「マスター!!私Vtuberになりたいです!」
サクサクパンダちゃんの生歌配信を一緒に視聴した後、ナユタが興奮した様子で詰め寄る。目には星のハイライトが。
「おっ!そうかそうか、お前にも良さがわかるか~」
「はい!私もパンダちゃんみたいな「新時代のアイドル」になりたいです!!」
「うんうん、で?何すんの?ゲーム配信?まずは自己紹介動画からやな~」
「?」
ナユタはきょとんとした様子で固まってしまった。
「お前、何もわかってないだろ」
良治はポカンとしているナユタに呆れえる。
「はい~!ナユタは学習型AIなんです!Vtuberについて教えてください!ますたー」
ナユタが元気いっぱいに答えた。かわいい。
「しょうがね~な~まずVtuberに必要なのはかわいいモデルなんだが、それはもうあるな」
「かわいいモデル?」
「お前さんのその体のことだよ」
「ああ!なるほどなるほど」
「そしたらはじめに上げるのは自己紹介動画だな、ちょっと自己紹介してみ」
「はい!最先端の学習型AIナユタです!!!」
元気よく自己紹介、したのだが、それで終わってしまった。
「終わりかよ!!!」
「?」
ナユタはちょこんと座り、頭にまたはてなマークを浮かべ、首をかしげている。
「いやいや、名前の後になんか言うの!どうやって生まれたとか、〇〇がしたいとか」
「ふむふむ」
そこまで言ったところで、良治はこの間見た新人Vtuberのデビュー動画を思い出した。そのVtuberは相方の熊のマスコットとやり取りしていたな。
「なぁナユタ、モデルって用意出来ないか?立派な奴じゃなくていいんだ、この熊のマスコットみたいので。しゃべると鼻が動いたり、表情で眉毛が動くみたいな」
例のVtuberのデビュー動画を再生した。
「ちょっと待ってください、問い合わせてみますね」
頭に問合わせ中の読み込みアイコンう浮かべ、うつらうつらとするナユタ。
「問い合わせ終わりました!えっとですね、新しくモデルを作るにはポイントで依頼を出す必要があるみたいです」
「ああ、ポイントで依頼出せるんだっけか、で?何ポイントなの?」
「はい!!30万ポイントです!!」
「たっか!!!」
「えへへ、また依頼をこなしてポイントをためましょう。今受けられる依頼です」
「えーと、前やった配送がいいかな。これにしよう」
「はい!受注しました。荷物の受け取りに行きましょう!!」
家から電車とバスを乗り継いで40分、古いアパートの一室にたどり着く。
「330号室、ここだな」
チャイムを鳴らす。するとタンクトップとパンツ一丁のじいさんが出てきた。
「はーい、誰あんた?」
「アッ、MeBEERの依頼で荷物の受け取りに来ました」
「おう、荷物ね、ハイハイ」
そういうと爺さんはビニール袋にどかどかとカップ麺やポテチの袋を入れ始める。
「部屋覗くんじゃねぇ!!そこで待ってろ!!」
ものすごい剣幕でドアが閉められる。
「こっわ・・・」
良治はあっけにとられる。
「おい、はいこれ、もってけ!これ住所な」
爺さんはカップ麺とポテチが詰められた袋と住所が書かれた名刺を渡す。
「なんすかこれ?」
袋を指さす良治。
「ん?ああ、知り合いにカップ麺とか菓子が好きな奴がいるから差し入れだよ、関西しか売らなくなったカールグスタフとか、こっちと関東じゃカップ麺のダシ違うだろ」
ぼりぼりと頬を掻きながら、爺さんはだるそうに言った。
「はぁ、届け先は、ネクストライフの今井さん?」
「おう、そこに書いてある事務所に届けてくれ、住所書いてるだろ」
「わかりました」
「あい、よろしく」
そういうと爺さんはバタン!!ドアを閉じた。
「感じわるッ」
「マスター、名刺、見せてくれます?」
「ああ、はい」
カメラに名刺をかざす。
「ルート確定しました。ナビゲートを開始しますね」
目的地までのルートが画面に表示される。歩きと電車で50分、都市部ビルだ。
「うし、ささっと終らせよう」
また電車を乗り継いで、都市部の少し古いオフィスビルに到着する。3階のテナントに「ネクストライフ」の看板が見えた。インターフォンを鳴らす。
「はい、ネクストライフです」
受付嬢の声
「MeBEERの配送です~」
「は~い、少々お待ちください」
少ししてガチャ、銀縁の眼鏡をかけた、40代くらいのビジネスマンが出てくる。こいつがカップ麺の差し入れを頼んだのか?
「はい、MeBEERね、荷物は?これね、はいご苦労様。星5つけとくから」
男はビニール袋を受け取ると、スマホを操作する。良治のアカウントに10万ポイントと星5の評価が入る。
「ああ、はい」
そういう終わるのを待たずに、早々とドアが閉じられる。
「これでおわり??謝礼とかないのかよ!!」
「まぁまぁマスター、あ!星5評価が貯まってグレードが上がりました!貰えるポイントも増えますので、いま貰った10万ポイントが20万ポイントに増えましたよ!」
「マジで!やったぜ!!」
途端に機嫌を直す良治、わかりやすいやつである。
「あと10万ポイントで目標達成ですね」
「おうよ」
なぜカップ麺やポテチの袋をこんなところまで?その答えは簡単である。カップ麺やポテチの袋の中に入っていたのは、乾燥大麻だった。
アパートの一室で覚せい剤を精製したり、大麻を栽培し、出来上がった覚せい剤や乾燥大麻の包みを、カップ麺の麺をくりぬき、入れる。接着剤で蓋をしてしまえば、麻薬探知犬でもなければ気づかない。あの爺さんは自室で栽培した大麻を乾燥大麻に加工し、カップ麵に入れている。それを良治に運ばせていたのだ。宅配配送では足がつく。警官の職質に引っかかっても、カップ麺のふたまでは開けないだろう。アメリカでは警官が麻薬探知犬を連れていることもあるのだが、日本の地元警察の警らでは警察犬を連れない。そこをついたのだ。
今回、良治の犯した犯罪は「大麻の密輸」量刑は7年以下の懲役である。この前の「特殊詐欺の受け子」と合わせた「併合罪」にとわれるので、逮捕起訴された場合、判決には罰金刑はつかず、執行猶予が付く可能性も低くなってしまった。
確実に犯罪者としての破滅への道を、歩んでいることに彼はこの時きづけなかった。
「マスターマスター!マスターに直接の依頼ですよ!グレードが上がったおかげですね!」
「まじで!?報酬のポイントは?」
「100万ポイントです!!」
「すげージャン!!で?何すんの?」
「依頼者から直接仕事の説明があるみたいですよ!ここから歩いて10分のサエッタで待っているみたいです」
「そうか、またしちゃいかんな、さっさと行くぞ」
「ハイマスター!!善は急げです!!」
ファミリーレストランサエッタは業界最安値で若者やファミリー層などから強い人気がある。昼食時の今の時間は、順番待ちの客でごった返していた。
「おい、待ち合わせなんだけど」
「はいどうぞ!」
店員に中に通される。
「私が探しましょう!えーっと、依頼人はユナさん17歳ですね。あ!あの人です!ドリンクバーの前の席のパーカー着た子です」
見ると黒いパーカー着たマスクをつけた少女がスマホをいじっている。黒髪にピンクの毛先カラーを入れたの髪型が印象的だ。
「えっとユナさんだよね。依頼受けた瀬戸だけど」
おそるおそる声をかける良治、童貞なので女の子への免疫はゼロなのである。
「あ!来てくれたんですね!どうぞ、座ってください」
良治と目が合うと少女は笑顔を見せた。いい子だ良かった。そう良治は安堵する。この少女は良治に何をさせるのか、良治が次に犯す犯罪は何か、読者諸君はぜひ予想してほしい。
気が向いたら続きかきます