ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~ 作:であであ
●リーシェティム・サバト
薄暗い、灰色の空間
無音の音が聞こえるほど静か
中央に円卓、座る謎の人物たち
薄闇のせいで、胸から上が見えない
??「ノーミタがやられた」
??「ま、いいんじゃない。あんな子供、端から期待してないよ」
??「それより、次は誰が行く?」
??「アーシが行くよ」
??「キュバラー……。勇者を、魔王様に近づけるな」
キュバラー「善処はしようかね」
●植人族の森
木々の生い茂る広大な森
木漏れ日が暖かく美しい
ヴァラー、スライムを叩き切る
変身解除、一息つく
エルマ「スライムは、難なく倒せるようになりましたね」
勇也「流石に、序盤の雑魚敵で燻ってる俺じゃないよ。魔族も、この前倒したしね」
ガンテ「トドメさしたのは俺だけどな!」
エルマ、「ふむ」と顎に手を当てる
バスティ、それに首をかしげて―
バスティ「どうしたのよ?」
エルマ「……リーシェティム。まさか、そんな組織が構成されていたとは」
ガンテ「魔王の手先……。あいつ、死に際に気味悪いこと言ってたぜ」
〔回想〕
・ノーミタ「気を付けてね。リーシェティムのみんなが、君たちをつけ狙ってる。これからは、もっと酷い目に合うかもね……」
バスティ「そんなこと、言われなくても分かってることじゃない。どんなやつが来ても、迎え撃つだけよ!」
エルマ「そうですね。私たちも、仮面ライダーの力を有効に活用しましょう。ヴァラーの秘める力には、及ばないかもしれませんが」
ガンテ「ってかさぁ、これ全然レベル上がんねぇよ。あの魂野郎潰しても、レベル1しか上がんなかったし。にーちゃん、この短い間によくレベル10まで上げたな」
勇也「まぁ、俺は元々レベル5から始まったからね」
バスティ「あぁ、そう言えばそうだったわね」
ガンテ「はぁ~、ズリィだろ~」
エルマ「確かに、どうしてヴァラーだけはレベル5からだったのでしょう……?」
勇也、腰に手を当て胸を張り―
勇也「やっぱ俺に、勇者としての素質があったってことかな、あははははっ!」
バスティ「弱すぎて、ドライバーがハンデくれたのよ」
勇也「ぐっ、何を~?そんなこと言ってないで、早く盟友の証石をくれませんかねぇ、バスティさん?」
バスティ「す~ぐそうやって調子に乗るアンタみたいなやつ、危なっかしくてあげらんないわよ!」
エルマ「まぁまぁ、お二人とも落ち着いて」
ガンテ、興味ありげに―
ガンテ「なぁ、勇者の初期装備って何なんだ?」
勇也「あ~、変身できないから分かんないけど……」
エルマ「確か、レベル1は『仮面ライダーヴァル ウッデンソード』。端的に言えば、木の枝ですね☆」
バスティ「……よかったわね、レベル5からで」
勇也「ゼ○ダのブレ○イじゃん……」
その時、遠方から話し声
勇也「ん、何だ?」
エルマ「どなたかいらっしゃるようですね」
ガンテ「まさか、リーシェティム……!?」
勇也「いやいや~」
バスティ「あ、あれじゃない?」
バスティの視線の先、一人の男性
木に向かい、笑顔で口を開く
??「おはよう、今日も綺麗だね。愛してるよ」
木に口づけをする男性
その隣の木に屈み込み―
??「やぁ、いい子にしていたかい?今日は何をして遊ぼうか?」
愛おしそうに目を細める男性
勇也、それを見て顔を歪める
勇也「え、あの人平気……?」
バスティ「一発殴ったら正気に戻るかしら……」
??「何か言ったかい?」
突然、背後から声、男性だ
茶色の肌は、木の幹をいくつも束ねたよう
それでいて、人の形を保っている
驚き、飛び跳ねる勇也たち
ガンテ「こいつ、いつの間に背後に……!」
勇也「い、いえ、いい森だな~、なんて」
男性、勇也を繁々と見つめる
やがて、ふと目を見開いて―
??「もしかして、あなたが此度の勇者様ですか?」
勇也「え?」
エルマ「はい、私たちは此度の勇者一行です」
??「これはこれは、大変失礼いたしました」
男性、丁寧にお辞儀をする
新緑色の葉の髪、涼し気に鳴る
エントン「私は、世界樹の『ガイア』、植人族のエントンと申します」
勇也「く、食われる……!」
バスティ「違うでしょ」
エントン「どうか勇者様に、この森をお救いいただきたいのです」
●植人族の森・エントンのコテージ
木造の小さなコテージ
資材の焦げ茶が鮮やかに光沢する
椅子に腰かける勇也とエルマ
その背後に立つバスティとガンテ
対面には、エントンが座る
勇也、訝し気に部屋を見回して―
勇也M「これは、共食い的なのには引っかからないのだろうか……」
エルマ「世界樹のガイア……。まさか、そのような存在がいたとは……」
エントン「えぇ、今のところガイアは私一人だけです。以来、この森で世界樹を守護しています」
エルマ「なるほど……。では、現在の魔王の動向はどのようなものか、お分かりになりますか?」
エントン「魔王の動向、ですか?」
エルマ「はい、魔王は世界樹の力を狙っています。気配や、悪しき力などは感じられますか?」
直後、沈黙が落ちる
微かに眉を顰めるエルマ
エントン「いいえ、今のところ感じられません」
エルマ「……そうですか」
エントン「きっとまだ、その時ではないのでしょう。ですが、魔王の手がいつ世界樹に触れてもおかしくない状況には違いありません」
勇也「それまでに仲間を集めて、力を付ける、か……」
バスティ「それで、さっき言ってた『森を救う』って何なのよ?」
エントン、躊躇いがちに―
エントン「実は、私の住処であるこの森が、獣族に襲われているのです」
バスティ「獣族……!?」
〔回想〕
・ガンテ「おめぇが人のこと言えるか!獣人ってか、ただの獣じゃねぇか!」
・バスティ「失礼ね!獣族とアタシとじゃ似ても似つかないわよ!」
エントン「一月ほど前のことでした。突如、獣族がこの森を襲撃してきたのです。幸い、その時は私一人で対処できたのですが、やつらは襲撃の度に数を増やし、森を荒らしていくのです。今では、森の一部が荒れ果ててしまい……。私一人の力では足りません、故に勇者様のお力をお借りして、この森を守護したいのです」
勇也「なるほど……」
考え込む勇也
その隣で、エルマが短く笑う
勇也「ど、どした?」
エルマ「いえ。こうして頼みごとをされるのも、勇者として少しは名を知られてきた証拠かな、と思いまして」
勇也「……そうだね、やろうか。緊急クエストだ」
エントン「感謝します、勇者様」
その時、動物の遠吠え
広く森に反響する
エントン、目を細め―
エントン「来た……!」
ゴクリ、息をのむ勇也
●植人族の森
森の中に開けた場所
そこに集まる、獣族の群れ
勇也「うわ~……。最初に見た猫ちゃんが恋しい~……」
バスティ「獣族に小細工はいらないわ。正面突破で掃討、これだけよ」
ガンテ「さっすが獣同士、分かってるぅ」
バスティ「うるさいわよ」
勇也「え、正面突破って走ってくの?俺、真っ先に美味しくいかれる気しかしないんだけど……」
バスティ「そこは勇者なんだから、気合とガッツでどうにかしなさいよ」
勇也「結局メンタル頼り!?」
エルマ「では、これを使いましょう」
エルマ、杖を構えて―
エルマ「『ゲネラーツ』」
杖が光り、魔力を放出
複雑に編み込まれ、生き物を形作る
やがて、大きな龍が四体現れる
勇也「これって、龍車の……」
エルマ「はい、ストヴァーニェで見たものを記憶し、再現してみました」
バスティ「凄いわね。生き物の生成までできるなんて……」
エルマ「これに乗って、獣族に突撃しましょう!」
ガンテ、目を輝かせながら―
ガンテ「やる気出てきた~!やっぱライダーだからな、何かに乗るのは当然だよな!」
勇也「1クールでやっと回収ってマジ?」
エルマ「行きますよ!」
龍に乗り込むエルマたち、走り出す
重なる龍の足音、大地を揺らす
合わせて、突撃してくる獣族たち
ガンテ「荒れるぜ~、止めてみな!」
飛び上がるガンテ
地面に手をかざし―
ガンテ「『イゴーリッツ』!」
地面から無数の槍が突き出す
獣族を串刺しにする
ガンテ「へっ、鈍いぜ!」
直後、ガンテに火炎弾が直撃
腕で防ぐが、咳き込む
ガンテ「っぶねぇ、燃え移ったらどうすんだ!」
ガンテ、槍を召喚
手に持ち、振りかぶって―
ガンテ「『ドリャメターニ』!」
ガンテ、槍を投げる
空を駆け抜け、大地を穿つ
獣族、跡形もなく散る
ガンテ「決まったぜ」
直後、ガンテに飛びつく獣族
その腹を、バスティの腕が貫く
バスティ「ぼさっとしてんじゃないわよ!」
ガンテ「してねぇよ!ねーちゃんこそ、足引っ張んなよな!」
バスティ「はっ、こんな獣風情に後れを取るアタシじゃないわよ!」
バスティ、龍から飛び降りる
忍び寄る獣族たち、唸り声をあげる
バスティ、それらを睥睨して―
バスティ「……アンタらのせいで、アタシたち獣人族がどれだけ理不尽な目に合ってるか、知らないでしょうね。せっかくだし、日頃の鬱憤、晴らさせてもらうわ……!」
バスティ、クラウチングスタートの体勢
バスティ「『ヴィベーガ』」
飛び出すバスティ、炎が迸る
目にも止まらぬ疾走、残像が見える
そのまま、両拳を構えて―
バスティ「『セーリヤ・ウダーロフ』!」
神速の拳を繰り出す
目にも止まらぬ拳の乱撃
獣族、成す術なく血飛沫と化す
× × × × ×
龍に乗るエルマ
獣族に囲まれ、動けない
エルマ、杖を天に掲げて―
エルマ「『メチェオール』!」
エルマの上空、宇宙色に染まる
そこから降り注ぐ、無数の流星
大地を抉り、獣族を塵と化する
エルマ、「ふぅ」と一息ついて―
エルマ「少し、やりすぎてしまいましたかね……?」
その傍らを駆け抜けるヴァラー
勇也「エルマさん、マジパネェっす……」
両隣に獣族の群れ
ヴァラーと並走、涎が滴る
勇也「……久しぶりに剣使ってみよっかな、っと!」
勇也、天高く跳躍
体を捻り、剣を構えて―
勇也「『ヴラシューダ』!」
高速の回転切り
周囲の獣族を細切れにする
ヴァラー、得意げに―
勇也「俺の剣技は、みんな大好き緑の勇者様仕込みだぜぃ!」
その時、地面が揺れる
背後、重い足音が迫る
恐る恐る振り返る勇也
眼前、巨大な獣族が立ちはだかる
勇也「め、めっちゃでっかいゴリラ来たー!」
両拳を振り上げる獣族
勇也「いや、無理無理無理無理!」
そのまま、勇也を叩き合わせる
しかし、それに対抗する勇也
巨人の鎧、拳を受け止める
勇也「『チュドヴィシューラ』、間に合った~……!」
エントン「勇者様!」
背後から、ダッダッダと足音が迫る
エントン、こちらに走ってくる
エントン「私にお任せください!」
エントン、跳躍し―
エントン「『リデレーヴォ』!」
獣族の足元の地面、盛り上がる
巨大な樹木の幹、姿を現す
獣族の股から脳天を突き破る
さらに天高く昇り、樹冠を付ける
立派な大樹が聳える
それを見上げ、得意満面のエントン
しかし勇也、口元を引き攣らせて―
勇也「あ、ちょっとグロい……」
●植人族の森・エントンのコテージ
勇也の手を強く握るエントン
エントン「勇者様、皆様、ありがとうございました!これで一先ず、獣族の脅威は去りました!」
勇也「よかったよかった。最後美味しいところ持ってかれたけど……」
エントン「共に、魔王からこの世界を守りましょう!」
勇也「……うん!」
キュバラー「いいじゃない、感動的ねん」
突如、聞き覚えのない声が響く
いかにも女性的な、艶めかしい声
その声に、振り向く一同
コテージの奥、椅子に腰かけるキュバラー
額には、二本の大きな角
エントン、一歩踏み出し―
エントン「えっと……、あな―」
直後、パチンと指を鳴らすキュバラー
瞬間、エントンの体が激しく炎上
エルマ「エントン様!」
断末魔を上げるエントン
あっという間に燃え滓になる
言葉を失う勇也一行
キュバラー「用があるのはアータよん」
キュバラー、勇也に人差し指を向ける
キュバラー「でもまぁ、一応役目は果たしたわん。こいつがいると、魔王様が世界樹に触れられないもの」
エルマ「魔王……!?」
ガンテ「まさか、てめぇ……!」
キュバラー、ニヤリと口角を上げて―
キュバラー「そう、アーシはキュバラー。リーシェティムの一人……、って、これ恥ずかしいのよねん」
エルマ、杖を構えて―
エルマ「魔族冥衆……。ここに何の用ですか……?」
キュバラー「いやね、今日はただの挨拶。今回の勇者がどんな子か、見てみたくてねん。ふ~ん、結構かわいい顔してるじゃない」
勇也「一人称アーシはちょっと無理かなぁ……」
キュバラー「あら、残念。これでも、同種では人気者だったのよん?ま、今日はこのくらいで。また会いましょう、勇者の坊や」
フッと消えるキュバラー
まるで霞のよう
勇也「セ、セクシーなお姉さんだったね~」
バスティ「それ以上に、ヤバそうだったけどね」
エルマ「今回は、敵意がなかったのが幸いでしたが……」
勇也「そうだね……」
勇也、その時何かに違和感
勇也「……ん、何だ?」
エルマ「どうかしましたか?」
勇也「いや、なんか……、む、胸が、重い……?」
エルマ「え?」
勇也、自分の胸に触れる
そこには、確かなふくらみを感じる
勇也「……え?」
勇也、恐る恐る股間に触れる
ヒュッと息をのむ
バスティ「ゆ、勇也……?」
勇也「……ない」
ガンテ「ないって、何がだ?」
勇也「……おち○ちん、ないなった」
訪れる沈黙
それを、バスティが破る
バスティ「はぁーっ!?」