ヴァル・フ・ドルゴーム~チートスキル“仮面ライダー”とか異世界召喚3回目とかはどうでもよくて、俺みたいな陰キャでも勇者になれますか?~   作:であであ

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第七幕 大は小を想う

●ボーテミュイズン〔下界〕・川沿いの道

 

  歩いている勇也一行

  傍ら、大きな川が流れる

  流れは穏やかだが、底は深そうだ

  一行の中に会話はない

  バスティ、退屈に耐えかねた様に―

 

バスティ「勇也、なんか話しなさいよ」

 

勇也「いや、無茶振りが過ぎるでしょ……。別に、話すことがなければ無理に話す必要なんてないじゃん。ボロが出るだけだよ」

 

バスティ「ったく、面白い話しの一つや二つ、持ってないわけ?」

 

勇也「そんな彩り豊かな人生送ってたら、促されなくても話してるよ……」

 

  その時、何かが空を切る音

  巨大な剣、目の前の地面に突き刺さる

  甲高い音を辺りに反響させながら

 

勇也「あっぶな!」

 

エルマ「何者ですか!?」

 

??「よぉ、兄ちゃんたち。この先は通さねぇぜ……?」

 

  どこからともなく聞こえる声

  まだ声変わりしていない少年の声だ

  直後、正面に轟音と砂煙

  そしてその向こう、一つの人影

  一人の少年がそこに佇む

  挑発的に口角を上げて―

 

??「この先は、矮人族の集落だ。部外者はとっとと引き返せ」

 

  バスティ、勇也たちの前に出る

  挑発的な態度を返して―

 

バスティ「アンタこそ、奇襲みたいなことしてタダで済むと思ってるのかしら?」

 

??「獣人……。その装備、格闘家だな」

 

勇也「え、戦うの?」

 

エルマ「バスティ、気を付けてください。あの筋肉、骨格……、巨人族です」

 

バスティ「巨人族?にしては、随分と小さいわねぇ」

 

  少年、眉をピクリと上げる

  舌打ちし、バスティを睨む上げる

 

??「ねーちゃんよぉ……、巨人の力舐めてっと、痛い目見るぜ!」

 

  ドンッと飛び出す少年

  地面に巨大な亀裂が入る

  同じく飛び出すバスティ

  両者の拳、かち合う

  強大な力の波動が大地を揺らす

 

バスティ「子供のくせに、結構な力じゃない!」

 

??「姉ちゃんも、中々やるな。でもそんな細い腕、簡単にへし折ってやるぜ!」

 

バスティ「やれるもんなら、やってみなさいよ!」

 

  両者、互角に拳を交わし合う

  それを見守る勇也とエルマ

  もはやその目に、戦闘は追えない

  凄まじい速度、力、技量

  常人の域を遥かに超えている

 

勇也「な、なぁ、あれ平気なの……?」

 

エルマ「確かに巨人の力は凄まじいですが、その分動作は重い。バスティの、獣人特有の素早さで上手く攻撃を受け流していますね。ですが、巨人族の脅威はそれだけでは―」

 

  直後、刃が空を切る音

  短剣がバスティの拳をガンッと掠める

  鎧が弾き、火花が微かに散る

 

バスティ「あっぶな!なに持ち出してんのよ!」

 

??「へへっ、巨人族は武器の扱いにも長けてるんだ!武術しか使えない獣人族と違ってな!」

 

  ドンッ、地が揺れる

  重たく大きな何かが大地に突きつけられる

  少年、巨大なハンマーを構えて―

 

??「世間知らずは命知らずだぜ、ねーちゃん!」

 

  少年、飛び出す

  巨大なハンマーを軽々振り下ろす

  轟音と共に、粉々に砕ける地面

 

バスティ「ちっ……!」

 

  飛び退けるバスティ

  その着地点の周囲、無数の剣が囲む

 

バスティ「やばっ……!」

 

  ふと視線を外してしまうバスティ

  そこに、巨大な影が落ちる

  ハンマーを振り下ろす少年

  バスティ、この体勢では避けられ―

 

エルマ「『ザシータ』!」

 

  目の前に現れるエルマ

  防御壁、ハンマーを防ぐ

  メキメキとヒビが入っていく

 

勇也「変身!」

 

  勇也、仮面ライダーに変身

  少年に剣を振り抜く

  しかし、飛び退ける少年

  着地、舌打ちして―

 

??「マジか、にーちゃん勇者だったのか。流石に部がわりぃ……」

 

  少年、飛び去る

  瞬きの間に、その姿は見えない

  勇也、変身解除

  直後、ワナワナと肩を震わせ―

 

勇也「お、思いっきり剣振っちゃったけど、大丈夫だったかな……?」

 

エルマ「巨人族の体は頑丈です。今の勇也様のレベルでは、かすり傷すら付けられませんので、ご安心を」

 

勇也「ご安心と共にご傷心なんだけど」

 

バスティ「いたた……」

 

  顔を顰めるバスティ

  脹脛から血を流している

 

勇也「う、血が……」

 

エルマ「先ほどの、着地の時ですね」

 

バスティ「エルマ、アンタ治癒魔法とか使える?」

 

エルマ「えぇ、専門です。ですが、まずは身を落ち着けるために、この先の矮人族の集落に行きましょう」

 

勇也「そう言えば、さっきの少年そんなこと言ってたな」

 

バスティ「そうね。アタシ歩けないから、誰か運んでってよね」

 

× × × × ×

 

勇也「矮、矮……、小さいってことか」

 

エルマ「はい。巨人族と矮人族は、共に高貴種と下賤種で対をなす種族です」

 

勇也「あ~、そこでも対なしてるのか……」

 

エルマ「それにしても、先ほどの少年は、どうして私たちを足止めしたのでしょうね……」

 

バスティ「……ちょっと待って。矮人族って初めて見るんだけど、どれくらい小さいの?」

 

エルマ「大体、小指ほどの大きさだと。花びら三枚あれば、一週間は食に困らないといいます」

 

バスティ「どうやって暮らしてるの?」

 

エルマ「地面や壁に穴を掘ったり、枯れ葉や枝を組んで家を作ったり……。小さいなりの工夫が見られますよ」

 

勇也「まさに小人だな」

 

バスティ「ってことは―」

 

●矮人族の集落

 

  足元、小人たちがちょこまかと行き交う

  ほんの小さな家が点々としている

  いや、家とさえ呼べないほど小さい

  一歩で全て踏み潰してしまいそうだ

  これは本当に集落なのか

  傍ら、小さな段差がある

  よく見ると、そこには点々と小さな穴

  そして、そこから顔を覗かせる矮人族

  何もかも、全てが規格外に小さい

  バスティ、それを見て眉をピクピクさせ―

 

バスティ「……アタシたち、ゆっくりなんて出来ないじゃない」

 

勇也「むしろ、俺たちが平穏な生活を奪ってしまいそう……」

 

エルマ「そういえば、そうでしたね」

 

バスティ「ったく、アンタそういうところあるわよね。ところで―」

 

  と、言葉を切るバスティ

  その両足は、地面に着いていない

  エルマの魔法で宙ぶらりん状態だ

  しかも、尻をつままれる形で

  傍から見ると、実に惨めな体勢

  何かしらの辱めに見える

 

バスティ「この運び方はないんじゃない?」

 

× × × × ×

 

  地面に腰かける勇也一行

  エルマ、バスティの脹脛に手をかざす

  淡い光が溢れ、傷を癒す

  バスティ、上機嫌そうに―

 

バスティ「さすが、エルフ族の魔法は一級品ね」

 

エルマ「エルフ族は、魔法適性が他の種族と比べて高いですから」

 

バスティ「召喚魔法も使えるんだもの。やっぱり、魔法でエルフ族の右に出る者はいないのね」

 

エルマ「……そう、ですね」

 

勇也「あの~……」

 

バスティ「なによ?」

 

勇也「何か俺たち、囲まれてないですかね……」

 

バスティ「え?」

 

  ふと、足元を見るバスティ

  矮人族たち、勇也一行を囲んでいる

  その手には、針や木の枝など尖ったもの

  明らかに、こちらを警戒している

  その内の一人、震えた声で―

 

矮人1「巨人族め、今すぐこの集落から立ち去れ!」

 

バスティ「巨人族?」

 

エルマ「いえ、私たちは巨人族では―」

 

矮人2「嘘をつくな!」

 

矮人3「その大きさ、どこからどう見ても巨人族だ!」

 

バスティ「いや、アンタたちから見たら誰でも巨人族じゃない」

 

勇也「どっか歓迎ムードじゃないと思ったらこれか」

 

エルマ「随分と、巨人族に怯えているみたいですね……」

 

  怪訝に眉を寄せる三人

  直後、轟音が鳴り響く

 

勇也「な、何!?」

 

  眼前、立ち込める砂煙

  その先、何やら人影

  にしては、あまりにも大きすぎる

  それを見て、矮人族が叫ぶ

 

矮人1「きょ、巨人だーっ!」

 

  慌てふためく矮人族、逃げ惑う

  足元をチョロチョロと、まるで蟻の大群だ

  一人の矮人、家の中に逃げ込む

  しかし、その家ごと跡形もなく踏み潰される

 

??「はっはっは!小指ほどもねぇ虫ケラ共が!我々巨人族の前にひれ伏せ!」

 

  暴れ回る巨人、地面を踏み荒らす

  明確な敵意を持って、集落を襲う

  それを見て、眉を顰めるのはバスティだ

 

バスティ「ちょっと、あれ……」

 

エルマ「えぇ、酷いですね……」

 

矮人2「助けて……、助けてください……」

 

  足元の矮人、涙を流し怯えている

  それを見つめる勇也、ふと顔を上げる

  クエストドライバーを取り出す

  握る手は、微かに震えているが

  やがて、ダッと飛び出して―

 

勇也「お、おい……!きょ、巨人……!」

 

??「あぁ?」

 

  声に振り向く巨人

  目の前の勇也を見下ろす

  体格差は何十倍にも渡る

 

勇也M「これが、巨人族……!」

 

ペリオー「何だ、てめぇ。この巨人族六神が一人、ペリオー様に何か文句でもあんのか?」

 

勇也「か、神様なんですね~、すご~い……」

 

ペリオー「はっ、それが分かってんなら引っ込んでろ」

 

勇也「……でも、勇者として、これは見過ごしたらいけない気がする……」

 

  勇也、台座を立て、剣を引き抜く

 

勇也「へ、変身……!」

 

  仮面ライダーヴァラー、現る

 

ヴァラー「お、おらぁ……!」

 

  ヴァラー、ペリオーに剣を振るう

  しかし、全く歯が立たない

  太い腕が、まるで巨大な岩石の様

 

ペリオー「その程度か?勇者さんよぉ」

 

  直後、体に衝撃が走る

  同時に、重く響く打撃音

 

ヴァラー「がはっ……!」

 

  ペリオー、ヴァラーの腹に拳を入れる

  鎧でさえ、グニャリと曲がるほど

  激しく吹き飛んでいくヴァラー

  受け身が取れず、地面を転がる

  変身解除、鎧が弾ける

 

エルマ「勇也様!」

 

  駆け寄るエルマとバスティ

 

エルマM「まさか、一撃でこれほど……!」

 

バスティ「ちょっと、これヤバいんじゃないの……!?」

 

  ドスドスと響く足音

  ペリオー、こちらに歩いてくる

  鋭い眼光、ギロリと睨み―

 

ペリオー「エルフに獣人……、なんだ、下賤種の寄せ集めじゃねぇか。高貴種の俺様が、ここで全員纏めて殺してやるぜぇ」

 

  巨大な拳を振り上げるペリオー

  勢いよく振り下ろされる

  思わず目を閉じる勇也

  しかし、予想した痛みが訪れない

  恐る恐る目を開ける

  すると、目の前に少年の背中

  ペリオーの拳をギリギリで受け止めている

  その姿に、見覚えがある

 

勇也「あ、さっきの……」

 

  少年、拳を弾く

  後ろによろけるペリオ―

  しかし、余裕そうに鼻を鳴らし―

 

ペリオー「小僧……。あぁそうか、ガンテってのはてめぇか。巨人族の落ちこぼれが、正義のヒーロー気取りか?」

 

  ガンテ、ペリオーを冷たく睨み―

 

ガンテ「黙れ、クズ野郎。今すぐここから立ち去れ」

 

ペリオー「黙って聞いてりゃこのクソガキ……。瞬きの間に踏み潰してくれるわ!」

 

ガンテ「やってみろよ、おっさん。図体ばっかデカいだけで、何の取り柄もないくせに!」

 

ペリオー「ほざけ!」

 

  ペリオー、拳を振り下ろす

  響く轟音、地面が砕け散る

  しかし、当のガンテには当たっていない

  ガンテ、丸太のような腕を登る

  ペリオーの肩に乗り肩車状態

  ふと、天に手を掲げるガンテ

  その掌に、ショットガンを召喚

  ペリオーの後頭部に突きつける

 

ペリオー「な―」

 

  直後、引き絞られる引き金

  銃声と共に、ペリオーの頭に風穴

  鈍い音を立てて倒れる

  広がる血溜まり、矮人の家を呑み込む

 

勇也「つ、強い……」

 

男性「ガンテ!」

 

  足元から声

  ガンテ、地面を見下ろす

  一人の矮人、ガンテを見上げる

  その表情は、どこか清々しい

 

男性「ありがとう……!」

 

  ガンテ、優しく微笑み―

 

ガンテ「あぁ」

 

  ガンテ、ふとこちらを睨む

  僅かに身構える勇也

  しかし、何も言わずに走り去る

 

勇也「ちょ、ちょっと待って……!」

 

  追いかける勇也

  その後ろ、エルマとバスティも着いてくる

 

× × × × ×

 

  川辺に佇むガンテ

  何も言わず、黄昏ているようだ

  そこに、勇也一行が追い付く

 

勇也「ねぇ君、さっきの―」

 

ガンテ「別に、お前たちが巨人じゃないの知ってたし!」

 

勇也「へ?」

 

ガンテ「知ったて上で、実力を試しただけだし!勘違いしたとかじゃねぇから!」

 

バスティ「ったく、素直に謝りなさいよ」

 

エルマ「あははは……」

 

勇也「えっと……、どうしてあの集落を守ったの?君も巨人、だよね?」

 

ガンテ「……自分の家族を守るのは、男として当然だろ」

 

  〔回想〕

  男性「ガンテ!ありがとう……!」

 

勇也M「もしかして、さっきの……」

 

ガンテ「ってか、上に住んでようが下に住んでようが、そんなん関係ねぇだろ……!」

 

  吐き捨てるガンテ

  大分、憤りが溜まっているようだ

  勇也、同調するように目を伏せて―

 

勇也「……うん、それは思う」

 

  その返答に、意外そうな顔のガンテ

  やがて、決然と眉を顰めて―

 

ガンテ「なぁ、兄ちゃんって勇者なんだろ?」

 

勇也「え?ま、まぁ一応」

 

バスティ「一応じゃないでしょ」

 

エルマ「正真正銘、勇者です」

 

ガンテ「だったら、俺に協力してくれねぇか……?」

 

勇也「協力……?」

 

ガンテ「巨人族六神をぶっ潰すんだよ。矮人族を守るために……」

 

  ガンテ、真っ直ぐに勇也を見て―

 

ガンテ「俺と一緒に、上界……、巨人族の街に来てくれ!」

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