すっかり別人のハナコは少しふわふわしています
本当に補習授業部の皆と心を通わせる事は出来るのでしょうか?
"曇らせたらその話で晴らす"
"約束だよ"
補習授業部がはじまった
物語では最初の試験よりも範囲が格段に広がり
無謀と思える合格ラインにあがった
それでも無事全員90点以上を叩き出して合格したらしいが
そんなもの、私達が教えた単語、この子達が覚えた単語一つで変わるじゃないか
3倍になった範囲をざっと確認する……私の目の前は真っ暗になった
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そのためには一切の時間の無駄も許されない
数日間を無為に過ごしたらしい事は知っている
それを勉強に宛て、何とかバッファを作れれば……
なので1日目は現在の学力を知るための模擬試験
見栄を張るらしいコハルさんを潰して請わせるための策
ヒフミさんが夜なべして作るらしいが、私が既に作成しておいた
コハルさんの見栄を一刀両断し、さっさと授業に入る
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補習授業部5日目
カツ、カツ、カツ……
黒板が私の焦りを表しているかのような音を立てる
模擬試験を繰り返し行うだけの日数をバッファとして確保
予定試験の問題範囲を逆算した配分からのペースを割り出しているが
進みが明らかに遅い
既にバッファを全て食い尽くされそうとしている
こんなペースでは3回目の日程に一周することすら不可能だろう
「はい、コハルさん。この問題の答えを計算してください」
努めて冷静に、冷静に言葉を紡ぐ
ここは戦場だ、焦りがミスを呼び、一つのミスが瓦解を生む
でも心が変で……ざわざわする
「ヒッ……えっと、えっと……わかりません……」
は?
心が凍りつく音がした
「これで3度目です、教科書の32ページを読みなさい」
「なんで分からないのですか?書いてあるでしょう」
「貴女がたった3回のチャンスで合格出来ないと、私達全員は終わりなんですよ?」
「ごめんなさい……ひっく、ごめん……なさい……」
「貴女の実現したい正義は、この程度なのですか?」
「こんなの無理……私、バカなのに……授業にもついていけてない、んです……」
「やっと正実に入れてもらって……私なんか、が…これから皆の役に立てるって期待して……」
「な、のに……みんな、……のせいで退学……いや……もういや……」
"ハナコ?"
「ツッ……!!」
私は、今、何て言った?
こんな自分勝手な八つ当たりで、仲間を、後輩を傷つけ……
「コハルさん、ごめんなさい……わたし……わたし……」
私は、逃げ出した
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"だいじょうぶ、コハルは馬鹿なんかじゃない"
椅子に座るコハルの頭に手を乗せる
うわ、髪ゴワゴワじゃん!よくこんな数日だけでストレス溜め込めたな
"コハルは誠実で、人の心に寄り添える素敵な女性だ"
"私が保証する、コハルはこのトリニティ学園で、最も素敵と言われる生徒になる"
「私なんかじゃ、無理だよ……」
"そんなことない、私だって毎試験赤点スレスレでね、卒業出来ないって言われるくらいだったんだよ"
「うそ……」
"ほんとう"
"卒業出来ないバカな人に見える?"
「みえない……」
"実はバカにしか分からない、とっておきの勉強法があるんだ"
"だからホントは間に合う"
"でもハナコは最近先生になりたいって張り切っててね"
"勉強は教える方がより難しいねって事を教えたくて、今まで見守っていたんだ"
"コハルはそれ聞いて怒った?"
「うん……絶対合格させないと、許さないから……」
"でも、先生は学ぶのはうまくなったけど教えるのは下手なんだ、だからハナコを使うけど良い?"
「それは……怖い……」
"実はね、ハナコがあんな物言いするのは期待した人だけなんだよ"
"二人目はコハル、意外だった?"
"一人目は私、そりゃあもう知った気になってる大人とか酷いもんだったよ"
「なにそれ……タダの罵倒じゃん……」
"でも本当のハナコは泣き虫の底なしに良い子"
"期待してる有望な新人に対して言っちゃいけない言葉だったね"
"きっと今頃たくさん後悔して、泣きながら謝ってるけど、本人の前じゃないと意味ないじゃんね?"
「うん、ちゃんと私の前で謝ってくれないと許さないから」
"ハナコをコハルの部屋に向かわせるから"
"その言葉を受け止めて"
"もし許してやろうって思えたなら許してあげて"
「許してやろうって思えなかったら?」
"その時は心ゆくまで殴り合うといい、私の好きなアニメシーンの一つだ"
「なにそれ!」
"さ、他のみんなも今日はお開きにしよう"
"この数日間疲れただろう?"
"お風呂に入って、いっぱい食べて、温かいお布団で寝よう"
頭を強めにぐしゃぐしゃって撫でてから解散を宣言する
"焦って早く食べても身体がびっくりして消化吸収できないのと同じで"
"焦って詰め込もうとしても人は覚えられないからね"
大嘘である
そんな方法があるならば、学習塾でも開いて全員東大生だ
それでも希望は必要だ
例えそんなものがなかったとしても先生が先に諦める訳にはいかない
絶望の中を傷つきながら前へ進み、生徒を導く
それが請われてやってきたぼくの意地だ
一つだけ正しいのは3人共ストレスに晒されて限界だということだ
良い仕事には食事・睡眠・心のバランスが欠かせない
それと適度な負荷の仕事を楽しむ心だ
おっと、勉強って言い直そう、本質的には同じものだからね
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さてと、ハナコも冷静になった頃だから迎えにいこう
あの手際の良さ、効率的な説明能力には度肝を抜かれた
あれで新卒のぺーぺーかよ……
私より教える能力に関しては遥かに上だ
それで止め時を見誤って大惨事になってしまったんだがな
はっはっは
正直ロスが大き過ぎてもうハナコなしでは進捗が追いつかん
バカな振りを続けて2回目で60点合格狙うか?
まだ門限はまだまだ先だからね、呼び止めた生徒に聞きハナコの部屋をノックする
"ハナコ、いるね?"
「……居ません」
"居ないなら丁度よかった、ハナコの大好きな所その1"
扉が開いた
「なぐってもいいですか?」
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真っ赤な目をしてるハナコの頭に手をのせ
ゆっくり撫でる
本当は異性の頭を撫でられたくないだろうけど
こういうときくらいはね
"がんばったね"
「大人の世界ではがんばった、じゃなくて成果じゃないですか」
"そうだね、でも成果だけで決めたら駄目な職もあるんだ"
「そんな職業……あるわけない……」
"例えば研究職"
"長期の未来を見据えた研究と、目先の実用化の研究は別物だ"
"目先のものだけを追うだけの会社や国は、すぐ真似されて衰退する"
こんなのはタダの詭弁
教職者は成果が全てだ
それをハナコは黙って聞いてくれた
"ハナコ、君は優秀すぎてつまらない生徒だ"
"それでも私にもまだ教えられそうな事を見つけられて嬉しいんだ"
"長く生きただけの先輩の偉そうな講釈を、ただ聞いて欲しい"
「はい」
"ハナコはね、種まきって知ってる?"
「知識としてなら」
"それが植えられて、芽が出て、ニョキニョキ生えてきて……"
「はい……」
"1日で実ることはない"
「痛感してます……」
"肥料を変えて、水やりを変えて、土を変えて、温度を変えて"
"とてもとても気のながーい話だね"
「とても大変そうです……」
"でもね、じーっと見てると全然進まないのに"
"ちょっと目を離した瞬間にもう実を結んでいるんだ"
「そういうものなのでしょうか?」
"そういうもの"
"間に合うよ、信じて上げて"
「でも……」
"先生が先に諦める訳にはいかない"
"ハナコに教わった、ぼくの一番大切な宝物だ"
「ッ……はい……!」
"それじゃあ、コハルに謝りにいこう"
"もう悪い大人が根回し済だ"
"必ずハナコの話を最後まで聞いてくれる"
「先生、ごめんなさい……」
"ありがとう、でしょ?"
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生徒同士の会話だから私は見てないんだよね
だから描写はないんだ、ごめんね
取り急ぎテストの結果だけ先に共有しておこう
第3次特別学力試験、結果 ----
ハナコ - 100点 (合格)
アズサ - 99点 (合格)
コハル - 100点 (合格)
ヒフミ - 97点 (合格)
合宿所着いた時の空気とか本編より最悪だったからね
ここ最近で一番疲れたから寝かせて欲しい
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先生は寝てしまったので
私からはナギサさんを回収した時のあれを共有させていただきます
みなさん、聞きたいですよね?
「私たちの指揮官からナギサさんへ、メッセージをお伝えしますね。」
「ナギちゃん、こんな事になって本当にごめんなさい……アリウスに利用されて、脅されて……ずっと助けてと言いたかったのに声に出来なかった」
「とのことです」
「……っ!?ま、まさか、ということは……!?」
「後で確認してみてください」
「セイアさんは生きてますから」
「まだ、二人とも引き返せます」
ババババババ!!
「」
ハナコさんは先生が撃たれるのを阻止するために
ティーパーティーを利用する策に出たようです
しきりに「こんなものはただの印象ですし、これが効率的ですから」と口にしているようですが……
私も会社で初めて後輩を持った時、そりゃあ酷いものでした
なまじ説明が上手いねと周りから褒められて天狗になってたんですよね
そして、人は絶望の縁に立たされた時に本音が出ると言います
最終編まで残り僅かと分かっている焦燥感の中戦っています
私の最も好きな章はエデン条約編の2章です
コハルが「無理だよ、私バカだもん」と悲痛な叫びと共に泣き出してから
最後のセリフは無粋だからもう要らないよねって取っ払っちゃう流れズルくないですか?
本作のハナコさんは
本編のハナコさんよりずっと大人びているように見せてきました
でも本編のハナコさんは、皆が酷い点数取った時も、点数上がってきた時も、コハルが絶望して泣いてる時も
優しい笑みで辛抱強く見守ってくれてるんですよね
ラーメン再遊記にも大好きなエピソードがあります
大昔はラーメンで大流行させた人が落ちぶれてて
その人が今までの美味しいだろ?な独りよがりなラーメンではなく、眼の前の一人の客のためだけに出す最高のラーメンを見て
ラーメンハゲが「何十年もサボってたヤツが、いきなり俺の前にショートカットしてきやがる、インチキだ」とぼやくシーンがあります
これが本物のハナコさんだ……
頑張って魅力的な成長を描いてきたつもりでしたが
一瞬でショートカットしてきて前を走りやがる