隙あらば自分語りは嫌われるけどコハルのなら好きだよね?
我慢して聞いてください。
コハルはずっと一人ぼっちだった
物覚えも要領も悪く、運動も射撃も平凡
引っ込み思案で……クラスメイトの楽しそうな会話をずっと横で聞き続ける日々
彼女は恋愛小説に没頭した
私のような冴えない女の子でも、いつかきっと素敵な人が現われて私を幸せにしてくれる……そんな気がして
少女漫画には生々しい性描写が……いや、これ以上は彼女の名誉の為に控えておこう
そんな日々を過ごしていた彼女に
一つ目のターニングポイントが訪れる
とある日、街でショッピングをしている最中
強盗のヘルメット団に占拠され人質の一人にされてしまう
コハルが親から自衛の為と渡された自動小銃も
勝てるはずがないと手放してしまった
ごめんなさい……
ずっと家に居ればこんな事にならなかったのに……
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ズドン!!
お腹に衝撃が走るような音をたて
ヘルメット団員の一人が吹き飛ぶ
混乱に乗じて精鋭部隊が突入する
とてつもない練度だ
時間が止まったと錯覚する程に……
まるで空を翔ける漆黒の集団……
目を見開いたコハルが瞬き一つする頃には
占拠された一室から両足を地に着けるヘルメット団員はいなくなっていた
「お嬢ちゃん方、怪我は無いスか?」
あの時の先輩の優しい声と、強さは今でも忘れられない
そして暫く面倒をみてもらっていたが
後処理も終わり、仲間達と談笑しながら彼女達は去っていく
家に帰って家族に漆黒のカッコいい人達に助けられた事を話した
「コハルが無事で、本当に良かった……」
「その方達はトリニティ総合学園の正義実現委員会かもしれないね」
目を輝かせたコハルの進路はその日のうちに決まった
猛特訓の末に正義実現委員会へ入隊することは叶ったが
そこでも残酷な真実が待ち受けていた
輝けるのは集団から頭抜けた天才だけ
平凡な彼女は平凡なまま
引っ込み思案な性格も変わりはしなかった
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一部の先輩からは性根の良さを評価して可愛がってくれるが
それと正義を実現することは何も相関がない
「悪の反対は正義ではなく善、善の反対が悪」
「正義の反対は別の正義、もしくは慈悲や寛容である」
正義を実現するには、周りを黙らせる力を求められた
戦闘能力も低く、頭脳も平凡以下、引っ込み思案で主体性もない
もしたった一つでも頭抜けた才能があれば
指揮官次第でいくらでも力を発揮させられるのだが……
使えないと評価された彼女は雑用係として燻っていた
彼女の才能の花はまだ芽を出したばかり
既に開花を済ませた生徒との差は果てし無く遠かった
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2つ目のターニングポイントは補習授業部
キヴォトス外の戦闘では自分のちょっとしたミスで仲間が死ぬという
なので軍隊では徹底的な連帯責任を課し厳しい訓練を行う
自分はノルマを達成したから良いではなく、遅れる味方を励まし、支え合い、チームで乗り切る事を強要される
補習授業部ではこれと同じ状況下に置かれた
特に最初の6日間はこの世の地獄だった、今までと違い泣いても喚いても何も解決はしない
コハルは泣いて……泣いて……それでも机へと向かったが精神が限界を迎えた
そして先生の提案で仲間と共に励まし合い、共に支え合い、共に乗り切る事を覚えた
すこしエッチだったから、先生は死刑にしても良いかもしれない
ただそれよりも沢山感謝してる
きっとキヴォトス中を探しても
これほどシビアな環境には中々お目にかかれないだろう
その糧が
コハルの才能の花を成長させ
気がつけば蕾を付けていた
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エデン条約調印式当日
ボロボロのミカ、意識を失ったナギサとハナコ
そして血塗れの先生が担ぎ込まれた
そして数日後……
先生は面会謝絶……
ハナコはすぐに目を醒ましたが、
寝る間も惜しむように忙しそうに動き続けていて顔も見れない
何もする事もなくて怖くてたまらない
ふらっと正義実現委員会へ顔を出した
「あんた……補習授業部は?」
「まぁいいわ、手が足りないから監獄の方でも見に行ってくれる?」
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監獄へいくと暴徒と化したパテル派の生徒達がミカに詰め寄っていた
ミカの顔には痣がついており、既に一悶着あった事を物語っている
「もう、私達が助かる為には、ティーパーティーを乗っ取ってゲヘナと戦争するしかないのよ!」
「裏切り者!パテル派の皆を売って自分だけ助かろうとする薄汚い魔女!」
「せめて私達の為に役に立ってからにしなさい!!」
「やめなさい!」
「どけっ!!」
コハルが掴みかかるが銃床で殴り飛ばされる
コハルの戦闘能力は前と何も変わりはしない
それでも……
「……い、嫌っ!!」
「あなた達は心無い噂話の被害者だけど」
「でも、寄ってたかって、別の被害者を虐めるなんて間違ってる!」
「こんなの絶対にダメ!!」
「聞かないやつだ、それなら……」
「ま、待って!この子、どこかで……」
"そう、コハルは私の大切な生徒だよ"
「せ、先生っ!!」
"お願いだから、まず暴力はやめてほしい"
"そして……本当にすまない……"
"君たちが、トリニティの皆から裏切り者扱いされて"
"虐められていたなんて知らなかったんだ……"
"時間はかかるかもしれない"
"でも必ず疑いは晴らして過ごせるようにする"
"だから……本当の裏切り者にだけはならないで欲しいんだ"
「……っ!!」
"おいで"
先生がパテル派の一人を抱き寄せ、頭を撫で始める
それに呼応するように、あれだけ血気盛んだった彼女達は
一つ、また一つと銃を降ろし、嗚咽を漏らし始める
ひとしきり生徒を慰めた後、先生は彼女達を引き連れ監獄を去っていった
"コハル、さっきはカッコよかったよ"
"君は私の見込んだ通りの生徒だ"
"そしてミカ、また後で会いにくるよ"
"もう少しだけ待ってて"
"コハル、それまでミカのことを頼むね"
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ハナコと仲直りした次の日
先生にまた頭を撫でられた
"ハナコを許してくれてありがとう"
"コハルはとても強い生徒だね"
"あはは、強いにも色んな種類があるんだ"
"コハルは腕力は弱いかも知れないけど、コハルだけの長所はたくさんある"
"いちばん素敵だと思うのは"
"その人が誰かではなく、善悪で態度を決める所だ"
"先生がおじさんになるまで生きてきて、これができる人に会ったことはない"
"コハルだけの強さだ"
"わかるよ、何人の生徒を見てきたと思うんだい?"
"コハルのことなんてお見通しさ"
"人は誰しも、孤独になると辛いし、虐められると辛い、他にもたくさんの辛いことがある"
"どんなに頭が良くても、力が強くても、立場が偉くても変わらない"
"辛そうにしてる人には寄り添ってあげて"
"わかんない?そのうちわかるよ"
"心が今だと教えてくれる"
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今ならわかる
彼女がティーパーティーの偉い人だからといって
それが寄り添わない理由にはならない
私が辛くても泣いて落ち込んでる時も
優しく抱き寄せてくれたハナコを思い出す
私の知ってる寄り添い方はこれだけだから……
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その日、コハルの才能の花は
大きく揺れる一輪の百合として開花した
きっとこれからの彼女は大きな慈悲の心で
沢山の正義と戦う事になるだろう
ハナコの目論見通り
ミカは調印式に連れ出す事が出来て
調印式に参加する事は出来たようですね
まぁヒナでダメなら誰を足そうが同じです
実は何度か仄めかしていますが、本作先生は自己肯定感が低いわけではなく
明確に原作先生と比べて弱い裏設定があります
頼れる生徒を増やして原作通り生き延びれただけでも上出来としました
聖堂がぶっ壊れてみんな気絶、一部のトップクラスのネームドがボロボロの身体を引きずりながら戦う状態ですしね
何も悪くないパテル派は追い詰められ
原作のタイミングでクーデターを起こす事になりました
先生は原作ではミカに寄り添いますが
今作はもっと辛い目に遭っている彼女達に寄り添う事を決意したようです
彼女達は虐められる辛さを知り、救われました
決して人を傷付けるような事はしないでしょう
悪質なマッチポンプのような気がしますが……そこは気にしないことにします
じゃあミカは誰が慰めるの?
私物も燃やされなくなるので、コハルが気に入られるにはもうここしかないとギャグオチとなりました
このSSのエデン条約編、大概酷いな?