ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~ 作:であであ
●鮮血の泉
拳、交わる
けたたましい轟音、衝撃が迸る
睨み合うバスティとガンテ
沈黙、鮮血のせせらぎ
ガンテ「ねーちゃん、飽きた」
バスティ「アタシも」
× × × × ×
噴水のヘリに腰かける二人
止めどなく溢れる鮮血
赫赫と輝いている
空は荒んだ赤色、太陽も月もない
ガンテ「107戦中89勝。俺ってば、やっぱ才能あんだな~」
バスティ「レベルが上がったんだから、当然でしょ」
ガンテ「あれあれ~?未だに仮面ライダーに変身できねぇやつとか、いねぇよなぁ!?」
バスティ「くっ……!アタシだって―」
バスティ、唐突に立ち上がり―
バスティ「っていうか、ここ何なのよ!ずっと血溢れてて気持ち悪いし、もう何時間も閉じ込められたままなんだけど!」
ガンテ「落ち着けって。多分、にーちゃんたちも別のとこに連れてかれてんだ」
バスティ「この噴水が悪いのよ!こんなもの……!」
拳を構えるバスティ、飛び出す
しかし、血に足を滑らせて―
バスティ「きゃっ!」
倒れるバスティ
それを、ガンテが咄嗟に支える
呆れてため息をつき―
ガンテ「ったく、大人しくしてろってんだよ」
バスティ「……ふんっ、子ども扱いしないでよね」
ガンテ「はいはい」
バスティ、パンパンと体を叩く
やがて、落ちる沈黙
その中、モジモジするバスティ
ツンと唇を尖らせて―
バスティ「……う、嬉しかった?」
ガンテ「何が」
バスティ「ア、アタシに、触れて……」
ガンテ「……あぁ?」
バスティ「だって、あの時―」
〔回想〕
バスティに抱き着いているガンテ
消え入るような小さな声で―
ガンテ「ずっと、俺が守ってやる」
バスティ「……!」
バスティ「あの時から、ちょっとおかしいのよ、アタシも……。だから、ここでハッキリさせたい。アンタは、アタシのこと―」
バスティ、ガンテに振り向く
その唇が、奪われる
バスティ「……っ!」
優しく触れあう、唇と唇
永遠に感じるほど長い
やがて、舌と舌が絡み合う
漏れる吐息はバスティの
激しく、淫靡な音が響く
バスティM「ガンテ……」
もう、何も考えられない
脳が痺れ、瞳が蕩ける
??「こんな状況で、お盛んなことねん」
ハッと意識を取り戻すバスティ
声のした方に構える
キュバラー、噴水に腰かけている
しっとりとした目つきでこちらを見て―
キュバラー「ごめんなさいねん、お邪魔しちゃって」
ガンテ「んなこたねぇよ。ここがどこか、教えてくれりゃな」
キュバラー「そうね、アータらとも長い付き合いだし、特別に教えてあげるわん」
キュバラー、目を細め―
キュバラー「魔界……、正確には、魔結界の一つねん」
バスティ「魔結界……?」
ガンテ「ってことは―」
キュバラー「魔王、セミアデス・ブラディカ様が、ついに目覚めたのよ!」
手を広げ、高らかに言い放つキュバラー
バスティとガンテ、その事実に唖然
キュバラー「ここは、魔結界『鮮血の泉』。その血はね、浴び続ける者の精神を蝕んでいくのん。最初は高揚してハイに、そこから沈んで鬱に、そして最後は狂気に堕ちる……。それこそ、自死を選ぶほどのねん」
ガンテ「ふざけんな!どうやったら出れんだ!」
キュバラー「まさか、出すわけないわん。そのために、こうしてアーシがいるんだものん」
ガンテ「何……?」
キュバラー「魔族冥衆・リーシェティムは家族……。魔王様には、指一本触れさせないわん」
バスティ「ふんっ、随分と自信あるようじゃない。アタシたち相手に」
キュバラー「あら、忘れたのかしらん?アーシは淫鬼族……、鬼なのよん?生半可な力で、アーシに勝とうなんて―」
直後、凄まじい風が迫る
ガンテの拳が空を切る風だ
一足で跳躍、キュバラーに迫る
そして、拳が顔面にめり込む
地面に叩きつけられるキュバラー
パチパチ、瞬きしながら―
キュバラー「……あらん?」
ガンテ「散々弄ばれてきた恨み、ここで晴らしてやるぜ!」
ガンテ、キュバラーに馬乗り
顔面に、無数の拳を浴びせる
キュバラー、もはや抵抗しない
目は虚ろ、やがて意識が遠のいていく
最期、微かに唇を震わせて―
キュバラー「かわい、そう……、自覚、ないの、ねん……」
キュバラー、息絶える
瞳から、スッと光が消える
しかし、ガンテ、拳を止めない
バスティ「ガンテーっ!!!」
瞬間、飛びついてくるバスティ
ゴロゴロと転がる二人
バスティ、ガンテに馬乗りになる
前のめりに顔を近づけて―
バスティ「アタシと交尾しなさい!」
ガンテ「っしゃあ!服脱ぐからそこどけ!」
バスティ「獣人にはね、性奴隷にされてる子もいるのよ!どんな感じなのか、ずっと気になってたの!」
ガンテ「これからは、俺のことご主人様って呼べ!」
バスティ「でも、どうすればいいのか分からないのよね!」
ガンテ「俺もだ!」
バスティ「アンタの親はどうやったのよ!」
ガンテ「お袋が親父持って、自分で出し入れしたって話し聞いた!」
バスティ「そう、地獄絵図ね!」
ガンテ「出し入れって何だ!?」
バスティ「さぁ!?」
ガンテ「でも、あんなに仲良いのに、二人でいるところ見たことないんだよな……」
バスティ「アタシも、ママが死んじゃってからは、パパと二人っきり……」
ガンテ「家族なのに、何でだよ……」
バスティ「パパも大好きだけど、やっぱりママが忘れられない……。未だに、夢に見るもの……」
ガンテ「もしかして、俺が愛されてないだけ……?俺がいないところでは、二人は仲良く暮らしてるのか……?今家に戻ったら、また仲良く出し入れしてるのか……?」
バスティ「どうして、アタシなんて生まれてきたのかしら……。ただの奴隷に、何の生まれてきた意味があるの……?いえ、アタシは村から逃げた……。種族の務めすら果たせないアタシに、そもそも価値なんてないんだわ……」
ガンテ「半端者の俺に、味方してくれるやつなんていないんだ……」
バスティ「ねぇ、ガンテ……」
ガンテ「あぁ……?」
顔を上げるガンテ
直後、強烈な打撃が顔面に炸裂
思わず、倒れ込むガンテ
バスティ、それを見て狂喜し―
バスティ「あははっ、分かる!?それが、アタシたち獣人族の痛みよ!世界の上で踏ん反り返ってるアンタには、一生分からないでしょうね!」
ガンテ「くっ……、はは、ははは……、あははははっ!」
ガンテ、歪に口角を歪める
噴水に、拳を振るう
ガンテ「死ね!死ね!死ね!死ねぇ!」
何度も何度も、殴りつける
しかし、ビクともしない
ガンテ「クソがぁぁぁぁぁっ!」
ガンテ、巨大な砲台を錬金
響く轟音、重い衝撃が空を薙ぐ
迸る血飛沫、あがる煙
その中から、バスティの爪が飛び出す
バスティ「死ねーっ!」
爪、ガンテの右目を切りつける
ピッと血が舞う
ガンテ「……っ!」
ガンテ、拳を構えて―
ガンテ「おらぁ!」
バスティの腹部に一振り
しかし、それが―
バスティ「ごぼぉっ……!」
ガンテ「……!」
貫通してしまった
赫赫と照り付けるガンテの腕
バスティ「げぼごぉぉぉぁっ……!」
バスティ、大量に吐血
しかし、その口角は不気味に上がっている
バスティ「……あは、あはは、あはははっ……!やった、やっと、ママに会える……!ママ、今行くわ……」
手を天に掲げ、恍惚と口にするバスティ
息を切らすガンテ、ギリッと歯ぎしり
そして、バスティの顔面を殴りつける
何度も、何度も、何度も
ガンテ「はは、ははは……、はは、ははは……!」
ドスドス、鈍い音が響く
返り血、ガンテの顔に飛ぶ
やがて、水気を含んだ音に変わる
バスティの頭部、もはや原型はない
ドロドロのグチャグチャ
湧き出る鮮血といっしょくた
コロコロと転がる眼球、ガンテを見つめる
次第に、地面に広がっていくヒビ
頭部のないバスティの体、妙に艶めかしい
ガンテ、それを見て頬を赤らめる
歪めた口元、端から涎を垂らし―
ガンテ「俺も、すぐ行くから……」
フラッと立ち上がり、両手を前にかざす
無数の銃を錬金
その銃口が向く先は―ガンテだ
一斉射撃
ガンテ、旋毛から爪先まで風穴
止めどなく溢れる血
ドチャッ、地面に倒れる
一筋の涙、頬を伝う
瞬間、全てが真っ黒になる
× × × × ×
ハッと目を覚ますガンテ
直立している
眼球だけで、辺りを見回す
煮え滾るマグマのような空
眼前、聳える巨大な城
見上げるガンテ、瞳が痙攣する
ガンテの隣に立つバスティ
同じく、唖然としている
勇也「バスティ、ガンテ……?」
ふと、掛けられる声
勇也、こちらを見ている
心配そうに眉を歪めている
エルマ、ナーチ、ピリオネの姿も
エルマ「よかった……。みなさん、無事に合流出来ましたね」
エルマ、安堵の柔らかい声音
しかしガンテ、反応出来ない
言葉が、頭に入って来ない
その意味が、認識できない
やがて、乾いた笑いが零れる
ガンテ「……はは……、はは……」
勇也「ガンテ……?」
ガンテ、白目をむき―
ガンテ「疲れた」
バタッ、倒れる