"へ?そうなの?"
「あー……おかしい……!」
私はBBクリームをハナコに渡した話をヨツバにして大笑いされている最中だ
「ふふ……付き合った瞬間破局しないように教えてあげます」
こほんと一つ咳払い
「そもそもですが浦和家はそれなりに権力も財産もあります」
「そんな浦和家の女性はサミュエラの化粧品を常用しています」
あー、サミュエラって紫レアのプレゼントになってたやつか
デパートで見掛ける機会があったが、香水の小瓶一つで信じられない値段でびびったわ
「トリニティでは下位グレード品も含めると半数近い生徒がサミュエラを使っていると思います」
そういえばお嬢様学校だったわ
あのBBクリームもサミュエラだったよな
黄色レアだから安物かと思ってたが、中々な値段してびっくりしたわ
なるほどね
男で例えるとメカニカルの高級キーボードで仕事してる所に
似たようなキーボードをプレゼントされるようなもんか
そりゃ微妙な反応になるよなぁ
そうだとすれば、水着ハナコは安上がりな事で喜んでくれた事になる
一体どうして……?
「私はこのBBクリームには特別な思い出があるんですよ」
ヨツバは無駄に溜め込んでいたBBクリームを一つ手に取り
慣れた手つきで手に塗り始めた
うーん、狙ってやってるスクール水着とかは正直エロく感じないんだが
こういう慣れた手付きでクリーム伸ばしてる所とか
伸びをした時におへそや太腿のホクロが見えるとか
意識外のところが蠱惑的だよなぁ
だから感想に対抗してさり気なく指先で丸を作ってクリームの付いた指を出し入れするんじゃない
"流石にそれはライン越えだからやめなさい"
それにしても、特別な思い出ねぇ……
目の前のヨツバも、原作ハナコとは大分印象が違うけどそこは同じってことか
「原作のハナコと違う……ですか」
「先生に忠告しておきます」
「私達はあなたの知るプログラムに従って動く架空の存在ではありません」
「ゆめゆめ忘れないでくださいね?」
"すまない、決してそんなつもりで接している訳ではないのだが……"
共に泣いて、共に笑い、歩んできた生徒達だ
そんな存在と思った事は今まで一度もない
でも……生徒の趣味趣向や性格はゲームの知識から優先して引っ張って、決めつける傾向があったのだと思う
「まぁ、それはよしとしましょう」
「本来の浦和ハナコは読心術、持って無かったのでしょう?」
「ふふ、その先生の顔は嫌いではありません」
「私の先生も私の性格が少しだけ変わった事に気が付いていたようです」
「目の前の疑問は解決させなければ気が済まない、ビジネスマンを自称する子供っぽい貴方と違って……」
「おおらかで優しく包み込んでくれる理想の大人でしたから何も言いませんでしたが」
あっちの先生をやけに持ち上げるじゃん
まぁこっちは激務に耐えかねてハナコにおんぶ抱っこだから
彼がバケモンで、私が凡人なのは重々承知してるよ
満足したらしいヨツバは私の胸ポケットからハンカチを取り出し
ハンカチで余ったクリームを拭き取り、畳んで胸ポケットにねじ込んでくる
ふふふ……まったく人のちんちんをイライラさせるのがうまいやつだ……
「ふふっ……私の勝ちですね」
何の勝負だよ
「私がどういう経緯で読心術を授かったのか」
「預かり知らぬところではありますが」
……私も黙って続きを促す
「きっと前の周の私が渇望したのですよ……」
「ユメ先輩を失ったホシノさんのように」
「選択を間違えてしまったミカさんのように」
「先生を守り切れなかったヒナさんのように」
「彼女達も確かに最初から腕の立つ生徒だったようですが」
「とある周を境目に、別人かのような強さを発揮するようになったようです」
「……こんな辛い思いをすることにも思い至らず」
「そんな人間が頭の良さを鼻にかけていたなんて、笑い話ですよね」
"それは……"
「話を続けますね」
「それらの生徒は、次周以降は幼少期からの環境を一変させ、性格すらも変えてしまったそうです」
「両親が離婚し、別々に引き取られて育てられた双子のように」
ヨツバの寂しそうな笑顔からふと
一人ぼっちで寂しそうに遊ぶ少女を連想した
「ですから、ちゃんと一人の女の子として受け止めてくださいね」
"肝に銘じておくよ"
「ですから、えっちな事はちゃんと手順踏んで、ムード良くしてくださいね」
ハナコの性格上、性欲が自分の身体に向けられたら顔真っ赤にして逃げると思ってたから
「初夜は結婚式の後!」とか言うと思って我慢の連続になると思ってたのだが
ムード大事にしたら良いんだ……
「それはさておき」
「私がBBクリームを好きになった理由、聞きたいですか?」
なんでそれを胸の上に乗せた?
"いや、別に……?"
水着ハナコになると急にBBクリームが大好物になり
そして目の前の本人が遠い目をしながら嬉しそうにして
ここまでヒントを与えられて分からない方がどうかしてる
「ふぅ、先生は本当に困った方ですね」
「そんなに私の全部を知りたいのですね」
あっ……これ話を聞かないと終わらない奴だ
---
「ヨツバ!授業も受けずに連日シャーレを入り浸って!」
「先生も先生です!楽しそうに話し込んでないで、彼女をトリニティに叩き返してください」
こちらの先生は頼りないダメな大人なので
ハナコも先生も知らない裏話を教わっている
そういう体で設定を膨らませて解説した形となります
ハナコはエロくないと言われると
それはそれで意固地になりそうですよね
ハナコが毎秒要らんことやってるのは
4コマ漫画でレモンを胸に乗せたり
カフェへやってくる度に「ここで水遊びしたら怒られてしまいますね」とか「ふふっ、ちょっとイタズラでもしておきましょうか」とか言ってるからです
でもこっちのハナコさんはあまり要らんことしてないですね
先生の手前格好付けて、自粛しているようです
その分フリーダムなヨツバには嫉妬してそうですね