ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第十幕 勇者は僕の玩具

●ストヴァーニェ・宿屋

 

  扉の前、立ち尽くす勇也

  正面に、エルマとバスティ

 

エルマ「おはようございます、勇也様」

 

  薄く微笑むエルマ

  しかし、勇也の瞳には戸惑いと恐れ

 

??「だ、誰だおめぇら……?どうして、ワシの家にいるんだ……?」

 

バスティ「はぁ?何言ってんのよ。寝ぼけてんの?」

 

  バスティ、立ち上がり一歩踏み出す

  しかし勇也―ではない誰か、身構えて―

 

??「ち、近づくな!盗みか?こ、この家に金目の物などない!」

 

バスティ「ちょっと、いつまでふざけてんのよ」

 

エルマ「……失礼ですが、ここは本当にあなた様のお家ですか?」

 

バスティ「エルマ?」

 

??「当たり前だ!ここはワシの―」

 

  揺れる眼球、辺りを見回す

 

??「ど、どこじゃ、ここ……?」

 

エルマ「お名前、教えていただいてもよろしいですか?」

 

??「ワ、ワシは、ルモウヌじゃ……」

 

エルマ「そうですか。きっと、本当のあなたはこのようなお姿ではないですよね」

 

  エルマ、立ち上がる

  杖をルモウヌに向けて―

 

エルマ「『ゼルーカ』」

 

  杖の先端に鏡面が現れる

  そこに映るのは、紛れもない勇也の姿

  しかし、ルモウヌと名乗る男、狼狽

 

ルモウヌ「だ、誰じゃこれ!?ワシじゃないぞ!」

 

バスティ「ど、どうなってるのよ……?」

 

エルマ「どうやら、勇也様の中身が誰かと入れ替えられてしまったようです」

 

バスティ「中身が入れ替わった?」

 

エルマ「正確に言えば、魂、でしょうか。恐らくこれは、吸魂族の仕業ですね」

 

バスティ「あ、聞いたことあるわ。確か、魂を吸い取って入れ替えるって……」

 

エルマ「この都市に吸魂族がいるのでしょう。そしてその影響を、どうやら勇也様が受けてしまった……」

 

  その時、バンッと扉が開く

  虚ろな表情のガンテ

 

ガンテ「にーちゃん……」

 

ルモウヌ「き、君は……?」

 

ガンテ「ん~、なんかにーちゃんの声、ジジ臭い……」

 

  ヨロヨロとした足取り

  そのままガンテ、ルモウヌに寄りかかる

  イビキをかいて、再び寝始める

 

バスティ「こいつ、朝弱いのね」

 

エルマ「とにかく、街を探しに行きましょう。きっと、勇也様も彷徨われているはずです」

 

バスティ「えぇ、そうね」

 

エルマ「ルモウヌ様、お住まいを教えていただけますか?あなた様と入れ替わられた方が、そこにいるかもしれないのです」

 

ルモウヌ「あ、あぁ。分かった」

 

●ストヴァーニェ・広場

 

  辺りを見回し、走るエルマたち

  ガンテ、エルマにおぶられ未だ眠る

  やがて、何かに気付き立ち止まる

  正面、うずくまる一人の老父の姿

  暗い雰囲気、その背中に悲壮感が漂う

 

エルマ「あれ……」

 

バスティ「間違いなくそうね。陰気なオーラが、魂から滲み出てるわ」

 

  老父、ポンと肩を叩かれる

 

エルマ「勇也様」

 

  振り返ると、エルマたちの姿

 

エルマ「お変わりはございませんか?」

 

勇也「エ、エルマ―」

 

  老父、飛び上がりエルマに抱き着こうとする

 

エルマ「『ザシータ』」

 

勇也「へぶっ」

 

  しかし、防御壁に阻まれる

 

エルマ「こちらが、ルモウヌ様でお間違いないですか?」

 

ルモウヌ「あ、あぁ、ワシじゃ」

 

× × × × ×

 

  ベンチに座る勇也一行

  ガンテ、エルマの膝枕で未だ眠る

  エルマ、勇也とルモウヌに杖を向けて―

 

エルマ「『ザメーナ』」

 

  勇也とルモウヌ、ハッと息をのむ

  二人、自分の体を確認して―

 

ルモウヌ「も、戻った……」

 

勇也「よかった~!」

 

バスティ「ったく、驚いたわよ」

 

ルモウヌ「ワシもこんなこと、村を出てから初めてのことじゃ」

 

エルマ「そうなんですね。ルモウヌ様、ご種族は?」

 

ルモウヌ「ワシは、ドワーフじゃ」

 

  一同、ハッとして―

 

バスティ「え、ドワーフって」

 

勇也「昔、魔族に襲われた村の……」

 

ルモウヌ「知っておったか」

 

  呆然と空を見上げるルモウヌ

  ため息交じりで―

 

ルモウヌ「日常が奪われるのは一瞬じゃな。命からがら、この共存都市まで逃げてきたものの……。もう、ワシの帰る場所はない。仲間も、誰一人として生きておらん……」

 

勇也「いや、生きてるよ」

 

ルモウヌ「なに?」

 

勇也「村も残ってる」

 

ルモウヌ「な、何故そんなこと……」

 

エルマ「以前、ドワーフ族の村にお邪魔することがあったんです。今は、ウレアヌ様が唯一残った村を守護しておられますよ」

 

ルモウヌ「ウレアヌが……」

 

バスティ「そうね。アンタも村に戻った方がいいんじゃない?」

 

勇也「きっと、死ぬほど辛い思いしてるよ、たった一人で……」

 

ルモウヌ「そうか、そうじゃったのか……。なら、こんなところで油売ってる場合じゃないな」

 

  ルモウヌ、立ち上がる

  希望に満ちた表情で―

 

ルモウヌ「ありがとう、旅のものよ。おかげで、長年の胸のつっかえが取れたわい。感謝するぞ」

 

  勇也一行、優しく微笑む

 

× × × × ×

 

  ベンチに腰掛ける勇也一行

  広場には、様々な亜種族の姿

 

勇也「吸魂族って、前にバスティが言ってたやつか」

 

バスティ「いや、それは吸血族よ」

 

エルマ「名前は似ていますが、全く異なる種族です」

 

勇也「うん、異世界ムズイ」

 

エルマ「ですが、どうして勇也様が吸魂族の影響を受けたのか、分かりました」

 

勇也「その心は?」

 

エルマ「吸魂族は、近しい間柄であったり、強い影響を受けた者同士の魂を操作するんです。きっと、ドワーフ族の村での出来事が強く印象に残っていた影響で、ルモウヌ様の魂と入れ替わってしまったのだと思います」

 

  〔回想〕

  ・勇也「戦わなきゃ、誰かが死ぬ。勇者って、そういうことなんだ……」

 

勇也「……そうかも、しれないね」

 

  その時、広場に笑い声が響く

  正面遠方、一人の少年が大笑い

 

勇也「なんか、凄い楽しそうな子供がいる……」

 

エルマ「うふふ、微笑ましいですね」

 

  その少年、笑いながらこちらに近づく

  跳ねるような、軽快なステップ

  同時に、周りの人々が次々に倒れる

 

勇也「いやいやいや、全然微笑ましくない!怖い怖—」

 

??「おにーさん、勇者だよね?」

 

  少年の顔、いつの間にか眼前へ

  見開かれた、真ん丸の瞳

  吸い込まれそうなほど大きく、漆黒

 

勇也「え?」

 

??「ずっと探してたんだ~」

 

  少年、勇也の顔を、体を見る

  ジロジロと、舐め回すような視線

 

??「へぇ~、なんかあんまり強くなさそう」

 

勇也「ぐふっ!」

 

  勇也、少年の言葉にダメージ

 

エルマ「あなたは?」

 

ノーミタ「僕の名前はノーミタ。ただの可愛い少年だよ」

 

勇也「いやいや、こんなの通り魔も真っ青だって」

 

  広場に目をやる勇也

  倒れた人々、ピクリとも動かない

 

ノーミタ「ノーミタ……、何だっけ?何かね、長いのがくっついてて思い出せないんだよね」

 

  その時、ガンテの瞳がカッと開く

  飛び起き、ノーミタに拳を振るう

  しかし避けられ、地面を砕く

 

バスティ「ちょっとガンテ、いきなり何してんのよ!」

 

ガンテ「……」

 

  身構えるガンテ

  その瞳、少年を鋭く睨む

  眠気など、最早感じられない

  ノーミタ、興味深そうに―

 

ノーミタ「つよつよ格闘家二人に、優秀な魔法使いさんが一人……。魂が元に戻ったのも、おねーさんのせいかな?」

 

エルマ「まさか、あなたが吸魂族?」

 

ノーミタ「ふふっ、にしても楽しかったな~。おもちゃがワチャワチャしてるの」

 

勇也「お、おもちゃ?俺が?」

 

ノーミタ「うん、おもちゃ。この世界は、みんな僕のおもちゃ。君たちはみんな、僕の遊び道具。それで僕が遊ぶのは、当然の権利だよね?」

 

バスティ「アンタ、何言ってんの……?」

 

ノーミタ「勇者のおにーさんが慌ててるの見るの、楽しかったよ。でも、もっと大勢で一緒に遊んだほうが、もっと楽しいよね……?」

 

勇也「え?」

 

  ノーミタ、無邪気な笑顔

  両手をバッと広げて―

 

ノーミタ「今日の夕方、僕はこの都市に住んでいる人たちの魂で遊ぶ!名付けて、『霊魂総入れ替え』だよ!」

 

  エルマ、それを受けて静かに―

 

エルマ「理解できません、どうしてそんなこと。亜種族同士、同じ下界に住んでいる者同士、互いに危害を加えるべきではありません。同じ下賤種ならばお分かりでしょう?高貴種に、理不尽に扱われる気持ちが」

 

ノーミタ「……まぁ、そうなんだけどね。でも、僕にも一応役割があるんだよ」

 

エルマ「役割?」

 

  ノーミタ、勇也をギロッと見て―

 

ノーミタ「そう、勇者を足止めするって役割」

 

勇也「……!」

 

ノーミタ「魔王様に辿り着くまでの時間稼ぎをしなくちゃいけないんだ」

 

バスティ「魔王って……」

 

エルマ「まさか、あなた……!」

 

ノーミタ「あぁ、思い出した……。僕はノーミタ。魔族冥衆『リーシェティム』の一人だよ」

 

バスティ「魔族……!」

 

  咄嗟に構えるエルマとバスティ

 

ノーミタ「今は何もしないよ。では勇者様、また夕方。楽しみにしてるよ」

 

  ノーミタ、フワッと消える

  まるで、魂が尽きるよう

  辺りの人々、起き上がる

 

勇也「魔族、冥衆……」

 

  〔回想〕

  ・エルマ「まぁその前に、魔王直属の亜種族たちが、勇也様を葬らんと本気で襲ってきますけどね」

 

勇也「本当に来た……。嘘じゃなかった……」

 

ガンテ「あの雰囲気、あの気配……、明らかにそこらの種族とは違ったぜ」

 

勇也「と、とにかく今は、あの子の計画を阻止しないと……」

 

バスティ「霊魂総入れ替え……。この都市の亜種族全員の魂を入れ替えるなんて、どう止めればいいのよ……」

 

  勇也、ハッと目を見開き―

 

勇也「そう言えばエルマ、さっき―」

 

  〔回想〕

  ・エルマ「吸魂族は、近しい間柄であったり、強い影響を受けた者同士の魂を操作するんです」

 

勇也「だったら、その影響を受けない……、というか、受けたことを忘れられればいいんじゃない?」

 

ガンテ「一時的な記憶操作……。できるか、エルマ?」

 

エルマ「可能です。それを元に戻すことも、問題ありません」

 

ガンテ「じゃあ後は、あのノーミタって野郎をぶっ殺すだけだな」

 

勇也「それは、俺がやるよ」

 

バスティ「アンタ一人で平気?」

 

勇也「大丈夫。二人分の証石もあるし。それに、記憶が消えたらみんな混乱するかもしれない。もしかしたら、この都市から抜け出そうとする人も出てくるかも。そうなった時に混乱を収めるために、出来るだけここに多くいて欲しいんだ。だから、吸魂族の討伐は、俺に任せて」

 

バスティ「そういうことなら、早くやっちゃいましょう、エルマ」

 

エルマ「そうですね」

 

  エルマ、杖を天に掲げて―

 

エルマ「『ステラパーミィ』!」

 

  魔法の杖、光り輝く

  人々、辺りをキョロキョロ

  怪訝な表情を浮かべている

 

エルマ「一時的に、人々の記憶をすべて削除しました」

 

勇也「えっと、ノーミタはどこに来るかな……」

 

  エルマ、遠方を指さす

  その先、一際高い建物

 

エルマ「この都市の中心、一際高い建造物があります。都市中の人々を見下ろすなら、恐らくそこかと」

 

勇也「分かった!」

 

  ダッと走り出す勇也

 

バスティ「さぁ、アタシたちもやるべきことをやりましょう!」

 

ガンテ「あぁ!」

 

  走る勇也の後ろ姿

  それを見て、エルマ、静かに―

 

エルマ「勇也様、どうかご無事で……」

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