ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~ 作:であであ
●ボーテミュイズン〔下界〕・森
勇也一行、歩いている
勇也、不貞腐れながら―
勇也「お主は勇者としての資格を得た、賞賛に値する!だって。どの面下げて言っとんねん!まず、俺のやる気を削いだことを謝るのが先だと思うけどね!」
ナーチ「あははは……」
バスティ「ったく、いつまで言ってんのよ」
勇也「いやいや、俺は客観的事実を述べてるだけだよ。バスティは、何も思わなかったの?」
バスティ「今すぐ猫パンチで殴り殺してやりたいわ」
勇也「たまにチラリズムするリアル猫要素、俺好きだよ」
エルマ「皆様、到着しました」
先頭を歩くエルマ、振り返る
そこは、鬱蒼とした森―などではない
小さな家々が立ち並ぶ、一つの集落
薄暗い森を照らす、幾つもの照明
淡い光が、集落に温かみを与えている
談笑している大人や、遊んでいる子供の姿
彼らの耳はいずれも長く、見慣れている
エルマ「ようこそ、エルフ族の森……。私の故郷へ」
●エルフ族の森・集落
勇也、興味深げに辺りを見回す
集落を照らす照明の数々
それらが、魔法陣で浮いているのを見つけ―
勇也「すげぇ、これどうなってんの?」
エルマ「私たちは、魔法を生活の一部として用いています。照明をつけるのも、家を造るのも、土地を広げるのも全て魔法。私たちが生きる上で、切っても切り離せないものなのです」
ガンテ「さっすが、魔力を司る種族なだけあるぜ」
ピリオネ「ワタシの魔機都市だって負けてないデス!」
勇也「いいね~、リ○ロとか無○転生とか、そんな雰囲気感じる~!」
バスティ「また何か語り出したわよ」
勇也「現代日本を知らないバスティくんには、一生分からないだろうね。この焦がれる気持ちは……」
バスティ「はいはい」
??「あ、あの……!」
ふとかけられる声
それに振り返る一同
エルフ耳の少女が一人
手を胸の前で握り、緊張の面持ち
その震える瞳は、エルマを見つめていて―
少女「エ、エルマ様に、ずっと憧れていました……!魔王を倒す旅、頑張ってください……!」
噛みそうになりながらも言い切る少女
エルマ、その少女と視線を合わせる
優しく微笑み、頭をそっと撫でながら―
エルマ「はい、ありがとうございます」
少女、表情にパッと華が咲く
満足げに、タタッと駆けていく
勇也「有名人だね~」
エルマ「いえ、そんなことは」
バスティ「なに謙遜しちゃってるのよ」
見れば、辺りにはエルフたちが集まっている
勇者一行を一目見よう―というものではない
皆、エルマに羨望の眼差しを向け、笑いかける
エルマ「神官は、誰もがなれるものではありません。特に、エルフ族が下賤種となってからは、それまで神官を志していた方々も諦めてしまい……。今、この森で神官は、私一人なのです」
ふと目を伏せるエルマ
その横顔には、微かに哀愁が漂う
しかし、そんなことは気にしないピリオネ
腕を組み、堂々と言い放つ
ピリオネ「ふむふむ、他の有象無象共を淘汰し、頂点に登り詰めたと……。さすがはエルマデス!」
勇也「言い方、言い方」
エルマ「ふふっ、ありがとうございます」
●エルフ族の森・エルマの家・食卓
テーブルに並ぶ、豪勢な料理の品々
一同、目の輝きと涎が止まらない
勇也「俺には分かる……、これはご褒美回だ!何せ、この前の試験では色々と―」
直後、料理にがっつくバスティとガンテ
勇也、思わず言葉を止めるしかない
勇也「ブレないねぇ」
エルマ「因みに、本日のお料理はナーチにも手伝っていただきました」
勇也「えっ!?」
一同の視線、モジモジとするナーチに集中
ナーチ「わ、私も作った、でしゅ……」
ピリオネ「まさかの家事スキル発見デス……」
勇也M「根暗で普段は目立たない女の子が、実は家事全般得意な家庭的女子……」
勇也、ビッと親指を立てて―
勇也「癖ですっ!」
ナーチ「ぴゃあっ!?」
バスティ「怖がってるわよ」
× × × × ×
勇也、食事に舌鼓を打つ
バスティとガンテは既に完食
勇也「『生涯で一つの魔法を極める』だっけ?もっと堅苦しいっていうか……、『お前はこの魔法しか使ったらダメだ!』みたいに決まってるものかと思ったよ」
エルマ「確かに、掟の印象はそうかもしれませんね。ですが皆さん、大抵の魔法は使うことができますよ。それを極めているかどうかは、まだ別のお話ですが」
勇也「その……、極めるって、なんか凄く曖昧な表現じゃない?どこまでいったら、極めたことになるの?」
ガンテ「グイグイ行くな~、にーちゃん」
バスティ「テンション上がってんでしょ」
勇也「うるさいよ……」
エルマ「魔法には、
勇也「なるほど。そんな段階分けが……」
ガンテ「俺の錬金術も魔法の一種だけど、まぁ大体、凡級のちょっと上くれぇだな」
ナーチ「わ、私の部分変身は、越級の下、くらい……」
バスティ「いいわね、魔法使えるやつらは。アタシは話についてけないわ」
ピリオネ「因みに、魔機力にそんな野暮な段階分けは存在しないデス!全てが一律、絶対的な力デス!」
勇也「エルマの習得段階は、3つの内どれなの?」
エルマ、微かに目を伏せる
言い辛そうにどもりながら―
エルマ「……創世級です」
勇也「えっと……、それは治癒魔法のはなs―」
エルマ「全て、創世級です……」
勇也「Oh……」
落ちる沈黙
絶妙な空気が支配する
エルマ、僅かに頬を赤らめながら―
エルマ「だ、黙らないでください……!」
勇也「い、いや、ビックリしちゃって……」
エルマ「私の場合は、龍の肉を体内に取り込んだ影響なので……。強すぎるというのも、困りものです……」
ガンテ「か~っ、言ってみて~!」
バスティ「そんなに強いなら、今後の旅はエルマに任せて、アタシたちは宿でゆっくりしてましょう」
ピリオネ「特攻隊デス!」
ナーチ「私たち、不戦勝……」
エルマ「もう、茶化さないでください!」
●エルフ族の森・エルマの家・寝室
眠っている勇也一行
ベッドの上で寝息を立てる勇也
ふと目を開け、ムクリと起きる
勇也「ん~、トイレ~……」
ベッドから立ち上がる
振り返り、何の気なしに部屋を見回す
壁に凭れ、座ったまま眠るピリオネ
まるで、アンドロイドが充電をしているよう
自身の尻尾でトグロを巻いて眠るナーチ
寝姿はペットの犬猫のそれだ
ベッドの上には、バスティとガンテが眠っている
目を凝らすと、ハートを模ったような寝相
微かにゴロゴロと聞こえるのは気のせいか
そして、残りの一人が見当たらない
勇也「エルマも、トイレ……?」
小首を傾げる勇也
気にしない様子で、寝室を後にする
●エルフ族の森・エルマの家・書斎
勇也、廊下を歩いている
静寂の中、ペタペタと足音が響く
その時、一室の扉の隙間から光が見える
そっと覗いてみると、中には—
エルマ「勇也様」
本を片手に、エルマが振り向く
室内に入る勇也、辺りを見回して―
勇也「ここは……」
エルマ「父の書斎です」
中央には、書斎机
それを囲うように、壁に沿って本棚
一切の隙間なく、本が詰め込まれている
部屋は薄暗く、机上のランプが橙色に灯る
勇也「ひゃ~、俺だったら一生かけても読み終わらないわ」
エルマ「歴史書や魔導書……、神官として知識を蓄えるため、様々な情報を手元に置いていました」
勇也「もしかして、エルマのお父さんも神官だったの?」
エルマ「はい、父だけでなく母も。代々、神官の家系なのです」
勇也「凄いな……。今、ご両親は?」
何気なく問う勇也
エルマ、僅かに目を伏せて―
エルマ「亡くなりました。私が、まだ小さい頃に……」
勇也「あ、えっと……、その、ごめん……」
エルマ「いえ、エルフの寿命は長いので、その時の記憶ももう朧気です」
勇也「そ、そっか……」
いたたまれず目を伏せる勇也
チラと、エルマの持つ本を見やり―
勇也「それは、何の本?」
エルマ「この世界……、ボーテミュイズンの創世の歴史が記された文献です」
勇也「創世って……、世界を作るってこと?」
エルマ「はい」
エルマ、本に目を向ける
語り聞かせるように、丁寧に読み上げる
エルマ「この世界はかつて、火・水・雷・風・土、5つの原質を司る、5人の女神によって創られた。そして、世界が危機的状況に陥った時、女神は再びその姿を現す、と……」
勇也「創世の女神……、5つのエレメント……」
勇也M「めっちゃファンタジ~っ!」
勇也、思わず顔が綻ぶ
勇也「じゃあ、その創世の女神ってのが、魔王討伐を手伝ってくれるってこと?超イージーゲームじゃん!」
はしゃぐ勇也
エルマ、しかし呆れたように微笑み―
エルマ「いいえ、これは作り話ですよ」
勇也「作り話?」
エルマ「はい。勇也様の世界でいう所の……、神話のようなものでしょうか。現実味はなく、事実その光景を誰かが見たわけでもない。何者かが作り出した、空想の御伽噺ですよ」
勇也「な~んだ、そっか~。ま、そんな旨い話ないよね~」
勇也、フラッと本棚に立ち寄る
選ぶように背表紙を眺めながら―
勇也「でも、そういうのも面白くない?」
エルマ「え?」
勇也「俺も、あんま詳しくないんだけど……。アダムとイブが禁断の果実を食べた~とか、神に近づこうとした人間にキレて、文化とか言語を散り散りにした~とか。知る術がないからこそ、本当にそうだったんじゃないかって妄想膨らむよ。もしそれが事実じゃなかったらなかったで、本当はどうやって人間や言葉は生まれたのか気になるし」
子供のようにはにかむ勇也
エルマ、愛おしむように目を細めて―
エルマ「確かに、これが作り話なら、この世界はどうやって生まれt—」
途中で言葉を切るエルマ
否、思わず喉が詰まったのだ
その違和感に、勇也もまた目を向ける
そして、その光景に瞠目する
エルマ「これ、は……」
文献から、一本の赤い光が伸びている
窓の外、森の奥へと続いている
まるで、何かを指し示しているかの如く
そして、二人を導こうとしているかの如く
エルマ「まさか、本当に……?」
勇也「……行ってみようよ、エルマ」
エルマ「は、はい……」
エルマ、訝しげに頷く
●エルフ族の森・森奥
ザッザッザと足音が響く
森は、奥に進むにつれ鬱蒼としていく
枝葉が視界を遮り、獣道が足を取る
ただ、黙々と歩を進める勇也とエルマ
文献の赤い光は、未だどこかを指している
やがて、開けた場所に出る
そして、光が指し示すものを目の当たりにする
勇也「……これだ」
それは、丸い石碑のようなもの
それ以外には何もない、閑散とした土地
石碑には、何かの紋様が刻まれている
エルマ「これは……、女性の姿……?」
勇也「あは、ス○バみたい。行ったことないけど……」
エルマ「創世の女神の文献が、この場を指し示した……。この謎を解けば、魔王討伐に近づくことができる……」
一人呟くエルマ
その声音には、微かに熱を感じる
勇也、そんな彼女の横顔を見て―
勇也「そう言えば聞いてなかったんだけどさ、エルマの使命ってなんなの?」
〔回想〕
エルマ「……私には、果たすべき使命が……、約束があります……」
勇也「は……?」
エルマ「それを果たすためにも、ここで……、こんなところで負けられては……、諦められては困る……」
エルマ、微かに俯く
あの時のことを、詫びているかのように
やがて、勇也と目を合わせずに―
エルマ「魔王討伐という使命の半ばで命を落とした両親の想いを受け継ぎ……、私が、それを果たすことです」
勇也「……そっか」
呟く勇也
ウンと一つ伸びをしてから―
勇也「じゃあ、やらなきゃな」
エルマ「え?」
勇也「きっとこれが、魔王討伐の鍵になるに違いない!明日また、みんなで来よう。女神様に、会いに」
エルマ「……はい……!」