遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
偶然か必然か、戦場の中出会った黒衣の少年とエクレシアは僅かな間穏やかな時間を過ごしていた。
しかし、いつまでもその時間が続く事は無い。
何故ならこの場所は未だ戦場であるからだ。
そして、エクレシアと名も無き少年は自分たちの元へ向かってくる多くの足音からこの事実を思い出すのだった。
「っ!?」
「これは……」
黒衣の少年は敵意が向かってくる気配に身を起こそうとするが、まだ痛みが消えていない体ではそれも出来ず、蹲ってしまう。
そんな少年を見て、エクレシアは黒衣の少年を庇う様に右手に持った武器を
「止まって下さい! ここには怪我をした人がいます。子供です。この様な争いが何を産むというのでしょうか!」
「少女……?」
「額に刻まれた呪いの証……! コイツもくそったれの邪神を信仰するドラグマの騎士団か!?」
「落ち着け! おそらくは彼女に戦闘の意思はない。こちらから仕掛けるな!」
先行部隊を率いていたケンタウロスの獣人【
フラクトールの目から見ても、少女は真実争いを止めようとしている様に見えたからだ。
それに、
故に、彼らは進行を止めた。
止めたが、このまま何もしないというわけではない。
フラクトールは隠密行動に長けた黒い鳥の獣人【
何が起きても対処が出来る様にとフラクトールは油断なく、意識を集中させるのだった。
一方、
何故なら、
そして、そんなエクレシアと少年を間に置き、
しかも
故に動けない。
三方が三方、それぞれの理由で動けぬ中、この状況を大きく変える存在が現れた。
そう。
「どうやら、厄介な事になっている様ですね」
その仮面を付けた男は、異様な雰囲気を出しながらエクレシアの元へと足を進めてゆく。
そして、誰もが見ている事しか出来ぬ中、エクレシアの前に立ったままエクレシアと黒衣の少年の二人を見下ろすのだった。
「あの、
「エクレシア」
「は、はい!」
「その少年を渡しなさい」
「そうですね! 早く教会で治療をしないと「必要ありません」……え?」
エクレシアは……
しかし、どれほど考えようと意味が理解出来ず、その意味を
「
「どうしたのですか? エクレシア。その者は異教徒。ならば神の名の下に裁かねばなりません」
「そ、そんな……! ですが、この子はまだ子供で!」
「関係ありません。その者が異教徒であるのならば、敵。今、このドラグマがこうして戦火の中にあるのは異教徒が攻めてきたから。貴女もそれは理解しているでしょう」
「……」
「さぁ。その異教徒を渡しなさい」
「……出来ません」
「」
「【
叫ぶ様な声では無かったものの、
「何をしている!? エクレシアはお前の仲間なんだろ!?」
「無論その通りですよ。異教徒の少年。故に教育をしています。神の意思に二度と逆らわぬ様にと」
「っ! お前っ!!」
額に刻まれた聖痕から与えられる激痛は、エクレシアの肉体と精神を蝕み、エクレシアは涙を流しながら苦悶の声を上げた。
そんなエクレシアに黒衣の少年は怒りのまま
「あの少年を援護しろ!
「
二つの勢力が争い、ぶつかる中、その中心に居た
「何を怒っているのでしょうか」
「エクレシアは優しい子だった!!」
「それで? それがどうかしましたか? 異教徒へ向ける優しさに意味などありませんよ」
「エクレシアを離せ!!」
黒衣の少年はエクレシアを抱きしめ
そして、そのまま目を覚ます事なく瞳を閉じて深い眠りの中に落ちてしまった。
「エクレシア!」
「おや、気絶してしまいましたか。ですが、問題は無いでしょう。このまま連れて帰り再教育するだけです」
「お前に、渡すもんか! エクレシアは俺が守る!」
黒衣の少年はエクレシアを抱きしめたまま
しかし、周囲の者達が争っている様な状況ではそれ以上動く事も出来ず、黒衣の少年は強く
「
「……ほぅ。貴方も来ましたか」
エクレシアを抱きしめた黒衣の少年に近づこうとしていた
凶鳥のシュライグの銃剣を掴み、
「
「残念ながら、未だこの身を滅ぼされる訳にはいかないのですよ」
シュライグはそれを見て、武器を握りしめながら追おうとしたが、その前にすぐ傍で自分を強く睨みつけている少年に視線を向けた。
「立てるか?」
「……あぁ」
「なら、立って逃げろ。道は俺達が作ってやる」
「いい、のか!?」
「その子を守りたいのだろう? ならば、守れ。それがお前の意思ならば、貫け!」
「……! っ、分かった!」
黒衣の少年はエクレシアを抱きしめたまま決意の秘められた顔で頷き、そんな黒衣の少年を見て、シュライグもマスクの奥で笑うのだった。
そして、シュライグは戦場へと駆ける。
彼が護りたいモノの為に……。