ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

18 / 52
第一八幕 故友の帰巣

●ハーピー族の天空街・城

 

  エルマとバスティ、向かい合って座っている

  うんと伸びをするバスティ

 

エルマ「お身体の具合はどうですか?」

 

バスティ「おかげさまで、絶好調よ。もしあのままだったら、獣人とゴブリンのミックスになってたわ……。だから、ありがと」

 

エルマ「肉薄したのはガンテですから、お礼なら彼に」

 

バスティ「……まぁ、そうね。でも、エルマがみんなをここまで飛ばしてくれたんでしょ?アンタがいなかったら、そもそもハーピーにすら会えてないわ」

 

エルマ「そう、ですね……」

 

  不意に言い淀むエルマ

  ゆっくりと口を開く

 

エルマ「では、そのお礼ということで、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

バスティ「ん?」

 

エルマ「バスティが、未だ勇也様に盟友の証石をお渡しにならない理由です」

 

  バスティ、ハッと眉を上げる

 

エルマ「今回の件、バスティが仮面ライダーに変身していれば……、盟友の証石を託していれば起きなかった」

 

バスティ「……そうね」

 

エルマ「決して、責めているのではありません。ただ、何かそれが出来ない理由が、あるのではないですか……?」

 

バスティ「……」

 

  エルマ、ボソッと―

 

エルマ「勇也様を……、我々を仲間であると、まだ信用していないとか……」

 

  バスティ、身を乗り出して―

 

バスティ「そんなことない……!これまで一緒に過ごしてきた中で、アンタたちは十分信頼に値する。アイツだって、最初はあんなんだったけど、今はもう普通に戦えてるし……」

 

エルマ「では、何故ですか……?」

 

  眉を寄せるエルマ

  バスティ、呆れて溜息

  背もたれに身を預ける

 

エルマ「バスティ……?」

 

バスティ「いえ、ちょっと呆れちゃってね……、自分に」

 

エルマ「え?」

 

バスティ「ここに来るまで、ドワーフとか矮人とか、いろんな種族に会ってきたでしょ?そして、助けてきた」

 

エルマ「はい……」

 

バスティ「だから、私たちのことも助けてくれるんじゃないかって……。勝手に、どっかで期待してたのかしらね……」

 

  エルマ、訝しげな顔で―

 

エルマ「……それは、バスティの故―」

 

勇也「なあぁぁぁぁぁい!!!!」

 

  突然響く勇也の声

  エルマ、思わず言葉を切る

  バスティ、それにフッと笑う

  しかし、その表情はどこか悲し気

 

バスティ「時が来たら、ちゃんと話すわよ」

 

エルマ「……分かりました」

 

  バスティ、勇也の元へ

 

バスティ「何よ、急に大きな声出して」

 

勇也「ない、ないんだよ!」

 

  狼狽する勇也

  顔面蒼白、目が泳いでいる

 

バスティ「ちょ、落ち着きなさいって……!何を失くしたのよ?」

 

勇也「スマホ……、スマホがなくなったんだよ!」

 

バスティ「スマホ?」

 

ガンテ「何だ、スマホって?」

 

エルマ「もしかして―」

 

  〔回想〕

  勇也「さすがに、異世界には対応してないか」

    天気アプリ

    温度は表示されていない

 

勇也「ずっとポケットに入れてたのに、いつの間に……」

 

バスティ「ここに飛んでくるときに落としたとか?」

 

エルマ「であれば、私が感知できています」

 

ピュルハ「ラミア族の仕業かもしれないな」

 

  ふと、声がかけられる

  振り向く一同

  視線の先、赤毛を翻すピュルハ

  遺骨の入った壺を抱いている

 

勇也「ラミア族?」

 

ピュルハ「下半身が蛇の姿をした、下賤種の中でも一際醜い種族です」

 

勇也「い、言うねぇ……」

 

ピュルハ「奴らは、暗殺や盗みを生業としている……。特に、我々ハーピー族は手を焼かされているのです」

 

ガンテ「は、こんな高いとこに来んのか?」

 

ピュルハ「あぁ。どういう原理かは知らんがな」

 

勇也「ラミア族……」

 

勇也M「俺がここまで狼狽しているのは、何も俺がスマホがないと呼吸も出来ない中毒者だからではない。以前も話したが、この世界にwi-fiなんてものは存在しないから、SNSは使い物にならない。それでも尚、俺がスマホに固執する理由、それは―」

 

バスティ「そう言えばアンタ、それでなんか書いてるって言ってなかった?」

 

ガンテ「あぁ、物語な」

 

勇也「おひょいっ!」

 

  勇也、肩を跳ねさせる

  恐る恐る、二人に振り向いて―

 

勇也「み、見た……?」

 

ガンテ「いや、全く」

 

バスティ「興味ないわ」

 

勇也「それはそれで傷つく……」

 

勇也M「そう……。あのスマホには、俺の勇者としての冒険譚が、唯一まともに使えるメモアプリに物語として記してあるのだ!因みに、現在第十七幕まで連載中。『突如異世界に召喚されたイケメン陽キャの俺、圧倒的なチートスキルとバトルセンスで敵を薙ぎ払い、魔王を倒し、うはうはハーレムライフを送る夢と感動のストーリー』……。そんなものが誰かに見られたら、俺はもう生きていけない!ただでさえ理想と現実のギャップで禿げそうなのに!でも仕方ないよね!理想の自分を主人公にして物語を書く、みんなも通る道だよね!」

 

  奇声を上げる勇也、ブンブンと頭を振る

  それに冷たい視線を向ける一同

  勇也、声と肩を震わせて―

 

勇也「お願いです……、一緒に探して……」

 

バスティ「はぁ~、仕方ないわね。アタシは賛成、助けてもらったお礼ってことで」

 

ガンテ「俺も、別にいいぜ!」

 

エルマ「では、二手に分かれましょう。私と勇也様は住宅街を、バスティとガンテは商店街を探してください」

 

ガンテ「おうよ!」

 

バスティ「はいはい」

 

勇也「あ、ありがたき幸せ~……」

 

  勇也、綺麗な土下座を披露

 

ガンテ「おいおい、軽いな」

 

ピュルハ「これが、此度の勇者……」

 

●ハーピー族の天空街・商店街

 

  バスティとガンテ、気だるげにぶらつく

 

バスティ「って言っても、手がかりも何もないんじゃ、探しようがないわよ」

 

ガンテ「んな大事なもんなんだな~。見つけたら、こっそり中見てみようぜ」

 

バスティ「趣味悪いわよ……。それより、アンタはもう平気なの?その腕は」

 

ガンテ「あぁ。俺も世界樹液使ったからな。切断部分は、エルマの魔法で繋げてもらった」

 

バスティ「そう……」

 

  バスティ、モジモジとする

  俯き、言い淀みながら―

 

バスティ「アンタが、体張ってくれたって聞いたわ。その……、ありがと。アタシのために……」

 

ガンテ「バスティ……」

 

  見つめ合うバスティとガンテ

  二人のだけの時間が流れる

  しかし、ガンテ、悪戯に口角を上げ―

 

ガンテ「な~にしおらしくなってんだよ、ねーちゃん~」

 

バスティ「くっ、仕返しされた気分……!」

 

ガンテ「感謝なら、行動で示してもらわなきゃな」

 

バスティ「え?」

 

  ガンテ、ふと指をさす

  屋台、煙がモクモクと上がっている

  ガンテ、ニカッと笑い―

 

ガンテ「一緒に食おうぜ、ねーちゃん!」

 

× × × × ×

 

  バスティとガンテ、ベンチに座っている

  モシャモシャと食べるガンテ

  その隣、バスティ、怪訝な顔で―

 

バスティ「これ、何の肉……?」

 

ガンテ「鳥」

 

バスティ「どんな気持ちで売ってるのかしら……」

 

ガンテ「食わねぇなら、俺が貰うぞ?」

 

バスティ「た、食べるわよ……!」

 

  バスティ、モシャモシャと食べる

 

バスティ「……結構おいしい」

 

ガンテ「おいおい、バスティ」

 

バスティ「ん?」

 

  そっと迫るガンテの手

  バスティの口元を拭う

 

ガンテ「ったく、相変わらずの犬食いだな」

 

  フッと微笑むガンテ

  それにバスティ、目を見開く

 

  〔回想〕

    バスティに抱き着いているガンテ

    消え入るような小さな声で―

  ガンテ「ずっと、俺が守ってやる」

  バスティ「……!」

 

  ジワジワと赤くなる、バスティの頬

  フイとそっぽを向いて―

 

バスティ「バーカ、バーカ!」

 

ガンテ「語彙力どこ行った?」

 

  その時、ガンテ、正面に何かを見つける

 

ガンテ「なぁなぁ、あれ登ってみようぜ!」

 

バスティ「え?」

 

  視線を向けるバスティ

  巨大な建造物、空中を浮遊している

 

ガンテ「俺たちの跳躍力ならいけるって!」

 

  ガンテ、バッと飛び出す

 

バスティ「ちょ、まだ食べてる途中なんだけど!」

 

  バスティ、後を追って飛び出す

 

●ハーピー族の天空街・住宅街

 

  立ち並ぶ家々

  その路地を歩く勇也とエルマ

  狼狽し、辺りをキョロキョロ

  その表情は鬼気迫っている

 

勇也「どこ……、どこにある……!?」

 

エルマ「勇也様、少し落ち着いてください。見つかるものも見つかりませんよ」

 

  エルマ、フッと微笑み―

 

エルマ「それほど大切なものなのですね。何か、思い入れでも?」

 

勇也「……エルマは、トイレしてるのを誰かに見せたりする?」

 

エルマ「え?い、いえ、まさか……」

 

勇也「それと同じだよ……」

 

エルマ「た、大切なもの……?なのですね……」

 

??「そんなに大切なら、アーシも探すの手伝ってあげようかしらん?」

 

  ふと妖艶な声、上から聞こえる

  バッと見上げる勇也とエルマ

  屋根の上、キュバラーの姿

  ニヤリと笑い、こちらを見下ろす

 

エルマ「魔族冥衆……!」

 

勇也「あ、出た」

 

キュバラー「アーシの呪い、満足してもらえたかしらん?随分と楽しそうだったわねん」

 

勇也「の、呪い?何のこと……?」

 

エルマ「えっと……、それはまた後で。それより、何の用ですか?また、私たちの邪魔を?」

 

キュバラー「えぇ、ふざけてるのかって追い返されちゃって。だから、今日はどんな悪戯してあげようかって楽しみにしていたんだけど……」

 

  杖を構えるエルマ

  キュバラー、それにフッと微笑み―

 

キュバラー「その必要もなさそうねん」

 

エルマ「え……?」

 

  瞬間、バサバサと羽ばたく音

  遠方、大量に聞こえる

 

勇也「な、何の音……?」

 

キュバラー「上から見ればわかるんじゃないかしらん?」

 

勇也「え……?」

 

× × × × ×

 

  バスティとガンテ、浮遊する建物の上

  辺りの景色を見渡している

 

ガンテ「って言っても、高すぎて景色もクソもねぇな」

 

バスティ「殺風景が過ぎるわね……」

 

  その時、バスティ、何かを見つける

 

バスティ「あれ、何かしら……?」

 

ガンテ「あ?」

 

  遠方を見つめるバスティ

  白い何かが大量に迫ってくる

  バサバサと音、大きくなってくる

  背景には、聳えるレーネス山

  ガンテ、ハッと目を見開き―

 

ガンテ「おい……、あれ、白骨死体じゃねぇか……!?」

 

  大量の白骨死体、天空街に羽ばたく

  空を白く染め上げるほどの軍勢

  凄まじい羽音、鼓膜を揺らす

 

× × × × ×

 

  エルマ、訝し気に眉を寄せ―

 

エルマ「何をしたのですか?」

 

キュバラー「アーシは何もしてないわよん。むしろこれは、アータたちのせい」

 

勇也「え、俺たちは何も……」

 

キュバラー「セイレーンの像、壊しちゃったのよねん?」

 

  ハッと目を見開くエルマ

 

キュバラー「眠りから目覚めた小鳥たちが巣に戻ってくる……、ただそれだけのことじゃない」

 

  エルマ、クッと喉を鳴らす

 

キュバラー「あぁ、それと、この街にはアーシ以外にもリーシェティムのメンバーがいるから、気を付けることねん」

 

エルマ「魔族冥衆がもう一人……!?」

 

キュバラー「ふふっ。じゃあ、また会いましょう」

 

  キュバラー、フッと消える

  勇也、心臓の鼓動が高まる

  死者の羽ばたき、直ぐそこまで迫っている

 

●ハーピー族の天空街・広場

 

  怒号と金属音が響く

  死者を迎え撃つハーピーたち

  弓を放ち、空を飛ぶ死者を穿つ

  剣を振るい、迫る死者を切り裂く

 

ピュルハ(声)「我々には責任がある、レーネス山へ仲間を送り出した責任だ!中には、家族や恋人……、大切な人を失った者もいるだろう。故に、幾年を経てようやく帰ってきた彼らを、仲間として、我々が責任を持って葬ってくれよう!」

 

  バスティとガンテ、広場へやってくる

 

ガンテ「さすが戦闘部族。初めて出くわした時もそうだったが、ただの平和ボケした住民とは訳が違うぜ」

 

バスティ「アタシたちも加勢しましょう」

 

  戦闘態勢のバスティ

  ガンテ、それを片手で制する

 

バスティ「何よ」

 

ガンテ「まぁまぁ、ねーちゃんは休んどけって」

 

バスティ「はぁ?」

 

ガンテ「実はあの像、すっげぇコスパ良くってよぉ」

 

  ガンテ、バックルを手首のスロットに装填

 

ガンテ「変身!」

 

  巨人の鎧、装着

 

バトラー「今の俺は、仮面ライダーバトラー。何と、Level30だ!」

 

バスティ「30……!?って、見た目じゃ分かんないわね」

 

バトラー「だが、漲る力は比べもんになんねぇぜっ!」

 

  バトラー、ダッと飛び出す

  高く跳躍、地面に拳を叩きつける

  大きな地割れ、波動に死者が飛び散る

 

バトラー「へへっ、天空街じゃなくて、ただの街にするとこだった」

 

バスティ「はぁーっ!」

 

  バスティ、死者に蹴りを入れる

 

バトラー「おいおい、休んどけって言ったろ?」

 

バスティ「ずっと寝てたから体が疼いてんのよ。アタシにも戦わせなさい!」

 

バトラー「はっ、そうかよ!」

 

  バトラー、蠢く死者共を睥睨

 

バトラー「こいつら全員倒して、今度こそハッピーエンドだ!」

 

× × × × ×

 

  剣を振るうヴァラー

  ヒール、死者の骨を砕く

 

ヒール「『ラズルーシェ』!」

 

ヴァラー「これ、俺たち勝手に倒しちゃっていいのかな?」

 

ヒール「レーネス山を利用して、生きて帰ってきた……。私たちにも、生者としての責任があります」

 

ヴァラー「戦争で生き残った人の気持ちがちょっとわかったかも……」

 

  ヴァラー、その時なにかに気付く

  遠方、一人の少女が佇んでいる

  この惨状に、一歩も動かない

  そこに、死者の軍勢が襲い掛かる

  ヴァラー、思わず手を伸ばし―

 

ヴァラー「あ、危ないっ!」

 

  瞬間、少女、一回転

  死者、バラバラに崩れ落ちる

 

ヴァラー「……へ?」

 

  少女、屋根を伝って跳躍

  死者を足場に飛び、次々と殺していく

  あっという間に、空を飛ぶ死者が消える

  悠然と着地、息一つ切らしていない

  ヴァラー、その光景に唖然として―

 

ヴァラー「す、すげぇ……」

 

× × × × ×

 

  空を飛ぶピュルハ、弓を構える

  同じくハーピーたち、周囲に集まる

 

ピュルハ「『ストリール』!」

 

  放たれた矢、一ヵ所に集約

  巨大な一本の矢となり、宙を突き進む

  その後には、死者など跡形もなく散る

 

ピュルハ「今度こそ、安らかに眠れ……」

 

× × × × ×

 

  ヴァラーとヒール、変身解除

  少女に駆け寄る

 

エルマ「まさか、あれほどの数を一人でいなすとは……」

 

勇也「君、凄いね……」

 

  しかし少女、何も喋らない

  ただ俯いているだけ

  勇也とエルマ、顔を見合わせて―

 

勇也「え、えっと……」

 

  その時、何かを差し出す少女

  その手には、四角くて薄い板のような物

 

勇也「あ、俺のスマホ!どうして君が……!?」

 

  エルマ、ふと少女の足元を見やる

  細くうねる何か、地面を這っている

 

エルマ「もしかして、ラミア族の方ですか?」

 

勇也「ラミア族って……」

 

  〔回想〕

  ピュルハ「下半身が蛇の姿をした、下賤種の中でも一際醜い種族です」

 

勇也「じゃあ、君が俺のスマホを……?」

 

  その時、少女、ゆっくりと口を開く

 

??「あなたが、勇也、でしゅか……?」

 

勇也「え?あぁ、うん、そうだけど……」

 

??「じゃあ、その物語はあなたが書いたんでしゅね……」

 

  訝し気な顔の勇也

  直後、ハッと目を見開いて―

 

勇也「み、見られ―」

 

??「面白かったでしゅ!もっと、もっと見せてくらしゃい、勇也しゃん!」

 

勇也「……へ?」

 

  少女の羨望の眼差し、キラキラと光る

  対して、勇也、ただ呆けた面を晒すだけ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。