ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第一五幕 この蕾、枯れる前に

●ストヴァーニェ・広場

 

  逃げ惑う亜人たち

  勇也とエルマ、走ってくる

  ふと、何かに気付き立ち止まる

  ザッと立ちはだかる足元

 

勇也「あれは、ゴブリン……?」

 

  緑色の体色、長い耳、猫背

  短剣を振り回す5体のゴブリン

  こちらを見て、ニヤリと笑う

 

エルマ「はい、あれがこの世界のゴブリンです」

 

勇也「見事に期待を裏切らない造型……。メンタル貧弱の俺にはありがたいね」

 

  勇也、クエストドライバーを装着

  台座を立てる、待機音が響く

  エルマ、スロットにバックルを装填

 

勇也/エルマ「変身!」

 

  勇也、台座の剣を引き抜く

  勇者の鎧、魔法使いの鎧、両者に装着

  仮面ライダーヴァラー、ヒール、現る

 

ヴァラー「俺が行く!」

 

  ヴァラー、ダッと飛び出す

  剣と短剣の鍔迫り合い

  ヴァラー、身を翻しゴブリンを切り裂く

 

ヴァラー「スライム同様の雑魚モンスター筆頭!魔族を倒した俺が負ける相手じゃない!」

 

  バタバタと倒れるゴブリン共

  血溜まりが地面に広がる

 

ヴァラー「ふぅ。これで終わ―」

 

  直後、一体のゴブリンが飛び掛かってくる

  それを、辛うじて剣で受けるヴァラー

 

ヴァラー「おわっ、別個体!?」

 

  勇也、ゴブリンを弾き斬る

  辺りを見回す

  蠢くゴブリンの群れ

 

ヴァラー「あれ、なんかさっきより増えてない……?」

 

  ヴァラーの足元に亜人の死体

  それが、ムクリと起き上がる

  緑の体色、長い耳、不協和音の咆哮

  その濁った瞳、もはや正気ではない

 

ヒール「やはり、遅かったようですね……」

 

ヴァラー「ちょ、エルマ、どうなってるの!?」

 

ヒール「ゴブリンは、血を介して同胞を増やします。つまり、ゴブリンに殺され者は、ゴブリンになってしまうのです」

 

ヴァラー「な、何そのゾンビ映画みたいな展―」

 

  ヴァラー、言葉を詰まらせる

  ハッと、何かに気付く

 

ヴァラー「じゃあ、ここにいる人たちみんな……。さっき、俺が殺したのも……」

 

ヒール「勇也様の、ご想像の通りです……」

 

ヴァラー「……!」

 

ヒール「厄介なのは、親元を経っても増殖が止まらないこと……。ゴブリンにされた者が別の者を、それがさらに別の者を……。すべて倒さない限り、この惨劇は終わりません」

 

  俯くヴァラー

  ブツブツと呟いている

  不穏に陰る複眼

 

ヴァラー「……倒さなきゃ。早く、倒さなきゃ。じゃないと、この街の人たちが……」

 

  震えるヴァラーの肩

  そこに、ポンと手が置かれる

  ヒール、優しい声音で―

 

ヒール「落ち着いてください、勇也様。私たちがいます。共に戦いましょう」

 

  ヴァラー、正気に戻って―

 

ヴァラー「……うん。ごめん」

 

ヒール「鎧を纏っている私たちは、感染の心配はありません。早急に、ここら一帯のゴブリンを掃討します」

 

ヴァラー「で、でも、この人たちは―」

 

ヒール「ゴブリンにされた時点で、既に死んでいます。ここは、割り切らなければ如何にもならない……。勇也様、今こそ勇者としての精神を身に着ける時ですよ」

 

ヴァラー「……鬼畜だな」

 

× × × × ×

 

  仮面ライダーバトル、銃を錬金

  ゴブリンの頭を吹き飛ばす

 

バトル「ちっ、大元を殺しても意味がねぇ!これだからゴブリンは嫌いなんだよ!」

 

  バスティ、ゴブリンに拳を入れる

  次々に薙ぎ倒していく

  バスティ、構えて―

 

バスティ「『ヴラシクラーク』!」

 

  高速で回転するバスティ

  拳でゴブリンを巻き込み、粉微塵にする

  バスティ、「ふぅ」と一息

  直後、別個体のゴブリンが飛びつく

  瞬間、響く銃声

  ゴブリンの体が吹き飛ぶ

  ゴロゴロ、首が地面を転がる

 

バスティ「これで、獣族の時の貸し借りはチャラね」

 

バトル「二手に分かれるぞ、ねーちゃん!」

 

バスティ「えぇ!」

 

  バスティとバトル、反対方向に飛び出す

 

× × × × ×

 

  ダッダッダと走るバトル

  辺り、有象無象の死体の山

  思わず、舌を鳴らしてしまう

  とある店前を通る時、ふと何かに気付く

  立ち止まるバトル

  店頭、座り込む巨躯の背中

 

バトル「おいお前、死にたくなかったら早く逃げろ!」

 

??「……だ、誰……?」

 

  ゆっくりと振り向く巨躯

  その涙に滲む横顔に見覚えがある

 

バトル「お前、さっきの……!」

 

  バトル、変身解除

  少年に駆け寄る

 

ガンテ「こんなとこで何して―」

 

  咄嗟に言葉に詰まるガンテ

  少年の目の前、何やら蠢いている

  柱に縛られた一匹のゴブリン

  背中に、天使と悪魔の羽が一対ずつ

  その姿が、誰かと重なる

 

  〔回想〕

  ・店頭に、一人の人間族の女性

 

ガンテ「嘘、だろ……」

 

少年「……おかしいよね、こんな姿なのに。もうとっくに、あの人なんかじゃないのに……。それでもまだ、好きで好きで堪らないんだ」

 

  少年の手、一輪の花

  それを、そっとゴブリンに近づける

  しかしゴブリン、その花を噛みちぎる

  無惨に散る花弁、ハラハラと床に落ちる

 

ガンテ「……逃げるぞ」

 

  しかし少年、力なく首を横に振る

 

ガンテ「こんなところにいたら、お前まで……!」

 

  直後、ガンテ、言葉を失う

  こちらに振り向く少年

  その顔は半分が緑で、耳が長い

  大きく、充血した目

  鋭い牙が光る

  悔しそうに喉を鳴らすガンテ

 

ガンテ「お前……」

 

  背後からタッタッタと足音

  バスティがやってくる

  目の前の光景に息をのむ

 

少年「殺して、戦士様……」

 

ガンテ「……っ!」

 

少年「良いんだ、この人と一緒なら。何も分からなくなったまま……、この気持ちも忘れたまま、僕は生きていたくなんかない……」

 

  歯を食いしばっているガンテ

  握り拳、力が入り震える

  見かねたバスティ、一歩踏み出して―

 

バスティ「アンタが出来ないなら、アタシが―」

 

ガンテ「やめろ、ねーちゃん……!」

 

バスティ「……」

 

ガンテ「……俺がやる」

 

  ガンテ、少年に近づく

  一歩一歩、踏みしめるように

 

ガンテ「……ごめんな」

 

少年「ううん。ありがとう、戦士様。僕、あの世では幸せになれるかな……」

 

ガンテ「ったりめぇだろ……。ってか、なんなきゃ許さねぇ」

 

少年「戦士様がそう言うなら、大丈夫だね」

 

  ガンテ、拳を構える

 

ガンテ「『プレース』……」

 

  頭上に現れる、巨大な拳の残像

  一直線に落下、二人を叩き潰す

  鈍い音が響く、血溜まりが花弁を染める

 

ガンテ「……」

 

バスティ「ガンテ……」

 

  その時、どこからともなくガタガタと物音

  ふと、顔を上げるガンテ

  その死角から、ゴブリンが飛び出す

 

ガンテ「……!」

 

  牙を剥き、ガンテに飛びついてくる

  奇襲、避けられない

 

× × × × ×

 

  杖を構えるヒール

 

ヒール「『ヴズリーブ』」

 

  爆発、ゴブリン共を木端微塵にする

 

ヒール「一先ず、ここら一帯は掃討しましたね」

 

  ヴァラーとヒール、変身解除

  勇也、苦しそうに息を切らしている

  直後、傍らからドサッと倒れる音

  バッと視線を向ける勇也

  目を見張り、叫ぶ

 

勇也「ガンテ、バスティ!」

 

  地面に倒れるガンテとバスティ

  ガンテ、激しく息を切らし―

 

ガンテ「た、助けて、くれ……!バスティが……!」

 

  エルマ、バスティに駆け寄る

  右腕から腹にかけて、緑に変色し蠢いている

  大量の汗をかき、顔を顰めている

 

エルマ「まさか、感染したのですか……!?」

 

ガンテ「俺の、せいだ……!」

 

勇也「エルマ、ガンテも……!」

 

  体を起こすガンテ

  その腕、一部が緑に変色

 

ガンテ「仕方ねぇ……」

 

勇也「な、何を―」

 

  ガンテ、剣を錬金

  肘から下を切り落とす

 

ガンテ「ぎっ、があぁぁぁぁぁっ!!!」

 

  ボトッと落ちるガンテの腕

  ボタボタ、大量の血が流れる

  痛みに激しく悶えるガンテ

  勇也、何もできずただ絶句

  エルマ、ガンテに杖を構えて―

 

エルマ「『アベズボリヴァ』」

 

  杖の光、腕の切断面を包み込む

  徐々に息を整えるガンテ

 

ガンテ「助かった……。けど……」

 

勇也「エルマの魔法で、どうにかならないの……!?」

 

エルマ「いくら魔法でも、こればかりはどうにも……」

 

勇也「じゃあ、バスティは……」

 

エルマ「……一つだけ、血清があります。それがあれば、バスティを救える……」

 

勇也「ど、どこに……!?」

 

  エルマ、スッと立ち上がる

 

エルマ「上界……、ハーピー族の天空街に行きます。それが、バスティを救う唯一の道標です」

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