ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第二五幕 「ナーチの自虐、キャンセル!」

ナーチ「―しゃん……、勇也しゃん……!」

 

  眠っている勇也

  ゆっくりと瞼を開く

  砂に横たえられた体、バッと起こす

 

勇也「ナーチ……」

 

ナーチ「よかった……」

 

勇也「ここは……?」

 

  見渡す限り一面の砂

  そこに、無数の墓石が立ち並ぶ

  空は一点の光もない闇

  まるで、地獄

 

× × × × ×

 

  地面に倒れるバスティとガンテ

  頬に水が触れる、その感覚で目を覚ます

  重そうに体を起こすバスティ

  傍ら、ガンテを殴って―

 

バスティ「ちょっと、起きなさいよ」

 

ガンテ「……ってぇな」

 

  ガンテ、気怠げに体を起こす

  辺りを見回し、眉を顰める

 

ガンテ「あぁ?何だ、ここ……」

 

バスティ「さぁ、分からないけど―」

 

  眼前、聳えるは巨大な噴水

  そこから湧き溢れる、真っ赤な液体

  まるで、血液のよう

 

バスティ「マズいことになってるのは、間違いなさそうね……」

 

× × × × ×

 

  エルマとピリオネ、辺りを見渡している

  どこまでも続く、永遠の漆黒

  遠方、一点の光が眩しくさすだけ

 

エルマ「魔界、ですね……」

 

ピリオネ「間違いないデス」

 

  ピリオネ、低く唸るように―

 

ピリオネ「どうやら、魔王が目覚めたみたいデス……」

 

●屍の丘

 

  ザッザッザ、砂を掻く音が響く

  勇也とナーチ、歩いている

 

勇也M「一面の砂景色に、立ち並ぶ墓石……。これまた、何とも不気味なこと……。でも、中二病的には悪くない景色だぁ。よし、ここを『屍の丘』と命名しよう」

 

  振り返る勇也

  ナーチ、後を着いてくる

  その表情、影が差している

 

勇也「ナーチ、大丈夫?」

 

ナーチ「は、はい……。みなしゃん、どこに行っちゃったんでしょう……」

 

勇也「抜け出す方法を考えないとな……。取り敢えず、今は歩いてみよう。もしかしたら、何か見つかるかもしれないから」

 

ナーチ「は、はい……」

 

× × × × ×

 

  10分後

  歩いている勇也とナーチ

  靴に砂が入ってくる

  不快感に眉を顰める

  しかし、堪えて歩き続ける

 

× × × × ×

 

  30分後

  表情に、疲労の色が見え始める

  砂の入った靴が、鉛のように重い

  勇也、息を切らしながら―

 

勇也M「何もない……。っていうか、砂と墓しかないから進んでるのかさえ分からない……。これ、エルマたちと離されたの、結構ピンチなんじゃ……?」

 

ナーチ「勇也しゃんは、いつから小説を書き始めたんでしゅか?」

 

勇也「え?」

 

勇也M「も、もしかして、気を遣ってくれてる……?」

 

勇也「えっと、確か中学2年生の頃からかな」

 

ナーチ「そ、そうなんでしゅね……」

 

勇也「……」

 

ナーチ「……」

 

勇也「ナ、ナーチは小説、自分で書いたりとかしないの?」

 

ナーチ「わ、私が小説なんて、そんな恐れ多い……」

 

勇也「いやいや、理想の世界を実現する権利は誰しも平等に持っているのだよ。用意するのはペンと紙だけ!君もどうだい?」

 

ナーチ「その、ペンと紙さえないでしゅから……」

 

勇也「あぁ、そっか……」

 

ナーチ「……」

 

勇也「……」

 

勇也M「いや、話しが重いよ!っていうか、互いに陰キャだから会話が続かない……!この二重地獄から抜け出すにはどうしたら……」

 

  勇也、ふと墓を見やる

  ハッと、目を見開く

  吸い込まれるように、墓石の前へ

 

ナーチ「ゆ、勇也しゃん……?」

 

  後を着けるナーチ

  勇也、一つの墓石の前に佇んでいる

  そこに刻まれた文字―

 

ナーチ「ミミゲ……?」

 

勇也「……犬の名前だ。俺が、小さい頃飼ってた」

 

ナーチ「え……」

 

勇也「当時から俺、友達いなかったからさ、ずっと一人で……。それを見かねた両親が、飼ってくれたんだ。凄く人懐っこくて、四六時中ずっと一緒にいた。もう、ミミゲさえいれば、あとは何もいらないって、本気で思ってたよ……」

 

ナーチ「仲良しだったんでしゅね」

 

勇也「……でも、死んじゃった。散歩してたら、突然走り出して。道路に飛び出しちゃって、車に轢かれて、そのまま……」

 

ナーチ「……」

 

勇也「だからね、めちゃくちゃ考えたんだよ。原因を」

 

ナーチ「え?」

 

勇也「俺の力が弱かったのか、リードが緩んでたのか、肌触りが気に入らなかったのか、車の音とか外の景色に興奮したのか、別の犬の匂いを感じたのか、俺には見えない何かを見たのか……。SNSで調べつくして、獣医さんにも聞いて……。次に飼う子は、絶対に同じ目に合わせないために」

 

  ナーチ、ハッと眉を上げる

 

  〔回想〕

  勇也「それじゃ、意味ないだろ。原因とか過程を調べないと、次同じことが起きた時、対処できなくなる……」

 

勇也「今、どうしてるかな……。ちゃんと、散歩行けてるかな……」

 

ナーチ「勇也しゃんは、優しいんでしゅね……」

 

勇也「……そうかな。俺はただ、自分が生きやすいように環境を……、状況を整えてるだけだよ。悲しいこととか辛いこととか、精神衛生上よくないでしょ?もう、あんな気持ちはごめんだよ……」

 

ナーチ「その、新しい子はなんて言うんでしゅか?」

 

勇也「ハグキ」

 

ナーチ「あぁ……」

 

ナーチM「さっきから名前のせいで、あんまり話が入って来ない……」

 

  その時、激しい地揺れ

  轟音、遠方から迫ってくる

 

勇也「な、何だ……!?」

 

  眼前、砂丘、弾ける

  立ち昇る砂の間欠泉

  一匹の巨大な獣、姿を現す

  勇也、その姿を見て唖然

 

勇也「ミミゲ……?」

 

ナーチ「え……?」

 

  血濡れの体、露出した内臓、折れた首

  真っ黒な瞳でこちらを見下ろす

  それを呆然と見つめる勇也

  闇に吸い込まれ、体が動かない

  ナーチ、その様子を見て決然とし―

 

ナーチM「私が……、私がやらなきゃ……!」

 

  飛び出すナーチ

  双剣を構え、首元に振るう

  しかし、弾かれる

  傷一つつかない

 

ナーチ「あ゛っ……!」

 

  ミミゲ、前足を振るう

  それが、ナーチを殴打

  吹き飛ぶナーチ、砂に塗れる

 

勇也「ナ、ナーチ……!」

 

  駆け寄る勇也

  ナーチ、眉を顰めて―

 

ナーチM「私は……、私は、また……」

 

  〔回想〕

  勇也「だから、自分でいることを諦めないで。自分の境遇に、絶望しないで。俺たちが、ナーチを許すから!」

  ピリオネ「そうデス。あの時ワタシがいなかったら、今頃蛇の開きデス。崇め奉り、尻尾の一つでも献上するデス!」

 

ナーチM「ずっと、助けられてばかりで……」

 

ナーチ「こんな、無力な私が、本当に仲間d—」

 

勇也「キャンセル!」

 

ナーチ「……え?」

 

勇也「ナーチの自虐、キャンセル!」

 

  ナーチ、微かに首を傾げる

 

勇也「ナーチは、無力なんかじゃない。だって、ちゃんと自分と向き合ってるから。弱さとか、欠点とか、嫌なところとか……。そんな自分を変えようとして、みんなの助けになろうとしてくれてる」

 

  〔回想〕

  ナーチ「せっかく仲間にしてもらえたのに……、私、まだ何も出来てないでしゅ……。だから今は、私が力になりたい……!」

 

勇也「そうじゃなかったら、自分からあんなこと言ったりしないよ」

 

ナーチ「……でも」

 

勇也「状況が悪かったら、まぁ嘆きたくもなるよ。今だって、ナーチ手加減してくれてるんでしょ?」

 

ナーチ「……!」

 

勇也「何て言うかな……、良い子なんだよ、ナーチは」

 

ナーチ「そう、なんでしゅか……?」

 

勇也「いつまでも過去に囚われて、いざという時体が動かない……、俺の方がよっぽど無力だ。でも、もう大丈夫。これが本当にミミゲなら、俺がやらなくちゃ……。燻ってる場合じゃない……!」

 

ナーチ「勇也しゃん……」

 

  響く、ミミゲの咆哮

  身構える勇也に、前足を振るう

  瞬間、紫の光がそれを受け止める

  そして、勇也の掌へ

  盟友の証石、紫紺に輝く

  ナーチ、ヨロヨロと立ち上がり―

 

ナーチ「……勇也しゃんが、そこまで言うなら……。私の力、存分に使い潰してくだしゃい!」

 

  力強く言い放つナーチ

  勇也、それにフッと微笑み―

 

勇也「これは、運命論だったんだな」

 

  勇也、ドライバーを取り出し装着

 

勇也「いくよ、ナーチ!」

 

ナーチ「はい!」

 

  証石、バックルに変形

  手首のスロットに装填

  暗殺者の鎧、装着

  飛び出す二人、目に見えない速度

  砂が、舞うのを忘れるほど

 

ナーチ「『プレヴラーシェ』!」

 

  ナーチの両腕、筋肉で肥大化

  まるで、鎧を纏っているかのように頑健

  その腕を振るい、ミミゲの四肢を切断

  崩れ落ちるミミゲ、砂埃が舞う

  その中から、現れるヴァラー

  双剣を構えて―

 

ヴァラー「俺の記憶を反映してるなら、まだまだだな!ミミゲの耳毛は―」

 

  ヴァラー、双剣を振り下ろす

 

ヴァラー「もっと長かった!」

 

  ミミゲの首を切り落とす

  轟音と共に地面に倒れ込む

  やがて、姿が揺らぎ霧散

  ヴァラー、変身解除

  ナーチ、駆け寄ってきて―

 

ナーチ「やりましたね!」

 

勇也「うん!これで、元の場所に戻れればいいんだけど……」

 

  眉を顰める勇也

  その傍ら、モジモジとナーチ

  勇也、それに首を傾げて―

 

勇也「どうかした?」

 

ナーチ「え、いやっ……、さ、さっき、その……、私のこと、良い子、って……」

 

勇也「え?あぁ、うん、ナーチは良い子じゃん」

 

ナーチ「きゃはっ♡」

 

  思わず顔を覆うナーチ

  耳まで赤いのが見える

  勇也、それに苦笑い

 

勇也M「も、もしかして耐性ないのか?ふっ、面白ぇ女……」

 

  掌、紫紺の証石

  勇也、それに視線を落とす

 

勇也M「みんな、無事d―」

 

  消える

  砂埃、微かに舞う

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