「私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい」
左手首の傷口に指を突っ込んで肉を抉り出す。痛みなんて気にもならなかった。むしろそれが望みだった。
治りかけの患部が広がって血液が溢れ出す。血が床にこぼれ落ちて、小さな水たまりが出来る。
美月には謝ることすら出来なかった。私が寝ている間に帰ってしまったから。それだけならまだよかった。最悪なことに、私はそれを聞いたときほっとしてしまったのだ。顔を合わせなくて済んだって。
「~~~っ!」
呪詛の言葉を吐きながら頭を抱える。これからどうなるんだろう。美月にはきっと二度と口を利いてもらえない。翼にだってもう愛想を尽かされてしまうかもしれない。
「いやだいやだ」
自分はろくな人間じゃない。何の取り柄もないし、不登校で、まともな人付き合いもない、それに度を超えた臆病者だ。今まで一度も人の役に立ったことがない。要らない人間だ。彼にまで見捨てられたら本当に居場所がなくなってしまう。
時刻は十二時を指していた。今日は終業式だからもうそろそろ帰ってきてしまう。
「……どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう」
帰ってきたらなんて言われるんだろう。出て行って欲しいって言われるのかな、キライって言われるのかな、もう優しくしてくれないのかな。
なにも食べていないせいか視界がグニャグニャと歪んでいるし頭が痛い。胃の中は空っぽなのに吐き出してしまいそうだ。翼はちゃんとご飯を用意してくれた。なのに食べなかったのは私だ。怒っているかな。怒っていたらどうしよう。これも私のせいだ。全部全部全部。
みっともなく涙を流して喚いても時計の針は止まってくれない。だというのにどう申し開きをすればいいか何も思いつかなかった。
結局のところこんな私だから全部ダメになっちゃうんだ。今の私じゃなくて昔の“音羽唯”ならこんなことにはきっとならなかった。
記憶、記憶さえ失わなければ何も問題はなかったのに。小さな頃からずっと翼がいて、昨日みたいなことも起きなかったはずなのに。彼からもらったあのウォークマンだってもっと大事にしていた、きっと壊されたりしなかった。
でも、そんなもしもは無意味だ。過去は変えようがないのだから。どんな人間にだって……
「……違う、私なら、変えられる」
一つだけ、他のどんな人間にも出来なくて、私には出来ることを思い出した。とても単純で絶対的な解決法。
「……記憶を消しちゃえばいいんだ」
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