ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~ 作:であであ
●ストヴァーニェ・北門
一人、佇むエルマ
その正面、大勢の人々
門を、都市を出ようと詰め寄る
混乱、喧騒、怒号が混濁
エルマ、杖を天に掲げ―
エルマ「『コーピヤ』」
エルマの両隣、二人の複製体が現れる
毅然とした声、表情を崩さず―
エルマ「申し訳ありませんが……、ここを通すわけにはいきません……!」
●ストヴァーニェ・南門
詰め寄ってくる群衆
バスティとガンテ、たじろぐ
バスティ「ったく、どんだけいんのよ……!」
ガンテ「これでも、全員じゃねぇからなぁ……!」
バスティ「エルマは一人で平気なわけ?」
ガンテ「エルマなら、この都市の一人ひとりをいなせるだけの複製体が作れるぜ」
バスティ「だったら、やりなさいよ、アイツ!」
ガンテ「魔力の消耗が激しいんだとよ!」
バスティ、その時なにかに気付く
バスティ「あ、ガンテ、足元!」
ガンテ「あぁ!?」
矮人族、人々の間を縫うように走る
ガンテ、慌てて彼らに立ち塞がり―
ガンテ「おっと、行ってもらっちゃ困るぜ。あんたら、きっと後悔することになる」
しかし、矮人族、怯えて―
矮人1「きょ、巨人だーっ!」
矮人2「踏み潰されるーっ!」
ガンテ、グッと歯を食いしばって―
ガンテ「……ぜ、全部終わったら村に戻っていいからさ。だから、今は勘弁してくれよ」
その時、バスティの短い悲鳴
バスティ「きゃっ!」
ガンテ「バスティ!」
ガンテ、その場で跳躍
ガンテ「『イゴーリッツ』!」
無数の槍を召喚
地面に突き立て、群衆の道を塞ぐ
バスティ、人ごみに揉まれ身動きできない
それを、ガンテが引き上げる
お姫様抱っこ、高く跳躍する
キメ顔のガンテ、輝かしい
それに、思わず頬を赤らめるバスティ
キラキラと煌めく、二人だけの世界
まるで、ディ○ニー映画の―
バスティ「早く下しなさいよーっ!」
ガンテ「ぶぶぉあっ!」
バスティの拳、ガンテの頬に炸裂
立ち上がり、パンパンと体を叩きながら―
バスティ「ったく、いつまで触ってんのよ、このスケベ!」
ガンテ「もう二度と助けてやんねぇ、この女……」
その時、脳内にエルマの声が響く
魔法を用いた、神経を通じての会話だ
エルマ(声)「二人とも、聞こえますか?」
ガンテ「あぁ。そっちは大丈夫か?」
エルマ(声)「えぇ、何とか。それより、そろそろ時間になりますね……」
ガンテ、空を見上げる
橙色の太陽、地平線に差し掛かる
空の夕焼けが、心なしか禍々しい
直後、見上げる空に何かが浮かぶ
大量の、人々の魂だ
ガンテ「おい、あれ……!」
バスティ「そんな……!確かに、記憶は消したわよね……!?」
魂、グルグルと渦を巻き入り混じる
空を見上げるエルマ、眉を顰める
エルマ「勇也様……!」
●ストヴァーニェ・一際高い建造物・屋上
ノーミタ、悠然と都市を見下ろす
その視線の先、浮かぶ大量の魂
ノーミタの背後、勇也の姿
信じられないというように瞠目
勇也「な、何で……!?」
ノーミタ「記憶を消すなんて、随分思い切ったことをするね。でも、無駄だよ。強い想いが……、信念が刻まれる本当の場所を、君たちは履き違えている」
勇也「え?」
ノーミタ、そっと胸に手を添えて―
ノーミタ「魂だよ。魂にこそ、想いは刻み込まれる。だから君たちが、いくら記憶を、脳を操作したところで、僕は魂を弄り放題ってことだよ」
無邪気に口角を上げるノーミタ
ノーミタ「あはははっ、楽しいね!」
勇也「それは、君だけだよ……」
勇也、クエストドライバーを装着
台座を立て、待機音が響く
ノーミタ「いいよ、戦うのも楽しいよね。相手になってあげる」
勇也「変身……!」
台座の剣を引き抜く
勇者の鎧、勇也の体に装着
仮面ライダーヴァラー、現る
静かに剣を抜き、構える
だがその手は、カタカタと震えている
ヴァラー、深く深呼吸
剣を鞘にしまい、拳を構える
ノーミタ「ふふっ、優しいね、勇者様」
ヴァラー、飛び出し拳を振るう
それを小賢しく避けるノーミタ
ノーミタ「そんなんだから、弱いんじゃない?」
ノーミタ、ヴァラーの拳を軽々と受け止める
そのまま、地面に叩きつける
ヴァラー「がっ……!」
ノーミタ「魂はね、入れ替えて遊ぶだけじゃないんだ。こんなことも、できるんだよ……?」
ノーミタ、ヴァラーの胸に手を添える
そこから、白い何かがフワッと飛び出す
ノーミタ、それを両手で優しく包み―
ノーミタ「見せてよ。君の魂は、どんな想いを、記憶を、刻んできたのかな?」
地面に倒れ伏すヴァラー
体に力が入らない
意識も朦朧とする
ヴァラーM「ダメだ……、もう、意識が……」
〔回想〕
・勇也「それに、記憶が消えたらみんな混乱するかもしれない。もしかしたら、この都市から抜け出そうとする人も出てくるかも。そうなった時に混乱を収めるために、出来るだけここに多くいて欲しいんだ」
ヴァラー「あんな、偉そうにみんなに指示して……。結局、このザマか……。俺は、何も成長してないんだな……」
◆小学校・教室(五年前・午後)《回想》
生徒たちのグループが七個ほど
机に集まり、何やら話している
黒板には、“修学旅行”の文字
勇也、意気揚々と地図を指さし―
勇也「ここと、ここと、ここ行こう!」
女子2「え~、私、日光東照宮見た~い」
勇也「いやいや、そんなとこ行っても楽しくないよ!それより、今俺が言ったプランで!あと、このお店でお茶もしよう!はい、決定ね!」
勇也の班、一番に行動計画票を提出
グループメンバー、不服そうな顔
しかし勇也、それに気づかず得意満面
勇也M「昨日、ちゃんと下調べしてきたんだ!よかったね、俺と同じグループで。これは、最高の修学旅行になるぞ~!」
◆新江ノ島水族館前(修学旅行当日・午後)《回想》
入口に群衆
とても入れそうにない
男子1「うわ~、絶対無理じゃん」
女子2「だからこの時間、やめとけばよかったのに~」
勇也「じ、じゃあ―」
勇也、懐から地図を取り出して―
勇也「先に国会議事堂に行こう!その後に、また来ればいいよ!バスに乗れば、間に合うと思う!」
グループメンバー、物言いたげな表情
◆国会議事堂前(同日・午後)《回想》
入り口、警備員が立ちはだかる
警備員「ごめんね~。今、入れないんだよね~」
勇也「え……?」
警備員「学校の方に、予め連絡入れたと思うんだけど~」
勇也M「き、聞いてなかった……」
× × × × ×
トボトボと、道を歩く勇也たち
女子1「先生言ってたじゃん。聞いてなかったの?」
勇也「……だったら、行き先決める時に言ってくれればよかったのに」
男子2「だって、儚田がすごいゴリ押ししてくるから、秘密の抜け穴でもあるのかと思って」
勇也「ないよそんなの。アニメの見過ぎ」
女子2「で、次どうするの?」
勇也「え、俺?」
女子1「そうでしょ。だって今日の予定、全部儚田くんが決めたんだから」
勇也「あ~……」
勇也、懐から地図を出して―
勇也「じゃあ、予定よりちょっと早いけど、お茶しに行こう!ここからだから~……、あっちのバスだ!」
◆カフェ前(同日・午後)《回想》
入り口扉を見上げる勇也
茫然自失とした表情
扉には、臨時休業の看板
女子1「ねぇ、どうするの?もうあんまり時間ないよ」
勇也「ま、まだ、他にお茶が出来る場所は~……」
男子2「もうお茶はいいよ」
男子1「うん、別にお茶したくない」
女子2「それより、日光東照宮行こうよ~」
勇也「いや、それよりもう一回水族館行ってみよう……!」
◆新江ノ島水族館前(同日・午後)《回想》
入り口には、未だ群衆
男子2「いや、だから無理だって」
勇也「えっと、次は次は~……!」
あたふたとする勇也
その傍ら、女子の無情な一言
女子1「あ、もう自由時間終わりだ」
勇也「……え?」
◆帰りのバス・車内(同日・夕方)《回想》
勇也、俯き暗い表情
前から、自分の陰口が聞こえる
女子2「結局、今日の自由時間なんも回れなかったんだよ~」
女子3「え、マジで?」
女子1「ね~、ほんと最悪~」
男子2「儚田、三回も乗るバス間違えんだもん」
男子1「中学生になったら、儚田と同じグループやめようぜ」
ハッと息をのむ勇也
勇也M「俺は、みんなに楽しんでほしかっただけなのに……」
●ストヴァーニェ・一際高い建造物・屋上
ヴァラーM「やっと、俺を見てくれる人が、できたのに……」
〔回想〕
・エルマ、バスティ、ガンテの姿
ヴァラー「嫌われたく、ない……」
ノーミタ「惨めだね、勇者様。こんな悲しい魂、存在しない方が良いよ。僕が、食べてあげるね……」
ノーミタ、口を開く
愛おしそうに、魂を顔に近づけて―
エルマ「『ヴズリーブ』!」
ノーミタの足元、魔法陣が描かれる
気づき、すぐさま飛び退ける
直後、魔法陣、爆発を起こす
魂、ヴァラーの中へ
意識を取り戻し、立ち上がるヴァラー
エルマたち、勇也の元に駆けつけて―
エルマ「大丈夫ですか、勇也様!?」
ヴァラー「みんな、どうして……?」
バスティ「魂の入れ替えが起こったから、何かあったんじゃないかと思って」
ヴァラー「都市の人は?」
エルマ「皆さま、お眠りになられているので、ご心配なく」
ヴァラー「そっか……、ごめん」
エルマ「謝る必要はございません。さぁ、皆で力を合わせて―」
ヴァラー「いや、俺がやる」
バスティ「勇也?」
ヴァラー「俺が言い出したことだ。俺が、ちゃんとケジメをつけないと。今の俺は、勇者なんだから……」
拳を構えるヴァラー
微かに足が震えている
それを見て、エルマ、溜息をつき―
エルマ「全て、お一人でなさるおつもりですか?」
ヴァラー「え……?」
エルマ「勇者だから、という責任感に囚われて、全て自分でなんとかしなければと、お思いですか?」
ヴァラー「それは……」
エルマ「お思いですよね。だから、巨人族の街にも、自ら名乗りを上げた。私たちには、来させずに」
バスティ「あ、そういうことだったの?」
ヴァラー「ち、ちょっと、エルマ……!」
バスティ「なに、水臭いことやってんのよ!アンタ、そんな責任感強いタイプじゃなかったでしょ!」
ガンテ「にーちゃん、最初の頃、スライム相手に椅子の裏に隠れてたんだって?」
ヴァラー「返す言葉もございません……」
エルマ「確かに、貴方様は勇者です。どんな状況でも、どんな敵とでも戦い、勝ち抜いて、この世界の人々を守る使命がある……。ですがそれは、勇也様だけに課されたものではありません。貴方様に仕え、共に旅をする私たちも、同じなのです」
ヴァラー「エルマ……」
エルマ「もっと、私たちを頼ってください。全て、一人で抱え込むには大き過ぎることなのです。かつての勇者様方も、きっとそうだったはず……。そのためのパーティですから、ね?」
天使のように微笑むエルマ
対してノーミタ、興味なさげに足をブラブラ
ノーミタ「ねぇ、もう終わった?僕のおもちゃが、僕を差し置いて勝手なことしないでよ」
ノーミタ、丸い目を鋭く細める
低く、唸るような声音で―
ノーミタ「そういうの、一番腹立つんだよね」
その気迫に、思わず身構えるヴァラー
しかしガンテ、余裕そうに一歩前に出て―
ガンテ「はっ、誰がおもちゃだ、このクソガキ。捻り潰すぞ……?」
バスティ、前に出ながら―
バスティ「クソガキ仲間が何言ってんのよ」
ガンテ「何だと!?」
エルマ、ヴァラーの前に出て―
エルマ「勇也様、盟友の証石をお貸しいただけますか?」
ヴァラー「え?う、うん」
ヴァラー、エルマとガンテに証石を渡す
エルマ「これはまだ、お伝えしておりませんでしたね……。証石に隠された、特別な力のこと……」
ヴァラー「特別な、力……?」
エルマ、目を閉じ証石に祈る
エルマ「勇者は、決して孤独ではない……。その力を、パーティメンバーに託すことができる」
二人の証石、バックルに変形
エルマ「つまり私たちも、仮面ライダーになれる!」
二人、バックルを手首のスロットに装填
エルマ「行きますよ、ガンテ」
ガンテ「かっこよく決めるぜぇ?せ~のっ―」
エルマ/ガンテ「変身!」
エルマに魔法使いの鎧
ガンテに巨人の鎧が装着
ヴァラー、その光景に唖然として―
ヴァラー「二人とも、変身した……!」
ライダーが立ち並ぶ、圧巻の光景
仮面ライダーヒール
仮面ライダーバトル
そして、いつも通りのバスティ
ヴァラー「あれ、バスティさん?」
バスティ「悪かったわね、まだ信用できてなくて!」
ノーミタ、パチパチと気の抜けた拍手
ノーミタ「わ~、すご~い!これって、遊べるおもちゃが増えたってことだよね?」
バトル「あぁ、そうだな。んでテメェは今から、そのおもちゃに遊ばれんだよっ!」
ノーミタ「ふふっ、それはいいね。じゃあ、僕を楽しませてよ!」
ノーミタ、正面に手を突き出して―
ノーミタ「『ドゥシャータ』!」
ノーミタの周囲に現れる魂
弾丸のように射出される
ヒール「『レグプルーヤ』!」
ヒール、杖から光弾を射出
互いに相殺、激しくぶつかり合う
愉快そうに喉を鳴らすノーミタ
そこに、大きな影が落ちる
ノーミタ「……!」
バトル「おらぁっ!」
バトル、ノーミタに拳を叩きこむ
ノーミタ、それを両腕で防御
重い衝撃、火花が散る
バスティ「押し込みなさい!」
バトル「『バーストヴィン・モーロット』!」
バトルの拳に力が集約
ノーミタの防御を破壊する
響く轟音、建物が揺れる
地面に叩きつけられたノーミタ
腕は潰れ、へし曲がっている
苦しそうに吐血、力ない呼吸
ノーミタ「あ~ぁ……」
ヴァラー、ノーミタの元へ
剣を構える
しかし、やはりカタカタと手が震える
ヴァラー、苦しそうに目を逸らして―
ヴァラー「ごめん、ガンテ。お願い……」
バトル、それにフッと微笑み―
バトル「あぁ、今はそれでいいよ。にーちゃん」
バトル、ノーミタの元へ
哀れみを含んだ目で見下ろす
ノーミタ「もっと、遊びたかったなぁ……」
バトル「……」
ノーミタ「気を付けてね。リーシェティムのみんなが、君たちをつけ狙ってる。これからは、もっと酷い目に合うかもね……」
ガンテ「そうかよ」
バトル、拳を振り上げる
ノーミタ、スッと目を閉じる
× × × × ×
瓦礫に塗れた、灰色の荒廃した土地
その中、一人彷徨い歩くノーミタ
肌は煤汚れ、服は着ていないも同然
そこに、一人の人物がやってくる
とある、薄暗い謎の場所
正面の円卓、謎の人物たちが座る
ノーミタ、目を丸く見開き―
ノーミタ「勇、者……?」
ゆっくりと、俯く
僅かに、口角を上げて―
ノーミタ「まだ、遊べるんだ……」
× × × × ×
拳を振り上げるバトル
バトル「そうかよ。楽しみにしてるぜっ」
振り下ろされる拳
ノーミタの小さな体を叩き潰す
鈍い音が響き、血飛沫が散る
その光景に、目を逸らしたままのヴァラー
微かに震える肩、呼吸は乱れている
●ストヴァーニェ・広場
ベンチに腰掛ける勇也
肩をすくめ、俯いている
呆然と、地面の一点を見つめている
エルマ「勇也様」
ふと、顔を上げる
エルマ、勇也の隣に腰かける
エルマ「ご気分は、いかがですか?」
勇也「……うん、大分落ち着いたよ」
エルマ「そうですか」
静かに応えるエルマ
遠方、バスティとガンテがはしゃいでいる
勇也、力なく溜め息をついて―
勇也「やっぱ、人型はキツイな~。しかも、子供」
エルマ「確かに、これまではスライムと翼竜と……。あれ、巨人はどうだったのですか?」
勇也「易々と壁突き破ってくるのは、もう化け物の範疇でしょ」
エルマ「うふふふ」
勇也「……そん時はさ、また頼っても良いかな?みんなのこと」
意外そうに眉を上げるエルマ
優しく目を細めて―
エルマ「はい、もちろんです」
勇也、その言葉に微笑み返す
エルマ「ですが、今後どのような敵が現れるか分かりません。そのためにも、勇也様には早々に慣れていただかないと。まずは、小動物あたりから始めますか?」
勇也「ち、畜い……。けど、頑張ります……」
「ふふっ」と柔らかく笑うエルマ
ベンチから立ち上がり―
エルマ「では、行きましょうか。次の、勇也様を支えてくださる仲間を探しに」
勇也「……うん!」
立ち上がる勇也
エルマと共に、バスティたちの元へ
その姿を、夕陽が赤紫に照らす
まもなく、日が沈みそうだ