を仕掛けられる様に準備を進めさせる。

 

何が起きても対処が出来る様にとフラクトールは油断なく、意識を集中させるのだった。

 

 

 

一方、教導の神徒(ハッシャーシーン・ドラグマ)の部隊は表立って騒ぐような事こそ無かったが、状況に戸惑っている事は確かだった。

 

何故なら、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)から受けた命令はエクレシアの安全確保と、バスタードの捕縛であったのだが、この場所にバスタードは居ないし、エクレシアが庇っているのは異教徒と思われる少年。

 

そして、そんなエクレシアと少年を間に置き、鉄獣戦線(トライブリゲード)の者たちと睨み合っている様な状況なのだ。

 

しかも鉄獣戦線(トライブリゲード)の者達は教導の神徒(ハッシャーシーン・ドラグマ)の部隊を睨みつけており、不用意に動けばエクレシアを危険に晒す可能性もあった。

 

故に動けない。

 

三方が三方、それぞれの理由で動けぬ中、この状況を大きく変える存在が現れた。

 

そう。教導国家(きょうどうこっか)ドラグマの支配者、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)である。

 

「どうやら、厄介な事になっている様ですね」

 

その仮面を付けた男は、異様な雰囲気を出しながらエクレシアの元へと足を進めてゆく。

 

そして、誰もが見ている事しか出来ぬ中、エクレシアの前に立ったままエクレシアと黒衣の少年の二人を見下ろすのだった。

 

「あの、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)……」

 

「エクレシア」

 

「は、はい!」

 

「その少年を渡しなさい」

 

「そうですね! 早く教会で治療をしないと「必要ありません」……え?」

 

エクレシアは……教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)が何を言っているのか理解出来ず、その意味を理解しようと視線をさ迷わせた。

 

しかし、どれほど考えようと意味が理解出来ず、その意味を教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)に視線で問う。

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)……」

 

「どうしたのですか? エクレシア。その者は異教徒。ならば神の名の下に裁かねばなりません」

 

「そ、そんな……! ですが、この子はまだ子供で!」

 

「関係ありません。その者が異教徒であるのならば、敵。今、このドラグマがこうして戦火の中にあるのは異教徒が攻めてきたから。貴女もそれは理解しているでしょう」

 

「……」

 

「さぁ。その異教徒を渡しなさい」

 

「……出来ません」

 

「」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)はエクレシアの返答に溜息を吐くと、エクレシアの前で両手を掲げて神の力を解放した。

 

「【教導神理(ドラグマティズム)】」

 

叫ぶ様な声では無かったものの、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の声はエクレシアや黒衣の少年だけでなく、教導の神徒(ハッシャーシーン・ドラグマ)鉄獣戦線(トライブリゲード)の者たちにもハッキリと聞こえ、直後響き渡ったエクレシアの悲鳴に動揺が走る。

 

「何をしている!? エクレシアはお前の仲間なんだろ!?」

 

「無論その通りですよ。異教徒の少年。故に教育をしています。神の意思に二度と逆らわぬ様にと」

 

「っ! お前っ!!」

 

額に刻まれた聖痕から与えられる激痛は、エクレシアの肉体と精神を蝕み、エクレシアは涙を流しながら苦悶の声を上げた。

 

そんなエクレシアに黒衣の少年は怒りのまま教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)へと殴りかかり、それが切っ掛けとなって教導の神徒(ハッシャーシーン・ドラグマ)鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦闘が開始される。

 

「あの少年を援護しろ! 教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)をここで討つんだ!」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)をお守りしろ!」

 

二つの勢力が争い、ぶつかる中、その中心に居た教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は黒衣の少年の拳を受け止めながら笑う。

 

「何を怒っているのでしょうか」

 

「エクレシアは優しい子だった!!」

 

「それで? それがどうかしましたか? 異教徒へ向ける優しさに意味などありませんよ」

 

「エクレシアを離せ!!」

 

黒衣の少年はエクレシアを抱きしめ教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)から距離を取る。

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)から離れた事が良かったのか、エクレシアは気絶し、苦悶の声は消えるのだった。

 

そして、そのまま目を覚ます事なく瞳を閉じて深い眠りの中に落ちてしまった。

 

「エクレシア!」

 

「おや、気絶してしまいましたか。ですが、問題は無いでしょう。このまま連れて帰り再教育するだけです」

 

「お前に、渡すもんか! エクレシアは俺が守る!」

 

黒衣の少年はエクレシアを抱きしめたまま教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)からさらに距離を取る様に離れようとした。

 

しかし、周囲の者達が争っている様な状況ではそれ以上動く事も出来ず、黒衣の少年は強く教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)を睨みつけるだけだった。

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)!!」

 

「……ほぅ。貴方も来ましたか」

 

エクレシアを抱きしめた黒衣の少年に近づこうとしていた教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は空から武器を振りかざして落ちてきた凶鳥のシュライグの攻撃を受け止める。

 

凶鳥のシュライグの銃剣を掴み、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は地面を踏み砕きながら衝撃を逃がした後、シュライグを振り払うのだった。

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)! お前の命もここで終わりだ」

 

「残念ながら、未だこの身を滅ぼされる訳にはいかないのですよ」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は後方へ飛び、シュライグから距離を取る。

 

シュライグはそれを見て、武器を握りしめながら追おうとしたが、その前にすぐ傍で自分を強く睨みつけている少年に視線を向けた。

 

「立てるか?」

 

「……あぁ」

 

「なら、立って逃げろ。道は俺達が作ってやる」

 

「いい、のか!?」

 

「その子を守りたいのだろう? ならば、守れ。それがお前の意思ならば、貫け!」

 

「……! っ、分かった!」

 

黒衣の少年はエクレシアを抱きしめたまま決意の秘められた顔で頷き、そんな黒衣の少年を見て、シュライグもマスクの奥で笑うのだった。

 

そして、シュライグは戦場へと駆ける。

 

彼が護りたいモノの為に……。

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