ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第六幕 木こりの村の秘密

●ドワーフ族の村・宿屋・寝室

 

  翌朝、窓から陽の光がさしこむ

  暖かな光が寝室を包み込む

  その時、ふいに何かの音が響く

  スマホのアラームだ

  エルマ、目を覚ます

  起き上がり伸びをして―

 

エルマ「もう朝ですか……」

 

  ベッドの下、チラと猫耳が揺れる

  バスティ、ベッドの下から出てくる

  煩わし気に眉を顰めている

 

エルマ「おはようございます」

 

バスティ「……おはよう。なに、この音?」

 

エルマ「恐らく、勇也様の―」

 

  ふと、勇也に振り向くバスティ

  震える勇也、目は血走っている

  明らかに、平常ではない

  歯をガチガチと鳴らしながら―

 

勇也「こ、怖くて寝れなかった……」

 

バスティ「勇也!?」

 

●ドワーフ族の村・森

 

  鬱蒼とした森

  その中に開けた場所がある

  木を切るドワーフたち

  体より大きな斧で、木を打ち付ける

  木を倒し、せっせとどこかへ運ぶ

  どこか統率の取れた、美しい動きだ

  その中に、勇也一行の姿

  手刀で木を切るバスティ

  手の甲にはダメージ一つない

  魔法で木を運ぶエルマ

  1人で数十本、その表情は余裕だ

  勇也、手に持つ斧を下ろす

  しかし、中々切れない

  切れないから、あまり楽しくない

  ふと、燦々と輝く太陽に目を向ける

  スマホを取り出して―

 

勇也「さすがに、異世界には対応してないか」

 

  天気アプリ

  温度は表示されていない

  その時、ふと声が届く

 

バスティ「何サボってんのよ」

 

勇也「バスティが有能すぎるんだよ」

 

  バスティ、スマホに気付いて―

 

バスティ「なに、その板?」

 

勇也「テンプレの反応ありがとう」

 

エルマ「スマートフォン。勇也様の世界で、広く使用されている携帯機器の一種ですね」

 

バスティ「もしかして、さっきピッピピッピいってたのもこれ?」

 

エルマ「えぇ、アラームと言います」

 

勇也「ポケットの中弄ったら入ってたんだよね。まぁ、wi-fiとか何もないから、ほぼ使えないんだけど」

 

  勇也のスマホの右上

  『圏外』の表示

 

エルマ「この世界では魔法が普及しているので、そういったものは存在しませんね」

 

バスティ「まぁ普及って言っても、使えるのはエルフ族くらいだけど」

 

勇也「そういえば疑問だったんだけど、なんで太陽出てるの?言ったら下界って、地下洞窟みたいなものでしょ?」

 

  それに、ニッコリと笑うエルマ

  一点の曇りもない笑顔で―

 

エルマ「魔法です」

 

勇也「ワオ、便利」

 

ウレアヌ「捗っていますかな?」

 

  ウレアヌ、やってくる

  ノソノソと如何にも老人らしい足取り

  それに、エルマが丁寧に頭を下げて―

 

エルマ「えぇ、貴重な体験をさせていただき、ありがとうございます」

 

  勇也、目を見開く

 

  〔回想〕

    大勢のウレアヌ、正面を向いて整列

    表情も変えず、微動だにしない

    まるで、並べられた人形の様

 

ウレアヌ「いえいえ。こちらこそ、勇者御一行様にお手伝いいただけるとは、何たる光栄なことか」

 

勇也M「さすがに、気のせいか……」

 

ウレアヌ「ところで勇者様」

 

勇也「は、はい」

 

ウレアヌ「昨晩は、倉庫で何をしていたのですかな?」

 

勇也「え、倉庫って……」

 

ウレアヌ「見ていましたぞ」

 

  射貫くような鋭い瞳

  勇也、それに思わず固まる

  その時、ザッと足音

  背後にウレアヌだ

 

ウレアヌ「勇者様が、我々の倉庫に足を踏み入れたところ」

 

  ザッと足音

  傍らにウレアヌだ

 

ウレアヌ「まさか、見られてしまっていたとは」

 

  ザッと足音

  正面にウレアヌだ

 

ウレアヌ「出来れば知られずに―」

 

  ウレアヌだ

  ウレアヌだ

 

ウレアヌ「済ませたかったのですが」

 

  ウレアヌだ

  ウレアヌだ

  ウレアヌだ

 

ウレアヌ「見られてしまっては―」

 

  ウレアヌだ

  ウレアヌ

  ウレアヌ

  ウレアヌ

 

ウレアヌ「仕方がない……」

 

  ウレアヌ

  ウレアヌ

  ウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌウレアヌ―

 

●ドワーフ族の森・宿屋

 

  ベッドに寝そべる勇也

  ゆっくりと目を開ける

  重い体を起こして―

 

勇也「ここは……」

 

エルマ「勇也様、お目覚めですか」

 

  傍らには、バスティとエルマ

 

勇也「2人とも……」

 

ウレアヌ「ご無事で何よりです、勇者様」

 

  声に振り向く勇也

  ウレアヌ、優し気な眼差し

  勇也、しかしベッドから飛び起き―

 

勇也「ホラー展開は聞いてないっ!」

 

ウレアヌ「驚かせてしまい、申し訳ありません。ですが、何も取って食おうというわけではないのです」

 

勇也「そ、そうなの……?」

 

ウレアヌ「勇者様の損失は世界の損失。我々……、いや、私のような一介のドワーフに、そのような業を背負う覚悟、ございませぬ」

 

バスティ「みんな同じ顔してるって思ってたけど、気のせいじゃないわよね?」

 

  訝んで聞くバスティ

  明らかに、何かあると確信している

  それに、ウレアヌは微かに言い淀んで―

 

ウレアヌ「この村にいるドワーフは皆、私なのです」

 

バスティ「どういうこと?」

 

エルマ「もしかして、クローン魔法……?」

 

ウレアヌ「その通り……。かつて、この村の規模は今より大きく、それだけ多くのドワーフが暮らしていました。しかしある時、魔獣の襲撃を受け、村は焼け落ち……、幸か不幸か、生き残ったドワーフは私だけじゃった……。どうしてこの村なのじゃ、どうして私らなのじゃ……。孤独で過ごす日々は、永遠のようじゃった。自ら、命を捨てようとしたこともあった。じゃがそれでは、我々ドワーフ族の生きた証を永遠に失ってしまう。唯一残ったこの村を守るため、私自身がこの村の守り神となり、千思万考しようと考えたのじゃ」

 

勇也「そんなことが……」

 

ウレアヌ「私自身である全てのドワーフと全感覚を共有し、今ならどこに魔獣が現れようとも、察知することができる。勇者様、昨晩あなた様がご覧になられたのは、私のクローンの保管庫だったのです」

 

勇也「そうだったんだ……」

 

  その時、ダッダッダと足音

  バンッと扉が開く

  ウレアヌ、息を切らして―

 

ウレアヌ「大変じゃ!巨大な翼竜の群れが、この村を狙っておる!」

 

ウレアヌ「何じゃと!?」

 

勇也「翼竜……。もしかして……!」

 

× × × × ×

 

  外に出る勇也一行

  見上げた空に翼竜の大群

  その姿に見覚えがあって―

 

バスティ「あれ、昨日アタシたちが襲われたやつじゃない!」

 

ウレアヌ「ダクティーロ……。ここらの上空を縄張りにしている、魔獣の一種です」

 

  ウレアヌ、拳をグッと握る

  村中に響かせんと声を張り上げ―

 

ウレアヌ「この村を奪われるわけにはいかんっ!全勢力を以って、ダクティーロを討伐するのじゃ!」

 

ウレアヌ達「おーっ!」

 

エルマ「勇也様、私たちも―」

 

勇也「……」

 

  翼竜を見上げたまま立ち尽くす勇也

  その横顔は、どこか切羽詰まっている

  エルマ、それに小首を傾げて―

 

エルマ「勇也様?」

 

勇也「え?あ、あぁ……、戦おう。戦わなきゃ……」

 

  勇也、クエストドライバーを装着

  両端を押し込み、台座を立てる

  壮大な待機音、村に響く

 

勇者「変身!」

 

  ドライバーの剣を引き抜く

  勇者の鎧、勇也の体に装着

  仮面ライダーヴァラー、現る

  ダクティーロ、勇也目掛けて急降下

  強烈な風圧に、尻餅をついてしまう

 

ヴァラー「……ちょ、待て!」

 

  ヴァラー、ブンブンと剣を振るう

  しかし、飛んでいく翼竜に当たらない

 

バスティ「ちょっと、ダサいわよ!」

 

ヴァラー「元の世界にあんなのいないから!見慣れてないの!」

 

エルマ「あの位置では剣がとどきません。私の、盟友の証石を使ってください!」

 

ヴァラー「魔法で遠距離攻撃ね!」

 

  ヴァラー、盟友の証石を取り出す

  ベルトにかざし、バックルに変形

  手首のスロットに装填

  魔法使いの鎧、装着

 

ヴァラー「これ、光弾とかレーザーとか出せないの?」

 

エルマ「魔法はイメージの世界です。勇也様が想像できることなら、なんでも実現しますよ」

 

ヴァラー「なるほど、よくあるやつね。妄想は俺の専売特許だぜ~」

 

  ヴァラー、そっと顔を伏せる

  ブツブツと何かを呟いている

  やがて、翼竜を真っ直ぐ見つめて―

 

勇也「『レグプルーヤ』!」

 

  翼竜にかざされた手

  そこから光弾が射出

  翼竜の腹に大きな風穴を開ける

  翼竜が地面に不時着、砂煙が舞う

 

勇也「うお、出た!見掛け倒しで、レベルはそこまで高くないのかな?」

 

エルマ「お見事です、勇也様」

 

  その声に振り向くヴァラー

  エルマ、杖を構え祈りをささげている

  周囲が眩く光り、魔力が溢れ出す

  金髪が靡き、白いローブがはためく

 

エルマ「さらに想像力を磨けば、こんなことも出来るようになりますよ」

 

  エルマ、パッと目を見開く

  杖を天に掲げ―

 

エルマ「『ラージェル』!」

 

  杖の先端から光線が放たれる

  幾重にも重なり、翼竜を撃ち抜く

  次々と地面に落ちる翼竜の死骸

  砂煙が上がり、地響きが鳴る

  ヴァラー、仮面の向こうの目を光らせ―

 

ヴァラー「か、かっけぇぇぇぇ!」

 

バスティ「テンション爆上がりじゃない」

 

  地面に倒れる1体の翼竜

  その瞳が、カッと開く

  ヴァラーの背後、起き上がり爪を振るう

  反応し振り向くが、もう避けられない

 

ヴァラー「やばっ、まだ生きて―」

 

  直後、翼竜が真横に吹き飛ぶ

  その巨躯を、バスティが踏みつけている

 

バスティ「地上の死に損ないはアタシに任せて、アンタらは飛んでるやつを!」

 

エルマ「お願いします!」

 

  バスティ、飛び上がり拳を突き出す

 

バスティ「『モーロット』!」

 

  強烈な拳を叩きこむ

  轟音と衝撃、辺りを揺るがす

  拳が翼竜の腹にめり込み、やがて爆散

  大量の肉片と血飛沫が飛び散る

  まるで、雨の如く降りしきる

 

バスティ「あとで洗わなきゃかしら」

 

× × × × ×

 

  空を飛ぶ翼竜たちが集まる

  一斉に炎を噴き出す

  ウレアヌたちに業火が迫る

  勇也とエルマ、彼らの前に立ち―

 

勇也/エルマ「『ザシータ』!」

 

  巨大な魔力の防御壁、炎を弾く

 

ウレアヌ「勇者様だけに全てをお任せするわけにはいかん!この村への我々の執念、あの鳥擬きに見せつけてやろうぞ!」

 

ウレアヌ達「おーっ!」

 

勇也「結構キャラ変わるじゃん」

 

ウレアヌ「クローン生成!」

 

  ウレアヌたち、木を伐採する

  ドミノ倒しのように、木が落ちて行く

  残った切り株、モゾモゾと蠢く

  やがてウレアヌの姿になり、動き出す

 

勇也「あ、想像と違った」

 

エルマ「勇也様の想像力を、彼らが上回ったということでしょうか……」

 

  ウレアヌたち、一箇所に集まる

  高く高く、どこまでも積み重なっていく

  やがて、大きな1つの塊になる

  その姿は、巨大なウレアヌだ

 

ウレアヌ「『ドワーフ・ドール』!」

 

  咆哮、木々を揺らす

  巨大な斧、空を切る

  跡形もなく血飛沫と化す翼竜

  勇也一行、開いた口が塞がらない

 

勇也「いや、強すぎるって……」

 

× × × × ×

 

ウレアヌ「皆様のおかげで、村を守ることができました。感謝を」

 

エルマ「いえいえ、私たちは何も」

 

勇也「ほんと、最後持ってかれたからね……」

 

ウレアヌ「もう、行くのですか?」

 

エルマ「はい。本当は、被害箇所の復旧をお手伝いしたいのですが……」

 

  そう言って、辺りを見回すエルマ

  家々は崩れているが、全てではない

  まだ、身を寄せ合えば暮らしていけそうだ

  翼竜の死骸は、いつの間にか片付いている

  ウレアヌ、ユルユルとかぶりを振って―

 

ウレアヌ「良いのです。あなた方は、あなた方のやるべきことを……」

 

バスティ「ねぇアンタ、アタシたちの仲間にならない?」

 

エルマ「バスティ」

 

ウレアヌ「いえ、私の使命は、この村を永遠に守り抜くこと……。いつか勇者様方が魔王を討伐し、この世界に真の平和をもたらしてくださること、この小さな村でお祈りしておりますぞ」

 

●ボーテミュイズン〔下界〕・平原

 

  勇也一行、歩いている

  伸びをするバスティが―

 

バスティ「もう少し、あの宿にいたかったわね~」

 

エルマ「そうですね」

 

バスティ「ねぇ、勇也もそう思うわよね?」

 

  しかし、反応はない

  バスティ、首をかしげて―

 

バスティ「ね~、勇也ったら~」

 

勇也「え?あぁ、うん、そうだね。真夜中にウレアヌさんの大群を見るのは御免だけど……」

 

バスティ「それ、アタシも見たかったわ~」

 

  不服そうにそう溢すバスティ

  しかし勇也、それには反応しない

  1人、神妙な面持ちのまま歩を進める

 

  〔回想〕

  勇也「これからは、無駄な戦闘は避けて行こう」

 

勇也M「俺のせいだ。俺があそこで戦っていれば、村は襲われずに済んだ。危うく、ウレアヌさんの故郷を、滅ぼすところだった」

 

  勇也、顔を上げる

  その目には、一種の決意が宿る

 

勇也M「戦わなきゃ、誰かが死ぬ……。勇者って、そういうことなんだ」

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