ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第三七幕 ただ一人の神官

●ボーテミュイズン〔下界〕・森

 

  勇也一行、歩いている

  勇也、不貞腐れながら―

 

勇也「お主は勇者としての資格を得た、賞賛に値する!だって。どの面下げて言っとんねん!まず、俺のやる気を削いだことを謝るのが先だと思うけどね!」

 

ナーチ「あははは……」

 

バスティ「ったく、いつまで言ってんのよ」

 

勇也「いやいや、俺は客観的事実を述べてるだけだよ。バスティは、何も思わなかったの?」

 

バスティ「今すぐ猫パンチで殴り殺してやりたいわ」

 

勇也「たまにチラリズムするリアル猫要素、俺好きだよ」

 

エルマ「皆様、到着しました」

 

  先頭を歩くエルマ、振り返る

  そこは、鬱蒼とした森―などではない

  小さな家々が立ち並ぶ、一つの集落

  薄暗い森を照らす、幾つもの照明

  淡い光が、集落に温かみを与えている

  談笑している大人や、遊んでいる子供の姿

  彼らの耳はいずれも長く、見慣れている

 

エルマ「ようこそ、エルフ族の森……。私の故郷へ」

 

●エルフ族の森・集落

 

  勇也、興味深げに辺りを見回す

  集落を照らす照明の数々

  それらが、魔法陣で浮いているのを見つけ―

 

勇也「すげぇ、これどうなってんの?」

 

エルマ「私たちは、魔法を生活の一部として用いています。照明をつけるのも、家を造るのも、土地を広げるのも全て魔法。私たちが生きる上で、切っても切り離せないものなのです」

 

ガンテ「さっすが、魔力を司る種族なだけあるぜ」

 

ピリオネ「ワタシの魔機都市だって負けてないデス!」

 

勇也「いいね~、リ○ロとか無○転生とか、そんな雰囲気感じる~!」

 

バスティ「また何か語り出したわよ」

 

勇也「現代日本を知らないバスティくんには、一生分からないだろうね。この焦がれる気持ちは……」

 

バスティ「はいはい」

 

??「あ、あの……!」

 

  ふとかけられる声

  それに振り返る一同

  エルフ耳の少女が一人

  手を胸の前で握り、緊張の面持ち

  その震える瞳は、エルマを見つめていて―

 

少女「エ、エルマ様に、ずっと憧れていました……!魔王を倒す旅、頑張ってください……!」

 

  噛みそうになりながらも言い切る少女

  エルマ、その少女と視線を合わせる

  優しく微笑み、頭をそっと撫でながら―

 

エルマ「はい、ありがとうございます」

 

  少女、表情にパッと華が咲く

  満足げに、タタッと駆けていく

 

勇也「有名人だね~」

 

エルマ「いえ、そんなことは」

 

バスティ「なに謙遜しちゃってるのよ」

 

  見れば、辺りにはエルフたちが集まっている

  勇者一行を一目見よう―というものではない

  皆、エルマに羨望の眼差しを向け、笑いかける

 

エルマ「神官は、誰もがなれるものではありません。特に、エルフ族が下賤種となってからは、それまで神官を志していた方々も諦めてしまい……。今、この森で神官は、私一人なのです」

 

  ふと目を伏せるエルマ

  その横顔には、微かに哀愁が漂う

  しかし、そんなことは気にしないピリオネ

  腕を組み、堂々と言い放つ

 

ピリオネ「ふむふむ、他の有象無象共を淘汰し、頂点に登り詰めたと……。さすがはエルマデス!」

 

勇也「言い方、言い方」

 

エルマ「ふふっ、ありがとうございます」

 

●エルフ族の森・エルマの家・食卓

 

  テーブルに並ぶ、豪勢な料理の品々

  一同、目の輝きと涎が止まらない

 

勇也「俺には分かる……、これはご褒美回だ!何せ、この前の試験では色々と―」

 

  直後、料理にがっつくバスティとガンテ

  勇也、思わず言葉を止めるしかない

 

勇也「ブレないねぇ」

 

エルマ「因みに、本日のお料理はナーチにも手伝っていただきました」

 

勇也「えっ!?」

 

  一同の視線、モジモジとするナーチに集中

 

ナーチ「わ、私も作った、でしゅ……」

 

ピリオネ「まさかの家事スキル発見デス……」

 

勇也M「根暗で普段は目立たない女の子が、実は家事全般得意な家庭的女子……」

 

  勇也、ビッと親指を立てて―

 

勇也「癖ですっ!」

 

ナーチ「ぴゃあっ!?」

 

バスティ「怖がってるわよ」

 

× × × × ×

 

  勇也、食事に舌鼓を打つ

  バスティとガンテは既に完食

 

勇也「『生涯で一つの魔法を極める』だっけ?もっと堅苦しいっていうか……、『お前はこの魔法しか使ったらダメだ!』みたいに決まってるものかと思ったよ」

 

エルマ「確かに、掟の印象はそうかもしれませんね。ですが皆さん、大抵の魔法は使うことができますよ。それを極めているかどうかは、まだ別のお話ですが」

 

勇也「その……、極めるって、なんか凄く曖昧な表現じゃない?どこまでいったら、極めたことになるの?」

 

ガンテ「グイグイ行くな~、にーちゃん」

 

バスティ「テンション上がってんでしょ」

 

勇也「うるさいよ……」

 

エルマ「魔法には、凡級(ぼんきゅう)越級(えっきゅう)創世級(そうせいきゅう)、という3つの習得段階があります。つまり私たちエルフ族の掟は、その生涯の中でたった1つ、創世級の魔法を身に着ける、ということなのです。なので、他に使える魔法といっても、大半は凡級、よくて越級と言ったところです」

 

勇也「なるほど。そんな段階分けが……」

 

ガンテ「俺の錬金術も魔法の一種だけど、まぁ大体、凡級のちょっと上くれぇだな」

 

ナーチ「わ、私の部分変身は、越級の下、くらい……」

 

バスティ「いいわね、魔法使えるやつらは。アタシは話についてけないわ」

 

ピリオネ「因みに、魔機力にそんな野暮な段階分けは存在しないデス!全てが一律、絶対的な力デス!」

 

勇也「エルマの習得段階は、3つの内どれなの?」

 

  エルマ、微かに目を伏せる

  言い辛そうにどもりながら―

 

エルマ「……創世級です」

 

勇也「えっと……、それは治癒魔法のはなs―」

 

エルマ「全て、創世級です……」

 

勇也「Oh……」

 

  落ちる沈黙

  絶妙な空気が支配する

  エルマ、僅かに頬を赤らめながら―

 

エルマ「だ、黙らないでください……!」

 

勇也「い、いや、ビックリしちゃって……」

 

エルマ「私の場合は、龍の肉を体内に取り込んだ影響なので……。強すぎるというのも、困りものです……」

 

ガンテ「か~っ、言ってみて~!」

 

バスティ「そんなに強いなら、今後の旅はエルマに任せて、アタシたちは宿でゆっくりしてましょう」

 

ピリオネ「特攻隊デス!」

 

ナーチ「私たち、不戦勝……」

 

エルマ「もう、茶化さないでください!」

 

●エルフ族の森・エルマの家・寝室

 

  眠っている勇也一行

  ベッドの上で寝息を立てる勇也

  ふと目を開け、ムクリと起きる

 

勇也「ん~、トイレ~……」

 

  ベッドから立ち上がる

  振り返り、何の気なしに部屋を見回す

  壁に凭れ、座ったまま眠るピリオネ

  まるで、アンドロイドが充電をしているよう

  自身の尻尾でトグロを巻いて眠るナーチ

  寝姿はペットの犬猫のそれだ

  ベッドの上には、バスティとガンテが眠っている

  目を凝らすと、ハートを模ったような寝相

  微かにゴロゴロと聞こえるのは気のせいか

  そして、残りの一人が見当たらない

 

勇也「エルマも、トイレ……?」

 

  小首を傾げる勇也

  気にしない様子で、寝室を後にする

 

●エルフ族の森・エルマの家・書斎

 

  勇也、廊下を歩いている

  静寂の中、ペタペタと足音が響く

  その時、一室の扉の隙間から光が見える

  そっと覗いてみると、中には—

 

エルマ「勇也様」

 

  本を片手に、エルマが振り向く

  室内に入る勇也、辺りを見回して―

 

勇也「ここは……」

 

エルマ「父の書斎です」

 

  中央には、書斎机

  それを囲うように、壁に沿って本棚

  一切の隙間なく、本が詰め込まれている

  部屋は薄暗く、机上のランプが橙色に灯る

 

勇也「ひゃ~、俺だったら一生かけても読み終わらないわ」

 

エルマ「歴史書や魔導書……、神官として知識を蓄えるため、様々な情報を手元に置いていました」

 

勇也「もしかして、エルマのお父さんも神官だったの?」

 

エルマ「はい、父だけでなく母も。代々、神官の家系なのです」

 

勇也「凄いな……。今、ご両親は?」

 

  何気なく問う勇也

  エルマ、僅かに目を伏せて―

 

エルマ「亡くなりました。私が、まだ小さい頃に……」

 

勇也「あ、えっと……、その、ごめん……」

 

エルマ「いえ、エルフの寿命は長いので、その時の記憶ももう朧気です」

 

勇也「そ、そっか……」

 

  いたたまれず目を伏せる勇也

  チラと、エルマの持つ本を見やり―

 

勇也「それは、何の本?」

 

エルマ「この世界……、ボーテミュイズンの創世の歴史が記された文献です」

 

勇也「創世って……、世界を作るってこと?」

 

エルマ「はい」

 

  エルマ、本に目を向ける

  語り聞かせるように、丁寧に読み上げる

 

エルマ「この世界はかつて、火・水・雷・風・土、5つの原質を司る、5人の女神によって創られた。そして、世界が危機的状況に陥った時、女神は再びその姿を現す、と……」

 

勇也「創世の女神……、5つのエレメント……」

 

勇也M「めっちゃファンタジ~っ!」

 

  勇也、思わず顔が綻ぶ

 

勇也「じゃあ、その創世の女神ってのが、魔王討伐を手伝ってくれるってこと?超イージーゲームじゃん!」

 

  はしゃぐ勇也

  エルマ、しかし呆れたように微笑み―

 

エルマ「いいえ、これは作り話ですよ」

 

勇也「作り話?」

 

エルマ「はい。勇也様の世界でいう所の……、神話のようなものでしょうか。現実味はなく、事実その光景を誰かが見たわけでもない。何者かが作り出した、空想の御伽噺ですよ」

 

勇也「な~んだ、そっか~。ま、そんな旨い話ないよね~」

 

  勇也、フラッと本棚に立ち寄る

  選ぶように背表紙を眺めながら―

 

勇也「でも、そういうのも面白くない?」

 

エルマ「え?」

 

勇也「俺も、あんま詳しくないんだけど……。アダムとイブが禁断の果実を食べた~とか、神に近づこうとした人間にキレて、文化とか言語を散り散りにした~とか。知る術がないからこそ、本当にそうだったんじゃないかって妄想膨らむよ。もしそれが事実じゃなかったらなかったで、本当はどうやって人間や言葉は生まれたのか気になるし」

 

  子供のようにはにかむ勇也

  エルマ、愛おしむように目を細めて―

 

エルマ「確かに、これが作り話なら、この世界はどうやって生まれt—」

 

  途中で言葉を切るエルマ

  否、思わず喉が詰まったのだ

  その違和感に、勇也もまた目を向ける

  そして、その光景に瞠目する

 

エルマ「これ、は……」

 

  文献から、一本の赤い光が伸びている

  窓の外、森の奥へと続いている

  まるで、何かを指し示しているかの如く

  そして、二人を導こうとしているかの如く

 

エルマ「まさか、本当に……?」

 

勇也「……行ってみようよ、エルマ」

 

エルマ「は、はい……」

 

  エルマ、訝しげに頷く

 

●エルフ族の森・森奥

 

  ザッザッザと足音が響く

  森は、奥に進むにつれ鬱蒼としていく

  枝葉が視界を遮り、獣道が足を取る

  ただ、黙々と歩を進める勇也とエルマ

  文献の赤い光は、未だどこかを指している

  やがて、開けた場所に出る

  そして、光が指し示すものを目の当たりにする

 

勇也「……これだ」

 

  それは、丸い石碑のようなもの

  それ以外には何もない、閑散とした土地

  石碑には、何かの紋様が刻まれている

 

エルマ「これは……、女性の姿……?」

 

勇也「あは、ス○バみたい。行ったことないけど……」

 

エルマ「創世の女神の文献が、この場を指し示した……。この謎を解けば、魔王討伐に近づくことができる……」

 

  一人呟くエルマ

  その声音には、微かに熱を感じる

  勇也、そんな彼女の横顔を見て―

 

勇也「そう言えば聞いてなかったんだけどさ、エルマの使命ってなんなの?」

 

  〔回想〕

  エルマ「……私には、果たすべき使命が……、約束があります……」

  勇也「は……?」

  エルマ「それを果たすためにも、ここで……、こんなところで負けられては……、諦められては困る……」

 

  エルマ、微かに俯く

  あの時のことを、詫びているかのように

  やがて、勇也と目を合わせずに―

 

エルマ「魔王討伐という使命の半ばで命を落とした両親の想いを受け継ぎ……、私が、それを果たすことです」

 

勇也「……そっか」

 

  呟く勇也

  ウンと一つ伸びをしてから―

 

勇也「じゃあ、やらなきゃな」

 

エルマ「え?」

 

勇也「きっとこれが、魔王討伐の鍵になるに違いない!明日また、みんなで来よう。女神様に、会いに」

 

エルマ「……はい……!」

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