ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~ 作:であであ
◆:柱《回想》
二文字開け:ト書き
○○M:モノローグ
○○N:ナレーション
○○(声):声のみ
×××××:カットバック(場面転換・時間経過)
〔回想〕:閃光回想(フラッシュバック)
第三十幕 無能勇者の弾劾裁判
●ニズスタトリスタ〔下界王都〕・王城・玉座の間
ニズシクス、玉座に腰かけている
真っ白な髭をたくわえた顔
頭上には、天使の輪が輝く
美しく、荘厳な天使の羽、羽ばたく
それに跪く、勇也一行
ピリオネだけは、立ったままだ
ニズシクス「勇者よ、よくぞこの世界を魔王の魔の手から救ってくださった。と、言いたいところじゃが……」
向かい合う下界と上界
建物、街、空が宙ぶらりん状態
だが不思議なことに、落下などはしない
ニズシクス「これ、どういうこと?」
エルマ「確かに、魔王・セミアデス・ブラディカは、この勇也様が討伐いたしました。しかしその直後、巨大な獅子の化け物となり、復活したのです。これは恐らく、その魔王の魔力の影響かと……」
ニズシクス「なるほどのぅ……。それは、災難じゃったな」
勇也M「……まさか、第二形態があるなんて……。まぁ、一筋縄じゃいかないのはお約束だし……、想定できなかった俺が悪い?実際に目の当たりにすると、まだ遊べる嬉しさより、煩わしさの方が勝つってもんだ……」
目を伏せる勇也
気だるげに溜息をつく
エルマ「あの、勇也様……」
勇也「ん?」
ふと、エルマを見やる
申し訳なさそうに、眉を下げている
勇也、それにハッとして―
〔回想〕
エルマ「落ち着いてからになりますが、約束通り元の世界へと―」
勇也「だ、大丈夫。こんな状況で、元の世界に帰せなんて言わないから。勇者の責務を途中で放り出したりしないから、安心して」
エルマ「……はい、ありがとうございますっ」
柔らかく微笑むエルマ
安堵したようだ
そこに、ガンテが肩を組んできて―
ガンテ「やったぜ、まだにーちゃんと一緒に冒険できんだな!」
バスティ「ま、今更パーティの空気が変わるのも気分悪いし」
ナーチ「もっと、小説読ませてくだしゃい!」
ピリオネ「ワタシの好感度アップに全力を注ぐデス」
ニズシクス「良いパーティになりましたな」
柔らかい声音のニズシクス
勇也、それがこそばゆくてはにかむ
その時、エルマがスッと手を挙げて―
エルマ「一つ、よろしいでしょうか?」
ニズシクス「何かのぅ?」
エルマ「この世界の力について、新たに分かったことがあります」
勇也「力?」
エルマ「はい。この世界は、魔力、魔機力、創世力、闇力、そして勇力。以上、5つの力が拮抗して存在しています。中でも闇力は、先の戦いで私も初めてその存在を知りました。魔族冥衆でも使わない……、魔王のみが手にする、得体の知れない……、それでいて驚異的な力です」
ガンテ「あぁ、にーちゃんがいなけりゃ、俺たちはあそこで死んでたぜ……」
勇也「その、勇力ってなんなの?」
エルマ「勇力とは、勇者のみが持つ特別な力……、クエストドライバーと同じく、勇者である証です。あの時、勇也様に眠る勇力が、覚醒しました。恐らく、魔王に対抗する、世界を守りたいという強い気持ちが反応したのでしょう」
勇也「なるほど……」
〔回想〕
勇也「そのために、お前を倒す……!何が何でも、今、ここで……!」
吠える勇也
呼応して、力の波動が迸る
地を駆け、空を、魔王の瞳を震わす
× × × × ×
ヴァラー、銅色に煌めく鎧を身に纏っている
エルマ、その姿に目を見開く
エルマ「仮面ライダーヴァラーlevel20ブロンズフェンガー……。勇力が、ついに覚醒した……!」
勇也「何かこう……、力がグワァって来て、気づいたらザンッてやってて、何か凄いブワァって感じで……」
ピリオネ「王よ、これが勇者の語彙力デス」
ニズシクス「大したものですな」
勇也「ぅ……」
エルマ「今後レベルを上げて行けば、ヴァラーも更に進化するでしょう」
勇也「そっか……」
軽く目を伏せる勇也
グッと拳を握り―
勇也「ここまで来たら、やるしかないか……!」
その時、後方の扉が音を立てて開く
一人の兵士、謁見の間に入ってくる
兵士「ニズシクス様、伝令でございます!」
額には、一本の角と天使の輪が半円
背中に、天使と悪魔の翼が一対ずつ
人間族の兵士、手に持つ紙を王に渡す
ニズシクス、それをしげしげと見て―
ニズシクス「ふむ……。ヴァ―スタトリスタ王城で、お主らの健闘を称える晩餐会を開く、ぜひ参加してほしい、とのことじゃ」
勇也「晩餐会……」
ナーチ「社交場……」
エルマ「差出人は、どなたですか?」
ニズシクス「……」
〔回想〕
オーク「疑わしきは罰せよ……。それが上界の王―」
× × × × ×
勇也一行、後ろ姿
ヴァースタトリスタへと足を踏み入れる
空には、下界が広がる
まるで、水面に鏡映しにしたよう
ニズシクス(声)「上界の王・ヴラガロード様じゃ」
●ヴァースタトリスタ〔上界王都〕・王城・広間
豪華絢爛な広間
天井のシャンデリアが眩しい
壁には、高価ということだけが分かる装飾
格式高い服を身に纏う人間族たち
手に料理と酒を持って談笑している
広間の端、直立不動のヴァラー
銅色の鎧を無駄に光らせている
バスティ「アンタ、何で変身してんのよ」
ヴァラー「だって、白シャツに黒パンとか場違いでしょ……!勇者なんだし、これで違和感はないはず……」
バスティ「服を入れ替える魔法とかないの、エルマ?」
エルマ「あるにはありますけど……」
ヴァラー「そういうのはな、大抵が失敗して大恥をかくもんなんだよ」
バスティ「そうなの?」
ヴァラー「お約束だよ、バスティくん。例えエルマでも、こればっかりは信用できないな。まずは、他の誰かで試してもらw―」
そこに、大きな笑い声が飛び込む
ふと、その方を見やるヴァラー
ガンテ、人間族に紛れて談笑している
ヴァラー「あのコミュ力が羨ましいよ……」
ピリオネ「しっかり楽しんでるデスね」
ヴァラー「バスティはいかないの?何か、さっきから元気ないっぽいけど」
バスティ、苛立たしげに目を細めて―
バスティ「……ほんと、どの面下げてアタシのこと呼んだのかしら」
ヴァラー「あぁ、確かに……」
バスティ「正直、ここにいる奴ら全員引っ掻き殺してやりたいわ……!」
ヴァラー「何その猫感満載の殺害方法」
シャーと牙を剥くバスティ
ヴァラー「ナーチは……」
ヴァラーの背後に隠れ、震えるナーチ
尻の辺りから、小刻みに振動を感じる
ヴァラー「うん、気持ちは分かるぞ」
ピリオネ「はっ、晩餐会なんて下らないデス。まるで、光に群がる虫どもを見ているようデス」
ヴァラー「何でそんなに捻くれてるかなぁ……」
そこに、数人の人間族がやってくる
ピリオネを囲い、興味深げに覗き込む
ピリオネ「な、何デス?虫が集まってきたデス……」
ヴァラー「こら」
人間族A「もしかして、これが魔機族か?」
人間族B「初めて見た……、本当に存在してたんだな」
人間族C「今まで見たことない造形美……、かっけぇ~」
人間族D「なぁなぁ、どんなことができるのか見せてくれよ!」
ピリオネ「……」
× × × × ×
テーブルを囲い、人間族と談笑するピリオネ
鼻高に、自分語りをしているのが聞こえる
ヴァラー「ただの逆張りだったか」
ナーチ「お、王様……、まだでしゅか……?」
ヴァラー「おっと、限界が近いかな?」
エルマ「私も、ヴラガロード様をお見受けするのはこれが初めてです」
ヴァラー「まぁ、平気っしょ。ニズシクスさんと同じで、きっとホワホワしたおじいちゃんだって」
その時、音を立てて扉が開く
一人の老人、広間に歩いてくる
人集りを突っ切り、壇上へ
玉座にドカッと腰かける
エルマ「あれが、ヴラガロード様……」
勇也「ホワホワ……、してないな」
口にたくわえられた灰色の髭
皺の刻まれた顔、眉は険しく寄っている
額には、2本の角が生えている
背中には、黒く荒れた翼が2つ
三白眼を細め、広間を睥睨する
ヴラガロード「……魔の手は退かれた。それを成した者が、この中にいるはずだ」
ヴァラー「は、はい……!」
思わず挙手するヴァラー
ヴラガロード「ほう、お主か……」
一同の視線を集めるヴァラー
ヘコヘコと、お辞儀をする
ヴラガロード「無能の勇者よ」
ヴァラー「……へ?」
ヴァラー、思わず静止する
空気が、シンと静まり返る
ヴラガロード「魔王は退いた……。だがそれは、かつての魔王だ。今、奴は獅子の化け物となり、再びこの世界の征服を目論んでいる」
ヴァラー「それ、は……」
ヴラガロード「この中で、空を見上げた者はいるか?醜く、煩わしい下界が広がっているではないか。何とも、目に毒も甚だしい……」
ヴラガロード、ヴァラーをギリッと睨み―
ヴラガロード「全ては、魔王を取り逃がした能無しの勇者の責任じゃ!」
ヴァラー、ハッと息をのむ
体が硬直して動かない
心臓が、ギュッと握りつぶされる
何も言い返すことができない
ヴラガロード「貴様は、魔王を討伐するどころか、この世界を更なる危機に追いやった!このような事態は、前代未聞じゃ!これならば、恐怖にうずくまり、何もせぬ方がまだ良いというもの!かつて、魔王の元に辿り着く前に全滅した一行がおった……。我が側近、獣人のヴォルカミルが属していた一行じゃ……。まだ、奴らの方が役に立ったわ」
吐き捨てるヴラガロード
ガンテとピリオネ、前に出てきて―
ガンテ「おぃじいさんよぉ、黙って聞いてりゃさっきから好き勝手言いやがって」
ピリオネ「そうデス、折角いい気分だったデスのに、椅子に座ってるだけのクソ爺に水を刺されるとは心外デス!それに、アイツの侮辱は、それに属しているワタシの侮辱でもあるデス!これ以上は、いくら王でも訴s―」
直後、目の端が閃光する
足元、無数の矢が突き立つ
ガンテ「……!」
目を見開くガンテ
王の傍ら、翼を広げたハーピー
こちらを睨み、弓を構えている
ハーピー「ヴラガロード様に盾突くとは、万死に値するぞ」
ガンテ「はっ、何でそんな奴の側近やってんだ?俺は、下界の王様の方がよっぽど好きだね」
ヴラガロード「奴……、ニズシクスは天使族の王にして、臆病者なだけ。ワシは、王としてこの上界を収めるための全てを兼ね備えている」
ピリオネ「その傲慢さ、段々オマエが魔王に見えてきたデス」
ガンテ「今だけは同感だな」
ヴラガロード「……」
エルマ「ヴラガロード様」
広間に響く鈴の音
エルマ、一歩踏み出し王を見やる
エルマ「確かに、このボーテミュイズンの現状は、我々が魔王を倒し損ねたために他なりません……。ですが、あのまま何もせず放置していれば……、ただ恐怖に蹲るだけであれば、世界は悪しき王の手に下り、永遠に取り戻せなくなっていたでしょう」
ヴラガロード「つまり、貴様らの行いに意味があったと?」
エルマ「決して、無駄ではなかったはずです……」
ヴァラー「エルマ……」
ヴラガロード、それに鼻を鳴らし―
ヴラガロード「だが、現状がこれでは意味がないのだ。これ以上、貴様らにこの世界は任せておれん……」
エルマ「何をする、おつもりですか……?」
ヴラガロード、立ち上がる
広間に響き渡る声で、言い放つ
ヴラガロード「これより、勇者適性試験を執り行う!世界中の力ある者を集め、次期勇者を定めるのだ!」
ヴァラー「勇者、適性試験……?」
ヴァラーの声、震えている
ヴラガロード、ゆっくりとこちらに振り向き―
ヴラガロード「半魔よ……、そして勇者よ。己が成した結末を正しいものとしたいならば、この場で証明して見せよ……」
鋭い眼光、ギラリと光る
ヴラガロード「貴様らの真価……、そして己が勇者たり得るということを!」