ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第二一幕 「ちょうど二十幕も超えたことデスしー」

●リーシェティムサバト・跡地

 

  勇也、地面に仰向け

  身を投げ出しているかのよう

  ゆっくりと目を開ける

  眩い光が入り込んでくる

  夜が明けた、空は快晴だ

 

勇也「こ、こは……」

 

  掠れ声で呟く

  そこに、ヒョコッと少女の顔

  視界に飛び込んでくる

 

??「ようやくお目覚めデスか」

 

勇也「うわぉっ!」

 

  勇也、思わず跳ね起きる

 

??「人間は、よく眠るデスね」

 

勇也「き、君は……?」

 

  クリーム色の長髪、碧空色の瞳

  華奢で、線の細い体

  その所々、金属パーツ

  服は着ていない、胸を露出している

  だがそれも、光沢のある膨らんだパーツ

  無垢と人工物の融合体

  その姿はまるで―

 

勇也M「アンドロイド……?」

 

  少女、局部を隠して―

 

??「やんっ。起床早々発情とは、ハレンチな男デスね」

 

勇也「ち、違くて……!君は……?」

 

ピリオネ「ワタシの名はピリオネ、マキナ族です」

 

勇也「マキナ族……」

 

ピリオネ「それはそうと、案外平静デスね。さっきまで、バラバラの粉々だったデスのに」

 

勇也「え、な、何のこと……?」

 

ピリオネ「……あぁ、記憶がないだけデスか。ま、無理もないデス。だって、脳みそぶちまけたんデスから」

 

勇也「ふっ、そんなんで動じる俺じゃないぞ。これでも、グロ耐性はあるん―」

 

ピリオネ「あぁ、ごめんなさいデス。ぶちまけたのは脳みそだけじゃなくて―全部、でしたデス」

 

勇也「さ、さっきから何を言って―」

 

  ピリオネ、スッと指をさす

  その細い指が示す先

  勇也、ゆっくりと振り向く

  そして、絶句する

 

勇也「……っ!」

 

  辺りは瓦礫の山、乾いた血の染み

  魔法の杖、それを握る手首

  千切れた両足、赤毛が散らばっている

 

勇也「あ……」

 

  顔面の抉れた頭部、猫耳は動かない

  細い腕、宝石を握っている

 

勇也「あ……、あ……」

 

  紫の光は、もはや灯っていない

  吐瀉物を煮詰めたような悪臭

 

勇也「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

ピリオネ「うるさいデ~ス」

 

  勇也、頭を抱え発狂

  見開かれた瞳、涙が落下

  身を捩り―

 

勇也「痛い、痛い……!うっ、げぼぉぉぁっ!」

 

  勇也、嘔吐

  ビチャビチャ、大量に吐き出す

  腹の底から痙攣する

  それにピリオネ、鼻で笑い―

 

ピリオネ「痛いわけないデス。バラバラだったオマエを、ワタシが魔道具でくっつけたんデスから。おぇ、クッサ……」

 

  肩を振るわせる勇也

  呼吸は絶え絶え

 

  〔回想〕

  エルマ「皆様、逃げt—」

    エルマ、体に大きな風穴

    向こう側がハッキリと見えるほど

  × × × × ×

    やがて現れた二人の少女

    色白の肌、純白のワンピースに長い黒髪

  ??「……こんなことしたら」

  ??「……ダメだよ」

    直後、キンと耳鳴り

    そして、弾ける

    何もかも、全て

 

  呆然とする勇也

  そこに、何かが聞こえる

  嫌な音だ

  何かを貪るような音

  ハッと顔を上げる

  魔獣だ、勇也たちを囲っている

  大型の狼のような魔獣、涎を垂らす

  だが、その様相は獣らしくない

  実に、機械的な造形をしている

 

ピリオネ「あ~あ、呼び寄せた。オマエのせいデ~ス」

 

  不快な音はどこからともなく

  戸惑う勇也、辺りを見回す

  一匹の魔獣、何かを貪っている

  手首だ、エルマの手首

  牙を立て、夢中で肉に喰らいつく

  勇也、それを見て震える

  喉から絞り出すように―

 

勇也「食うな……。エルマを、食うなぁぁぁぁ!!!」

 

  勇也、ヴァラーに変身

  剣を振るう、魔獣の首を落とす

  飛びついてくる魔獣、ヴァラーの腕を噛む

 

ヴァラー「ぐっ……、らぁ!」

 

  腕を引く、体と頭を分断させる

  目の前、細い腕を貪る魔獣

 

ヴァラー「俺の仲間を、食うなぁぁぁぁ!!!」

 

  飛び出すヴァラー

  直後、膝をつく

 

ヴァラー「ぐっ……!」

 

ヴァラーM「体が、動かない……!」

 

ピリオネ「どうやら、まだ本調子じゃないようデスね。はぁ~、仕方ないデス」

 

  ピリオネ、ピョンピョンとスキップ

  ヴァラーの前に立つ

  目元、手でピースサインを作り―

 

ピリオネ「くたばれゴミムシ共、デス☆」

 

  直後、瞳から光線が放たれる

  魔獣、一瞬のうちに灰と化す

  咳き込むヴァラー、変身解除

 

ピリオネ「不甲斐ないデスね。肉体も精神も貧弱軟弱、これが本当に勇者デスか?」

 

勇也「―けて」

 

ピリオネ「はい?デス」

 

勇也「仲間を……、みんなを助けて……。俺みたいに、生き返らせて……」

 

  ピリオネ、至極平然と―

 

ピリオネ「嫌デス」

 

勇也「な、何で……!俺のことは生き返らせたのに……!」

 

ピリオネ「それは、ワタシにとって利益になると演算したからデス。既にオマエは、蘇らせてもらったという借りがあるはずデス。その上、仲間全員を生き返らせろなんて、図々しいにもほどがあるデス。ワタシにそんな義理はないデs―」

 

勇也「デスデスデスデスうるっせぇんだよっ!」

 

  勇也、ピリオネの肩をガッと掴んで―

 

勇也「早く……、早く生き返らせてくれよ!みんなの、こんな姿……、俺は……!」

 

ピリオネ「慣れないことはするもんじゃないデス。実に、惨めデス」

 

勇也「え……?」

 

  肩を掴む勇也の腕

  カタカタと小刻みに震えている

 

ピリオネ「自分の責任を、赤の他人に押し付けるなデス。このバッドエンドを招いたのは、他の誰でもないオマエデス。その責任の所在を履き違えてワタシに詰め寄るなんて……、オマエ、どこまでも浅ましい奴デス」

 

  勇也、フッと力が抜ける

  ドサッと膝から崩れ落ちる

 

勇也M「そっか……、全部、俺が招いたことだ……」

 

  〔回想〕

  勇也「反撃開始だ!今度はこっちから、サバトに乗り込もう!」

 

勇也M「俺が、調子に乗ってあんなこと……」

 

  ポツポツ、涙が零れ落ちる

  ただ、落ちるだけ

  絶望に、顔は強張っている

 

ピリオネ「ですが、ワタシも鬼じゃないデス。オマエがワタシの願いを聞いてくれるなら、考えてやってもいいデス。というか、そもそもそのために生き返らせたんデスから」

 

勇也「ほ、本当……!?」

 

ピリオネ「じゃ、着いてくるデス」

 

  ピリオネ、一人で歩を進める

 

勇也「ど、どこに……?」

 

  ピリオネ、こちらに振り返って―

 

ピリオネ「オマエを、ワタシの故郷に案内するデス」

 

●ボーテミュイズン〔上界〕・山道

 

  勇也とピリオネ、歩いている

  辺りは木々が鬱蒼としている

  一歩進むごとに、その色は濃くなる

  勇也、ピリオネをチラと見て―

 

勇也M「何だ、この状況……。俺、サイボーグ少女と歩いてる……。いや、魔法の世界だから、オートマタが正しいか……?Siriを擬人化したら、こんな感じなのかな……」

 

勇也「き、今日の天気は?」

 

ピリオネ「ボーテミュイズン上界の天気は、晴れです」

 

勇也「おぉ……!え、えっと……、付き合ってください……」

 

ピリオネ「すみません、よくわかりません」

 

勇也「……お、おっぱい」

 

ピリオネ「……」

 

  ピリオネ、鼻で嘲笑

 

勇也「あ、死にたい」

 

ピリオネ「ですが、聡明なワタシに物事を尋ねるのは賢明な判断デス。オマエの知りたいことなら、なんだって語ってやるデス」

 

勇也「あ、あの……」

 

ピリオネ「なんデスか?」

 

勇也「は、儚田勇也なんですけど……、俺の名前……」

 

ピリオネ「そうデスか」

 

  ピリオネ、ニタッと笑って―

 

ピリオネ「じゃあ、とっとと質問するデス、オマエ」

 

  勇也、それに溜息

 

勇也「んと……。じゃあ、この世界について」

 

ピリオネ「というのは、ボーテミュイズンについて、デスか?」

 

勇也「うん。俺、勇者だけどまだまだ知らないこと多くて。っていうか、多いみたいで……、周りの反応的に」

 

ピリオネ「なら、ちょうど二十幕も超えたことデスし、ゆっくり解説していくんだぜ、デス!」

 

勇也「なんか聞き覚えが……」

 

ピリオネ「ここは、ボーテミュイズン。世界樹『ユグドライド』を核とした、剣と魔法、そして亜種族の住まう世界デス。因みに、この世界で魔法に精通している種族は2つあるデス。何かわかるデスか、オマエ?」

 

勇也「エルマがエルフ族で……、あとは何だ?」

 

ピリオネ「龍人族デス。それぞれ、魔法に対する認識が違うらしいデスが、そこら辺は興味ないので割愛するデス」

 

勇也「あ、はい」

 

ピリオネ「この世界は、上界と下界に分かれており、それぞれに高貴種と下賤種が住んでいるデス」

 

勇也「この世界の差別の根源ね……」

 

ピリオネ「因みに、ワタシはどっちだと思うデスか?」

 

勇也「何その『私、何歳に見える?』みたいな質問」

 

ピリオネ「答えによっては、勇者の旅はここで終わるデス」

 

勇也「高貴種!高貴種です!」

 

ピリオネ「その通りデス!」

 

  胸を撫で下ろす勇也

 

勇也「そうだ、旧人間族?はどうだったの?」

 

ピリオネ「何言ってるデス。その当時は、まだそんな区別なかったデス」

 

勇也「あぁ、そっか。確か、エルフ族が何とかって……」

 

ピリオネ「でも―」

 

  ピリオネ、手を口元へ

  クスクスと笑いながら―

 

ピリオネ「オマエは、間違いなく下賤種デスね」

 

勇也M「こいつ、いつか分からせてやる!」

 

ピリオネ「まず、その見てくれがいかにも下賤種デス」

 

勇也「どの世界でも、俺の相場って変わんないんだなぁ……」

 

ピリオネ「実に、哀れ哀れデス」

 

勇也「そう言えば、まだピリオネのこと聞いてなかった」

 

ピリオネ「ワタシのこと、デスか?」

 

勇也「さっき、剣と魔法の世界って言ってたけど、科学とかAIって、その対極じゃない?」

 

ピリオネ「オマエが何をほざいているのか分からないデス」

 

勇也「え?だって、その格好……」

 

ピリオネ「これは、魔機学の結晶デス!」

 

勇也「魔機学……?これまた、新しい概念……」

 

ピリオネ「エルフ族……、その中でもより高貴な存在であるハイエルフ・マギーチェス氏を始祖とする、魔法を発展させた学問デス」

 

勇也「発展させた……?」

 

ピリオネ「魔学……、つまり一般的な、自由さと柔軟さを備えた魔法の側面を殺した代わりに、より高度で精密な分析や観測を可能とする……、それが魔機学デス。そして、その魔機学から生まれた存在……、それがワタシたち、マキナ族デス!」

 

勇也「なるほど、現実世界の科学やAIに、たまたま似てたってだけか……」

 

ピリオネ「魔機学の結晶である我々の使命は、ボーテミュイズンの監視、及び研究。そして、並行世界、時間軸の観測デス」

 

勇也「並行世界!?時間軸!?」

 

  勇也、羨望の眼差しを向ける

  キラキラと輝く瞳

  先程までの絶望が嘘のよう

 

ピリオネ「い、今までにない食いつきデス……」

 

勇也「そりゃ、SFは男のロマンだからなぁ!」

 

ピリオネ「もしかしたら、オマエのいた世界も観測できるかもしれないデスね」

 

勇也「おぉ、確かに」

 

ピリオネ「ということで、到着デス!ここが、我々マキナ族の住む、魔機都市デス!」

 

  手を広げ、言い放つピリオネ

  しかし、そこには何もない

  相変わらず、木々が鬱蒼としている

  風が吹き、葉がさざめく

  勇也、ポカンと口を開けて―

 

勇也「えっと……。もしかして、木の上に住む種族だったりする?」

 

ピリオネ「はぁ~、やっぱり変わらないデスか」

 

勇也「え?」

 

  肩を落とすピリオネ

  気だるげに、勇也に向き直り―

 

ピリオネ「よく聞けデス。これが今、マキナ族に起こっている問題。そして、オマエを蘇らせた理由デス」

 

勇也「問題って……?」

 

ピリオネ「消えたデス、魔機学が、この世界から」

 

勇也「は?」

 

ピリオネ「正確には、過去の影響を受けて、今のこの世界が魔機学のない世界に改変されたのデス」

 

勇也M「……大丈夫、大丈夫。ドラ○もん見てたからこのくらい……」

 

勇也「つまり、過去改変?」

 

ピリオネ「ご名答、デス。さっき戦った魔獣、どこかおかしかったデスよね?」

 

勇也「……あ」

 

  〔回想〕

    魔獣だ、勇也たちを囲っている

    大型の狼のような魔獣、涎を垂らす

    だが、その様相は獣らしくない

    実に、機械的な造形をしている

 

勇也「確かに、あんなのこれまでいなかった……」

 

ピリオネ「あれは、魔機獣。恐らく、改変によって生まれた存在デス」

 

勇也「じ、じゃあさ、魔機学が消えたならどうしてピリオネは存在してるの?魔機学から生まれた存在なら、ピリオネもいないことになってるはず……」

 

ピリオネ「ワタシは、特異点デス。世界に関する、あらゆる改竄の影響を受けませんデス」

 

勇也M「特異点……、聞いたことある」

 

ピリオネ「そして、オマエも特異点デス」

 

勇也「お、俺も!?」

 

ピリオネ「そもそも、オマエはこの世界の歴史には無関係の存在。召喚される勇者は、基本的に皆特異点デス」

 

勇也「そっか……。それで、俺を生き返らせたのは……」

 

ピリオネ「ワタシと一緒に、過去に飛んで歴史を元に戻す、デス」

 

勇也「つまり、魔機学の始祖を……」

 

ピリオネ「彼の存在無くして、ワタシたちは成り立たない。それは、彼が魔機学の始祖であるのと同時に、彼が自らの命を犠牲に、魔機都市を稼働させているからデス」

 

勇也「もし、成功したら……」

 

ピリオネ「約束通りオマエの仲間、全員蘇生してやるデス。さて、どうs―」

 

勇也「やる!」

 

  ピリオネ、眉を上げる

  勇也、彼女を真っ直ぐ見つめて―

 

勇也「過去に飛ぶ……!それが、今の俺に出来る唯一の罪滅ぼしだ……」

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