遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第64話【開かれし大地(ひらかれしだいち)

世界を巻き込む様な争いの中で、大きくその姿を変えてしまった教導国家(きょうどうこっか)ドラグマは、エクレシア達の活躍もあり、元通りとはいかないが、元の様な白く美しい世界を取り戻していた。

 

そして、そんな美しいドラグマの外れにある小さな家に来ていたエクレシアは、家主の居ないその家に入りいつもの様に掃除をしてから、机の上に飾られた写真立てを撫でた。

 

「……お父様。お母様」

 

現代に生まれたエクレシアに両親の記憶はない。

 

何故なら生まれてすぐに捨てられてしまったからだ。

 

しかし、エクレシアの中には確かに両親の記憶が刻まれていた。

 

一番最初のエクレシアを愛してくれた父と母の記憶が。

 

 

 

エクレシアは椅子に座り、写真の中で笑う両親に語り掛ける。

 

「お父様。お母様。私、大切な人たちが出来ました」

 

嬉しそうに、楽しそうに、エクレシアはこの世界で出来た思い出を語る。

 

「お友達もたくさんできました」

 

多くの出会いがエクレシアの胸に蘇り、彼らの笑顔が頭に浮かぶ。

 

「そして、大好きな人が出来ました」

 

アルバスの声を思い出しながら、エクレシアは目を閉じて、笑みを浮かべた。

 

 

 

「私、幸せになります。お父様とお母様がそう願って下さった様に」

 

「エクレシア」

 

 

 

両親へ語り掛けていたエクレシアは入り口から聞こえて来た声に顔を上げて、その声の主を見た。

 

「邪魔しちゃったか?」

 

「大丈夫です。あ、いえ。むしろちょうど良かったと思います」

 

「ちょうど良かった?」

 

「はい!」

 

エクレシアは椅子から立ち上がると、入り口に立っていたアルバスの腕を掴み机の前まで連れてくると写真に向かって微笑んだ。

 

「紹介しますね! お父様! お母様! 私の大好きな人。アルバス君です!」

 

「……えと、どうも?」

 

「ふふ。ありがとうございます。アルバス君」

 

「いや、俺は構わないが……こんな言葉で良いのか?」

 

「えぇ! 大丈夫です! お父様もお母様もとても素敵な方々でしたから! きっとアルバス君の事も大切に思って下さるはずです」

 

「……そうか」

 

アルバスはアルベルから聞いたエクレシアの父親だという人……デスピアの大導劇神(ドラマトゥルギア)の事を思い出し、何とも言えない微妙な顔をしたが、エクレシアに気づかれない様にすぐ真剣な表情に切り替えた。

 

「でも、良いのか? まだドラグマに居ても良いんだぞ?」

 

「……いえ! 大丈夫です! 私はもう決めましたから!」

 

「エクレシア」

 

「お母様が昔言っていました。子供はいつか親から離れて一人で生きていく必要があるのだと。私は今がその時なのだと思っています」

 

「……そうか」

 

「はい!」

 

エクレシアは呟く様なアルバスの声に言葉を返しながら頷いた。

 

しかし、それで終わらずエクレシアは胸の前で右手を握りしめて震える様な声でアルバスの名を呼ぶ。

 

「アルバス君!」

 

「あぁ」

 

「実は、一つご相談がありまして!」

 

「なんだ?」

 

「こ、これを!!」

 

エクレシアは緊張したままアルバスが立っている方を向き、両手で白い宝石が付いた指輪を差し出した。

 

顔を真っ赤にしながら、それ以上何も言わないエクレシアにアルバスはフッと笑うと、エクレシアから指輪を受け取り、エクレシアが望むであろう場所に指輪をはめる。

 

「あっ!」

 

「え? 何か間違えたか?」

 

「いえ。私がアルバス君の指に通そうかと思って……」

 

「あー! それはごめん。ほら、すぐに抜くから」

 

「え」

 

「え?」

 

「ぬ、抜いちゃうんですか?」

 

うるうると潤んだ瞳で見上げてくるエクレシアに、アルバスはどうすれば良いんだと苦悩しながら、天を仰いだ。

 

しかし、悩み迷って考えた末に、指輪を指の中頃まで抜いてからエクレシアに手を差し出す。

 

「エクレシア。最後は君にお願いしたい」

 

「あっ、はい」

 

アルバスの指にゆっくりと指輪を通して、エクレシアは微笑み、アルバスはそんなエクレシアを強く抱きしめた。

 

そして姿は見えないが、エクレシアとアルバスの事を見守っているであろうエクレシアの両親に、二人は静かに言葉を残して家から出ていくのだった。

 

「「行ってきます」」

 

 

 

エクレシアが両親と別れを告げた三日後。

 

エクレシアとアルバスはキットが作り上げた新型の飛行機械《リンドブルムⅡ》に乗って、最後の話をしていた。

 

これから別々の道を歩む姉や友。そしてかつての世界で愛していた人。

 

「リンドブルムⅡの基本的な操作はアルバスに全部教えてるし、整備とかも大丈夫だと思う」

 

「はい」

 

「だから、何も心配はいらないと思うんだけど。思うんだけど!!」

 

「はい……」

 

「何かあったら、すぐに戻ってきて良いんだからね!? エクレシア!」

 

「ありがとうございます。キットちゃん」

 

「エクレシア!!」

 

エクレシアは涙を流すキットを抱きしめながら微笑み、キットの後ろでアルバスと話しているシュライグやフェリジット達に視線を向けた。

 

「アルバス」

 

「あぁ」

 

「以前も言ったが、俺達は鉄獣戦線(トライブリゲード)。例えどれだけ離れていようとも、その絆は変わらない」

 

「あぁ!!」

 

「元気でやりなよ? それと、エクレシアの事もしっかり守ってやんな」

 

「ありがとう。フェリジット」

 

そして、フェリジットは未だ涙の止まらないキットをエクレシアから引き離し、見送る為にやや離れた場所へと移動した。

 

「ほら。キット。最後に見せるのがそんな悲しい顔で良いの?」

 

「っ! 駄目! だから!!」

 

キットは涙を拭って、明らかに無理をしている顔でエクレシアに笑いかけた。

 

「エクレシア! アルバス! 私はこれで終わりなんて思わないよ!」

 

「はい!」

 

「あぁ」

 

「いつか私も、二人みたいに世界に飛び出すから! だから! また会おうね!」

 

アルバスの操縦でふわりと浮き上がったリンドブルムⅡにキットは近づいて手を振る。

 

一度は止めた涙を溢れさせながら、それでも笑顔で。

 

「また会いましょう! キットちゃん!」

 

「約束だよ! エクレシア! また!!」

 

そして、ふわりと浮き上がったリンドブルムⅡはそのままゆっくりとドラグマを離れて遠くの大地を目指し進み始める。

 

 

 

「いよっしゃー!! お前らー! 見送りだ! 派手にいけー!!」

 

キット達の背後から大きな声と共に空へと打ち上げられたミサイルが、アルバスたちの正面へ向けて突き進み空で大輪の花を咲かせる。

 

「エクレシア! 後ろ!」

 

「……! キャプテンさん! それに《スプリガンズ》の皆さん! 《セリオンズ》と《スプライト》の皆さんも!」

 

「行くぜー! レギュラス!! 合体! ギガンティック“チャンピオン”サルガス!!」

 

そして、レギュラスと一つになったサルガスは大空へと舞い上がり、エクレシアとアルバスに近づいて、笑いかけた。

 

「じゃあな! エクレシア! アルバス! ロッキーの奴は頼んだぜ!」

 

「はい!」

 

「ロッキー。今度は気絶してたなんてことは無いようにな!」

 

「分かってるゼ!」

 

エクレシア達は親指を立てて離れてゆくサルガスを見送り、今度は反対側に現れた深淵の獣(ビーステッド)達と、それに乗ったアルベルやフルルドリス達に視線を向けた。

 

「お姉様!」

 

「エクレシア!! 帰ってきたくなったらいつでも帰ってきて良いんだからな! 私はいつまでも待っているぞ! いや! やっぱり駄目だ!! 行くな! エクレシア!」

 

「ほら、フルルドリス。ちゃんと別れを言うんだろ?」

 

「しょうがない人ですね。貴女は」

 

「うるさい! 最愛の妹と別れる私の気持ちが分かってたまるか!」

 

「だー。しょうがねぇな! エクレシア! フルルドリスは俺らが面倒みてるからな! こっちは気にするな! 元気でやれよ!」

 

「はい! テオさんもアディンさんもお気をつけて! お姉様! 私、行ってきます!」

 

「エクレシアぁぁあああ!!」

 

未だ叫び続けているフルルドリスに苦笑しながら、エクレシアはぬるりと近づいてきたアルベルに視線を移す。

 

「アルバス」

 

「なんだ。アルベル」

 

「エクレシアは任せたぞ」

 

「……あぁ」

 

アルベルとアルバスは短く会話をした後、それ以上は何も言わず、アルベルはエクレシアを見つめる。

 

「エクレシア。世界は広い。楽しんでくると良い」

 

「はい!」

 

短く見送りの言葉を向けたアルベルにエクレシアは大きく手を振ると、正面を向いて座る。

 

そして、アルバスがリンドブルムⅡを加速させ、ドラグマから遥か遠い世界へと旅立つのだった。

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