ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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●:柱
◆:柱《回想》
■:柱(女神の試練時)
二文字開け:ト書き
○○M:モノローグ
○○N:ナレーション
○○(声):声のみ
×××××:カットバック(場面転換・時間経過)
〔回想〕:閃光回想(フラッシュバック)



第三八幕 女神の神殿

●エルフ族の森・森奥

 

  ザッザッザ、歩いてくる勇也一行

  眼前、石碑を訝しんで見下ろす

  勇也、微かに緊張の面持ちを緩め―

 

勇也「よかった、まだあった」

 

ガンテ「これが、にーちゃんの言ってたやつか?」

 

勇也「うん」

 

エルマ「創世の女神が刻まれた石碑。この謎を解けば、女神は再び世界に降臨する、と……」

 

ガンテ「ほ~ん。ま、とりあえずぶっ壊してみるか!」

 

勇也「ダメダメダメダメ!」

 

  拳を振り上げるガンテ

  勇也、それを必死に静止する

 

ガンテ「んだよ、もどかしいな~」

 

勇也「脳筋が過ぎるって……」

 

バスティ「そうよ、全く。殴ることしか考えてないんだから」

 

  というバスティも、拳を構えている

  プルプルと震え、今にも飛び出しそうだ

 

ガンテ「ねーちゃんも抑えられてねぇじゃねぇか」

 

勇也「ピリオネは、何か分からない?」

 

ピリオネ「ワタシのデータベースに、このような情報はないデス。お手上げあぶら揚げデス」

 

ガンテ「お前、見た目だけで結構使えねぇよな」

 

ピリオネ「オマエの頭、今すぐかち割ってやるデスッ!」

 

  ピリオネ、ガンテの頭をガッと掴む

  石碑の角にグイグイと押し当てる

  ひん剥かれ充血した目、顔は鬼の形相だ

 

勇也「なんだろう、神聖な場所で暴れるのやめてもらっていいすか?」

 

  瞬間、ふと動きを止めるピリオネ

  何かに気付いたように、石碑を見やる

  勇也、それに小首を傾げて―

 

勇也「どうかしたんすか?」

 

ピリオネ「この石、微かに魔力を感じるデス」

 

エルマ「本当ですか?」

 

ピリオネ「エルマ、試しに魔力を流し込んでみろデス。オマエの創世級なら、多分どうとでもなるデス」

 

ナーチ「やっぱり脳筋……」

 

エルマ「分かりました……」

 

  エルマ、石碑に歩み寄る

  スッと杖を構えて―

 

エルマ「『ヴィプスク』」

 

  杖の先端、魔力の奔流を感じる

  波のように蠢く魔力が、石碑に注がれる

  やがて呼応するように、石碑の紋様が輝く

  その直後、ズゴゴゴゴと地響き

 

勇也「な、何だ……!?」

 

  眼前、地盤が盛り上がり、砕け散る

  大きな何かが、地を穿ちせり上がってくる

  やがて地鳴りは止み、それが全容を現す

 

ナーチ「こ、これが……」

 

エルマ「女神の、神殿……」

 

  石作りの巨大な構造物

  四角錐を奥に伸ばしたような形状

  中央、何かの像があしらわれた入り口

  まるで、神殿内部へと誘うかのよう

  勇也、キラキラと目を輝かせながら―

 

勇也「な、なるほど、姿を現すってそういうことか……!」

 

ピリオネ「ワタシの分析にも引っかからないよう、巧妙に隠されていたデス……?」

 

バスティ「ねぇ、入り口があるわよ。中に入れってことよね?」

 

  バスティの言葉に、しかし口を噤む一行

  やはり、目の前の異物に警戒を隠し切れない

  その時、エルマがスッと一歩踏み出し―

 

エルマ「私が行きます」

 

勇也「エルマ……」

 

エルマ「ここに……、私の故郷にあるということに、何か意味があるのかもしれません」

 

バスティ「そ。じゃ、アタシたちは待ってるわ」

 

  神殿に歩み出すエルマ

  その背中に、勇也が声をかける

 

勇也「エルマ、気を付けて……」

 

エルマ「……はい」

 

●火の女神の神殿・通路

 

  コトコト、エルマの足音が響く

  微かな吐息さえ反響するほど、静寂が満ちる

  中は薄暗く、無機質な石畳に肌が冷える

  壁面には、燭台が奥まで続いている

  エルマが通るたび、一つ、また一つと火が灯る

  慎重に、しかし確実に歩を進めるエルマ

  やがて、神殿の最奥へと辿り着く

 

エルマ「ここは……」

 

  開けた場所、祭壇のようだ

  そこには、一つの大きな結晶が掲げられている

  燭台の炎を反射し、眩く光る

  エルマ、それにそっと手を触れて―

 

エルマ「……魔力じゃない。全く、別の力で作られた……」

 

  信じられないと囁くエルマ

  その時、結晶の光が揺らめく

  揺らめき、その内部が見える

 

エルマ「少女……?」

 

  結晶内部、一人の少女が囚われている

  否、穏やかな表情、瞳を閉じ眠っているようだ

  そして、その言葉に呼応するように結晶が弾ける

  眩い光の粒子となって、霧散する

  少女、ヒタッと地面に足を着く、裸足だ

  まだ幼い体を包む白のワンピースがハラリと靡く

  ゆっくりと顔を上げ、真紅の瞳でエルマを見る

  その幼い顔立ちには、哀憐が込められている

 

エルマ「貴方は……?」

 

ゲスティアナ「私は、火の女神・ゲスティアナ」

 

エルマ「火の、女神……!」

 

  エルマ、文献に視線を落とす

  しかし、その文献がない

  先程まで、抱えていたはずなのに

  戸惑うエルマに、女神は語り掛ける

 

ゲスティアナ「私はずっと、あなたを見てきた……」

 

エルマ「私を……?」

 

ゲスティアナ「ねぇ、本当に忘れちゃったの……?」

 

エルマ「え……?」

 

ゲスティアナ「あの日のこと……。あなたは、本当に忘れちゃったの……?」

 

  泣きそうな眼で問うてくる女神

  エルマ、それにハッと眉を上げる

 

  〔回想〕

  エルマ「亡くなりました。私が、まだ小さい時に……」

  勇也「あ、えっと……、その、ごめん……」

  エルマ「いえ、エルフの寿命は長いので、その時の記憶ももう朧気です」

 

  スッと、目を細めて―

 

エルマN「忘れてない。忘れたことなんて、一度もない。忘れられる、はずがない……」

 

■ボーテミュイズン・とある教会《回想》

 

  明るい陽の差す、静謐な教会

  座席に腰かけるのは、幼少期のエルマ

  脚をパタパタ、床には着かない

  その隣、エルマに寄り添う母親・マーリフ

  祭壇、杖を掲げる父親・エリーツを見守る

 

エルマN「両親共に神官で、よく一緒に教会に出向いては、二人の仕事を見守っていた。召喚は、全てが成功するわけではない。むしろ、不発に終わることの方が多い」

 

  エリーツ、掲げていた杖を下ろす

  申し訳なさそうにこちらに振り向き―

 

エリーツ「また、失敗だ」

 

  軽く頭を掻きながら、エルマとマーリフの元へ

  エルマの頭をクシャッと撫でる

 

エルマN「でも、私はそんな両親を見て、失望なんてしなかった。むしろ―」

 

エルマ「私も、パパとママみたいな神官になれるかな?」

 

エリーツ「あぁ。しっかり稽古すれば、きっと成れるさ!」

 

マーリフ「エルマは、何を召喚したいのですか?」

 

エルマ「え~っとね、え~っとね~!」

 

エルマN「その言葉が、ただ嬉しかった。そして、そんな言葉をかけてくれる両親が誇らしくて、ただ憧れた」

 

× × × × ×

 

  別の日

  一人、教会の座席に座るエルマ

  膝の上、大きな本を広げて読んでいる

 

エルマN「神官になりたくて、両親と一緒に魔法を使いたくて、勉強や稽古は欠かさなかった。よく、父の書斎から本を持ち出しては、一人で読み耽っていた。あの教会は、私の居場所。私と両親の、思い出の場所」

 

  エルマの体に影が落ちる

  エリーツだ、手をワキワキさせている

  そのまま、エルマの小さな体を抱き上げる

  はしゃぐエルマ、本は返さないと抱きしめる

 

エルマN「だけど、悲劇はある日、突然やってきた。これはほんの、序章に過ぎないけれど……」

 

■ボーテミュイズン・とある教会《回想》

 

  席に座るエルマと、それに寄り添うマーリフ

  祭壇では、いつも通りエリーツが杖を掲げる

  それには目もくれず、膝上の本に夢中

  その時、ふと肌にピリピリと何かを感じる

  瞬間、凄まじい轟音

  否、それは強大な魔力の奔流だ

  エリーツの掲げる杖から放たれている

  その膨大さに、風が吹き荒ぶ

  教会は、今にも崩れそうに大きく軋む

  しかしエルマ、その光景から目が離せない

  魅了されるような瞳、キラキラと輝いている

  やがて全てが収まり、エリーツが振り向く

  興奮冷めやらぬように、微かに体を震わせ―

 

エリーツ「……成功、した!」

 

エルマ「……やったーっ!」

 

  声を上げ、飛び上がるエルマ

  エリーツの元へ駆け、胸に飛びつく

 

マーリフ「おめでとうございます……!」

 

エリーツ「あぁ!これで、魔王への対抗手段が出来た!」

 

  エルマ、キョロキョロと辺りを見回し―

 

エルマ「ねぇパパ、勇者さんはどこ?」

 

マーリフ「もしかすると、別の場所に転移したのかもしれませんね」

 

エリーツ「そうだな。繋げてみよう」

 

  エリーツ、眉間に手を当てて―

 

エリーツ「『ニェルブ』」

 

  瞳を閉じ、集中する

  だが、小さく首を傾げて―

 

エリーツ「おかしいな、繋がらない……」

 

エルマ「パパ……?」

 

マーリフ「確かに、召喚は成功しました。必ずどこかにいるはずですよ」

 

エリーツ「そうだな。ちょっと探しに行っt—」

 

  一歩踏み出すエリーツ

  瞬間、大きな音を立てて扉が開かれる

  驚き、咄嗟に身を隠すエルマ

  座席の足元に蹲る

  故に、扉の向こうにいる人物の姿は見えない

  ただ、エリーツとその人物の会話だけが聞こえる

 

エリーツ「これは、王……。このような偏狭の地に、何か御用ですか?」

 

??「……貴様か。今し方、忌子をこの世に呼び寄せたのは……」

 

エリーツ「忌子……?何のことです……?」

 

??「惚けるな。この世界で初めて生まれた勇者……。その強大な力故に恐れられ、別世界へと飛ばされた」

 

エリーツ「もちろん、それは存じ上げております。それが、どうして―」

 

??「その忌子を、貴様が今召喚したと言っておるのじゃ!」

 

エリーツ「ま、まさか、そんなはずありません……!」

 

??「いや、ワシには分かる……。忘れもせぬあの力、悍ましい気配……。忌々しい勇者……、否、魔の子そのものじゃ……!」

 

マーリフ「あなた……」

 

エリーツ「大丈夫……」

 

??「まさか、再びこの世界に呼び戻すとは……。事は、貴様らだけの問題ではない。エルフ族における大罪じゃ!」

 

エリーツ「……っ?」

 

  狼狽えるエリーツ

  その瞬間、教会の外から叫び声

  集落の方角からだ

  ビクリと体を震わせるエルマ

  エリーツ、慌てて教会の外へ走り出す

 

■エルフ族の森・集落《回想》

 

  ダッダッダ、走るエリーツ

  その光景を見て立ち止まり、瞠目

 

エリーツ「……っ!」

 

  押し寄せる人間族の兵士、騎士の軍勢

  エルフたちを取り押さえている

  一箇所に集め、構えた剣で制圧

  不安の呟き、子供の泣き声が入り混じる

  背後から、タッタッタと足音

 

エルマ「パパ……!」

 

  走ってくるエルマ、エリーツの背中に抱き着く

  マーリフ、同じく瞠目して―

 

マーリフ「あなた、これ……」

 

エリーツ「……」

 

??「既に、貴様らの集落は我が手中じゃ……」

 

  謎の人物、こちらに歩いてくる

  ゆっくりと、一歩を踏みしめる足取り

  それが、得も言われぬ威圧感を放つ

  エルマは、エリーツの背中に顔を埋めたまま

 

エリーツ「どうして、このようなことを……!」

 

??「決まっておろう。貴様らが、この世界を危機に陥れた種族そのものだからじゃ。よって、エルフ族を神官の座から剥奪する。今後は、龍神族がそれを務めることになるだろう」

 

エリーツ「待ってください!私たちは―」

 

??「口を慎めぃ、下賤種が!」

 

  怒号、森に反響する

  その人物、大剣を地に突き立てる

 

エリーツ「げ、下賤種……?」

 

??「そうじゃ。それが、貴様らエルフに与えられた新たな地位じゃ。貴様らだけではない。この世界において地位のあるもの、ないものはワシが判断する」

 

  エルマ、恐る恐るその人物に顔を向ける

  悪魔の翼を蓄えた老父の姿が見えて―

 

ヴラガロード「この悪魔族、そして人間族の王・ヴラガロードが、この世界の高貴種、下賤種を選定する!貴様らは以後、我々高貴種の下僕じゃ。良いな……?」

 

エリーツ「そ、そんな……」

 

  言葉が出ないエリーツ

  その瞬間、大きな地響きが鳴る

  体が揺すられ、心臓を強く打つ

 

エルマN「その時、地続きだったこの世界は2つに分断された」

 

  遠方、大地が盛り上がる

  否、それは明らかに空に浮いている

  やがて頭上、森に影を落とすように佇む

  その場にいる誰もが、目を疑う

  ヴラガロードでさえ、目を見開きニヤリと笑う

 

ヴラガロード「ほぅ、これは良い……」

 

エルマN「まるで呼応するように……、私たち下賤種に見せつけるかのように、この世界に上界と下界、2つの世界が生まれた」

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