ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第一六幕 霊薬の在り処を知る者

●ボーテミュイズン〔上界〕・世界樹の麓

 

  勇也一行、テレポートしてくる

  バスティは、既に意識がない

  エルマの魔法で宙に浮いている

  ジワリと、体が緑に侵されていく

  勇也、世界樹を見上げて―

 

勇也「樹冠、初めて見た……」

 

エルマ「懐かしいですね、上界……」

 

  呟くエルマ

  ガンテ、それに鼻を鳴らし―

 

ガンテ「ま、そうだよな」

 

勇也「んで、“天空街”ってことは……」

 

  上空を見上げる勇也

  世界樹の樹冠の、遥かその先

  小さな何かが点々としている

 

エルマ「はい、あれがハーピー族の天空街です」

 

勇也「こっからだと、ゴミの塊にしか見えないんだけど……」

 

× × × × ×

 

  空中に浮遊する大きな都市

  その周りを、建物が浮遊している

  魔法の光に包まれる勇也たち

  天空街へ飛んでいく

  勇也、顔を青ざめさせて―

 

勇也「下見るな下見るな下見るな下見るな―」

 

ガンテ「おい、何か来るぞ……!」

 

  目を細めるガンテ

  視線の先には天空街

  そこから、無数の影が飛び出す

  勇也も、目を細める

 

エルマ「こちらに来ますね」

 

勇也「あれはなん―」

 

  瞬間、勇也の頬を鋭い何かが掠める

  切れる頬、細く血が伝う

 

勇也「……え?」

 

  遠方、キラキラと無数の光

  徐々に大きく、迫ってくる

  大量の矢だ

 

勇也「これやばいって……!」

 

  ガンテ、勇也たちの前に出て―

 

ガンテ「魔法錬金『ザシータ』!」

 

  ガンテ、防御壁を召喚

  全ての矢を弾く

  直後、傍らを何かが飛ぶ

  四方八方、何かが高速で羽ばたく

 

勇也「もしかして、これが……!」

 

ガンテ「ハーピー族だ。襲われてんな、俺たち」

 

エルマ「ですが、ここまできて退くわけにはいきません!」

 

  エルマ、杖を掲げて―

 

エルマ「『モルノーナスチ』!」

 

  直後、神速で飛び出すエルマたち

  ハーピー族を跳ね除け、天空街へ一直線

 

エルマ「振り落とされないでくださいね!」

 

勇也「皮がはげるーっ!!!」

 

●ハーピー族の天空街・広場

 

  上空に、勇也一行の姿

  地面に激突するように着地

  勇也、重そうに体を上げる

 

勇也「あ~……、これ、骨いってない……?」

 

  ふと顔を上げる

  辺りを囲うハーピーたち

  鋭い目つき、勇也たちを睨む

 

ガンテ「ま、歓迎されねぇよな」

 

  その時、コツコツと足音

  群衆の中、際立って聞こえる

  そして現れる、一人のハーピー

  羽の鮮やかな赤が印象的

  紅の瞳を鋭く細める

 

??「エルフに獣人……、下界の者がこの天空街に何用だ?」

 

エルマ「……」

 

ガンテ「俺は、上界の巨人族だが?」

 

??「ならば、尚のこと理解不能だ。なぜ、上界の種族が下民と行動を共にしている?」

 

ガンテ「俺の仲間に上下とか関係ねぇんだよ、この鳥女」

 

??「不届き者が……。この場で殺されても文句は言えぬぞ?」

 

ガンテ「望むとこr―」

 

エルマ「ガンテ」

 

ガンテ「……ちっ、へぇへぇ」

 

  ガンテ、一歩下がる

  立ち上がるエルマ

  ハーピーを真っ直ぐ見つめ―

 

エルマ「私たちは、此度の勇者一行です。ハーピー族の長に話しがあります」

 

  赤毛のハーピー、ハッと目を見開く

  そして、跪く

  辺りのハーピーも同様、頭を下げる

 

??「勇者御一行様、我々の無礼をどうかお許しください」

 

勇也「我々……」

 

エルマ「では、あなたが?」

 

ピュルハ「私の名はピュルハ。ハーピー族の長をしております」

 

●ハーピー族の天空街・城

 

  ベッドに寝そべるバスティ

  ピュルハ、彼女の緑の部分に触れて―

 

ピュルハ「なるほど。ゴブリンの血、ですか。混血故に、助かりましたね」

 

勇也「どゆこと?」

 

ピュルハ「外部から混入した血の巡りは、混血であればあるほど遅いのです」

 

エルマ「バスティは、獣族と旧人間族の混血。感染から数時間が経った今でも、この程度で収まっているのは不幸中の幸いですね」

 

ガンテ「俺も、巨人族と矮人族の混血だ。もし純血だったら、とっくにゴブリンだぜ」

 

ピュルハ「それで、この天空街に訪れたあなた方の目的は?」

 

エルマ「世界樹液です」

 

ピュルハ「……なるほど」

 

勇也「なんそれ?」

 

ピュルハ「不治の病をも癒す霊薬……。世界樹が、この世界にもたらした恩恵の一つです」

 

エルマ「それがあれば、バスティとガンテに混入したゴブリンの血を、浄化することができます」

 

勇也「なるほど、血清ってのは比喩か」

 

エルマ「場所はレーネス山。しかし、その具体的な場所を知っているのは、頂上と近しい高度に住むハーピー族だけです」

 

  ピュルハ、改めて背筋を正し―

 

ピュルハ「勇者御一行様のお望みとあらば、我々ハーピー族、喜んでご案内いたします」

 

ガンテ「よし、ならさっさと―」

 

ピュルハ「しかし、警戒しなければならないことが一つ」

 

エルマ「何でしょう?」

 

ピュルハ「セイレーンの歌声です」

 

勇也「セイレーン……?」

 

ピュルハ「聞いた者の心を惑わし、精神を蝕み、思考を侵す魅惑の歌声……、それがレーネス山の山頂から鳴り響いているのです。今まで、世界樹液を求めて旅立ったハーピーや他の種族が帰ってきたことは、一度もありません。セイレーンの歌声に、惑わされたのです……。此度は勇者様のご意向ということで、私が先導いたします。ですが、これは命懸けの旅となることをご承知ください。故に、セイレーンの歌声にも負けぬ強靭な精神力を備えた方一名を、世界樹液の元へご案内したいと思います」

 

勇也「強靭な精神力……」

 

  ガンテ、一歩踏み締め―

 

ガンテ「俺が行く」

 

エルマ「ガンテ……」

 

ガンテ「正直、他にいねぇだろ。それに―」

 

  〔回想〕

  ・死角から飛び出すゴブリン

  ・牙を剥き、ガンテに飛びついてくる

  ・奇襲、避けられない

  ・寸前、視界に飛び込んでくるバスティ

 

  眠るバスティを見るガンテ

  悔しそうに目を細める

 

ガンテ「……俺が行かなきゃ、示しがつかねぇ」

 

勇也「だ、だったら、俺も行く……!」

 

  勇也、ガンテの隣に並ぶ

 

勇也「そんな危険なところに、ガンテ一人で向かわせるなんて、勇者として出来ない……!」

 

ガンテ「にーちゃん……」

 

ピュルハ「しかし、世界樹液まで辿り着けるのは、どちらかお一人だけです」

 

勇也「立候補するだけならタダでしょ?どっちが相応しいか、ピュルハさんが決めてくれていいよ」

 

ピュルハ「……分かりました。では、一つ試させていただきます」

 

  勇也、小首を傾げる

 

ピュルハ「レーネス山までは、我々ハーピーの背に乗り、飛んで行ってもらいます」

 

勇也「優雅な空中散歩だ、いいねぇ~。久しぶりに、平和な異世界って感z―」

 

× × × × ×

 

  遥か上空

  高速で飛行するハーピー

  その背中に乗る勇也

  アクロバティックに急降下、一回転を決める

  勇也、涙が飛び散り、顔の皮が波打つ

 

勇也「無理無理無理無理無理―」

 

ハーピー「あ、あの~……、そろそろ降りm―」

 

勇也「うっ」

 

ハーピー「うっ?」

 

勇也「オロロロロロロロロロロッ」

 

ハーピー「ぎゃーっ!!!」

 

× × × × ×

 

勇也「俺とエルマはバスティを見てなきゃいけないから」

 

  勇也、立ち上がる

  ガンテの肩に手を添える

 

勇也「ガンテ……、辛く苦しい旅になると思うが、俺は君を信じてるよ……!共に、バスティを助けよう!」

 

ガンテ「にーちゃん……!」

 

  ピュルハ、白けた目で勇也を見る

 

ピュルハ「これが、此度の勇者……」

 

勇也「言いように寄っちゃ焼き鳥だよ~?」

 

●ハーピー族の天空街・広場

 

  整列するハーピー族、離陸体勢

  ガンテ、ピュルハの背に乗っている

 

ピュルハ「準備はいいか?小さな巨人」

 

ガンテ「小せぇって言うな!俺はガンテだ」

 

ピュルハ「そうか……。いくぞ、ガンテ!」

 

  ピュルハたち、一斉に飛び立つ

  地上の勇也、見上げ手を振る

  遠方に聳えるレーネス山

  ガンテ、それを力強く見つめ―

 

ガンテ「待ってろ、バスティ……!」

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