ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~ 作:であであ
●??
勇也とピリオネ、落ちている
蠢く、不思議な空間が広がる
勇也M「これが、所謂タイムホール……。やはりピリオネは、未来から来た猫型ロボットではないのか。だって、さっきも―」
◆ボーテミュイズン〔上界〕・山奥《回想》
ピリオネ、腹のあたりを弄っている
そこには、一つのポケットが着いている
勇也「な、何してるの?」
ピリオネ「過去に飛ぶための魔道具をば」
勇也「魔道具?」
巨大な装置、ポケットから出てくる
ピリオネ「テッテレ~『タイムカプセル~』」
ドスンッ、砂煙が舞う
勇也、口をあんぐり
ピリオネ「これで、過去の時間に飛ぶデス。因みに、実際に肉体ごと飛ぶわけじゃないデスよ?意識だけのタイムリープデス」
勇也「ごめん、青狸にしか見えなくて、話しが入って来ない……」
ピリオネ「侮辱デスか!?訴えるデス!」
●??
勇也M「あれは完全に、もしもボ○クスを出すときのドラ○もんだったな……」
ピリオネ「馬鹿面してるとこ悪いデスけど、そろそろ着くデスよ」
勇也「口の方が悪いよ。そういえば、魔機学が確立したのって何年前なの?」
ピリオネ「さぁ、遥か昔過ぎて数えるのも嫌デス。ただ、高貴種と下賤種の選別が行われた……、それより前なのは確実デス。今となっては、エルフもハイエルフも等しく下賤種デスからね」
〔回想〕
アノス「全ての始まりは、忌子をこの世界に再び召喚したエルフ族だ。やつらを皮切りに、亜種族間の高貴と下賤の選別が行われ、多くの種族が下界へと堕ちることになった」
勇也「……」
ピリオネ「さ、到着デス。衝撃に備えろ、デス!」
勇也「え、え?衝撃って?ちょ―」
直後、目の前、光り輝く
その眩しさに、思わず目を覆う勇也
やがて、真っ白な光が二人を包み込む
●エルフ族の森・マギーチェスの部屋
木造の、落ち着いた雰囲気の部屋
古びた本棚には、大量の書物
読み込まれボロボロ
中央のテーブル、置かれた杖の数々
そして、その傍らで倒れるマギーチェス
血溜まりの中で眠る、動く気配はない
勇也、思わず尻餅をついて―
勇也「こ、れが……」
ピリオネ「あ~。これ、詰み、デスね」
勇也「え……?」
ピリオネ「端的に言えば、ワタシたちにこの事象を変化させることは出来ないデス」
勇也「い、今からでも治癒魔法で……!あ、証石はエルマが……」
ピリオネ「馬鹿デスね、そう言う話ではないデス」
勇也、眉を歪める
不服と困惑が混じった顔
ピリオネ「さっきも話したデスが、今のワタシたちは意識体。ワタシたちの意識のみが、体を置き去りにしてこの時間にやってきたデス」
勇也「幽体離脱、的な……」
ピリオネ「故に、ワタシたちはこの時間の人や物、あらゆる事象に直接干渉することはできないデス。ワタシたちの行動は例えば、本がカタッと動く、扉がギシッと鳴る、塵が僅かに舞うetc、などのほんの些細な現象として表現されるデス。そしてそれが、マギーチェス氏が魔機学の研究を始めるきっかけになるはずなのデス」
勇也「つまり……、マギーチェスさんは大々的に『魔機学の研究をするぞー!』って言って始めたわけじゃない……?」
ピリオネ「そうデス。彼のもたらした結果は、確かに偉大だった。デスが、そのきっかけはほんの些細なもの……。彼が、魔機学の研究を始めるも始めないもただ偶然……、確率論でしかないのデス。その証拠に、魔機学のない改竄された世界は、特異点のワタシたちから見ても、気づかない程度の変化しかなかったはずデス」
〔回想〕
魔獣だ、勇也たちを囲っている
大型の狼のような魔獣、涎を垂らす
だが、その様相は獣らしくない
実に、機械的な造形をしている
勇也「確かに、モンスターはちょっと変だったけど、それ以外はなにも……」
ピリオネ「それだけ、魔機学がニッチで、マキナ族が排他的である、ということデス。偉大、というのもマキナ族にとって偉大、というだけデス。ワタシたちの存在を知っている種族なんて、この世界に殆どいないデスよ」
ピリオネ、視線を落とす
その横顔は、心悲しげ
勇也「そうなんだ……」
ピリオネ「さて、今回の事象デスが、どうやら並行世界の過去の出来事が、ワタシたちの世界線の過去に影響を与えたみたいデスね」
勇也「殺すぐらいだから、魔機学が確立されると不都合な誰か……。もしかして、魔族冥衆……!?」
ピリオネ「そんな単純な話じゃないデス。この世界には、数多の可能性があり、それと同数の並行世界が存在するデス。世界は常に分岐している……、どんなことがあっても不思議じゃない。これも、数ある内の事象の一つに過ぎないのデス。それこそ、基盤となる事象が確率論的なものであるなら尚のこと。そしてこれは、ワタシたちとは異なる直接的な干渉。それを止めることは出来ないデス」
勇也「ってことは……」
ピリオネ「諦めて帰る、デス!」
勇也「え、ちょ……!」
直後、空間、激しく歪む
眼前、広がる暗闇
どこまでも続いている
勇也、やがてその闇に呑まれる
勇也「……!」
× × × × ×
ハッと目を見開く勇也
最初に聞こえたのは、お経
木魚、無機質に木霊する
次に、人々の啜り泣く声
椅子に腰かけ、手を合わせ、涙を拭う
ふと、正面に目を向ける
飾られた写真、勇也が写っている
遺影だ
無表情、こちらを真っ直ぐ見つめる
勇也「俺……?」
勇也M「違う、これは並行世界だ……。こんなこと、本当に起きてるわけじゃない……!だけど……」
直後、再び歪む空間
悍ましい気配に身を包まれる
× × × × ×
ハッと目を開く勇也
煮え滾るマグマのような空
そして、地面に倒れ伏す勇也一行
勇也「みんな……」
遠方、何かが佇んでいる
影が差し、全容は分からない
しかし、悍ましい気配を放っている
思わず、後退りしてしまうほど
勇也、グッと歯を食いしばり―
勇也「頑張れ、負けるな……!これが終われば、きっと帰れるから……!だから……、立て、俺……!」
直後、再び歪む空間
眩い光がさす
勇也、それに包み込まれる
●ボーテミュイズン〔上界〕・山奥
ハッと目を覚ます勇也
巨大な装置の中、体を起こす
傍ら、ピリオネが気づいて―
ピリオネ「おはよう、アナタ♡デス」
しかし、勇也、呆然
一点を見つめている
〔回想〕
遠方、何かが佇んでいる
影が差し、全容は分からない
しかし、悍ましい気配を放っている
勇也M「まさか……、あれが……」
勇也「魔王……」
ピリオネ「あぁ、きっと他の並行世界や時間軸と繋がっただけデス。気にすることないデス」
勇也「……そう、だよね」
ピリオネ「それより、どうするデスかね~」
勇也「まさか、歴史が元に戻らないと、みんなを助けるって約束も―」
ピリオネ「もちろん、叶わないデス。条件が達成できてないデスからねぇ」
勇也「そんな……!」
ゴソゴソ、ポケットを弄るピリオネ
ピリオネ「ん~、何か良い魔道具は~」
直後、ピリオネ、ハッとする
ポケットから、小型装置を取り出して―
ピリオネ「テッテレ~『時空間修正装置~』」
ピリオネ、それを足元に設置
直後、大きな地揺れ、轟音が響く
勇也「な、なになになに!?」
眼前、薙ぎ倒されていく木々
空間が歪み、そして拡張
やがてそこに、巨大なビル群が現れる
勇也「こ、これは……?」
ピリオネ「これが、マキナ族の魔機都市デス!」
勇也「……え?」
ピリオネ「なんデス?」
勇也「えっと……、あれ……?」
ピリオネ「脳みそよわよわデスか?」
勇也「だ、だって……、マギーチェスさんが死んだ、から、全部なくなったって……」
ピリオネ「だから、たった今、それを解決したデス」
勇也「……は?」
ピリオネ「この装置で、改竄された歴史を綺麗サッパリ戻したデス」
勇也、開いた口が塞がらない
ピリオネ「馬鹿面デスね。デスが、これがマキナ族!」
ピリオネ、ビシッとポーズを決めて―
ピリオネ「『デウス・エクス・マキナ』でズバッと解決!終わりよければ全てよし、デス!」
ピリオネ、言い終わりポケットを弄る
ピリオネ「いや~、ちょうど良い魔道具があって助かったデ~ス」
勇也、口をポカンと開けたまま
言葉が出てこない
勇也M「これ、俺、必要だった~……?」
●マキナ族の魔機都市・ピリオネの家
エルマ、料理を作っている
慣れた手つきで、食材を切る
そこに、勇也がやってくる
エルマの包丁を手に取り―
勇也「俺がやるから、エルマはゆっくりしてて!」
エルマ「あ、ありがとうございます……」
× × × × ×
ガンテとナーチ、武器を磨いている
そこに、勇也が颯爽と現れ―
勇也「俺が綺麗にしとくから、二人は休んでて!」
ガンテ「おぉ、にーちゃん、さんきゅー」
ナーチ「……」
× × × × ×
バスティ、窓際で香箱座り
その隣、勇也が香箱座りで―
勇也「バスティも、俺がやっとくからゆっくりしといて!」
バスティ「アンタは何をやってるのよ」
× × × × ×
ガンテ「何か、にーちゃんおかしくねぇか?」
エルマ「妙に積極的と言いますか……」
バスティ「日向ぼっこ、邪魔されたわ」
ナーチ「私のDual Dagger……」
??「全く、調子のいいやつデス」
振り返る一同
ピリオネ、椅子に踏ん反り返って座っている
ガンテ「んで、こいつは誰なんだ?」
ピリオネ「口を慎めデス、半端者」
ガンテ「んだとっ!?」
エルマ「これがマキナ族……、初めて見ました……」
バスティ「マキナ族?」
エルマ「魔学……、魔法を転用した魔機学という学問を基に造られた、機人の種族です」
バスティ「ふ~ん」
ピリオネ「ふっふっふ、その目にしかと焼き付けるといいデス!」
ガンテ「うっぜぇ~」
エルマ「勇也様とは、いつの間にお知り合いに?」
ピリオネ「それはまぁ~、色々あってデスね~」
バスティ「色々ってなによ?」
ピリオネ「そうデスね~、例えば―」
ピリオネ、ニヤッと悪戯に笑って―
ピリオネ「一緒に寝たデス」
ピリオネM「タイムカプセルで」
バスティ、ボッと顔を赤くして―
バスティ「な、なになに、何言ってんのよハレンチな!」
ガンテ「ねーちゃん、何そんな焦ってんだよ?」
バスティ「だ、だって……!お、男の人と女の人が二人で寝たら、す、することなんて一つじゃない……!」
ガンテ「?」
ナーチ「はわわわ~……!」
エルマ「はぁ~……」
ピリオネ「我々マキナ族の使命は、ボーテミュイズンの観察、及び研究デス。ということで、しばらくオマエたちに着いて行くことにしたデスので。貴重な研究材料として、十分に機能することデスね」
× × × × ×
夜
廊下を歩く勇也
そこにふと、バスティが現れて―
勇也「バスティ」
バスティ「勇也、少しいいかしら……?」
勇也「?」
勇也、ハッとして―
勇也「まさか、夜のおさそ―」
バスティ「早く来なさい」
× × × × ×
とある一室
席に腰かける勇也、その隣にエルマ
対面のバスティ、神妙な面持ち
勇也M「3Pとは、バスティもレベル高いな……、なんて」
エルマ「それで、お話というのは?」
バスティ「……そうね、前の続きって言えば分かるかしら?」
エルマ、ハッと目を見開く
〔回想〕
バスティ「だから、私たちのことも助けてくれるんじゃないかって……。勝手に、どっかで期待してたのかしらね……」
バスティ「時が来たら、ちゃんと話すわよ」
エルマ「……はい」
勇也「ん、何のこと?」
バスティ「アタシの故郷について、そろそろ話そうと思ってね」
勇也「バスティの、故郷……?」
バスティ、静かな声音で―
バスティ「アンタらを、獣人族の村に案内するわ。特に勇也……、アンタには知っていてもらいたいの。アタシたち、獣人族のことを……」