ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~ 作:であであ
●魔王城・城門(魔結界内)
バスティとガンテ、地面に座り込んでいる
ガンテ、気だるげに頭を押さえて―
ガンテ「地獄みてぇな夢見てた気分だぜ……」
バスティ「アタシも……。何か、唇に変な感触あるし……」
ガンテ「気のせいだろ」
エルマ「いずれにせよ、無事に合流できてよかったです」
ガンテ「あぁ。ついでに、あのキュバラーって魔族冥衆も殺れたし、一石二鳥だぜ」
勇也「え、キュバラーと戦ったの?」
〔回想〕
キュバラー「忘れたのかしらん、勇者の坊や?アーシは淫鬼族……、“鬼”なのよん?そんな短小極細貧弱な剣で、アーシに傷がつけられるとでも?」
× × × × ×
キュバラー「『デモニー・ルトヴァルダ』」
キュバラーの拳に力が集約
禍々しい赤紫のオーラを放つ
それが、ヴァラーの顔面を抉る
勇也、眉を顰め―
勇也「……ありがとう。きっと、凄く苦戦したでしょ?」
ガンテ「いや、別に」
勇也「え?」
バスティ「一方的に殴り殺してたわね」
勇也M「最初から二人に任せてれば、もっと簡単に勝ててた……?」
バスティ「そうだ、手貸しなさい」
首を傾げる勇也、片手を差し出す
バスティ、それを取り自分の胸元へ
勇也「ちょ、ちょっと、バスティさん……!?」
頬を赤らめる勇也
直後、手元が発光する
柔らかく、温かな深緑色
やがて、勇也の掌に一つの宝石
ビリヤードグリーンに輝いている
勇也「これ……」
バスティ「悪かったわね、遅くなって」
勇也「……でも、俺はまだ―」
〔回想〕
村中、至る所に獣人族
その全てが労働をしている
服はボロボロ、黒ずみ汚れている
痩せぎすの体、顔や瞳はまるで死人
勇也「魔族冥衆は倒したけど……。俺はまだ、本当の意味で、獣人族を救えてないと思う……」
目を伏せる勇也
バスティ、それにフッと笑いかけ―
バスティ「いいのよ」
勇也「え?」
バスティ「あれが私たちの……、獣人族の役目。ただ日常を送っているのに、助けるも何もないでしょ?」
自嘲するように笑うバスティ
その瞳は、どこか悲し気
バスティ「魔族冥衆だけでも倒してくれてありがたいわ。だからそれは、感謝の気持ち」
勇也「バスティ……」
バスティ「ほら、何しけた顔してんのよ!これから、魔王を倒しに行くんでしょ?勇者としての大勝負……、これがアンタの役目なんだから、しっかりしなさい!」
勇也「……うん。そう、だな」
ピリオネ「あ、ワタシも渡したいものあるデ~ス」
ピリオネ、手を取る
その手を、自分の胸元へ
やがて、クリームイエローに発光する
そして掌に、ベージュの宝石
ピリオネ「これを、オマエに託すデス」
勇也「ありが―」
ピリオネ「エルマ!」
勇也、ズザッとこける
エルマ、戸惑いがちに―
エルマ「あ、ありがとうございます……」
勇也「お、俺じゃないの……?」
ピリオネ「ん~、オマエは少し、好感度が足りなかったデスね」
勇也M「盟友の証石ってそんなシステムだったっけ……?」
ピリオネ「よ~し、では早速、魔王城に突撃デ~ス!」
ピリオネ、はしゃいで走り出す
エルマ「ピリオネ、危ないですよ」
直後、立ち止まるピリオネ
空間が、大きく歪んでいる
ガンテ「な、何だ!?」
??「よくぞここまで辿りついた、勇者よ」
声が聞こえる
否、脳に直接響いてくる
低く、荘厳な声
??「その度胸を称え、我が謁見の間へと、貴様らを通さん」
勇也「あ、あざす……」
万華鏡のように蠢く空間
辺りの原形などないも同然
やがて、空気が変わる
ピリピリと、張り詰めた空気だ
足裏の感触も変わる
ゴツゴツとした、岩肌を踏みしめている
辺りを見回す勇也一行
威圧するように立ち並ぶ、左右の巨大な柱
その向こうは、どこまでも続く永遠の闇
勇也「ここが、謁見の間……?」
その時、足音が聞こえる
ふと、正面を向く勇也
殺風景の中に、ポツンと佇む玉座
その前に、誰かがいる
近づいてくる
ゆっくりと、一歩一歩踏み締めて
その足音は重く、空間に反響する
心臓に響き、いつまでも耳に残る
勇也、息を詰める
汗が、頬を伝う
そこにいるだけで悍ましい
存在を感じるだけで恐ろしい
心臓の鼓動が走る
やがてその男、歩みを止める
切れ長の瞳で、勇也一行を睥睨
側頭部から、巨大な2本の角
鈍く光り、一行を威圧
眉を顰めるエルマ、震える唇で呟く
エルマ「あ、あなたが……」
??「いかにも」
男、変わらぬ声音で―
ブラディカ「我が名は、セミアデス・ブラディカ。この世界の、魔王である」
× × × × ×
対峙する、勇也一行と魔王
ブラディカ、一行一人一人に視線をやる
まるで、何かを吟味しているかのよう
落ちる沈黙、緊張感を誘う
そして、勇也を見て、一瞬眉を上げ―
ブラディカ「……久しいな、勇者よ」
勇也「え……、初めまして、ですよね……?」
戸惑いに目を泳がせる勇也
ブラディカ、しばし彼をじっと見つめて―
ブラディカ「そうだな。似ても似つかん……」
勇也「……?」
ブラディカ「これまで、幾人もの勇者がこの世界に召喚され、旅をし、そして我が元に辿り着く前に散っていった。謁見の間へと招き入れたのは、500年前、我を封印した奴以来か……。そう考えると、随分と長い時が経ってしまったようだ」
ブラディカ、バスティに視線をやり―
ブラディカ「なぁ、獣人よ。貴様らは未だ、あの天使と悪魔の奴隷なのか?」
嘲笑するような瞳
バスティ、歯をギリッと鳴らして―
ガンテ「話が長ぇんだよ、先手必勝!」
飛び出したのはガンテだ
構えた拳を、ブラディカの顔面に放つ
しかし―
ブラディカ「そう急くな」
ガンテ「……!」
ガンテ、バスティの隣に立っている
否、戻されたのだ
いつの間に、どうやって
何が起きたのか理解できない
故に、ガンテの頬を汗が伝う
闇雲に突っ込んでは、容易に殺られる
それを、本能が感じ取った
ブラディカ「500年振りに、何者かと相対したのだ。久しぶりの交流を、もう少し楽しませろ」
勇也、ゴクリと息をのむ
勇也M「怖い……。正直、凄く怖い……。実際に前にしてみると、思った以上に体が動かない……。だって、相手には明確な敵意と殺意がある……。こんな、ハッキリと向けられたことなんて―」
× × × × ×
どこかの建物、壁沿い
数人の人物に囲まれる勇也
顔には痣、涙を流す
服は汚れ、所々切れている
相手の顔には靄、見えない
× × × × ×
勇也「……?」
勇也M「……よし、ここは―」
勇也「セ、セミアデスさん、少し話しませんか……?」
勇也、手を上げブラディカに笑いかける
平静を装っているが、その口角は痙攣している
ブラディカ、何も言わずただ勇也を見る
勇也「ここで俺たちを逃がしてくれたら、もう俺たちはセミアデスさんのお城に乗り込んだりしません」
エルマ「勇也様……?」
勇也「だからセミアデスさんも、大人しくここで暮らしてください。500年振りの復活でしょ?やりたいこと、いっぱいあるはずです。洗濯物とか、洗い残した食器とか溜まってませんか?あ、お腹空いてますよね!500年も経っていれば、新しい料理とか考案されてるんじゃないですかね。何なら、俺が買ってきてもいいですよ?だから、世界樹に手を出すのはやめましょうよ。何たって、世界に恩恵をもたらしてくれるみんなのアイドルですから。それを手に入れようなんて、ガチ恋オタクの厄介ムーブも甚だしいですよ。お互い、痛いのも苦しいのも嫌でしょ?だから、ここは穏便に―」
ブラディカ「ならん」
一言、吐き捨てるブラディカ
勇也、それにハッと息をのむ
ブラディカ「かつての我ならば、それも受け入れられたであろう……。だが、我からそんな普通の営みを奪ったのは、貴様ら亜種族だ!我は全ての種族が……、この世界の全てが憎い!故にこの世界の一切に、手心を加えるつもりなどない!」
ブラディカ、一行に鋭く目を細め―
ブラディカ「それは勇者、貴様らも然りだ!何代にも渡り死の恐怖、封印の苦痛を与えられたこの屈辱……、今この時、晴らさずしていつ晴らせという?」
バスティ「だからアンタは、ユグドライドの力を使って、この世界を壊そうって言うの?」
ブラディカ「……獣人、その認識は大いに誤りだ」
バスティ「え……?」
ブラディカ「我の目的は、この世界、そして全ての亜種族の支配だ!我を見下し、苔にし、蔑んだこの世界を……、この世界の生きとし生けるもの全てを、我と永遠に繋ぎとめ、従属させるのだ!」
ブラディカ、高らかに言い放つ
その熱量は、留まることを知らない
ブラディカ「我が人語を話せるから、意思疎通ができると思ったか?貴様らと生物的造型が似ているから、説得できると思ったか?笑止千万!」
ブラディカ、剣を召喚
岩肌にガンッと突きつける
ブラディカ「我が名はセミアデス・ブラディカ!この世界の魔王にして、この世界に現存する唯一の魔族!ボーテミュイズンを支配した後は……、勇者、貴様のいた元の世界も……」
陰湿に口角を上げるブラディカ
勇也、それに顔を伏せる
勇也M「……正直、図星だった。見た目人間っぽいし、話し方も冷静で、もしかしたらこっちの言い分も聞いてくれるかもって……。でも、そんな都合のいい話し、ないか。ここは、ゲームでもアニメでもないんだから……」
勇也「そうだ……、お前も話の通じない化け物だ……。だったら、ここで倒すしかない……!」
勇也、クエストドライバーを構える
一行、証石をバックルに変形
手首のスロットに構える
勇也「俺がこの世界に召喚された意味を、果たす時だ……!」
勇也、ブラディカをキッと睨む
魔王、それに悠然とした笑みを浮かべ―
ブラディカ「そうだ、それでよい。勇者は魔王を求めて旅をし、魔王はこの世界の支配を目論む。両者が出会い、やがて死闘の火蓋は切って落とされる……。この対立構造だけがもたらす、愉悦があるのだ。ならば―」
ブラディカ、腕を振るう
漆黒のオーラ、辺りの空間を歪める
見惚れるほど、どこまでも黒い
ブラディカ「我が闇力により葬られんこと、誇りに思うがよい!」