暫くはハナコさんが御乱心!?だとか
ハナコさんが増えた!?だとか
トリニティはにわかに騒がしかったが
私の姉が留学から返ってきたという事になり沈静化した
露出癖も留学のせいだから仕方ない
それは前世の退学の為の工作だったでしょ!と叱ったが、全く通用しなかった
やはり私って根っからの痴女なのかな……
なおヨツバは家族を脅して戸籍を作っていた
こんなのでも私……やるべき時は冷徹で容赦ない
ティーパーティーと補習授業部の皆には
彼女がパラレルワールドからやってきた別世界の自分と説明した
コハルちゃんは頭にハテナマークを浮かべていたが
先生が「未来のハナコだよ、補習授業の仲間は全員死んでしまって、復讐の為に戦い続けてたけど、タイムマシンを見付けて過去に戻ってきたんだ」と説明してたら納得した
「それは辛かったわね、お帰りなさい」と、背を伸ばしてヨツバを抱きしめ、頭を優しく撫でる姿は目頭が熱くなってしまった
そしてヨツバのセカンドライフ?が始まった
ヨツバはコハルちゃんの反応が可愛くなくなった!という失礼極まりない言葉と共に弄るのは控えたようだ
ミカさんからの真正面からの愛情を受け止め、角が取れてきたように思う
なので今は主にアズサちゃんを構い倒しているみたい
勉強教えてくれるのは嬉しいが
あること無いこと吹き込むのはやめてほしい
昨日はアズサちゃんから「週末百合エッチしよう」と話し掛けられて吹きだした
----
「ええ、まだ先生に恋や愛という程の感情は持ってはいませんよ」
ヨツバと二人きりになる機会があったので
思い切って先生の事が本当に好きなのか質問してみたが
中々ひどい回答が返ってきた
「そんな相手に大事なファーストキスまで捧げて……」
ヨツバは目を細める
「大事な仲間を失ったり」
「恋愛のチャンスを見送るのに比べれば何でもありませんよ」
「少し……場所を変えましょうか……」
----
──とある高級カフェの個室
トリニティは貴族や富豪が多く集まり生活している
そのため商談に耐えるレベルの機密を誇る飲食店が点在している
私も貴族の娘……ナギサさんの無駄に多いセーフハウスの倍程度には適した店舗が存在する
実際生徒の身としては使う事はそう多くなく
いつもの1店舗へ足を運ぶ
従業員の「ついに増えたか」という心の声に不覚にも吹き出しそうになった
全然別物ですよ、失礼な
秋口に入ったキヴォトスの残暑はまだまだ厳しい
私達はお気に入りのアイスティーを注文する
「ハナコ、結婚して幸せな生活を続ける為の条件はなんだと思いますか?」
「お互いが愛し合い続ける事では?」
「それでは赤点ですよ」
「お互いを尊重して、支え合う意思と行動」
「その不断の努力です」
うぐ、最近先生を考える事が多くて頭の中がメルヘンになってました……
少し考えれば正解など数多くの事例から引っ張ってこれましたね
「愛だの恋だのは、焚べる燃料の一つでしかありません」
「例えそれが政略結婚だったとしても、後からいくらでも育んで幸せになれます」
ノックの音と共に注文したアイスティーがやってきた
「懐かしいですね」と目を細めて、愛しそうにストローに口を付け吸い上げる
私も敢えて避ける意味はない、寸分違わぬ動作でそれを真似る
ひと呼吸置いて、ヨツバは断言する
「だからこそ先生は私達にとって……理想の伴侶です」
それはどうして?
いいえ、訪ねるまでもない、それは私の本質の話だ
──サトリの魔女
その単語が頭をよぎり、寒気がした
「長い長い結婚生活とは」
「お互いが伴侶を信じ続けた尊重の上に成り立つもの」
「ですが、浦和ハナコはどうでしょう?」
「誰も信じず、相手からも信じられない、孤立した人間」
「孤独が怖いから相手の思考を読み、ご機嫌取りを行い、先回りし続ける便利屋」
「そんな存在が恋愛だの結婚だのを語るだなんて烏滸がましい」
「伴侶に今まで同様に隠し通す選択肢もありますが」
「同居し続ければいつかはバレます」
「一度気付かれてしまえばもう終わり」
「疑念が膨らみ、猜疑心に育ち、次第に試し行動が増え」
「別居か離婚、良くてその未来が関の山でしょう」
では、何故先生は別と言えるのでしょうか……
「キヴォトスの外からやってきた人間だからですよ」
「彼からすれば、私達生徒は見目麗しい美少女で、恋愛対象にすらなり得るようですが」
「その認識の本質は空想上の別人種、猫や犬に近い感情です」
「なので厄介な特殊能力を持っていたとしてもそんなものかと素直に受け入れる」
「また先生は良い人生観を育んできているようです」
「例え誰もが羨む能力や財産を持つ恵まれた存在であっても」
「誰にも理解されない苦悩やストレスがある事をよく理解しています」
「あなたがもし辛いと寄り掛かれば、支えてくれるでしょう」
「それに……」
それに……?
「単に難儀な性格や面倒臭い事情を抱えている娘が性癖のようです」
「まるでダメな男に引っかかる女の逆バージョンですね」
「代表例は浦和ハナコ」
「」
「現にハナコ、貴女は彼の事を深くまで信頼していますね」
「こんな理想が服を着て歩いている相手、二人と居ませんよ?」
中々に痛い所を突いてくる
「要するに愛し、愛されるには先生が最も適した相手です」
「まだ好きではない事は、彼を口説かない理由にはなりえません」
だ、だからと言って……
そうだ!前の先生はどうしたのですか?
そ、そんな急に乗り換えるだなんて……ふしだらな女では……?
「前の世界の先生には、一時期恋焦がれた時期もありましたが」
「あの方はキヴォトス生存の為に手段を選ばない最適解の具現化です」
「全ての生徒を平等に愛し」
「泣いてる存在には手を差し伸べ寄り添う反面」
「踏み込む相手にはするりと逃げていく」
「私とは別の意味で人間味の薄い、機械のような存在」
「そうして全生徒から平等に絆を吸い上げ」
「脅威に抗う原動力として火に焚べる」
「前の世界ではミカさんが付き纏っていましたが、全てのアタックを涼しい顔ですり抜けていましたね」
「アレをみて百年の恋が冷めました」
それは、結婚するには嫌かも……
あれ……でも、それでは絆は頭打ちになってしまうのでは?
「その通り」
「察しの良い生徒から順番に一人、また一人と脱落していきました」
「心の片隅から、恋心が漏れてしまわないよう蓋をして」
「露悪的に言えば、キヴォトスの滅亡に抗う効率的な恋愛商法」
「数え切れないループのその先で、いずれ頭打ちになる事でしょう」
「私の見立てでは既に100名を超える生徒が恋する乙女の視線で先生を見てました」
「頭打ちになるまでに、全ての脅威を打ち払えれば良いんですがね」
そう嘆息すると、ヨツバはアイスティーを全て吸い上げた
その先は問わずともわかる……
その延長線上に未来はないと見切りを付けたのだろう
流石に100人の生徒を惚れさせて付かず離れず関係を維持とは
下衆を通り越して、ある種の尊敬の念が芽生える
一度スケジュール配分や生徒を落とす手腕を一度見てみたいものだ
「違いますよ、生徒達を効率的に口説いていた下衆というわけではありません」
「彼はただ真摯に生徒に向き合っていただけ……」
「そこからは絆の保存に関して話さなければなりません」
絆の、保存……?
「例えば先生の一挙手一投足に振り回され」
「もしかして私はチョロいのでは?と自問自答した事はありませんか?」
不意を突かれて表情が固まる
「大丈夫ですよ、見知った全ての生徒が一度は感じるようです」
「私ですら元の世界の先生相手に、補習授業部の集まりで初顔合わせしてから、僅か2週間でベタ惚れです」
「一ヶ月後にはマイクロビキニの上からワイシャツを被って、色仕掛けしました♪」
こいつ無敵か?
初登場時からずっと無敵だったわ
「連邦生徒会長には、時間を遡る能力があります」
発端は連邦生徒会長がタイムリープの能力に目覚めた日まで遡る
キヴォトスが滅亡したその日、遡れる限界が既に詰んでいる時間軸への巻き戻り
足並みの揃わないキヴォトス人をまとめ上げ、脅威に抗う存在が求められた
最初は散々だったらしい
招致した先生がその日にテロを起こしたワカモに撃たれる
救援へ行ったアビドス生から銃口を向けられる
依頼を受けた便利屋68の排除対象となる
しかし単にループを繰り返すだけでは
先生は数多くの生徒に狙われ命を落とす
連邦生徒会長自身が寄り添っても、それはそれで問題となる
「そこで、絆を残す術を編み出した……と?」
「その通りです、最初は疎まれ排斥されていた彼ですが、その献身的な態度に絆される生徒も少なからず居ました」
「記憶を失っても、彼が築き上げた、彼女達と紡いできた絆は変わりません」
「彼女達に護られ勢力を拡大した結果」
「今では初対面であっても態度は軟化し、一言お世辞を言われた程度でときめいてしまう生徒も居るようです」
「先生の情報を仕入れた天雨アコが、わざわざ風紀委員の大軍勢を率いて別学園の学区まで先生確保に向かいますか?」
「トリニティなんて閉鎖的な学園が、初対面の異性をティーパーティーに呼びますか?」
「同じく誰も寄せ付けない孤立した山海経が、いきなり先生を生徒会に通して歓迎する?」
「それは……冷静になって考えればどれも信じがたいですね」
「たったの半年でキヴォトス全土を賭けた大決戦ですからね……」
「帳尻を合わせる為には無理も無いことでしょう」
チョロいのは私だけではなかったのか……
正直な話ホッとした、いや乙女の純情をなんだと思ってるんだという話だが
「……ハナコ、何を安堵してるんですか?」
アズサのような顔をして呆れるんじゃない
「多分ですが、こちらの先生は普通に押せば押し倒せますよ?」
「絶妙な事にガチ恋に発展した生徒はまだ少ないですが、その内溢れかえって来るでしょうね」
え……居ない、ではなく……少ない……?
誰からもそんな素振りは無かったのに
「この数日会った中では、風紀委員のヒナさん、ヒフミちゃん、リオさん、アリウススクワッド4人、Rabbit小隊4人」
「この辺は既にメロメロと思った方が良いでしょう」
「まだ自分の感情に戸惑っているようですが、その内冷静に受け止め、大攻勢が始まります」
多過ぎでは……?
「そして、こちらの先生は前の世界の先生とは違いますね」
「生徒との距離の取り方が下手なようです」
「お見舞いにきた正実のイチカさんにちょっかいかけて口説いて居ましたよ」
「これは故意なのか過失なのか……」
「過失でしょうね、同性っぽいノリで気が楽と溢してましたから」
「ですがあのペースだと、来週にはホテルから出て来ても不思議ではありませんね」
なにそれ……私知らない……
「ですので、時間が無いんです」
「私はこれから先生の元へ行って、お時間頂いて来ちゃいますね♪」
ヨツバは言いたい放題話して
伝票を片手にさっさと立ち去ってしまった
……って、貴女は一文無しのはずでしょ
偽物として生活してる間に生活費を始め色々と抜かれている事は想像に難くない
はぁ……先生の事だけでも頭が痛いのに
引っ掻き回してくれますね
説明会でした
ヨツバさんはトリニティが地図から消えるまで
亡きティーパーティーの代わりに生徒達をまとめ上げて戦っていたという設定にしました
なので全てに於いて原作のクロコとシロコ並の差がありますし、達観しています
なんでそこまで知っているのか?に関しては
アロプラに出会い、情報を丸ごと抜き出しているからです
何にせよ先生は無事ハナコさんと結ばれそうですね
めでたしめでたし