遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第60話【白の枢機竜(アルバ・システム・ドラグマータ)

赫の烙印(あかのらくいん)によって、ドラグマで生きていた人々はデスピアの兵隊に変えられてしまった。

 

しかし、真なる王の輝きによって、その呪いは消え、人々は再び元の体を取り戻した。

 

その語り続けるべき神話を目撃した人々は、この神話を永遠の物にする為に一つの像を作りだした。

 

白の枢機竜(アルバ・システム・ドラグマータ)

 

真なる神への感謝を忘れない為に、人々は教会の中枢に置かれたその像へ今日も祈りを捧げる。

 

だが、彼らが崇める神は、今日も酷く苦しそうな顔をしながら執務室の中に入ってきた侍従を見やるのだった。

 

 

 

「あー。その、すまない」

 

「はい。如何なされましたか? アルバス様」

 

「いや、そのアルバス様というのは止めて欲しいんだが」

 

「承知いたしました。我らが神」

 

「そういう事じゃなくて……もう良い。名前で呼んでくれ」

 

「承知いたしました。アルバス様」

 

 

 

ニコニコと微笑みながらアルバスを見つめる侍従に、これ以上何かを言う気力もなく、アルバスはため息を吐いた。

 

そして、一人でここに居るのは耐えられないと、少女の居場所を問う。

 

 

 

「エクレシアは今どこに居る?」

 

「聖女様でしたら。自室にいらっしゃるかと思いますが、お呼びしましょうか?」

 

「いや、俺が行くから良い」

 

「しかし、湯浴み等の準備がございますから、いきなり行くというのは如何なものかと」

 

「なに?」

 

「無論アルバス様がエクレシア様の着飾らないそのままの姿を望まれるのでしたら、それもまた良いかと思いますが」

 

「何の話だ!」

 

「夜伽の話でございますよね?」

 

「違う!! ただ話をしたいだけだ!!」

 

「左様でございますか。これは失礼いたしました」

 

 

 

アルバスはここ数日繰り返された会話に、大きなため息を吐きながら執務室から外へ出てエクレシアの元へ向かう。

 

今はとにかくこの窮屈な場所から抜け出したい。

 

そう考えてだ。

 

しかし……。

 

 

 

「ふふ。アルベルは本当に色々な事を知っていますね。とても面白かったです」

 

「そうかい? まぁ、こんな話でよければいくらでも話すけどね」

 

「……何をやっているんだ」

 

「アルバス君! もうお仕事は良いのですか?」

 

「いや、まだ終わってないんだけど、エクレシアに会いたくて」

 

「あら。悪い人ですね。アルバス君は。でも嬉しいです」

 

 

 

朗らかに笑うエクレシアに、アルバスはホッと心が落ち着くのを感じながら、笑みを零した。

 

しかし、すぐさまエクレシアの隣に居る男へと鋭い視線を向ける。

 

 

 

「ところで。お前は何でここに居るんだ。アルベル!」

 

「僕がどこに居ようが君には関係ないだろ?」

 

「関係あるだろ! エクレシアの部屋に入り込んで!」

 

「エクレシアが許可してくれたんだ。お前がグダグダと僕に言う資格は無いね」

 

「くっ!」

 

 

 

口元に笑みを浮かべたアルベルはアルバスを見下しながら、アルバスの言葉を一蹴し、偉そうに足を組みながら椅子に座る。

 

そんなアルベルにアルバスは怒りを覚えながらも、落ち着こうと大きく息を吐いた。

 

エクレシアが居るこの場所で争う訳にはいかないと。

 

 

 

「そういえば。このネックレスありがとう。エクレシア。僕の為に贈ってくれるなんて嬉しいよ」

 

「は?」

 

「買ったはずっと前の事ですが、気に入っていただけたのなら嬉しいです」

 

「当然じゃないか」

 

 

 

エクレシアに微笑みながら、チラッと横目でアルバスを見るアルベルに、アルバスは一瞬で頭に血が上った。

 

そして、右手に氷剣(ひけん)を作り出すとそのままアルベルに向ける。

 

 

 

「ちょっと摸擬戦をしないか? アルベル」

 

「フン。まぁ良いだろう。相手になってやるよ。アルバス」

 

「あら。摸擬戦なら私も……」

 

「「エクレシアは来なくていい!」」

 

「むー。私も体を動かしたいですのに」

 

 

 

むくれるエクレシアを置き去りにして、アルバスとアルベルは教会の中庭へ向かい、いつもの様に摸擬戦を始める。

 

しかし、摸擬戦と言いつつも二人とも真剣を使っているし、事故が起こってもしょうがない。という様な精神で行っているわけだが。

 

 

 

「随分と器の小さい事だな? アルバス」

 

「やかましい!」

 

「エクレシアは僕の事を良いお友達くらいにしか思っていないさ。だというのに、困った男だな。君は」

 

「っ!」

 

「それとも、自信が無いのか? まぁ、それも仕方のない事だと思うけどね」

 

「黙れ」

 

「エクレシアがお前を選んだ理由は、一度選んでしまったから、だ。仕方なくお前を選んだだけだものな」

 

「黙れ!!」

 

 

 

アルバスは怒りのままにアルベルの剣を弾き飛ばそうとするが、それも叶わず、アルベルに持っていた剣を叩き落とされ、アルバス自身も投げ飛ばされてしまった。

 

空を見上げながら地面に仰向けで倒れたアルバスは、荒い呼吸を繰り返しながら自身を見下すアルベルをジッと睨みつける。

 

 

 

「やれやれ。困ったものだなアルバス」

 

「……黙れ」

 

「こんな事なら、無理矢理にでも奪えば良かったかと思ってしまうが……まぁ良い。一度は待つと決めた事だしね」

 

「……」

 

「でも、今の君じゃあエクレシアを傷つける事しか出来ない。少しは頭を冷やすんだな。マグナムート」

 

 

 

アルベルはかつてカルテシアが呼び出し、今もなお教会で暮らしている一体の深淵の獣(ビーステッド)を呼び出した。

 

本来であれば、カルテシア以外に深淵の獣(ビーステッド)は従わないのだが、アルベルは一度深淵に堕ちて帰ってきた為、彼らと同族の様な扱いを受けているのだ。

 

言うなれば【深淵の獣(ザ・ビーステッド)アルベル】

 

 

 

「悪いが、この腑抜けを森にでも捨ててきてくれ」

 

 

 

アルベルの言葉に従って、地面に倒れていたアルバスを捕まえたマグナムートは緩やかに跳び上がると、そのまま森の方へと飛んでゆく。

 

一応アルバスも抵抗はしていたが、力の差があり過ぎて、その抵抗にもあまり意味が無いのであった。

 

 

 

「さて」

 

「……! アルベル!」

 

「おや。エクレシア。こっちに来てはいけないと言っただろう?」

 

 

 

アルバスを遠くへ追いやったアルベルは一息吐いてから、アルバスが消えた空を見ていたのだが、不意に遠くからエクレシアが走ってくるのが見えて、紳士的な笑みを浮かべながらエクレシアを迎える。

 

 

 

「いえ。その何だかアルバス君の様子が少しおかしくて……何かあったのかと心配になってしまいました」

 

「……」

 

「アルベル? どうかしましたか?」

 

「いやいや。やはりアルバスにエクレシアは勿体ないなと思っただけだよ」

 

「そうですか? 私としては、むしろ私の方がアルバス君やアルベルの足手まといになっていないか心配なのですが」

 

「まぁ、確かに、いつまでもベッドの上で寝ぼけて起きられない聖女様は、少なくとも国の運営で役には立っていないね」

 

「そ、それは! いえ、違うんですよ? 私も頑張って起きようとはしているんです」

 

「そうか。そうか。それは感動的だ。全国民に伝えた方が良いかもね。我らが聖女様はお一人で起床出来る様に日々努力しているのだと」

 

「も、もー! アルベル!」

 

「ハハハ」

 

 

 

アルベルはエクレシアに背中を叩かれながら、楽しそうに笑い、アルバスを飛ばした遠くの空を見やる。

 

 

 

「……まったく。そんな腑抜けたままなら、本気で僕が奪ってしまうぞ。アルバス」

 

「何か言いましたか?」

 

「いや。何も言ってないよ。ねぼすけ聖女様」

 

「その呼び方は止めて下さい! アルベル!」

 

「まぁ、君が一人でちゃんと起きられる様になったら止めてあげるよ」

 

 

 

それからエクレシアは少しの間アルベルと言葉を交わしていたのだが、周囲を見渡して違和感を覚えてアルベルに再び問う。

 

 

 

「そういえばアルバス君はどうしたんですか?」

 

「あぁ、アルバスなら今頃森にでも行ったんじゃないか?」

 

「えぇー!? 一人で行っちゃったんですか!?」

 

「行っちゃったというか。僕がそこに送ったんだよ」

 

「なんでそんな事! もう! 私だって遊びに行きたいのに! 誰か! 誰か来てください!」

 

 

 

エクレシアは慌てて深淵の獣(ビーステッド)を呼び出したが、飛んできた深淵の獣(ビーステッド)をアルベルが止めて、エクレシアはそのまま教会の中へ強制連行される事になるのだった。

 

 

 

「さ。遊んでないで仕事をして貰おうか。聖女様。君にはまだまだやる事がいっぱいあるからね」

 

「あ~! アルバス君!」

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