ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第一九幕 蛇足少女の憂鬱

●ハーピー族の天空街・宿屋

 

  勇也と少女、向かい合って座っている

  バンッと身を乗り出す少女

  キラキラと羨望の眼差しを向けて―

 

??「儚田勇也しぇんしぇえ(先生)!」

 

勇也「ふっふっふ、先生はよしたまえ……」

 

  腕を組み、鼻を高くする勇也

  バスティ、それに白い目で―

 

バスティ「ま~た調子乗ってるわよ……」

 

勇也「口を慎みたまえ、バスティくん」

 

バスティ「うざっ」

 

勇也「して、君の名前は何だったかな?」

 

ナーチ「ナーチ、ラミア族でしゅ」

 

勇也「じゃあ、ナーチちゃん。君は、俺の小説の何処に魅力を感じたのかな~?」

 

ナーチ「イキイキと魅力てち(的)な登場人物……。しぇん(鮮)明に映し出されるような情景描写……。夢と希望に溢れた壮大なストーリー……。こんな物語を書けるのは、勇也しぇんしぇえ(先生)の他にいましぇん!」

 

勇也「はっはっは、何度聞いてもいいな~!」

 

エルマ「もう34回目です……」

 

バスティ「伸びた鼻、壁に突き刺さればいいのに」

 

ガンテ「そんなにいいもんなのか~?」

 

  ガンテ、勇也のスマホを手に取る

  画面、文章をしげしげと見て―

 

ガンテ「『魔王を倒してこの世界を救う……、これが俺に与えられたDestiny……』『俺のことは構わず先に行け!なに……、同じ空の下にいれば、いつかまた必ず会えるさ。I’ll be back…….』『決めるぜ、俺の必殺技!スターバー○ト・スト○ーム』……」

 

  ガンテ、読み上げて渋い顔

  傍らのエルマとバスティも同じ顔

 

ガンテ「俺知ってるぜ、こういうの『中二病』って言うんだろ?なぁ、エルマ」

 

勇也「Shut up! 」

 

  勇也、ゴホンと咳払い

 

勇也「作家なんて、みんな中二病で頭おかしいんだから。そうじゃなくても、普通の人は『よし、二次創作を書こう!』なんて考えたりもしないんだよ。俺はナンバーワンじゃなくて、オンリーワンを目指してるの!」

 

ナーチ「しゅばらしい心構えでしゅ!」

 

エルマ「なるほど!その結果、勇也様は教室でナンバーワンのオンリーワンになったわけですね☆」

 

勇也「ごふぅ!」

 

  勇也、吐血

 

バスティ「わぁー!何か分からないけどやめなさい、エルマ!」

 

エルマ「?」

 

ガンテ「それはそうと、勝手に人の物を盗むのは見過ごせねぇな」

 

ナーチ「ご、ごめんなしゃい……」

 

勇也「俺はずっと肌身離さず持ってたんだけど、いつ盗ったの?」

 

  ナーチ、ガンテをチラと見やり―

 

ナーチ「そこの、赤毛の人が……」

 

ガンテ「俺?」

 

ナーチ「レーネス山に飛び立つとき、勇也しぇんしぇえ(先生)手振ってた……」

 

勇也「まさかその時に?」

 

ガンテ「なに感動的な場面で水差してくれてんだ!」

 

  ガンテ、机をバンッと叩く

  ナーチ、激しく怯えて―

 

ナーチ「ぴゃあ!お、男の人、怖い……!」

 

勇也「全く気付かなかった……」

 

エルマ「手癖の悪さは見過ごせませんが……」

 

  〔回想〕

    少女、屋根を伝って跳躍

    死者を足場に飛び、次々と倒していく

    あっという間に、空を飛ぶ死者が消える

    悠然と着地、息一つ切らしていない

    ヴァラー、その光景に唖然として―

  ヴァラー「す、すげぇ……」

 

エルマ「あの戦闘力といい、かなりの実力者ですね」

 

ガンテ「おかげで、ここのやつらは迷惑被ってんけどな」

 

ナーチ「ラミア族は、適者しぇい(生)存……。村が貧しいから、こうでもしないと生きられない……」

 

勇也「そんなに?」

 

バスティ「……ちょっと、分かるかも」

 

エルマ「……」

 

ナーチ「忌子の力で、家族も仲間もバラバラになった……」

 

  勇也、ふと気づいて―

 

勇也「ねぇ、忌子って何?」

 

  〔回想〕

  アノス「全ての始まりは、忌子をこの世界に再び召喚したエルフ族だ。やつらを皮切りに、亜種族間の高貴と下賤の選別が行われ、多くの種族が下界へと堕ちることになった

 

勇也「巨人族の街でも、そんなの聞いたけど」

 

エルマ「忌子は、この世界に初めて生まれた魔王を討ち滅ぼした、旧人間族の勇者……、歴史上一人目の勇者です」

 

勇也「え、凄いじゃん。何でそんな不穏な呼ばれ方されてるの?」

 

エルマ「その強大すぎる力ゆえ、魔王だけでなく他の亜種族にまで甚大な影響を及ぼし、恐れられたとか。伝承にそう語り継がれているだけで、私も詳しいことまでは分かりません」

 

勇也「そっか……」

 

ナーチ「……でも、こんなの言い訳」

 

勇也「え?」

 

ナーチ「全部、弱い私が悪い……、ラミア族に生まれた私が悪い……。私は、こんな私を好きになれない……」

 

  ナーチ、肩を落とし俯く

  勇也、それにゆっくりと首肯し―

 

勇也「分かる、分かるよ~」

 

ナーチ「え?」

 

勇也「俺もさ~、元の世界では空気みたいな、いてもいなくても変わらないような扱いされて。そのくせ、自分が都合の悪い時だけ俺をいいように使ってきて。俺も、自分なんて好きになれないよ……」

 

ナーチ「勇也しゃん……」

 

勇也/ナーチ「はぁ~……」

 

  どんより、重い空気が二人を包む

 

バスティ「何か似てるわね、この二人」

 

ガンテ「あぁ、暗いオーラがそっくりだぜ」

 

勇也「う、また吐血しそう……」

 

バスティ「エルマ、治癒魔法」

 

エルマ「魔力の無駄です☆」

 

??「可哀そうな勇者の坊や。アーシが慰めてあげようかしらん?」

 

  ふと、声がかかる

  聞き覚えのある声だ

  バッと振り返る勇也たち

  キュバラー、ベッドに腰かけこちらを見る

 

勇也「ま~た出たよ」

 

キュバラー「あら、嫌われちゃったかしらん?」

 

  ガンテ、拳をガチガチと合わせ―

 

ガンテ「のこのこ自分からやって来るたぁいい度胸だ。この前の借り、返させてもらうぜ!」

 

  ガンテ、キュバラーを睥睨し吠える

  しかしキュバラー、聞く耳を持たない

  正面、目を逸らすナーチを見て―

 

キュバラー「まさか、勇者に媚売りなんてね。それがアータのやり方ってことかしらん?」

 

勇也「え、知り合い?」

 

エルマ「ということは……」

 

キュバラー「魔族冥衆・リーシェティムが一人、ラミア族のナーチ」

 

勇也「ナーチが、魔族冥衆……!?」

 

  エルマ、ハッと目を見開く

 

  〔回想〕

  キュバラー「あぁ、それと、この街にはアーシ以外にもリーシェティムのメンバーがいるから、気を付けることねん」

 

エルマ「あの時言っていたもう一人は、ナーチ……!」

 

キュバラー「別に、アータのやり方がそれって言うんなら構わないけど……。もし、寝返るようなことしたら―」

 

  キュバラー、ギロッと目を見開いて―

 

キュバラー「分かってるわよねん、ナーチ?」

 

  ナーチ、ヒュッと息を呑み込む

  俯き、小さな肩をガタガタと震わせる

  何も言い返すことができない

  勇也、それに怪訝な顔

 

キュバラー「まぁいいわん」

 

  キュバラー、喉に手を当てゴホンと咳払い

  窓から、外に声をかけるように—

 

キュバラー「こっちに魔族冥衆がいるぞ、囲え!」

 

  勇也たち、それを聞いて驚愕

  まるで、別人の声だ

  その声は、ハーピーの女戦士そのもの

 

キュバラー「じゃ、あとは頑張ってね~ん」

 

  ユルユルと手を振るキュバラー

  フッと消える

  直後、バンッと扉が開く

  大勢のハーピー、突入してくる

  手に持つ槍を構えて―

 

ハーピー「動くな!ほう、ラミアの魔族か、丁度良い……。ひっ捕らえろ!」

 

●ハーピー族の天空街・広場

 

  ナーチ、磔にされている

  それを見上げるハーピーたち

  睨みつけ、嘲笑している

 

ピュルハ「ちょこまかと煩わしい奴らだったが……、ようやく捕えたぞ、ラミア族。貴様らのせいで、失った仲間は数知れず……。今宵、その命を以って、罪を償うがいい!」

 

  ナーチ、何も言わずただ俯いている

  遠方、建物の陰に佇む勇也一行

 

勇也「あれ、どうにかならないの……?このままじゃ、ナーチが……」

 

エルマ「これは、ハーピー族とラミア族の、長年の因縁の話し……、ここが分水嶺です。私たちが、口を挟むようなことではありません……」

 

勇也「……」

 

  勇也、眉を顰めナーチを見つめる

  ピュルハ、ナーチに言い放つ

 

ピュルハ「貴様の死を以って、同族に知らしめてくれよう……。我々ハーピー族を敵に回せば、どうなるかということを!」

 

  ピュルハ、バッと翼を上げる

  二人のハーピー、飛び上がる

  上空で弓を構える

  標的は、当然ナーチだ

  ナーチ、ただ静かに目を閉じる

  涙さえ、今は出ない

 

ナーチM「これでいい……。いつか、こうなることは分かっていた。私の居場所は、どこにもない。今まで、どれだけ盗み、殺してきただろう……。その度に、嘲笑われ、罵られ、蔑まれ……。リーシェティムにさえ、私の居場所はなかった……。私は、ただ普通に生きたい……、ただの普通の女の子でいたいだけなのに……。これも、ラミア族に生まれた私の宿命。私はどこまでも、私が嫌いだ……」

 

  放たれる矢

  鋭い音を立て、空を切り裂く

  そして、ナーチの首に触れる寸前―

 

エルマ「『ブラーン』!」

 

  吹き荒ぶ激しい風

  矢、どこかへ飛んでいく

  そして、タッタッタと足音

  こちらに近づいてくる

 

勇也「ちょっと待った~!」

 

  目を開けるナーチ

  正面、こちらを見上げる勇也の姿

 

ナーチ「勇也しゃん……?」

 

勇也「ナーチ、虐められてるんでしょ……?」

 

ナーチ「え……?」

 

勇也「分かるよ」

 

  〔回想〕

    ナーチ、肩をビクッと跳ねさせる

    俯き、小さな肩をガタガタと震わせる

    何も言い返すことができない

 

勇也「あんなに震えてたら……」

 

ナーチ「あ……」

 

勇也「俺も、自分が大嫌いだよ……。昔も、今も、多分これからも……。だから俺たちは、どれだけ自分を許してあげられるかが大事だと思うんだ」

 

ナーチ「許してあげる……?」

 

勇也「ちょっとずつ……、ちょっとずつ自分で自分を許せるところを見つけて、ゆっくり自分という存在を受け入れていくしかないんだよ……。自分でいることは、やめられないんだからさ」

 

ナーチ「……しましたよ」

 

勇也「え?」

 

ナーチ「何度もしました。たくさん許そうとして、受け入れようとして、自分の行いに目を瞑ろうとして……。それでも、ダメだった。周りのみんなが、私が私を許しゅことを、許してくれない……。私だって―」

 

勇也「だったら、俺がナーチを許すよ!」

 

ナーチ「え……?」

 

勇也「もしスマホを盗まれてなかったら、こうしてナーチと会うこともなかった……。素直に嬉しいんだよ、自分の作品が誰かに読まれて、凄く良かったって言われるのが……。もっと、読んでほしいと思ったよ」

 

ナーチ「勇也しゃん……」

 

勇也「だから、自分でいることを諦めないで。自分の境遇に、絶望しないで。俺たちが、ナーチを許すから!」

 

  ナーチ、瞳いっぱいに涙を浮かべる

  フッと微笑むと、大粒の涙が頬を伝う

 

ピュルハ「勇者様……」

 

  勇也、バッと振り返る

  目の前には、大勢のハーピーたち

 

勇也「みんな、聞いて欲しい!」

 

  声を上げる勇也

  だが、途端に言葉に詰まる

  冷や汗をかき、顔を青ざめさせる

  勇也、一旦退席

  エルマを連れて戻ってくる

 

バスティ「大事なところで決まらないんだから……」

 

エルマ「ハーピー族の皆様、勝手なことをしてしまい申し訳ありません。皆様のご苦労は、私如きが簡単に理解しているなどと口にしてはいけないものだと思います……。ですが私たちは、ここでラミア族の彼女の命が絶えるのは、損失であると考えました」

 

ピュルハ「損失……?」

 

エルマ「彼女の行いは、到底許されるものではありません……。ですが、これまで数多の人や物を手に掛けてきたその技術、そして高度な戦闘能力……、彼女こそ魔王討伐に必要な存在なのです。よって私たちは、彼女を勇者一行として迎え入れることにしました!」

 

  エルマ、高らかに言い放つ

  どよめくハーピーたち

  ナーチ、驚き目を見開いている

 

エルマ「ラミア族の行動も、私たちが管理したいと思います。ですので、どうか彼女を開放していただきたいのです……!」

 

  深々と頭を下げるエルマ

  その傍ら、勇也も頭を下げる

  目を細めるピュルハ

  やがて、「はぁ~」と溜息をつく

 

ピュルハ「勇者御一行様の命令だ。降ろしてやれ」

 

  エルマ、パッと表情に華が咲く

  その傍ら、ガッツポーズをする勇也

  磔の縄が切られる

  ナーチ、解放される

 

エルマ「お怪我はございませんか?」

 

ナーチ「は、はい……!えと、その……」

 

  モジモジ、言い淀むナーチ

  そこに差し出される手

 

勇也「ようこそ、勇者パーティへ!」

 

  ナーチ、パッと顔が明るくなる

  勇也の手を取り―

 

ナーチ「よろしくお願いしましゅ!」

 

× × × × ×

 

  撤収してくハーピーたち

  その傍ら、集まる勇也一行

 

勇也「そう言えば、ラミア族の管理とか、そんなのできるの?」

 

エルマ「あれはハッタリですよ」

 

勇也「Oh……」

 

エルマ「ですが、同族が勇者一行に加わったとなれば、少なからず行動や考え方に影響を与えられるとは思います」

 

勇也「ふむ、なるほどね~」

 

ナーチ「そ、それで、私はこれからどうしたら……?」

 

  モジモジとするナーチ

  勇也、それに目を細めて―

 

勇也「ナーチ、リーシェティムのメンバーだったんだよね?」

 

ナーチ「は、はい……」

 

勇也「じゃあ、魔族たちが集まる、集会場的な場所も分かったり?」

 

ナーチ「サバト、ですね。知ってましゅ」

 

勇也「……ふっふっふ」

 

  低く笑う勇也

  それに首をかしげるバスティ

 

勇也「これまで、散々やられっぱなしだったから、このままでいいのかって思ってね……」

 

ガンテ「確かにな」

 

エルマ「と、いうことは―」

 

  勇也、一同にバッと振り返り―

 

勇也「反撃開始だ!今度はこっちから、サバトに乗り込もう!」

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