ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

42 / 52
第四十幕 風の導くままに

●ボーテミュイズン〔上界〕・岩地

 

  一面、ゴツゴツとした岩肌が広がる

  その中、剣を振るうヴァラー

  熊のような、大型の魔獣が迫る

  しかし、その硬度に歯が立たない

 

ヴァラー「腕が痺れるっ!」

 

ヒール「スカルミェード……。岩のように固い皮膚を持つ、大型の魔獣です」

 

ヴァラー「現代日本で熊に囲まれたら大事件だけど、ここじゃ珍しくもない状況かぁ」

 

  そう言って、辺りを見回すヴァラー

  一行を囲う、スカルミェードの大群

  遠くの崖からも、こちらを睨んでいる

 

ファイト「アタシ、そろそろ爪が剥がれそうなんだけど」

 

アッサス「刃こぼれが……」

 

ヒール「そうですね……。スカルミェードの皮膚には、斬撃より打撃が有効かもしれません」

 

バトラー「だったら、俺の出番だ!」

 

  ダッと飛び出すバトラー

  スカルミェードと拳を交わす

 

ヴァラー「おぉ、少年と熊の戦い。これが金太郎かぁ」

 

  大熊の体に打撃を与えるバトラー

  ミシミシと、その体にヒビが入っていく

  バトラーの身軽さに、大熊は反応出来ない

 

バトラー「おらぁっ!」

 

  やがて、バトラーの拳が大熊の腹を貫く

 

バトラー「おいおい、そんなもんかよぉ」

 

  挑発するように言い放つバトラー

  直後、上空で爆発音

  周囲に無数のミサイルが着弾する

 

バトラー「あっぶねぇ!」

 

ベルスク「糞熊共は一掃デ~ス!」

 

ヒール「『グラヴィータ』!」

 

  杖を掲げるヒール

  放たれた重力が、熊共の自由を奪う

  メキメキと、体が押し潰されていく

  しかし、それを踏み躙り新たな個体が迫る

 

ヴァラー「多いって!」

 

バトラー「さすがに一匹ずつ相手すんのは骨が折れるぜ」

 

ヒール「えぇ、このままではジリ貧です……」

 

  声音を落とすヒール

  その時、懐が何やら光を放つ

  そして、バッと文献が飛び出す

 

ヒール「文献が……」

 

  バサバサ、ひとりでにページを捲る

  やがて、5つの紋様のページが開かれる

  刻まれた火の女神の紋様が、眩い光を放つ

 

ゲスティアナ(声)「私の力、貸してあげる」

 

ヒール「ゲスティアナ様……?」

 

  直後、ヴァラーの剣が燃える

  凄まじい炎が、天まで立ち昇る

 

ヴァラー「何これ何これ何これ何これ!?」

 

ヒール「勇也様、剣を振ってください!」

 

ヴァラー「え?お、おぉ……!」

 

ヒール「皆様、伏せて!」

 

  ヒールのその声に、地面に伏せる一同

  同時に、ヴァラーが剣を振り抜く

  円形に広がる炎が、大地を覆いつくす

  その圧倒的な熱に、熊共は成す術もない

  ただ、瞬きの内に灰と化すのを待つばかり

  やがて、その地には何もいなくなる

  崖上の熊共も、それを見て退散

 

バトラー「にーちゃん、すげぇ!」

 

ヒール「これが、女神の力……」

 

ヴァラー「な、なんか分かんないけど、俺の一人勝ちってことで!」

 

  威張るヴァラー

  剣は、未だに炎を放ち続けている

  故に、何かを感じる

  パチパチ、ジリジリ、何かが焼ける感覚

  それは、次第に強くなっていく

  皮膚だ、鎧下の皮膚が焼けている

 

ヴァラー「ちょ、あつ、熱い!熱いって!めっちゃあt……、やばいって!」

 

ヒール「早く鎧を脱いでください……!」

 

× × × × ×

 

  岩肌に寝そべる勇也

  岩の冷たさが、今だけは心地いい

  火傷に手をかざすエルマ

  淡い光で火傷を優しく包み込む

 

エルマ「銅は、熱を通しやすいのです」

 

勇也「これが、理科から逃げ続けた男の末路か……」

 

ガンテ「おい、ピリオネ!てめぇ、ミサイルはやめとけよ!崩れたらどうすんだ!」

 

ピリオネ「知ったこっちゃないデス!バーサーカーは、いついかなる時も暴れてなんぼデス!」

 

勇也「いやいや、崩したらやばいって……!国際問題に発展しちゃう……」

 

  エルマが手に持つ文献

  緑の光が指し示すのは、眼前の切り立った崖

  そこには、小さな空洞―入り口が見える

 

エルマ「龍人族の洞窟。次なる、女神の神殿の所在です」

 

●龍人族の洞窟

 

  暗い洞窟、一切の光も届かない

  光を放つエルマの杖、それだけが道標

  ただ、歩を進める勇也一行

  コトコト、足音が耳元で反響する

  偶に、どこかでポツリと水滴が落ちる

  ふと、ピリオネが口元に手を添えて―

 

ピリオネ「ワッ!」

 

勇也「ぶらぁっ!」

 

ナーチ「ぴぎゃあっ!」

 

  勇也とナーチ、抱き合って震える

  何か言いたげだが、言葉より先に涙が滲む

  ピリオネ、それにケタケタと笑い―

 

ピリオネ「ははっ、滑稽デス!」

 

ガンテ「お前、マジで終わってんな」

 

勇也「今ので無理になった!もう無理、進めない!絶対なんか出るもん、ここ!」

 

バスティ「何言ってんのよ、情けないわね」

 

ガンテ「そうだぜ。そんなのより、ねーちゃんの方がよっぽど怖ぇ」

 

バスティ「その通りよ。後で覚えときなさい」

 

エルマ「予め訪問すると伝えたので、そろそろ―」

 

  その時、正面からザッと足音

 

勇也「ぶわぁっ!」

 

ナーチ「ぽぎょふっ!」

 

  ガタガタ、大袈裟に体を震わせる小心者2人

  構うことなく、足音は徐々に近づいてくる

  やがて、光に照らされその姿が見える

  勇也、それを見てハッと眉を上げ―

 

勇也「あ、君は……」

 

エルマ「お久しぶりです、ガンドルム」

 

  白いローブを身に纏った少年―ガンドルムだ

  片目を閉じ、煩わし気に耳を抑えて―

 

ガンドルム「相変わらず、騒がしいやつらだ」

 

●龍人族の洞窟〔第1階層〕・街

 

  開けた場所に出た

  様々な家々や、出店が立ち並ぶ

  洞窟であるのが嘘の様に明るい

  紛れもなく、1つの街がそこには広がっている

 

勇也「さてさて、龍人族の皆様はいかにファンタジックな生活を―」

 

  ウキウキして、辺りを見回す勇也

  家や建物は、整然と立ちならぶ

  店には、どこでも見るような品々

  街灯は、しっかりとした支えが施されている

  これと言って、特筆すべき点は見当たらない

  今まで見てきた街と、特段相違ない

 

勇也「あれ……、何か、普通……」

 

エルマ「龍人族の魔法使用は、エルフ族のように自由ではありません。勇也様の期待しているようなものは見られないかと……」

 

ガンドルム「魔法は、ここぞという時にしか使わない。それ以外は、なくても問題ないからな」

 

エルマ「同じ魔力を司る種族でありながら、対極に位置するとは、何だか不思議ですね」

 

ガンドルム「詳しいことは知らないけどな。カイゼリアンとエヴァリナに聞け」

 

  振り向かず、そう言い放つガンドルム

  あからさまに肩を落とす勇也には構わず―

 

バスティ「それにしても、広いわね~」

 

ガンテ「あぁ、洞窟の中とは思えないぜ」

 

ナーチ「クラクラしゅる……」

 

  上空を見上げると、天蓋はどこまでも高い

  まるで、大空を見上げているような気分

 

ガンドルム「魔法で空間を拡張しているからな」

 

ピリオネ「さすが、『龍の腹』と呼ばれるだけあるデス」

 

勇也「おっと、ファンタジーの足音が聞こえる……」

 

ガンドルム「ここは、第一階層。通路を通じて、下へと空間が続いている」

 

  それを聞いて、勇也はふと思い浮かべる

  土の断面図を横から見たものだ

  地表から続く細長い通路

  枝分かれしたその先に、無数の空間が繋がる

  それはさながら―

 

勇也「蟻の巣かな?」

 

ガンドルム「なんか言ったか?」

 

勇也「いえ、何も」

 

  エルマ、文献に視線を落とす

  緑の光は、一行の足元―地面を貫いている

 

エルマ「神殿は、ここより下の階層ということですか」

 

ガンドルム「案内するのは良いが、その前に聞かせてもらう」

 

  ガンドルム、ようやく一行に振り返る

  訝し気に眉を寄せて―

 

ガンドルム「女神の神殿って、一体何なんだ?」

 

●龍人族の洞窟〔第1階層〕・飲食店

 

  席に腰かける一行とガンドルム

  龍の目を細めて、文献を見つめる

 

ガンドルム「世界が危機に陥った時、女神は再びその姿を現す……」

 

エルマ「文献の記述通り、エルフの森に女神の神殿がありました」

 

ガンドルム「聞いたことはある……、創世の女神。御伽噺だと思っていたが、まさか……」

 

エルマ「私も、最初はそう思っていました。ですが事実、私は神殿で火の女神・ゲスティアナ様にお会いしました」

 

ガンドルム「……どんな姿をしていた?」

 

エルマ「赤髪の、幼い少女の姿でした……」

 

  口を噤むガンドルム

  納得しているのか、疑っているのか

 

ガンテ「気になってたんだけどよ、あの神殿で何してたんだ?」

 

勇也「確かに。俺たちは、ずっと待ってただけだったけど……」

 

  エルマ、微かに目を伏せて―

 

エルマ「過去を、見ました……」

 

勇也「過去って、エルマの?」

 

エルマ「はい。父と母が出て来て……、私が神官になるまでの……」

 

勇也「……あぁ、だから―」

 

  〔回想〕

  エルマ「私は、必ず魔王を打ち滅ぼします。だから、着いてきてくださいね」

 

エルマ「そして、試練は突破した、と」

 

バスティ「試練?」

 

エルマ「恐らく、私が見た過去のことでしょう。その悲しみの呪縛に囚われることなく、乗り越えることができたから……。その後、ゲスティアナ様は、私達に力を授けてくださいました」

 

ガンドルム「力?」

 

  エルマ、文献を捲る

  5つの紋様が刻まれたページだ

  光の宿る、赤い紋様を指さして―

 

エルマ「火の女神の力。5つの原質を司るとの記述から、彼女から授かったのは火の力で間違いないでしょう」

 

勇也「……あ、もしかして」

 

エルマ「はい。勇也様が、先ほど使ったものです」

 

  〔回想〕

    直後、ヴァラーの剣が燃える

    凄まじい炎が、天まで立ち昇る

  ヴァラー「何これ何これ何これ何これ!?」

  ヒール「勇也様、剣を振ってください!」

  ヴァラー「え?お、おぉ……!」

  ヒール「皆様、伏せて!」

    ヒールのその声に、地面に伏せる一同

    同時に、ヴァラーが剣を振り抜く

    円形に広がる炎が、大地を覆いつくす

    その圧倒的な熱に、熊共は成す術もない

 

勇也「通りで熱かったわけだ……」

 

ピリオネ「小並感」

 

エルマ「そして、この洞窟に眠るのは恐らく、風の女神の神殿。全ての神殿を巡り力を集めれば、魔王に対抗する強力な手段となるでしょう」

 

ガンテ「当面の目的は決まったな!」

 

バスティ「ま~た歩きすぎて尻尾凝っちゃうわよ」

 

エルマ「ガンドルム、貴方の力も貸してください。どうか、よろしくおねがいします」

 

  エルマ、ガンドルムを真っ直ぐ見つめる

 

ガンドルム「分かった。着いて来い」

 

勇也「意外にあっさり聞いてくれる……」

 

ガンドルム「何だ?」

 

勇也「いや、前までは一応、敵?同士だったのに」

 

ガンドルム「この世界にとっての一番を考えた時、お前らを拒む理由はどこにもない。それに、お前には……」

 

  言い淀むガンドルム、二の句が継げない

 

  〔回想〕

    パチンッ、乾いた音が響く

    武子、エルマの頬に掌を振り抜く

    大きく口を開け、唾を飛ばしながら―

  武子「誰に口利いてやがんだ、この半魔がぁ!おい、ガンドルム!」

    武子、ガンドルムに振り向く

    何かを命じているかのような眼力

    直後、エルマの体に電流が走る

  エルマ「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!」

  ガンドルム「……」

 

  エルマを見たまま固まるガンドルム

  それに、当のエルマはキョトン顔だ

  ガンドルム、ついにそっぽを向いてしまい―

 

ガンドルム「何でもない、さっさと行くぞ……!」

 

バスティ「ツンデレは面倒くさいわよ~」

 

勇也M「バスティがそれ言う?」

 

●龍人族の洞窟〔第18階層〕

 

  開けた場所、だが何もない

  無機質な岩肌が広がるだけ

  勇也、膝の震えが止まらない

  ゼェゼェと息を切らしながら―

 

勇也「これ、上昇負荷とかないよね……?ミー○ィみたいになるのごめんなんだけど……」

 

エルマ「ありました」

 

  視線の先、文献の光が指し示すもの

  女神の姿が刻まれた、丸い石碑だ

 

ガンドルム「これが……?」

 

エルマ「はい」

 

  エルマ、杖を構えて―

 

エルマ「『ヴィプスク』」

 

  杖の先端、魔力の流れを感じる

  吸い寄せられるように、魔力が石碑へ

  やがて、充電完了と言わんばかりに紋様が光る

  そして、大きな地鳴りが鳴る

  鈍い音が響き、天蓋から岩の欠片が落ちる

 

勇也「これ、崩れたりしないよねぇ!?」

 

  頭を抱える勇也とナーチ

  小心者2人は気にせず、エルマは毅然と待つ

  やがて、岩肌を突き破って迫り上がってくる

  石造りの建造物、森で見たものと同じ造型

 

ガンドルム「これが、女神の神殿……」

 

  瞠目するガンドルム

  その時、声が響く

 

??「ようこそ、ボクの神殿へ」

 

  その声に、勇也たちも辺りを見回す

  しかし、その声は眼前、神殿の入り口から

  コツコツと、足音と共に近づいてくる

  やがて姿を見せたのは、長身の女性

  緑色のクラゲヘアで目は切れ長

  スーツを着こなすその姿は、男性的でもある

 

エルマ「あ、貴方は……」

 

  戸惑いながら問うエルマ

  それに、女性は僅かに口の端を上げる

  キザに片目を閉じて見せて―

 

アウール「ボクは風の女神・アウール。嬉しいねぇ、今回はかわいこちゃんがいっぱいだ☆」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。