遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
ドラグマに戻ったアルバスは急いでエクレシアの部屋に駆け込んで事情を話した。
その衝撃的な話にエクレシアは飛び上がって、自分の中に眠る聖女達に語り掛ける。
そして、解決策を持っている一人の女性が名乗りを上げた。
「ありがとうございます。クエムさん」
『別に良いわよ。未来の娘の為ですもの』
「え?」
「エクレシア。気にしなくても良い。母上は少々気が早いんだ」
『オホホホ』
自身の体として使っていた少女の体を元の少女に戻し、再び体を失ったクエムはフルルドリスの体を借りて笑う。
その笑顔には以前の様な暗い影はなく、ただ呑気に息子との日々を喜ぶ親バカの色が見えた。
「まったく。しょうがない人だ」
アルベルはクエムの言動にため息を吐きながらも、どこか嬉しそうな顔で微笑んだ。
そして、今は引き締める時だと切り替えると騎士団を呼び、クエムとエクレシアを護衛させながら砂漠へと向かわせる。
どこまでも広がる砂の大地は、落とし物を見つける為には非常に不向きである。
が……それを解消する為に連れて来たのが
「大丈夫そうですか? クエムさん」
『お義母様と呼んでも良いのよ? エクレシア』
「母上」
『あら。独占欲? それも良いとは思いますけどね』
「母上!」
『はいはい。分かってますよ。真面目にやりますよ』
まるで童女の様に悪戯を繰り返すクエムに呆れた様な声を漏らしたアルベルを見つつ、茶番など目に入らないとばかりに砂漠の向こうを見つめていたアルバスをエクレシアは見据える。
少し前まで居場所を見失ったかの様に揺れていたアルバスは、今燃える炎となってこの場所に立っていた。
砂漠よりも熱く燃えている。
それが嬉しくもあり、置いて行かれた様で不安でもあるエクレシアであった。
しかし、そんなエクレシアを世界が待つ事はなく、少々真面目な顔になったクエムが始めると口にすると全員の気が引き締まった。
『……うん。見えるわ。それほど遠くはないわね』
クエムが言葉と共に腕を上げて指示した方向にドラグマの騎士たちは走って行き、それぞれ別々の場所からサルガスとレギュラスの魂とも言うべき物を回収するのだった。
酷くあっさりと終わってしまったドラグマの面々による回収だが、キットは二人が帰ってきた事で大粒の涙を流しながらアルバスやエクレシア。そしてクエムに礼を言い、急いで二人の体を直すのだと森へ戻って行く。
そんなキットの姿を見て、皆、心に暖かな物を感じてこの捜索は終わると思われた。
だが、これで、はいおしまい。とはいかない者達もこの場所には存在していた。
そう。キットの頼みを聞いて、ずっと砂漠で慣れない捜索作業を続けていた《スプライト》達である。
『ハンッ! そんな簡単に見つけることが出来るのなら、さっさと来れば良いのに。勿体ぶってさ!』
『そうそうブルーの言う通りよね。偉そうにしちゃって。なーんにも偉くないからね?』
青と赤の雷が幼い子供の様な姿を作り、それがクエムに突っかかって行く。
『なぁに? この小さいの。自分の無能を自慢げに語っても意味無いわよ』
『ぬぅわにぃ~!?』
『何この女!!! あの時は一緒に戦ったのに、今日はすっっっっっごく生意気!! フルルドリスって言ったわね! アンタの名前覚えたからね!』
レッドから最愛の姉の名前が上がった事に動揺したエクレシアは、その部分だけは訂正しようと口を開く。
「あの、ブルーさん。レッドさん。この方はフルルドリスお姉様の見た目をしているのですが、クエムさんという方が体を借りている状態でして」
『クエム?』
『何か聞いた事ある名前ね』
『あ!! 思い出したよレッド! コイツ!
「え?」
『国を滅ぼした。なんて言われてもね。覚えてないわ』
『ふざけるな!! 父上も母上も隠れてたのに、お前が見つけ出して殺したんじゃないか!』
『ふぅん。そう。それは大変だったわね』
『っ!! なんだコイツ!!』
クエムの挑発するような言葉にブルーは怒り、雷を周囲にまき散らす。
その力は確かに本物の輝きで、その光を見たクエムはアッと、ブルーたちの事を思い出すのだった。
『あぁ。その光。覚えてるわ。あなた達、《スプライト》ね?
「知っているんですか? クエムさん」
『えぇ。とは言っても遠い昔の話だからそこまで詳しくはないけれどね。でも、アルギロスと最後にした話はよく覚えているわ』
「約束……ですか?」
クエムはフルルドリスの体で遠い目をしながら口を開いて語り始めた。
遥かな昔、まだアルベルが生まれて間もない頃に、
『アルギロスは
『
『まぁ、
全ては語らないクエムの言葉に、エクレシアは何となくその時の事を察して笑みを作った。
これだけ広大な砂漠で探し物を容易く見つける事の出来たクエムが、ブルーたちを見つける事が出来なかったとは思えない。
だから、きっと彼女は見逃したのだ。
それがどれだけのリスクであったのか、エクレシアには分からないが、少なくともブルーたちが恨む対象では無いのだという事が理解出来る。
だから、エクレシアはその事実をブルーたちに伝えようとした。
が、話は想定外の方向へと勢いよく転がって行く。
『そんな過去の話はもうどうでも良い! 僕らは
『復讐って言ってもね。もうあの男は死んだわ。そこに何かが居たという証すら残らず、ね』
『フン! そんなの! アイツが死んでも、まだ子供がいるじゃないか!』
「ん?」
『僕はサイキョーの天才! ブルー様だ! お前らにする最高の復讐はもう思いついてるんだぞ!』
『へぇ? アルベルに危害を加えるって言うんなら、容赦はしないけれど、何をするつもりかしら?』
『決まってるじゃないか!
「「は?」」
ブルーの叫びに、アルバスとアルベルの声が重なり、それと同時にブルーへクエムの事情を話す為に近づいていたエクレシアが捕まってしまう。
白き雷の中に閉じ込められたエクレシアは、
「「エクレシア!!」」
『ふーはーはーはーはっ!! エクレシアはボクの物だ! これでお前たちは大切な物を奪われた。これが僕らの復讐だー!』
ブルーはふわりと飛び上がると、レッドやエクレシアを捕えているジェットと共に砂漠の向こうへ飛んで行く。
その速さはまさに雷のごとき速さであり、アルバスもアルベルもエクレシアを助ける事が出来ず、目の前で奪われてしまうのだった。