ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~ 作:であであ
●ボーテミュイズン・教会・聖堂内
呆然とする勇也
眼前に佇むエルフ族の少女
思わず、見惚れてしまう
勇也「あなたが……、エルマ、さん……」
風に靡く、金色のロングヘア
その間から、エルフ耳がチラと見える
純白のローブは、彼女の清純さを写す
手に持つのは、魔法の杖
彼女の身長より、幾分か長い
その先端の球は、宇宙のように黒く輝く
エルフというより、女神の様だ
エルマ、静かに目を伏せ―
エルマ「勇也様を召喚したのは他でもありません。ここボーテミュイズンは、魔王の手に堕ちようとしている……。勇也様には、勇者となりこの世界を魔の手からお救いいただきたいのです……!」
ハッと目を見開く勇也
その傍ら、バスティも戸惑った様子で―
バスティ「ちょっと、魔王ってどういうこと!?何も聞いてないわよ!そもそも、魔王ならアタシが子供の頃に討伐されたって聞いたけど!」
思わず声を荒げるバスティ
エルマは、しかしそれに首を振る
エルマ「いいえ、あれは討伐ではなく封印だったのです……。そして今、時を経てその封印が解かれようとしている。以前より強大な力を以って、魔王が目覚めようとしているのです……!」
バスティ「そんな……!」
勇也「俺が、勇者……?」
エルマ「はい。勇也様には勇者として、魔王を討ち滅ぼしていただきたいのです」
勇也「ど、どうして、俺なんですか……?」
エルマ「私たち神官の役目は、魔王の兆候を感じた時、異界から勇者たり得る者を召喚することです。今まで、何人もの勇者がこの地に降り立ち、その多くが散っていきました……。どうして異界なのか、どうして勇也様なのかは、私にも分かりません……」
バスティ「そんな、適当に召喚されたの?」
エルマ「いいえ。これはきっと、神の思し召しなのです。勇也さまこそが、この世界を救ってくださる勇者だという……」
勇也「……だったら、人選ミスだよ。俺には、そんなこと出来ない……。俺には、何の力もない……」
目を伏せ俯く勇也
哀しみと恐怖に、表情が歪む
だが、エルマは首を横に振る
ゆるりと、しかし力強く
エルマ「いいえ、力はあります」
勇也「え?」
エルマ「勇者に選ばれた者だけが手に出来る力……。距離も時さえも超えて受け継がれる伝説の力……。名を『仮面ライダー』……!」
直後、勇也の眼前が光り輝く
眩い光に、思わず目を覆う
やがて現れたのは、一つのドライバー
エルマ「それは『クエストドライバー』。この世界の勇者……、仮面ライダーに変身することが出来る唯一無二の装備です」
掌に、クエストドライバーが乗る
伝説の剣とその台座を模したような造型
勇也、それを訝し気に見つめて―
勇也M「仮面ライダーって、ニチアサの……。特撮はあんまり見てこなかったけど……」
エルマ「歴代勇者様は、その力で魔王に立ち向かっていきました。同じく勇者である勇也様にも、きっと使いこなせるはず……。その力で、此度復活を遂げようとしている魔王を、今度こそ永遠に葬っていただきたいのです……!」
その言葉を聞いて、勇也の瞳が遠くなる
胸中に、何やら重いものが圧し掛かってくる
勇也M「……分かってた。ただ、平和な異世界を旅するだけじゃないって。そんな生温いものじゃないって、無意識に感じてた……。でも、こんな責任重大なこと、実際にお願いされたら……」
勇也「俺一人に、そんなこと出来るの……?」
エルマ「確かに、勇也様お一人では、難しいかもしれません。ですが、仲間と力を合わせれば、きっと可能でしょう」
勇也「仲間……?」
エルマ「歴代勇者様には、パーティと呼ばれる、共に魔王討伐を目指して旅をする仲間たちがいました。まずは、彼らを募るところから始めましょう」
勇也「……そっか、一人で戦ってたわけじゃないんだ」
エルマ「はい。そしてこれは、その証」
胸元に手を添えるエルマ
刹那、眩い光がエルマから溢れ出す
勇者「え、何?規制?」
やがて、純白の宝石が現れる
引き寄せられるように、勇也の掌へ
勇也「これは……」
エルマ「盟友の証石……。勇者の仲間となった者がその勇者に託す、魂の結晶です」
勇也「ってことは、エルマさんが……」
エルマ「はい。私、エルマ、魔王討伐のため、勇者、勇也様にお仕えいたします」
上品に首を垂れるエルマ
白のローブが風にフワッと舞う
感動し、思わず瞠目してしまう
顔を上げるエルマ、バスティを見て―
エルマ「獣人の貴方はどうしますか?」
バスティ「バスティよ。ま、仕方ないから着いてってあげるわ。魔王がいるんじゃ、安心して過ごせないもの」
エルマ「では、貴方も盟友の証石を―」
バスティ「それはちょっと待って」
エルマ「え?」
掌を突きつけるバスティ
分かりやすいノーのポーズだ
エルマ、それに疑問符を浮かべる
バスティ「アタシはまだ、アンタを勇者だとは認めてない」
勇也「な、何でだよ。この勇者の証が目に入らぬか」
ドライバーを突きつける勇也
それに、バスティが鋭い視線を向ける
獲物に狙いを定める、獣の目だ
バスティ「何で……?自分の胸に手を当てて考えてみなさいよ。アンタ、さっきのスライム戦で何してた?」
その言葉に、眉を上げる勇也
過去の記憶を遡ってみる
〔回想〕
勇也「今まで葬ってきたスライムは数知れず。歴戦の勇者ゆえ、この戦いは君に任せよう、バスティ!」
威勢のいい表情の勇也
しかし、体は座席の裏で震えている
勇也「何もしてませんでした……」
バスティ「あんなへっぴり腰に、本当に勇者なんて務まるわけ?」
エルマ「異界から召喚されたのですから、間違いありません……、多分」
勇也「エルマさん?」
バスティ「まぁ、今後の活躍次第では、認めてあげないこともないけど」
勇也「なんか上からだな~……」
バスティ「何か言ったかしら?」
勇也「喜んで精進させていただきます」
エルマ「ですが、確かにそうですね……。クエストドライバーを使いこなすにも、ある程度の修業は必要です。仲間集めと並行して、戦闘訓練も行いましょう」
勇也「そうだな……、俺の冒険はここから始まるんだ!」
勇ましい表情の勇也
一歩踏み出して、転ぶ
固い地面に、顔面から
勇也「あべしっ!」
バスティ「ったく、何やってんのよ」
体を起こす勇也
顔を顰めて―
勇也「いててて……」
エルマ「あらあら、大丈夫ですか?」
こちらに手を差し伸べるエルマ
心配そうに、眉を顰めている
まるで、女神のような佇まいだ
バスティも、腰に手を当て勇也を見下ろす
仕方ないなと言わんばかりに眉を顰める
その光景を、眼下から収める勇也
二人の美少女を交互に見やる
勇也M「あれ、何だろうこの気持ち……。こんなに女の子に囲まれたことなかったから……。もしかして、これがハーレムってやつ!?」
ふと、エルマに視線を向ける
得も言われぬ鼓動の高まりを感じる
勇也M「やっぱり、エルフが美人ってのは間違いなかったんだな……。話し方も穏やかで優しくて……。なんか、ママ味を感じる……」
勇也、そっとエルマの手を取る
そして、サワサワ、サワサワ
うん、実に滑らかな肌触りだ
勇也「マ、ママありがとう……。なんつって、ふへへ―」
エルマ「キモッ」
刹那、パチンッと弾かれる勇也の手
一瞬、何が起きたのか分からなかった
予想外の仕打ちに唖然としてしまう
勇也「……エルマ、さん?」
エルマ「私はあくまで、勇者の仲間として貴方様にお仕えするだけです。正義と性欲を混同しないでくださいね……?」
勇也「ち、畜い……!」
× × × × ×
教会外
そそくさと歩くエルマとバスティ
勇也のことは気にせん様子
バスティ「行きましょ、エルマ」
エルマ「そうですね」
その後ろを追いかける勇也
脚が縺れ、また転びそうだ
勇也「待ってぇぇぇぇぇ!!!」
勇也N「かくして、勇者になってしまった俺。まさか、魔王討伐を任されるなんてことになるなんて……。果たして、俺に仲間なんて出来るのだろうか。万年ぼっちの、俺に……」