遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
無事ドラグマから逃げ出した
疲れ切った体を木々に預けて、水だ、飯だ、傷の手当だ、と各々に準備を進めてゆく。
そんな中、武装を解除したフェリジットは気絶したまま未だ目を覚まさない少女エクレシアを膝枕しながら、遅れて帰還した
「シュライグ!」
「フェリジット。無事だったか」
「当然でしょ。後ろにはシュライグ、前にはフラクトール達が居たんだからさ。私はあの子に乗ってただけだよ」
「そうか」
「それで……これからどうする? この子。連れてきちゃったけど戦場に連れていくっていうワケにもいかないでしょ?」
「あぁ」
「私たちの拠点はバレてるしね。連れて行っても、私たちが居ない隙に攻められたら終わりだわ」
「……そうだな」
「やっぱり戦場に連れていく?」
「子供を戦場へ連れていく事などあり得ない」
フェリジットの言葉に、シュライグはマスクを外しながら即座に反論する。
そしてそんなシュライグにフェリジットは微笑みを浮かべ、まだ寝ているエクレシアの頭を撫でながら肯定を返すのだった。
「そうね。子供が死ぬのは見たくないわ」
「……」
「シュライグ?」
「一つ、良い場所がある。が……それはあの少年次第だな」
フェリジットはシュライグが動かした視線の先に居る、仲間たちに構われて、どうすれば良いのか分からず戸惑っている少年へと視線を移した。
ドラグマと
「まずは話をしなければな。あのドラゴンの事といい、分からない事も多い」
それからシュライグは、仲間たちに囲まれて、もみくちゃにされている少年を静かな場所まで引っ張ってくると、これからの話をする為にまずは少年の事情を聞くのだった。
しかし少年は記憶を失っており、どうしてこの地にやってきたのかは分からない。
ただ確かな事は、あのホールから落ちて来た巨大なドラゴンがこの少年であり、また違う姿のドラゴンにも変身できる強大な力を持った存在だという事だ。
「……一つ聞きたい。お前はこの世界で何を望む」
「エクレシアを守りたい」
「他には?」
「今は、まだ何も……分からない」
「そうか……分かった」
獣人たちの世界を守る為に戦うシュライグにとって、少年の存在は脅威だ。
しかし、それと同時に誰かを守りたいと願う戦士でもある。
未だ見える少年の正体。それを探る為に、シュライグは少年に語り掛けた。
「あの少女。エクレシアはドラグマから追放された」
「つい、ほう……?」
「捨てられたという事だ。両親にも兄弟姉妹にも二度と会えない。独りぼっちになってしまった。という事だ」
少年はシュライグの言葉にギュッと自分の右手を握りしめる。
その表情には悲しみと、先ほどよりも強い決意が秘められていた。
シュライグはその顔を見て、安心した様に笑い、遠くから機械鳥を呼び寄せると、それを少年に託す。
「こいつは【
「……メルクーリエ」
「そうだ。コイツをお前に託す」
「え?」
シュライグはメルクーリエを飛ばし、少年の下へ向かわせながら遠い森の向こうへ指をさした。
「この森を抜け、歩き続けた先に、【
「なんで」
「道はメルクーリエが教えてくれる」
「そう、じゃなくて! なんで、そこまでしてくれるんだ! 俺はアンタ達と出会ったばかりなのに」
「似ていたからだ」
シュライグの言葉に、少年は意味が分からないと困惑した顔をするが、そんな少年の頭を乱暴に撫でながらシュライグはやや恥ずかしそうにしながら、離れた場所からこちらを伺っているフェリジットへと視線を向ける。
「惚れた女の為に戦う。例えどんな敵が相手でも。そうやって進む姿がよく……似てたからだよ」
そう言って、笑うシュライグの姿に、どこか自分と近しい物を感じた少年は小さく頷くと、メルクーリエを確かに受け取るのだった。
シュライグと少年との話が終わり、少年がエクレシアの様子を見に来たタイミングでエクレシアが目を覚ました。
しかし、目覚めたばかりでまだ混乱しているらしく、会話もかみ合っていない様な状況であったが、フェリジットが一つずつ丁寧に説明してゆく事で、エクレシアは時間をかけながらも理解してゆくのだった。
そして、鎧から動きやすい服装に着替えたエクレシアは、これからの話をするべく渡された食事を持ちながら少年と共に
「……」
言葉もなくフラフラと歩くエクレシアは、何かの遺跡の跡地と思われる場所の中に入ると、地面の上に座り膝を抱えた。
食事が乗った銀のプレートは地面に置かれ、食事をする意思は見えない。
そんなエクレシアに少年は、どう話しかけたら良いのか分からず、オロオロとしながらもやや離れた場所に座るのだった。
「……」
「……」
会話もないまま、静かな時間が流れてゆく。
しかし、この沈黙が耐えられない少年は、何とか空気を変えようと頭の中で言葉を探し、話しかけようとした……のだが、その言葉が出てくるよりも前に、エクレシアがボソッと言葉を落とした。
「わたし、また……ひとりぼっちになっちゃいました」
「……エクレシア」
「せっかく、家族が出来たと思っていたのに……」
「エクレシア!!」
「……?」
「俺が居る! エクレシアは独りぼっちなんかじゃない!」
少年は思わず立ち上がると、エクレシアの傍に駆け寄って叫んだ。
想いを、ありったけの想いをぶつける。
そんな少年をエクレシアは呆然と見ていたが、やがて少年の想いが届いたのか両目から涙が溢れた。
「……アルバス」
そして、ポツリと一つの言葉を呟く。
「え?」
「貴方の名前。記憶が戻るまでは私が決めても良いって言ってましたよね」
「あ、あぁ!」
「では……っ、
幼い頃から、
少年は……いや、アルバスはエクレシアが伸ばしてきた手を握りしめた。
その胸に燃える炎の様に、熱く、強く。
「……分かった。エクレシア。ありがとう。俺は今日からアルバスだ。この
「ありがとうございます……アルバス。私の運命の人」
涙を零しながらエクレシアはアルバスに抱き着いた。
その勢いでアルバスは地面に押し倒されてしまうが、胸の中で泣いている少女の事を考えれば動く事など出来ず、ただエクレシアを抱きしめながら空を見上げるばかりだった。
二人はそのままいつまでも星空の下、互いの体温を確かめて、一人ではないのだという事を胸に刻み付けていた。
「……どうやら上手くいったみたいね」
「そうだな」
そして、そんなエクレシアとアルバスを見ていたシュライグとフェリジットの二人は安心した様に笑い、シュライグはその場から立ち去るべく歩き始めた。
「良いの?」
「これ以上、覗きを続ける趣味はない」
「まぁ、そうね」
【
それぞれの居場所から捨てられた二人は、これから二人だけで見知らぬ世界へと歩み始める。
この先に何が待っているのか。
それはまだ誰も知らない……。