遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第2章
第8話【スプリガンズ・ウォッチ】


大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダ

 

砂に覆われた広大なその場所は、人が住むのに適さない土地である為、基本的に人は住んでいない。

 

無論それは、砂漠のすぐ近くに実り豊かな森林がある事や、砂漠には巨大なヌシがいるから……等という理由もあるのだが、一番の原因は『彼ら』の存在があるからだろう。

 

《スプリガンズ》

 

退屈を嫌う彼らは、魂が燃える様な楽しくスリルのある生活を求めており、砂漠の上空にあるホールから落ちて来た異世界の物を集めて、それらで強敵と戦うトレジャーハンターの様な生活を送っていた。

 

自由気ままに生きる彼らは、あらゆる場所で暴れまわっているせいか敵も多く、奇襲を受ける事も日常茶飯事だ。

 

故に、突如として彼らの縄張りに現れた者達に対する反応も、慣れたものであった。

 

「ム? ムムム?」

 

「どしたー? ロッキー」

 

ゴルゴンダを進む、《スプリガンズ》たちを乗せた異世界のミサイルとその発射台の様な形状をした居住船【スプリガンズ・シップ エクスブロウラー】で、見張りをしていた黄色と赤色のカラフルな機械の体を持つ【スプリガンズ・ロッキー】は丸っこい鎧の様な姿の【スプリガンズ・ピード】からの呼びかけに言葉ではなく態度で返した。

 

床を蹴り、飛び上がって天井に頭をぶつけてから、その勢いでまた落ちて、床を転がる。

 

「だ、だいだいだい、大事件ダー! 人間が、オレ達の縄張りに入ってきたぞー!」

 

「なっ、なんだッてー!?」

 

ロッキーもピードもぴょんぴょん飛び回りながら、とんでもない事が起こったぞと大騒ぎする。

 

しかし、その何かの空間の中で反響している様な声にも、飛び跳ねる態度にも危機感は無い。

 

「騒がしいぞ! お前たち! なーにを騒いでるんだ!」

 

「あっ! キャプテン! 大変ダゼ! キャプテン!!」

 

「侵入者だ! しかも人間だ!」

 

「なにー!?」

 

《スプリガンズ》たちのリーダー【スプリガンズ・キャプテン サルガス】は、その黄色い巨大な体を震わせながら、全身から白い煙を吹き出す。

 

それは彼が興奮している証であり、その侵入者の人間にワクワクしている証拠でもあった。

 

「それで? どんな奴なんだ! このキャプテーン! サルガスとガチンコ勝負が出来そうな奴か!?」

 

「いんやー、それは多分無理ダゼ。キャプテン。何せ、アイツらまだちっこい」

 

「なんだ。そうなのか。ガッカリだな」

 

「でも妙なんだよな」

 

「妙?」

 

ロッキーの言葉に、サルガスもピードも首を傾げる。

 

「なんか人間二人と一緒に、メルクーリエの反応もあるんだ」

 

「メルクーリエだと? シュライグか?」

 

「いや、シュライグの反応はねぇ。見た事ない奴だ」

 

「ふーむ。それは確かに妙だな」

 

サルガスは腕を組みながらうーん。うーんと唸り、名案が思い付いたと右手を上げ、ポーズを決めながらその提案を投げつけた。

 

「よし! じゃあ捕まえて、聞き出してやろう!」

 

「ま、まさかキャプテン! あの恐ろしいゴーモンをするのか!?」

 

「なにー!? ゴーモンだとー!?」

 

「当然。奴らがシュライグについて話さなければゴーモンをする! あの恐ろしいゴーモンをな」

 

「な、なんてこった!」

 

「とんでもない事になったゼ!」

 

「そうだな!」

 

サルガスはうんうんと頷き、ロッキーとピードも同じ様に頷く。

 

が、何度か頷いた後、サルガスたちはほぼ同時に頷くのを止め、一つの疑問を口にするのだった。

 

「ところで、ゴーモンって何をするんだ?」

 

「えぇー!? キャプテン知らないのかよ!」

 

「しょ、しょうがないだろう! 俺様はキャプテーン! サルガス! パワーは最強だが、頭脳は最強じゃ無いのだ。そういうお前たちは知らないのか? ロッキー、ピード」

 

「知らねぇ」

 

「俺もだ」

 

「ふむ? では、しょうがない。侵入者共を捕まえてからキットに聞くとしよう。そもそも俺様はキットからゴーモンの話を聞いたからな」

 

「うぉぉぉー! やっぱりキットは何でも知ってるんだな!」

 

「キット! キット!」

 

興奮するロッキーとピードにサルガスは何度も頷くと、改めて命令を下すのだった。

 

「いよーし! では侵入者を捕まえるぞ!」

 

「「おー!」」

 

「ふふふ。ではまずこのキャプテーン! サルガスから侵入者の前に……」

 

「いや、キャプテン。もう遅いゼ。もうバンガーの奴が飛び出してる」

 

「なにー!? 俺様の出番がー!」

 

サルガスの叫びを打ち消す様な轟音と共に、エクスブロウラーから一機の巨大な機械鎧が足元より炎を吹き出しながら空へと舞い上がった。

 

その【スプリガンズ・バンガー】は未だ遠くにいる二人の人間……アルバスとエクレシアの元へ真っすぐに進んでゆくのだった。

 

 

 

アルバスと話をすることで現状を受け入れたエクレシアは、フェリジットをはじめとする鉄獣戦線(トライブリゲード)の者達と交流し、本来の落ち着きを取り戻していった。

 

そして、彼らとの交流で教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の言う異教徒や邪教徒は存在せず、誰とでも話せば分かり合えるという想いをその胸に宿すのだった。

 

それからアルバスとエクレシアは、彼らと別れ、森林を抜け、大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダに居るという《スプリガンズ》に会うべく、危険な岩山を慎重に歩いているのだった。

 

「大丈夫か!? エクレシア」

 

「は、はい! 何とか……」

 

「怖かったら手を繋いでも良いぞ」

 

「ありがとうございます。でも、危ないですから、私も頑張ります」

 

朗らかな笑顔でそう話すエクレシアにアルバスは安堵の息を落としながら、慎重に進むエクレシアを見つめる。

 

そして、危ない場所を何とか抜け、先を歩いていたアルバスに追いついたエクレシアに笑いかけるのだった。

 

「えへへ。アルバス君。私、頑張りました」

 

「あぁ。よくやったな」

 

アルバスの腕に抱き着きながら笑うエクレシアは、天真爛漫という言葉がよく似合う物であったが、その姿が全てではないという事をアルバスはよく知っている。

 

鉄獣戦線(トライブリゲード)の者達と別れ、二人きりで過ごしてきた時間の中、夜になるとエクレシアは独りで声を押し殺して泣いていたのだ。

 

姉の名を呼び、寂しいと言っていた。

 

そんなエクレシアにアルバスは何も出来ないまま、空に溢れる星々を見つめて、エクレシアの悲しみが消えてくれる様にと祈ったが、それでエクレシアの嘆きが消えた事はない。

 

故に、アルバスは己の無力を呪い、現状を変える何かを求めていた。

 

「そういえば、《スプリガンズ》というのはどういう方々なのでしょうか」

 

「俺も詳しくは聞いてない。ただ、メルクーリエに付いていけば分かると……「お前らぁー!」っ!」

 

エクレシアと言葉を交わしていたアルバスは不意に聞こえて来た声に、エクレシアを庇いながらその声がした方を睨みつける。

 

そして、翼ではなく、足元から火を吹き出しながら空を飛ぶ奇妙な物体を見るのだった。

 

「なんだ、お前……!」

 

「俺っちはバンガー! 歓迎の挨拶をしに来てやったぜ! ひゃっふー!!」

 

バンガーの反響する様な声が響いた瞬間、バンガーの全身から異世界でミサイルと呼ばれる物が射出され、それがエクレシアとアルバスに迫る。

 

アルバスはそれを危険なモノだと判断し、即座にエクレシアを抱きかかえて、岩山の上を飛ぶように逃げ回るのだった。

 

「アルバス君!」

 

「捕まってろ! エクレシア!」

 

エクレシアはアルバスの体にギュッとしがみつくと、目を閉じて、周囲から聞こえてくる爆発音に体を震わせる。

 

「いえーい! ヒュー! ヒュー!」

 

「こいつ……! いい加減に、しろ!!」

 

アルバスは超人的な身体能力で岩山を蹴ると、ミサイルを撃ち続けているバンガーへ、ミサイルをかわしながら飛び込むとそのまま砂漠が広がる地面に向けて蹴り落とすのだった。

 

そして、アルバス自身もエクレシアを抱えたまま砂漠へと落ちてゆく。

 

「お願い! アルバス君を守って……!」

 

エクレシアは咄嗟に聖痕の力を使おうとしたが、反応はない。

 

驚愕するエクレシアを抱えたままアルバスは竜化の力も使って、何とか砂漠に着地するのだった。

 

しかし、危機はまだ去っていない。

 

何故なら、砂漠に落ちた衝撃で目を回しているバンガーの向こう側に、バンガーと同じ様な姿の者達が現れたからだ。

 

「よく来たなぁ! 人間! 俺たち《スプリガンズ》の縄張りに!」

 

「……お前たちが」

 

「あぁ、そうだ。そしてぇー! 俺様がぁー!! 《スプリガンズ》のリーダァァアアー!! キャプテーン!! サルガスだっ!!」

 

アルバスはエクレシアを地面に降ろし、背に庇いながら現れた者達をジッと見据えるのだった。

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