ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第一七幕 半端者でも守りたい

●ボーテミュイズン〔上界〕・レーネス山への上空

 

  ハーピー族、大空を飛んでいる

  見事なV字の陣形

  その先頭にピュルハとガンテ

 

ピュルハ「で、そのバスティってのが、お前の想い人か?」

 

ガンテ「聞かれてた、恥ずかしっ」

 

ピュルハ「自ら名乗り出た時も、彼女のことを見ていたからな」

 

ガンテ「鳥のくせに、余計なこと覚えてやがって……」

 

ピュルハ「ハーピー族は記憶力に優れているんだ。遥か昔の友の顔と名さえ、言い淀むことはない」

 

ガンテ「……別に、んなんじゃねぇよ。ったく、どいつもこいつも、色恋話しが好きだなぁ」

 

  呆れたように嘆息するガンテ

  ピュルハ、それに「ふふっ」と笑い―

 

ピュルハ「些か、空気が張り詰めていたからな。族長として、話題提供をしたまでだ」

 

ガンテ「変な気遣うんじゃねぇよ」

 

ピュルハ「ならば、尚のこと世界樹液まで辿り着かせて見せよう。この世界を魔王から救うのはお前らだ」

 

ガンテ「お、さっきまでの畏まった態度はどうしたよ?」

 

ピュルハ「勇者様本人を前にしては、砕けた言葉遣いも出来まい」

 

ガンテ「にーちゃんはんなこと気にしねぇよ」

 

ピュルハ「些か、不安を煽られるお方ではあったが……」

 

ガンテ「パーティメンバー募集してっけど、どうだ?」

 

ピュルハ「実に光栄な話しだが、生憎、私にはハーピー族の族長という使命があるのでな。世界の平和は、お前らに託そう」

 

  ガンテ、フッと微笑む

  進行方向を真っ直ぐ見つめて―

 

ガンテ「そうかよ」

 

●ハーピー族の天空街・城

 

  ベッドに寝そべるバスティ

  その傍ら、勇也とエルマが座っている

 

勇也「タオルでキツく縛ったら、血止まらないかな?」

 

エルマ「どれほどキツく縛っても破れない耐久力のタオルであれば、可能ですよ」

 

勇也「ゴブリンの血キモすぎ~」

 

  エルマ、バスティを見つめている

  静かに口を開いて―

 

エルマ「勇也様、今お持ちの証石をお見せいただけますか?」

 

勇也「おぉ。え~っとね~……」

 

  勇也、懐から証石を取り出す

  掌に、純白と茶色の宝石が一つずつ

 

勇也「エルマとガンテの二つだね」

 

エルマ「やはり、バスティからはまだ貰っていませんか」

 

勇也「何か、頑ななんだよな~」

 

エルマ「私たちはゴブリンの血に感染しませんでした。直接の攻撃を受けていないのもそうですが、一番は鎧を身に纏っていたからです」

 

  〔回想〕

  ・ヒール「鎧を纏っている私たちは、感染の心配はありません」

 

エルマ「ですが、バスティは……」

 

勇也「そっか、バスティは変身できない……。生身で戦ってたんだ」

 

エルマ「獣族討伐の時もそうでした。仮面ライダーにさえ変身していれば、多少の攻撃は受けようとも、このようなことにはならなかったのに……」

 

勇也「ま、まぁまぁ、それはさ……」

 

  勇也、「あはは」と苦笑い

  エルマ、ハッとして―

 

エルマ「申し訳ありません、決してバスティを責めているわけではないのです。ですが……」

 

  エルマ、バスティを見やる

  心配そうに、眉を寄せる

 

エルマM「未だ盟友の証石を託せない理由が……、特別な事情が、何かある……?」

 

●ボーテミュイズン〔上界〕・レーネス山への上空

 

ピュルハ「間も無く、レーネス山だ」

 

ガンテ「あぁ」

 

  分厚い雲を抜けた先

  眼前に聳えるレーネス山

 

ガンテ「巨人の街からも見えてたけど、流石に登ろうって気にはなんなかったなぁ」

 

ピュルハ「いくら頑健な巨人族でも、この山を己の足で登ろうとするのは自殺行為だ」

 

  岩壁が近い

  その時、ピュルハ、何かに気付く

 

ピュルハ「あれは……」

 

  岩壁に横たわる、白い何か

 

ピュルハ「……っ!」

 

  白骨化した死体だ

  岩壁に無数に転がっている

  骨が、岩壁を白く染め上げるほど

  ピュルハ、その内の一つの様相に見覚えがある

  悔しそうに喉を鳴らし、唸る

 

ピュルハ「セイレーン……!」

 

ガンテ「どうかしたか?」

 

ピュルハ「……いや、少し取り乱した。それより、もうす―」

 

  その時、何かが聞こえてくる

  透き通った、玉を転がすような声

  一定のリズムと音程を刻んでいる

 

ピュルハ「セイレーンの歌声……!」

 

  V字の陣形が見る見る崩れていく

  ピュルハ、フラフラと揺れる

  ガンテ、身を乗り出し―

 

ガンテ「おい、大丈夫か!?」

 

ピュルハ「すま、ない……、ガン、テ……」

 

ガンテ「おい、しっかりし―」

 

  直後、ガンテの視界が蠢く

 

ガンテ「なん、だ、これ……」

 

  視界が縦に伸び、横に伸び、回る

 

ガンテ「くっそ……、抗え、ない……」

 

  頭を抑えるガンテ、目は虚ろ

  やがて、目の前が真っ暗になる

 

ガンテN「俺は、親父とお袋が一緒にいるところをみたことがない。家族3人で暮らしたことは、一度もない。最初に一緒にいたのは、お袋だ。ちょっと貧しかったが、愛情深く俺を育ててくれてたと思う。物心ついてから、親父が他種族……、矮人族だと教えられた。そん時は何も思わなかったけど、でも、親父に初めて会いに行った時……、矮人族を初めて見た時、思い知った」

 

× × × × ×

 

  矮人族の集落

  並ぶ矮人族、ガンテに攻撃する

  ガンテ、絶句し立ち尽くしている

 

ガンテN「半端者の、ばつの悪さを」

 

× × × × ×

 

ガンテN「矮人族には恐れられ、巨人族には罵られ……。恋とか友情とか、そんな段階じゃなかった。俺には、両親以外の味方は一人もいなかった……。でも、あいつは違った」

 

  〔回想〕

  ・バスティ「はっ、強がっちゃって~。ママとパパから離れて、寂しくないんでちゅか~?」

  ・バスティ「ったく、みっともないわねぇ。そんなんで、アタシに世間知らずなんてよく言えたこと」

  ・バスティ「ほら、洗ってあげるわよ。これで恥ずかしくないでしょ?」

 

ガンテN「ウザいし、生意気だし、世間知らずだけど、ねーちゃんは俺を邪険に扱ったりなんてしなかった。俺を種族じゃなくて、一人の人として見てくれた……。こんなとこで、くだばってやる玉じゃねぇだろ、ねーちゃんよぉ……!」

 

●レーネス山・岩壁

 

  カッと目を見開くガンテ

  バッと体を起こす

  辺り一面、白が埋め尽くす

  見渡す限りの白骨死体

  ふと振り返るガンテ

  頂上まで、あと僅かだ

 

ガンテ「あいつらは―」

 

ピュルハ「―なさい……」

 

  弱弱しく、震える声

  反応し、振り返るガンテ

  ピュルハ、肩を震わせている

 

ピュルハ「ごめん、なさい……」

 

  ガンテ、ピュルハに歩み寄る

 

ガンテ「おい、どうした、大丈夫か?」

 

ピュルハ「な、んで……?全部、忘れてた……」

 

ガンテ「何をだ?」

 

  紅の瞳が涙で揺らぐ

  先程までの威厳はどこへやら

  ピュルハ、喉を引き絞るように―

 

ピュルハ「ママと、パパのこと……」

 

ガンテ「親か……、どこにいるんだ?」

 

  ピュルハ、ゆっくりと顔を上げる

  ふと指を指して―

 

ピュルハ「……ここ」

 

ガンテ「……!」

 

  ピュルハが見るのは、白骨死体の山

  ガンテ、思わず心臓が揺れる

 

ピュルハ「まだ小さい頃、体が弱かった私のために、ママとパパは世界樹液を探しに行った……、この山に……。探しに行ったきり、帰って来なかった……」

 

ガンテ「……」

 

ピュルハ「ずっと、ここにいたんだね……。ごめん、思い出せなくて……」

 

ガンテ「ピュルハ……」

 

ピュルハ「……悪いな、ガンテ。私が先導できるのは、ここまでのようだ」

 

ガンテ「え……?」

 

ピュルハ「私は、ここに残る……。いや、残らなきゃいけない……。ママとパパを、記憶の奥底に閉じ込めてた、せめてもの罪滅ぼしだ……」

 

ガンテ「……けんな」

 

ピュルハ「ママ、パパ……、やっと一緒に―」

 

  パンッ、乾いた音が響く

  掌を振り抜くガンテ

  ピュルハ、目を見開いている

 

ガンテ「感謝しろ、これでも大分手加減したんだ」

 

ピュルハ「……」

 

ガンテ「ふざけんな、そんなの体のいい言い訳だろうが!お前の親父とお袋は、お前を生かすためにこの山に来たんだろ?だったら、今のお前にできることは、ここで死ぬことじゃねぇ。生きることだ、これからも!」

 

ピュルハ「ガンテ……」

 

ガンテ「あともう少しだってのに、こんなとこで諦めるなんて絶対許さねぇ……。俺は誰も見捨てねぇ、誰も死なせねぇ!」

 

  ガンテ、隻腕を天に掲げて―

 

ガンテ「『アプロメーティ』!」

 

  巨大な拳の残像が現れる

  それを、岩壁に叩き付ける

  激しい揺れ、轟音が響く

  セイレーンの歌声を掻き消すほどの轟音

 

ガンテ「起きろ、鳥ども!こんなとこで寝てたら、エルマに鳥料理にしてもらうぞ!」

 

  ピュルハ、紅の瞳を細める

  決意に満ちた表情

  そして、バッと飛び出す

  その背には、ガンテが乗っている

 

ピュルハ「お前のおかげで目が覚めた、ガンテ!今の私にできることは、子守歌の中で素直に眠ることじゃない。両親の骨を拾って、仲間の元へ帰ることだ!幸い、ママとパパの顔は覚えているからな!」

 

ガンテ「鳥のくせに、記憶力良いじゃねぇか!」

 

  ピュルハ、空中で振りかぶる

 

ガンテ「ちょ、おい、何やって―」

 

  勢いよく、ガンテを投げ飛ばす

 

ガンテ「どわーっ!!!」

 

  頂上に向かって飛んでいくガンテ

 

ピュルハ「その先が頂上だ!後は任せたぞ、ガンテ!」

 

ガンテ「……おうよ!」

 

  ガンテ、拳をグッと握り締める

  やがて、頂上が見える

  中央に大きな穴、中は空洞

  ガンテ、その中に入っていく

  深く、大きな空洞

  どこまでも落ちていく

  やがて、遠方に何かが見える

 

ガンテ「セイレーンってのはてめぇか……」

 

  羽の生えた女性の石像

  そこから、歌声が響いている

  しかし、もはやガンテに効果はない

  拳を握り締め、吠える

 

ガンテ「声デケェにも程があんだろうが!俺のお袋でも、ボリュームにはもう少し気遣ってたぜ!」

 

  〔回想〕

  ・少年「その人のこと、ずっと考えたりする?」

 

ガンテM「あぁ、考えてるよ……」

 

  〔回想〕

  ・少年「もし、その人が怪我とかしたら悲しい?」

 

ガンテM「悲しいし、怖えぇよ……。こんなとこに、無鉄砲に突っ込むくらいにはな。でも、それは―」

 

  ガンテ、拳を突き出し―

 

ガンテ「『バーストヴィン・モーロット』!」

 

  強大な力が集約されたガンテの拳

  セイレーンの像を打ち砕く

  地面に着地、息を切らしている

  足元、何かを見つける

  灰色の、小さな壺のような物

  ガンテ、手に取り呟く

 

ガンテ「また、随分とちっこいなぁ」

 

●ハーピー族の天空街・城

 

  ベッドに寝そべるバスティ

  ゆっくりと目を覚ます

  パチパチ、瞬きをする

  傍ら、眉を寄せて覗き込むガンテ

 

バスティ「ガンテ……、みんな……」

 

  ゆっくりと体を起こして―

 

バスティ「ここは……?アタシ―」

 

  直後、体に衝撃を受ける

  ガンテ、バスティに抱き着いている

  震える声で―

 

ガンテ「よかった……!」

 

バスティ「……何よ、そんなに寂しかった?」

 

ガンテ「ったりめぇだろ……」

 

  バスティ、意外そうに眉を上げる

 

× × × × ×

 

  拳を突き出し落ちるガンテ

  遠方、セイレーンの像

 

ガンテM「悲しいし、怖えぇよ……。こんなとこに、無鉄砲に突っ込むくらいにはな。でも、それはねーちゃんに限った話じゃねぇ。にーちゃんだって、エルマだって同じだ。みんな、上とか下とか半端とか関係なしに、俺を受け入れてくれた大事な仲間だ!だから―」

 

× × × × ×

 

  バスティに抱き着いているガンテ

  消え入るような小さな声で―

 

ガンテ「ずっと、俺が守ってやる」

 

バスティ「……!」

 

ガンテM「みんなのことは、俺が……!」

 

  ガンテの声のない決意

  バスティ、密かに胸の鼓動が高鳴る

 

●ボーテミュイズン〔上界〕・???

 

  どこか分からない

  ただ暗く、静か

  その中に、一人佇む少女

  全容は明確でない

  ただ、蛇のような尾を這わせている

  異形であることだけが分かる

  手には四角くて薄い板―元い、スマホ

  少女、長い舌をペロリとして呟く

 

??「勇、也……」

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