ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第一三幕 ひと夢の花園

●ストヴァーニェ・宿屋

 

バスティ「で、何でアンタまで女の子になってるわけ?」

 

  ちょこんと椅子に座るガンテ

  色白の玉肌、丸く大きな瞳

  どこから見ても美少女

  だが、足を組み、苛立たし気に舌を打つ

 

ガンテ「俺が知るか、クソッ」

 

バスティ「やめなさい、違和感がすごい」

 

エルマ「女体化の影響を受けたのは、勇也様だけではなかったようですね……」

 

バスティ「にしても、あのクソガキがこんなに可愛くなっちゃって。何なら、アタシもかけて欲しかったわよ」

 

ガンテ「ねーちゃん、俺のこと見て発情すんなよ?ざーこざーこ♡」

 

バスティ「ガキなのは変わってないのね、このメスガキ……!」

 

エルマ「バスティがかかっても、男性になるだけですよ」

 

バスティ「前言撤回、面倒くさそうだわ」

 

ガンテ「んなこと言ってる場合かよ」

 

エルマ「そうですね。魔族冥衆・キュバラー……、淫鬼(いんき)族ですか……」

 

バスティ「え、勇也のこと?」

 

ガンテ「ちげぇよ、淫らな鬼、だ」

 

エルマ「確かに、勇也様は陰気(いんき)ではありますが……。まさか、魔族が立て続けに襲ってくるとは……」

 

ガンテ「あの魂野郎の言ってたことが、現実になりやがった……」

 

  〔回想〕

  ・ノーミタ「気を付けてね。リーシェティムのみんなが、君たちをつけ狙ってる。これからは、もっと酷い目に合うかもね……」

 

ガンテ「まさかこれ、あの淫乱女倒さねぇと元に戻んねぇとかねぇよな!?」

 

エルマ「いえ、それは大丈夫だと思います」

 

ガンテ「そうか……」

 

バスティ「そう言えば、勇也は?」

 

エルマ「勇也様なら……」

 

  エルマ、とある部屋に目を向ける

 

●ストヴァーニェ・宿屋・寝室

 

  姿見の前に立ち尽くす勇也

  長い黒髪、大きな胸

  全裸の自分を、恍惚とした顔で見つめる

 

勇也「はぁ……、はぁ……」

 

勇也N「一時期、女性の体に憧れていたことがあった。別に、女性になりたいとか、そういうわけではない。俺の性自認は男で、恋愛対象は女だ。一般的な世の思春期男子が、女性の胸や秘部に関心を示すように、俺は女性の体そのものに憧れ、成り代わりたいと思っていた。その考えを拗らせて、女装をしたこともあったんだが―」

 

× × × × ×

 

  勇也の部屋

  勇也、姿見の前に立っている

  ゴスロリファッションを身に纏っている

  その姿を見て、酷く顔を顰める

 

勇也N「絶望的に似合わなかった。当たり前だ、別に着た服が問題じゃない。その時鏡に映っていたのは、ただ女性の服を着た男の俺に過ぎなかった。俺の欲は満たされず、むしろそれが軽いトラウマになって、以来女性の体への憧れはしばらく封印されていた」

 

× × × × ×

 

勇也N「でも、今の俺は違う。鏡の中にいるのは、どこからどう見ても一人の女性で。今の俺は、確かに一人の女性で。傍から見れば、さっき俺のしたことは―」

 

  勇也、自身の胸にそっと手を伸ばす

  そして触れる直前、バンッと音がして―

 

エルマ「勇也様!」

 

勇也「おひゃあぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

エルマ「……どうかされました?というか、どうして裸……?」

 

勇也「ちゃんとノックしてよ、ママ!」

 

エルマ「ママではありません」

 

ガンテ「にーちゃん、これ暫く経てば元に戻るみたいだぜ」

 

勇也「え、そうなの……?」

 

エルマ「『インファルマ』で確認したところ、お二人にかけられている女体化の呪いは永続的なものではなく、時間経過で解かれる一時的なもののようです」

 

バスティ「よかったわね、魔族に手加減されて」

 

勇也「……」

 

  明らかに肩を落とす勇也

 

バスティ「え、なに、不満なの……?」

 

  直後、バッと顔を上げて―

 

勇也「そうだ!時間経過で解かれるなら焦っても仕方ないし、切り替えてパーッと遊ぼうよ!」

 

ガンテ「いいじゃねぇか!獣族討伐したばっかだし、ちっとは褒美がねぇとなぁ!」

 

エルマ「う~ん……。エントン様がお亡くなりになられた今、世界樹への対策を考えたいのですが……」

 

勇也「そんなのあとあと!さぁ、行った行った!」

 

  勇也、ガンテとエルマを促し部屋を出る

  バスティ、部屋を出る直前、ふと振り向く

  視線の先、窓の側、一つの机

  その角の一つが、ジットリと濡れている

 

バスティ「……?」

 

●ストヴァーニェ・海

 

  照り付ける太陽、青い海、白い砂浜

  思い思いの時間を過ごす亜種族たち

  勇也、バシャッと水を一かけ

 

勇也「あははっ、あはははっ♪」

 

バスティ「やったわね~?゛ニャッ!」

 

  バスティ、爪で水を掬いかける

 

エルマ「やんっ、冷たいですよ~♪」

 

  バスティ、杖を構えて―

 

バスティ「そ~れっ!」

 

  杖から大量の水を放出

  まるで滝、勇也をうつ

 

勇也「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ―」

 

  ガンテ、砂浜に体育座り

  はしゃぐ勇也たちを遠目に―

 

ガンテ「あいつら、はしゃぎすぎだろ……」

 

勇也「あ~!水着が飛ばされちゃった~!」

 

  恥じらい、露わになった胸を隠す勇也

  周囲の亜種族たち、視線を奪われる

  勇也、それに口角を上げ―

 

勇也M「ケヒヒッ、見ておる見ておる。今の俺は、何をしても完全な女の子。その目にしかと焼き付けるがいい!にしても最高だな、水着回。まさか自分が演出することになろうとは思わなかったが……。せっかく、念願の女体になったんだ!このTS展開、思う存分楽しませてもらうぜぇ!」

 

× × × × ×

 

  砂浜を歩く勇也

  意気揚々と、自信に満ちた足取り

  その時、ザッと背後に誰か現れる

 

亜人「へぃ、姉ちゃん可愛いね!」

 

亜人「俺たちと一緒に―」

 

勇也M「もしかして、これってナンパってやつ?さっきも鏡で見たけど、女体化した俺って結構可愛いもんな~。ふっ、仕方ない、ここは甘んじて彼らに夢を見せてあげ―」

 

  振り向く勇也

  目の前、得体の知れない生物

  クラゲのような頭部

  肉食獣のような体で二足歩行

 

亜人「俺たちと一緒に、海底街のヌシ討伐にいかない?」

 

亜人「分け前は、ヌシの触手5本でどうだ?」

 

勇也M「……お前ら、何族……?」

 

× × × × ×

 

  空、僅かな夕焼けに染まる

  エルマたちの元に戻ってくる勇也

 

勇也「はぁ~、まともな男も海の家もなかった……。そりゃそっか、ここ異世界だもんな」

 

  うつ伏せのガンテ

  その上にバスティ、馬乗りになっている

 

勇也「ほえ、どういうプレイ?」

 

バスティ「オイルを塗ってあげてるのよ。せっかく綺麗な肌が日に焼けちゃうからね」

 

勇也「こっちにもそういうのあるんだ」

 

ガンテ「だ、だから良いって……!」

 

バスティ「な~に恥ずかしがってんのよ。いつもあんなにテンション高いのに、急にしおらしくなっちゃって」

 

勇也「海だけに、つってな」

 

エルマ「“汐”違いです」

 

  エルマ、杖から水を放出

  勇也に直撃

 

勇也「ごめんごめんごめんごめんごめん―」

 

ガンテ「だ、だって、水着とか恥ずかしいだろ……?あんなの、ほとんど、は、裸だし……」

 

  頬を赤らめ目を伏せるガンテ

  それを見て、バスティ、辛抱堪らんように―

 

バスティ「もう、アンタ急に可愛くなり過ぎよ!」

 

  ガンテを強く抱きしめるバスティ

  その胸が、ガンテの体に押し付けられ―

 

ガンテ「ちょ、当たってる当たってる……!」

 

バスティ「何よ、アンタだって同じのあるじゃない」

 

エルマ「勇也様、そろそろ良いお時間だと思いますが、お次はどうなさいますか?」

 

勇也「ふっふっふ……、期待してくれちゃっていい。何せ、次が本命と言っても過言ではない……」

 

バスティ「あら、そうなの?」

 

  勇也、パチッと片目を閉じて―

 

勇也「良いところがあるんだ……」

 

●ストヴァーニェ・大浴場

 

  奥行きのある広い浴場

  湯煙で靄がかっている

  床は黒曜石、壁は白を基調としている

  中央に大きな柱が聳える

  最奥、天使を模した像が見下ろす

  布の擦れる音がする

  服、床にフワッと舞う

  バスティのアーマー、カランと鳴る

  エルマのローブ、バサッと翻る

  ペタペタと足音

  浴場に片足を踏み込んで―

 

バスティ「ちょっと待ちなさい」

 

勇也「何よ」

 

ガンテ「どうしたのよ」

 

バスティ「いや、当たり前のように一緒に入ろうとしてるけど、アンタたち、自分が男だってこと忘れたの?」

 

勇也「でも、この姿で男湯に入るわけにもいかないし……」

 

ガンテ「お湯が真っ赤に染まっちゃうぜ」

 

バスティ「すっかり慣れちゃって……」

 

エルマ「では、こうしましょう」

 

  エルマ、杖を構えて―

 

エルマ「『ゲラネーツ』」

 

  杖から光の帯が伸びる

  渦巻き、纏まり、人の形を作る

  やがて、一人の男性が現れる

 

エルマ「一般的な、成人男性の裸体です。これを見て、どう思いますか?」

 

  勇也とガンテ、顔を赤らめる

  指の隙間からチラチラと見て―

 

勇也「そ、そんな、急に……!」

 

ガンテ「お、おっきい……」

 

エルマ「大丈夫だと思いますよ」

 

バスティ「嗜好まで女になってるのね……」

 

× × × × ×

 

勇也「お、貸しきりじゃ~ん、ラッキー」

 

エルマ「勇也様、よくご存じでしたね」

 

勇也「偶々見かけて、行ってみたいな~ってね」

 

  鏡の前に佇むガンテ

  俯き、顔を赤くしている

  その隣、体を洗うバスティはふと―

 

バスティ「どうしたのよ、俯いちゃって」

 

ガンテ「や、やっぱり、ちょっと恥ずかしい……」

 

  体にタオルを巻いているガンテ

  肩をすくめ、タオルをキュッと摘まむ

  それを見て、バスティ、犬歯を光らせる

  手をワキワキさせ、ガンテに飛びつく

 

バスティ「タオル貰ったーっ!」

 

ガンテ「うわーっ!」

 

バスティ「アンタだけじゃない。ルール違反よ」

 

ガンテ「だ、だって……、自分の体は、どうしても……」

 

バスティ「……ったく、仕方ないわね」

 

  バスティ、ガンテと鏡の前に立つ

 

バスティ「ほら、洗ってあげるわよ。これで恥ずかしくないでしょ?」

 

ガンテ「う、うん……」

 

  ガンテ、頬を赤らめ上目遣い

  バスティ、それに心を打たれる

  ガンテにガバッと抱き着いて―

 

ガンテ「お、おい……っ!」

 

バスティ「いいじゃない。今日が終わったら、またクソガキのアンタに戻っちゃうんだから」

 

ガンテ「ちょ、胸、胸……!」

 

バスティ「アンタだって、同じの持ってんでしょ!」

 

  湯につかる勇也

  心地よさそうに深く息を吐く

 

勇也M「ひと時の夢も、明日が来ればもう終わりか……。目が覚めたら元の体に戻ってる……、うん、よくあるパターンだな。だけど、こんな一生に一度できるか分からない体験をさせてくれて、あの魔族には感謝しないと。もしかして、魔族って案外いいやつらなのでは?あのキュバラーって人だけでも、仲間に出来ないかな。そうすれば、いつでも好きな時に―」

 

勇也「ぐふふふふ……」

 

  陰気な笑みを浮かべる勇也

  バスティとガンテ、冷たい視線を向ける

 

ガンテ「どうしたんだ、にーちゃん……?」

 

バスティ「性別が変わっても、陰のオーラが滲み出てるわね……」

 

  その時、勇也の周囲のお湯が泡立つ

  それを見たエルマ、首をかしげる

 

エルマ「勇也様?」

 

  直後、お湯の中から何かが飛び出す

  巻き込まれる勇也

  触手のようなものに捕まっている

 

勇也「どわーっ!」

 

バスティ「な、何よあれ!?」

 

エルマ「あれは、スライム……。水中に潜伏していたんですね……」

 

ガンテ「スライムにしちゃ、でかくねぇか!?」

 

エルマ「触手……、特異体です。気を付けてください、勇也様!」

 

勇也「そ、そんなこと言われても……!」

 

  触手、勇也の腿裏を舐める

 

勇也「ひゃあっ!♡」

 

  両足を掴み、グワッと開脚させる

  あられもない姿を晒す勇也

  だが、頬は赤く、息が荒い

 

勇也M「こ、これが触手プレイ……!圧倒的な力に抵抗も出来ず、無理矢理されちゃう女の人の気持ち~っ♡」

 

  触手、勇也の胸を弾く

 

勇也「あひゃんっ!♡」

 

  嬌声を上げる勇也

  その顔は蕩けている

 

バスティ「アイツ、喜んでない?」

 

ガンテ「助けなくていいんじゃねぇか?何か楽しそうだし」

 

エルマ「勇也様、ヴァラーに変身してください!」

 

勇也「む、無理!ドライバー、脱衣所に置いてきちゃった!」

 

  バッと振り返るエルマ

  触手、脱衣所への道を塞いでいる

 

勇也「ごめん、水没したらまずいと思って!」

 

  バスティとガンテ、飛び出し―

 

バスティ「なら、アタシたちがやってやるわ!」

 

ガンテ「あぁ!力は落ちても、スライム如きに負けな―」

 

  二人の拳、スライムに取り込まれる

 

バスティ/ガンテ「え?」

 

  二人同時、触手に体を掴まれる

  勇也同様、あられもない姿に

 

バスティ「ちょ、どこ触って……、ニャアッ!♡」

 

勇也「おぉ、二人も無理矢理されに来たの?」

 

ガンテ「にーちゃんみてぇな癖は持ってねぇよ!」

 

エルマ「はぁ~、仕方ありませんね」

 

  エルマ、両手をそっと合わせ―

 

エルマ「『ヴィゾーフ』」

 

  魔法の杖、召喚される

 

エルマ「特異スライムに、近接打撃は禁物ですよ」

 

  エルマ、杖を構えて―

 

エルマ「『リダミール』!」

 

  杖から斬撃が発生

  飛翔し、スライムを粉々に切り刻む

  支えがなくなり、落下する三人

  勇也、エルマに向かって真っ逆さま

  直後、目の前が真っ暗になる

 

勇也M「思い出した、もう一つのよくあるパターン……、定石を。裸の男女が衝突、ラッキースケベというやつだ。そして、こういう状況に限って、どういう因果か、変化していたものは都合よく元の姿に戻る傾向にある。つまり―」

 

  倒れるバスティ

  その上、ガンテが覆いかぶさる

 

バスティ「ハニャッ!♡」

 

  嬌声を漏らすバスティ

  ガンテの小さな手、バスティの胸を掴んでいる

 

ガンテ「……あ」

 

バスティ「こ、この……、マセガキ!」

 

  バスティ、ガンテを殴る

  吹き飛ぶガンテ、お湯にダイブ

  倒れるエルマ、その上に勇也

  男の体をバッと起こし、視線を泳がせる

 

勇也「エ、エルマ殿……、こ、これはですな……!その、創作におけるお決まりというかなんというか……!意図してこのタイミングで戻ったわけじゃ―」

 

  エルマ、ごみを見るような目で―

 

エルマ「……キッモ」

 

勇也「……トゥンク」

 

勇也N「不覚にも、ときめいてしまった……」

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