ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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●:柱
◆:柱《回想》
二文字開け:ト書き
○○M:モノローグ
○○N:ナレーション
○○(声):声のみ
×××××:カットバック(場面転換・時間経過)
〔回想〕:閃光回想(フラッシュバック)



二章 万の邂逅と魔王討伐
第四幕 「肩書じゃ人間性は変わらないんだよ……」


●ボーテミュイズン・世界樹の麓

 

  天高く聳える樹木・世界樹

  その大きさに、勇也の口は半開き

  幹の太さは、彼が10人並べど足りない

 

エルマ「これが、世界樹・ユグドライド。この世界、ボーテミュイズンの心臓とも言える、重要な樹木です」

 

勇也「遠くから見たことはあったけど、まさかこんなに大きいとは……」

 

バスティ「アタシたちは、この世界樹から色んな恩恵を受けてるのよ」

 

勇也「恩恵?」

 

バスティ「えぇ。例えば……、え~っと……、ま、毎日楽しく暮らせるとか?」

 

勇也「魔王のせいで安心して暮らせないとか言ってたんですがそれは?」

 

バスティ「と、とにかく大事な樹なのよ!」

 

  頬を膨らませフイとそっぽを向くバスティ

  勇也、再び世界樹を見上げて―

 

勇也「樹冠が見えないけど、ほんとどんだけ高いんだ……」

 

エルマ「いいえ。ここからでは、樹冠を見るのは物理的に不可能です」

 

勇也「え、それはどういう?」

 

エルマ「この世界は、上界と下界に分かれています。上界に顔を出した樹冠は、この下界からは臨むことは出来ません」

 

勇也「つまり、階層が分かれてるってことか……。こんだけ広いと、全然そんな感じもしなけどなぁ」

 

バスティ「そのせいで、アタシたち亜種族にも格差があるのよ。高貴種とか下賤種とか……、ほんとクソくらえだわ」

 

勇也「バスティは下賤種なんだね」

 

勇也M「異世界にも格差があるのか……。上から見れば煌びやかで綺麗な世界だけど、その裏には悲しみや苦しみが潜んでる……。まるで、この世界そのものが仮面を被ってるみたいだ」

 

エルマ「魔王が世界樹の力を手にしたとき、この世界は滅亡するでしょう。今はまだ動きはありませんが、いつ目覚め、魔の手を伸ばしてきても不思議はありません。それを防ぐために、勇者様は魔王を討伐しなければいけないのです」

 

勇也「そっか……」

 

  勇也、クエストドライバーを取り出す

  心強い眼差しで見つめて―

 

勇也「でも、俺には勇者の力がある。俺は現実でも歴戦の勇者だった!どれだけ強大な魔王でも、俺が必ずこの手で討伐してやるぜ!」

 

エルマ「まぁその前に、魔王直属の亜種族たちが、勇也様を葬らんと本気で襲ってきますけどね☆」

 

勇也「いやあぁぁぁぁぁ!!!」

 

  満面の笑みのエルマ

  毒気の一切ない、純粋な笑顔

  それを見て、勇也が蹲る

  土下座の要領で地面に頭を打ち付ける

 

バスティ「ちょっとエルマ、勇也のやる気を削ぐようなこと言わないの!」

 

エルマ「あら、真実をお伝えしたつもりだったのですが……」

 

勇也「真実は時に、人の心を酷く抉るんだよ……」

 

エルマ「そうなのですね、神官としての教養が足らず……」

 

  俯くエルマ、胸に手を当てる

  しかし直後、また満面の笑みで―

 

エルマ「ですがこれも、全ては勇也様をお導きするため。どれほど残酷な真実でも、躊躇わずにお教えいたしますね☆」

 

勇也「いやあぁぁぁぁぁ!!!」

 

バスティ「エルマァ!」

 

●ボーテミュイズン〔下界〕・湖

 

  大きな湖、まるで海のよう

  陽の光を反射し、燦々と煌めく

  そのほとりを歩く、勇也一行

 

エルマ「まずは王都に向かい、下界の王・ニズシクス様から下界と上界を行き来する許可をいただきます。それがないと、亜種族との交流が滞ってしまいますから」

 

勇也「って言いながら、湖に来てるけど……」

 

  ふと立ち止まるエルマ

  ゆっくりとこちらに振り返る

  ペロッと舌を出して―

 

エルマ「私としたことが、迷ってしまいました……」

 

勇也M「なんだこいつ……、可愛いな」

 

バスティ「ったく、仕方ないわねぇ」

 

  バスティ、鼻をスンスンと動かす

  進行方向を指さし―

 

バスティ「王都はこっちよ」

 

エルマ「凄いです、匂いで分かるのですか?」

 

バスティ「まぁね。これでもアタシ、獣人だから」

 

勇也「さすが犬」

 

バスティ「失礼ね、アタシは猫よ」

 

勇也M「じゃあなんで分かるんだ……?」

 

× × × × ×

 

  道を行く勇也一行

  勇也は、しかしトボトボとした足取り

  不安げに、声音を僅かに落として―

 

勇也「王都ってことは、王様か……」

 

バスティ「そうね」

 

勇也「どうしよう。凄い頑固親父で『お前に勇者は務まらん!』とか言われたら……。最悪、こんな凡人が王都に立ち入った罰として、打ち首……」

 

バスティ「凡人って、アンタ一応勇者でしょ?」

 

勇也「肩書じゃ人間性は変わらないんだよ……」

 

エルマ「ご心配なさらず。ニズシクス様は、心優しいお方ですよ」

 

勇也「本当かな~?グチグチ言われたら、俺心折れちゃうよ~」

 

●ニズスタトリスタ〔下界王都〕・王城

 

ニズシクス「許可~」

 

エルマ「ありがとうございます!」

 

勇也「え、凄いあっさり。そ、そんな簡単に行き来できるものなの?下界と上界って」

 

バスティ「王様が言ってるんだから、問題ないでしょ」

 

  玉座に腰かける老父・ニズシクス

  ふくよかな体、顔には真っ白の髭を蓄える

  背中には、これまた真っ白な天使の翼

  穏やかな眼差しを勇也に向けて―

 

ニズシクス「あなたが、此度の勇者様ですかのう?」

 

勇也「あ、えと……、は、はい……」

 

  モジモジと挙動不審の勇也

  目を合わせられず、俯いている

 

ニズシクス「我々の世界のために、態々申し訳ない。だが、あなたがきっと魔王を討伐してくださること、信じておりますぞ。そのためにこの王都、自由に使ってくだされ。下界の廃れた小さな都で申し訳ないですが、十分に英気を養って、魔王討伐の旅に―」

 

勇也「あぁぁああぁぁあぁっ!!!」

 

  地面に這いつくばる勇也

  固いコンクリートに頭を打ち付ける

 

バスティ「誰よ、重力魔法かけたの!」

 

勇也「責任と期待という名のグラビティに押しつぶされそう……」

 

ニズシクス「だ、大丈夫かのう……」

 

●ニズスタトリスタ〔下界王都〕・飲食店

 

  テーブルを囲む勇也一行

  エルマとバスティが隣同士

  その対面に勇也

  並べられた料理を訝し気に見つめ―

 

勇也「……これ、食えるの?」

 

エルマ「えぇ」

 

勇也「少なくとも、俺のいた世界では見たことない……」

 

バスティ「でもこれで、下界と上界の行き来が自由になったわね」

 

エルマ「はい。早速、パーティメンバーを集めに行きましょう」

 

勇也「う、うん」

 

  勇也、徐に店内を見回す

  店内には、亜人の客が大勢

  背中には、左右に形の異なる大きな翼

  天使の翼と、悪魔の翼だろうか

  おまけに、頭には天使の輪と悪魔の角

 

勇也「この人たちは、何族なの?」

 

エルマ「彼らは人間族です。主に、王都で暮らしています」

 

勇也「いやいやいや、何で人間に羽なんて生えてるの。人間っていうのは、俺みたいなやつのことだよ。……そう、こんな俺でも、一応、人間……」

 

  徐々に俯いていく勇也

  陰のオーラが周囲を支配する

 

バスティ「なんで卑屈になるのよ」

 

エルマ「確かに、勇也様の世界の人間と比べたら、似ても似つきませんね」

 

バスティ「アンタ、人間のくせに変な見た目してるって思ってたのよね~」

 

勇也「えぇ、もしかして俺がマイノリティ?」

 

  ジロリと見てくるバスティの瞳

  それに、勇也が少なからず狼狽える

 

エルマ「かつてこの世界にも、勇也様と同じ姿形をした人間族がいました。人間族の起源、とでも言いましょうか。しかし、時が経つにつれて亜人の勢力は拡大し、いつしか人間族は滅んでしまったのです。それを憂いた天使族と悪魔族が手を取り合い融合し、新たな1つの種族となった……。それが今の人間族です」

 

勇也「天使と悪魔が合体して人間、っていう方程式が呑み込めないんだけど……」

 

エルマ「善意を想う天使の一面と、悪意が潜む悪魔の一面、その両方を掛け合わせ、持ち合わせているのが人間だと、彼らは主張しています」

 

勇也「確かに二面性はあるけど……」

 

  愚痴を溢すように呟く勇也

  再び目を伏せ、テーブルを見つめる

  そんな彼の顔を、バスティが覗き込む

  しかし、いつまでも目が合わず訝し気に―

 

バスティ「アンタ、全然人と目合わせないわよね」

 

  ギクリ、肩を跳ねさせる勇也

 

エルマ「確かに、勇也様のお顔、しっかり見たことありませんね」

 

バスティ「王様と話してる時もずっと下向いてたし、凄い自信ないように見えるわよ?」

 

勇也「……自信がないんだよ、自分の外見に。親と目を合わせるのだって、結構ハードルが高い……」

 

  バスティ、また勇也の顔を覗き込む

  しかし、勇也が掌でそれを静止し―

 

勇也「は、恥ずかしいからやめて」

 

バスティ「色んな見た目の種族がいるこの世界で、アンタのみてくれなんて気にならないと思うけど」

 

勇也「それ、励ましてるようで傷つけてるからね?」

 

  その時、店外から叫び声

  バスティ、思わず立ち上がる

 

バスティ「何、今の……!?」

 

エルマ「行ってみましょう……!」

 

●ニズスタトリスタ〔下界王都〕・広場

 

  逃げ惑う、人間族の人々

  そこに、エルマとバスティがやってくる

  目の前には、スライムが2匹跳ねている

 

エルマ「あれは……、スライム」

 

バスティ「ったく、どこから入って来たのかしら」

 

エルマ「でも、好機です。私が倒してしまいたいところですが、ここは勇也様に―」

 

  振り返るエルマ

  しかし、そこに勇也の姿はない

  勇也、飲食店のドア裏から顔を覗かせて―

 

勇也「頑張れ二人とも~!」

 

バスティ「ちょっとアンタ!」

 

  バスティ、勇也をズルズル引き摺って来る

 

バスティ「アンタ、それでも本当に勇者なの!?ちょっとは良いところ見せなさいよ!」

 

勇也「嫌だ、取り込まれたくない!怖すぎる!」

 

エルマ「勇也様、クエストドライバーを使う時です。勇也様の内に秘められた勇者としての潜在能力、見せてください!」

 

勇也「えぇ……」

 

  勇也、渋々ドライバーを取り出す

  腰に装着、ベルトが巻き付く

 

勇也「ちょ、キツ……。ど、どうやって使うの、これ?」

 

エルマ「それは、台座に収められた伝説の剣を模したもの。まずは、台座を立ててください」

 

勇也「こ、こう?」

 

  ドライバーの両端を押し込む

  横倒しの台座が立つ

  壮大な待機音が鳴り響く

 

エルマ「伝説の剣を抜いて、勇者の鎧を身に纏ってください」

 

勇也「えっと……」

 

勇也M「確か、こういう時って……」

 

  ドライバーの剣を引き抜く

 

勇也「変身」

 

  直後、地面を突き破って何かが出てくる

  大きな、伝説の剣とその台座だ

  巨大な剣が抜かれ、弾ける台座

  それが鎧と姿を変え、勇也の体に装着

 

勇也「うぉ、本当に変身した!」

 

  鈍く光る鎧を身に纏う勇也

  手には1本の剣と盾

  まさしく、勇者の装いだ

 

エルマ「仮面ライダーヴァラーLevel5。魔王を倒すため、異界から降り立った勇者の真の姿です」

 

  戸惑いが隠せない様子のヴァラー

  その時、1匹のスライムが飛び掛かる

  驚き、咄嗟に顔の前で剣を構える

  それによりスライムを切断

  真っ二つ、べチャッと地面に溶ける

 

ヴァラー「……」

 

バスティ「凄い……、それが勇者の伝説のつる―」

 

ヴァラー「我、歴戦の勇者なり!」

 

バスティ「は?」

 

  腕を広げ、言い放つヴァラー

  バスティ、思わず呆けた声が出る

  ヴァラー、白刃をスライムに突きつけ―

 

ヴァラー「スライムの1匹や2匹、赤子の手を捻るより前に、俺が倒してやる!」

 

× × × × ×

 

  剣を振り下ろすヴァラー

  しかし、中々当たらない

  小賢しく飛び退けるスライム

 

バスティ「歴戦って……、今初めて変身したじゃない。ほんと、すぐ調子に乗るんだから」

 

エルマ「ですが、思い込みの力も、存外無下には出来ないものですよ」

 

  剣を振るうヴァラー

  しかし、刀身がスライムにくっつく

 

ヴァラー「あ」

 

エルマ/バスティ「あ」

 

  グニョグニョと蠢くスライム

  ヴァラーの剣が、内部に取り込まれていく

  やがて、スライムが剣の姿に擬態

  ヴァラーより凄まじい力で斬りつける

 

ヴァラー「どぁーっ!」

 

  吹き飛ぶヴァラー

  バタバタと取り乱して―

 

ヴァラー「きらっ、きららっ、切られたっ!俺切られたっ!お父さんにも切られたことないのにっ!」

 

エルマ「落ち着いてください、勇也様!」

 

  ヴァラー、ピタッと動きを止めて―

 

ヴァラー「あれ、痛くない……」

 

エルマ「並の攻撃では、鎧に傷をつけることすらできま―」

 

ヴァラー「ハッハッハ、そんな攻撃痛くも痒くもないわ!」

 

  立ち上がり言い放つヴァラー

  バスティ、それに物言いたげな表情

  握る拳は、ともすれば殴るためか

 

ヴァラー「でもどうしよう、剣取り込まれちゃった」

 

エルマ「そうですね。となると、盾で殴殺……」

 

バスティ「そんな勇者嫌ね……」

 

エルマ「そうですね。もしかしたら、盾も取り込まれるかもしれません」

 

ヴァラー「もうどっちが勇者か分かんねぇな」

 

エルマ「そうです、勇也様。先ほど私が託した、盟友の証石を使いましょう」

 

  懐を漁るヴァラー

  真っ白な宝石を掌に乗せ―

 

ヴァラー「これ?」

 

エルマ「台座を反して、証石をかざしてください」

 

ヴァラー「う、うん」

 

  ドライバーの両端を2度引く

  台座が引っ繰り返る

  台座の裏、刻まれた小さな魔法陣

  ヴァラー、そこに証石をかざす

  すると、証石がバックルに形を変える

 

ヴァラー「これは……」

 

エルマ「勇者様は、託された証石によって仲間の力の一端を身に宿すことができるのです。そしてそれは、私の魔法の力……」

 

ヴァラー「そっか、遠距離攻撃!」

 

  魔法の杖型のバックル

  ヴァラー、それを手首のスロットに装填

  右腕のアーマーが左腕に集約

  新たに、魔法使いのアーマーが装着

  飛び掛かってくるスライム

  ヴァラー、それに手をかざし―

 

ヴァラー「『ヴズリーブ』!」

 

  突如、眼前が爆発

  スライム、跡形もなく弾け飛ぶ

  ヴァラー、変身を解除

  放心したように一点を見つめる

  直後、広場に響く拍手

  大勢の人々、勇也を笑顔で称える

 

エルマ「初戦闘、お疲れ様でした」

 

バスティ「やればできるじゃない。ま、勇者って認めるにはまだ早いけ―」

 

勇也「うおぉおおぉおぉぉおっ!!!!」

 

  突如、雄叫びを上げる勇也

  広場に大きく反響する

  バスティ、それに思わず猫耳を抑え―

 

バスティ「ちょ、どうしたのよ急に……!?」

 

勇也「魔法が使えた!俺の手で!夢にまで見たあの魔法が!魔法使いになれたんだ!」

 

  バッと振り返る勇也、その後頭部

 

勇也「俺、このまま魔王、倒せるかもしれない……!」

 

  エルマ、パッと目を見開く

  そして、優しく微笑み―

 

エルマ「良い御顔ですね……」

 

バスティ「確かに、思い込みも悪くないかも」

 

エルマ「いいえ、これは―」

 

  勇也、子供のような満面の笑み

  クシャッと、無邪気な笑顔を見せる

 

エルマ「思い込みでは、ないかもしれません」

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