遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第6話【鉄獣の抗戦(トライブリゲード・リボルト)

鉄獣戦線(トライブリゲード)教導の神徒(ハッシャーシーン・ドラグマ)の激しい戦闘が開始されてから、黒衣の少年はエクレシアを抱えたまま、震える足を何とか立たせて戦場から逃げ出そうとしていた。

 

しかし、苦し気な顔をしつつも眠っていたエクレシアが大粒の汗を流しながら、呻き始めてしまう。

 

「エクレシア!」

 

「その子! どうしたの!?」

 

「分からない! けど、苦しそうなんだ!」

 

エクレシアを抱きしめたまま戸惑っている黒衣の少年に問いかけたフェリジットは、頭上にある耳を立てながら悪意の気配を探る。

 

そして何かの気配を感じ、細長い銃剣を誰も居ない空間に向けて放った。

 

「そこだっ!」

 

『……ふふふ。獣らしく、良い耳をしてるのね。引きちぎろうかしら』

 

「なんだ、コイツは」

 

それはまるで煙の様な存在で、実体を持たないままフェリジットと黒衣の少年に語り掛ける。

 

人間では無い。

 

獣人でもない。

 

生命という物を感じない、ただただ不気味な存在であった。

 

「少年。一人で行けるか?」

 

「……あ、あぁ! でも、ソイツは」

 

「問題ないよ。私に任せな」

 

『舐められた物ね。獣風情が。この私を止められると、本気で思っているなんて!』

 

その煙は、感情をそのまま示す様に激しく動き回るが、ふとした瞬間にピタリと動きを止めると、煙が手の様な形を作り、それをエクレシアに向ける。

 

そして、エクレシアはその手を向けられた瞬間から額の聖痕を輝かせ、激しく苦しむのだった。

 

そう。先ほど教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)教導神理(ドラグマティズム)をされていた時と同じ様に。

 

「エクレシア!」

 

「この、化け物が!」

 

『ふふ。私は慎重なの。だから、まずはエクレシアを取り戻す事にしましょう。ソレは私が長い時間を掛けて作り上げた《烙印》の器なのだから』

 

「エクレシアは、お前のモノじゃない!」

 

『それを決めるのはお前じゃないわ』

 

煙が一瞬光った瞬間、エクレシアは更に痛みを訴えて暴れ始める。

 

このままでは命すら危ないのではないか。

 

そう考えた黒衣の少年は一つの決断をする。

 

それはこの世界に落ちてくる時に使った力であり、危険な悪魔から身を守る為に使った物であった。

 

故に、あの悪魔の気配がするこの場所を破壊した。

 

しかし今、少年の胸にある想いは違う。

 

そう。少年の中で輝いている最も強き想いは、憎しみや怒りでは無いのだ。

 

生まれてからずっと人のぬくもりを知らなかった少年は、エクレシアと出会い、シュライグに道を示され、フェリジットに守られる事で、本当の強さの欠片を知った。

 

故に、少年はその変わり始めた心を胸に秘めて、未だ遠い場所にある光を掴むために一歩前へ進むのだ。

 

「この光を喰らう!!」

 

『なっ!? その力は……! その姿は!』

 

少年はエクレシアを抱えたまま、その額にある聖痕の光を奪い……いや、喰らい尽くした。

 

そして、額の聖痕が力を失った事でエクレシアは苦しみから解放され、ようやく落ち着いた表情で眠りにつく。

 

その様子を確認し、器用にも前足でエクレシアを抱えたまま少年が変異した獣の様なドラゴンはドラグマの外へ向かうべく体を反転させるのだった。

 

『逃がすか!』

 

「っ!」

 

『なっ……弾かれた!?』

 

煙の存在が再びエクレシアの額に光を集めようとしたが、それは獣のドラゴンによって弾かれる。

 

そして、煙の存在に気付いたのか飛んできた教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)もエクレシアに手を向けるが、それも獣のドラゴンに阻まれてエクレシアに届く事は無かったのである。

 

「……なるほど、我らの光が届かない。阻んでいる? というよりは喰らいつくした様な状態に見える。さしずめ【痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド】という所でしょうか」

 

『マクシムス!』

 

「えぇ。分かっておりますとも。教導の神徒(ハッシャーシーン・ドラグマ)! あのドラゴンを止め、聖女を取り戻すのです!」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の声に教導の神徒(ハッシャーシーン・ドラグマ)達は急ぎ、ブリガンドの下へと向かおうとするが、それは遥かに遅かった。

 

何故なら、ドラグマの面々が必死に取り戻そうとしている聖女を確保した事で、シュライグは今回の奇襲作戦の成果としては十分と考え撤退行動に入っていたからだ。

 

ブリガンドへと向けられる刃は、鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦士に阻まれ、煙の存在や教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)が放つホールの力もブリガンドによって弾かれる。

 

「少年を援護しつつ撤退! フラクトール! 道を拓け!」

 

「あぁ、行くぞ! ナーベル! ケラス!!」

 

「俺も行くぜ! テオ達が出てくるかもしれねぇ!」

 

「頼んだ。ルガル」

 

「おうよ! ケツは任せたぜ! シュライグ! それと坊主と嬢ちゃんは頼んだぞ! フェリジット」

 

「あぁ」

 

「任せておきな! さ、逃げるよ。少年」

 

フェリジットの年下へ向ける優しい声に、ドラゴンは大きく頷きエクレシアをフェリジットに託した。

 

そして二人を背に乗せると、ブリガンドは先を行くフラクトール達に追いつく様な勢いで地を駆けてゆくのだった。

 

鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦士たちが撤退してゆく中、シュライグだけは一人戦場に立ったまま動かず、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)と煙の存在を見据える。

 

逃げてゆく戦士や、出会ったばかりの小さな友には指一本触れさせないという様な覚悟で。

 

「たった一人で私たち全てを止めるつもりですか?」

 

「あぁ」

 

「無駄死にが本当に好きなのですね。貴方方は」

 

「……俺たちは」

 

「ん?」

 

「俺たちは、誰一人として、無駄死になどしていない」

 

「……」

 

「この牙でお前たちの息の根を止めるまで、戦い続ける。戦い続ける限り、戦士たちの魂は消えない……!」

 

「そうですか」

 

シュライグは真っすぐに教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)へ銃剣を向けたまま想いをぶつけると、機械の翼を広げて飛び去って行こうとした。

 

しかし、そんなシュライグに教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は声をかける。

 

凶鳥のシュライグ(きょうちょうのシュライグ)

 

「なんだ、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)

 

「一つ伝言を頼めますか?」

 

「……俺がそんな事をしてやる義理がどこにある」

 

「別に伝えなくても構いませんがね。ただあの子が気にするだけですから」

 

「……あの少女か」

 

「そうです。奇跡の子エクレシア。聖女と呼ばれた子です」

 

ゆったりと語る教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)を、シュライグは空からジッと見つめる。

 

その仮面の奥にある真実を見極めようとする様に。

 

「しかし邪教徒の手に落ちた以上、神聖なドラグマにはもはや不要の存在。追放だとお伝えください」

 

「……お前は」

 

「どうしました? 凶鳥のシュライグ(きょうちょうのシュライグ)。聞こえませんでしたか?」

 

シュライグはマスクの奥で歯を食いしばると、手に持っていた銃剣を教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)に向ける。

 

「お前たちはいつまでも、そうやって驕っていればいい! 俺たちが、あの小さな戦士たちが、いずれお前たちとその邪神を噛み砕く。その時を楽しみに待っているんだな!」

 

シュライグはその言葉だけ残すと、突風の様な速さで撤退した者達の元へと飛んで行くのだった。

 

もはや誰も追いつく事は出来ないだろう。

 

そして、それを見送っていた教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)もまた仮面の奥で口元を歪めながら笑う。

 

「我々を噛み砕く、ですか。それは実に楽しみですね。実に」

 

『マクシムス』

 

「さて、皆さん。戦いは終わりました。後片付けをしましょう」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)!!』

 

「おや。何かありましたか? 聖女クエム」

 

『あなた。何故エクレシアを逃がしたの。エクレシアはあの子の!』

 

「この戦力では不可能です。フルルドリスが居れば可能だったかもしれませんが。それとも、《烙印》の力を解放するべき……でしたか?」

 

『それは……!』

 

「まだその時ではない。えぇ、分かっておりますとも」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は仮面の奥で笑うと、エクレシアが旅立って行った方を見て、誰に聞かせるでもなく独り呟くのだった。

 

「かわいい子には旅をさせよという言葉もありますし。エクレシアには是非。外の世界を知って、成長していただきたいですね。私の目的の為にも」

 

 

 

かくして、教導国家(きょうどうこっか)ドラグマを舞台とした争いは幕を下ろすのだった。

 

だが、これはまだあくまで大きな物語の始まり(プロローグ)に過ぎない……。

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