遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第65話【白の物語(しろのものがたり)

ドラグマから外の世界へ旅を始めたアルバスとエクレシアは様々な場所を巡った。

 

引きこもりのお姫様が、侵入者を激しく拒む迷宮に侵入した事もあったし。

 

発展した化学技術の結晶とも言うべき世界で、怪盗をしている少女たちと一緒にいくつかのトラブルを解決した事もあった。

 

魔法を研究している学術都市へ行ったこともあったし。

 

穏やかな植物が咲き乱れる平穏な世界へも行った。

 

あぁ、いや、植物の中には危険な人食い植物もおり、甘い少女の姿をした凶悪な植物と戦った事もあった。

 

ドラゴンに変じる事が出来るメイドと不死の王が住まう黄金郷に立ち寄った事もあった。

 

 

 

この世界には多くの者たちが存在しており、そのどれもがエクレシアとアルバスの心を震わせ、多くの感情を引き起こした。

 

喜び、怒り、哀しみ、楽しさ。

 

生きているというのはまさにこういう事だろうと、二人はそれぞれの地で出会った者達に別れを告げ、新たな場所へと旅立ってゆく。

 

そんな日々を繰り返していく中で、アルバスとエクレシアはいつもの様に食料やリンドブルムⅡの燃料を手に入れる為、近くの街に立ち寄るのだった。

 

 

 

「次の街まではかなり遠いみたいだから、食料は多めに買っておこう」

 

「はい! そうですね!」

 

アルバスの言葉にエクレシアは笑顔のまま頷き、一つ目の鬼がやっている市場で買い物を行う。

 

二人は別れてそれぞれの買い物を行っていたのだが、そんな中で事件が起きた。

 

「なーっはっはっは! この市場の物は全ていただいていくぞぉ! そしてぇ! 今日からここは我々! 百鬼羅刹(ゴブリンライダー)の支配下となーるのだ! なーっはっはっはっは!」

 

市場中に響く大声と共に巨大な乗り物で現れたその者達は、市場で楽しそうに買い物をしていた客、そして一つ目の鬼を吹き飛ばしながらそう宣言し、一つの地雷を踏んだ。

 

そう。世界を旅し、多くの力を手に入れていたエクレシアとアルバスの二人にだ。

 

「もう! 今回はのんびり出来ると思っていたのに! 悪い事をしてはいけませんよ!」

 

エクレシアは完全に制御されている赫の烙印(あかのらくいん)の力を使い、小さな翼を作り出して空を飛ぶと、腰に手を当てながら高笑いしているゴブリンに迫り、キットに強化してもらった戦槌を振り下ろす。

 

「なっ!? なんだ、お前は!!」

 

「私はエクレシア!! 悪い子にお仕置きする為に来ました!」

 

エクレシアは空に舞い上がりながら、戦槌を振り回し、ゴブリンたちを追い詰めてゆく。

 

いくつもの修羅場を乗り越えて来たエクレシアにゴブリンたちは一人、また一人と吹き飛ばされてしまうのだった。

 

「ふんぎゃー!」

 

そして、エクレシアだけでなくアルバスもまた、左手に氷剣(ひけん)を、右手には燃え滾る炎剣(えんけん)を握り、ゴブリンたちを見据える。

 

襲い来るゴブリンたちを一匹、また一匹と冷静に処理してゆくアルバスの動きと、その鋭い瞳にゴブリンたちは一人、また一人と降参してしまうのだった。

 

 

 

容易く解決したかに見えたゴブリンたちとの争いであるが、この出会いがまた別の物語へと繋がっていく事をアルバス達はすぐに知る事になる。

 

 

 

「【罪宝狩りの悪魔】?」

 

「そう! それはもう恐ろしい魔女なんですよ! アルバスの旦那!」

 

「ふぅん?」

 

アルバスはゴブリンから手渡された手配書を見て、なるほどと頷きながらエクレシアにも手配書を見せた。

 

「あら。怖そうな顔をしていますね」

 

「それで? その罪宝狩りの悪魔と今回の悪さとどういう関係があるんだ?」

 

「それはもう、話すとながーい話になるんですが!」

 

「なるほど?」

 

アルバスはゴブリンの一体から聞いた話に頷きながらすぐ隣に座っているエクレシアに視線を送る。

 

エクレシアは笑顔のまま、私は問題ないですよと頷いた為、アルバスはゴブリンにその先を話す様に促した。

 

「おぉー! ありがたい!」

 

ゴブリンはアルバスとエクレシアに頭を下げながら、少しずつその悪魔【黒魔女ディアベルスター】について話をするのだった。

 

しかし、ゴブリンたちの話は抽象的な話が多く、アルバス達もその悪魔がどの程度酷い存在なのかが分からない。

 

ただ、分かる事は、その悪魔のせいでゴブリンたちは元の場所に居続ける事が難しくなり、こうして略奪行為をしていたという話だけだ。

 

「うーん」

 

「どうしましょうか。アルバス君」

 

「ゴブリンたちの話だけだと難しいな。悪そうな事をしている人でも、実は世界の為に動いていた。なんて事は前にもあったし」

 

「キスキルさん達の様な、ですね」

 

「うん。逆に、蠱惑魔とかは仲良くしようって近づいてきて、食べようとしてきたし」

 

「あの時は危なかったですねぇ」

 

「だから、ひとまずゴブリンたちの言う事を全て信じることは出来ないかな」

 

「そうですね」

 

エクレシアはアルバスの言葉に頷きながら、ショックを受けているゴブリンの一体を抱き上げた。

 

そして、近くの椅子に座らせてから体中にある傷を見て、やや悲しそうな顔で目を伏せる。

 

「ですが、実際にゴブリンさん達が傷ついているのは確かですし。その魔女さんに会ってみても良いかもしれないですね」

 

「……まぁ、エクレシアが問題無いなら」

 

「私は大丈夫ですよ。もしゴブリンさん達の言っている事が本当なら、見捨てる様な事は出来ません」

 

「え、エクレシアの姉さん……!!」

 

エクレシアの言葉にゴブリンたちは感動し、涙を流しながら地に頭をこすりつける。

 

そして、エクレシアとアルバスは次なる目的地を白き森と呼ばれる場所に定めて、ゴブリンたちと共に移動を始めるのだった。

 

 

 

アルバスとエクレシアがゴブリンたちと移動を始めた頃、深き森の奥にある泉の傍で噂の魔女ディアベルスターは何かの気配を感じて顔を上げる。

 

それは具体的な物など何もない。ただの感覚から来る予感の様なモノであったが、その予感を現実のモノだと確信したディアベルスターは、遠くから来る何かが変わる気配に笑みを浮かべた。

 

止まってしまった時間。

 

暗闇で足掻き続けた日々が変わる。

 

そんな予感が遠くからこの地に近づいてくるのを彼女は強く感じていた。

 

だから、魔女は彼らを歓迎する為に準備を始める。

 

大きな嵐と共に……停滞した世界が動く予感に。

 

 

 

これから向かう先で何が起きているのか、何が起ころうとしているのか分からないが、アルバスとエクレシアは一つ目の鬼が開いている市場をゴブリンたちと共に修理した後に、ゴブリンたちの案内で新しい世界へ向かう準備をしていた。

 

「エクレシア」

 

「はい。何でしょうかアルバス君」

 

「これからまた大きな争いが起きるかもしれない……でも」

 

「アルバス君」

 

「……」

 

「私の答えはずっと変わりませんよ」

 

エクレシアは魔法都市でアルバスが手に入れた、ある魔法が掛けられている指輪をアルバスに見せる。

 

二人で誓い合った想いを、アルバスに形として示した。

 

「私は、命が尽きるまでアルバス君と共にあります」

 

「あぁ」

 

「そして、少しでもこの世界から悲しい気持ちが消えて、幸せな人が増えれば良いなとも感じています」

 

「俺も同じだ」

 

「はい。ですから、一緒に行きましょう。世界の果てまで。この幸せな気持ちを世界にも!」

 

「そうだな。分かった。じゃあ行こう!」

 

アルバスとエクレシアは手を繋ぎながら想いを確かめて、笑い合う。

 

そして、通信を繋げたゴブリンたちからの声を合図として、未知なる場所へと走り出すのだった。

 

『準備は良いですかい!? アルバスの旦那! エクレシアの姉さん!』

 

「あぁ」

 

「大丈夫です!」

 

『では出発!!』

 

 

 

これから二人の前にどんな事が待っているのか、それは誰にも分からない。

 

だが、二人が手を取り合って生きる限り、その先に希望はある。

 

 

 

そう。これは、二人が強い想いと小さな希望を胸に、世界へと挑み続ける……。

 

アルバスとエクレシアが何も見えない未来を、自分たちの願いで歩んでゆく物語だ。




本編これで完結となります。
長い間閲覧ありがとうございました。
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