キヴォトスに墜ちた悪魔 エ駄死Ver   作:やーなん

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この話も手直しだけで追加エピソードはありません。

改めて断っておきますが、拙作に誰か特定のキャラクターに対してアンチヘイトの意図はありません。
マリオの敵がたまたまクッパだった、ただそれだけの事です。



悪意の行方

 

 

 

 風紀委員会の本部棟の会議室のひとつ。

 そこに、『美食研究会対策本部』と看板が掲げられていた。

 

「美食研究会の一味は合計で四名。

 主犯は黒舘ハルナ。本校の三年生。

 以下部員三名は彼女に付き従っている形です」

 

 薄暗い部屋の黒板に、プロジェクターで犯人の顔写真が並べられる。

 

「主な罪状は飲食店などの爆破によるテロ行為、公務執行妨害、器物損壊、希少食材の窃盗、そして誘拐」

「誘拐? 人間でも食うのか?」

「いいえ、うちの給食部の部長であるフウカさんに何らかの執着があるらしく、誘拐して食材の調理を要求していることが聴取により判明しています」

 

 男の質問に、アコが淀みなく答える。

 

「エサに使えるな」

 

 会議に参加、というより男の監視を命じられたイオリとチナツは早速そんな発想に至る彼に呆れていた。

 

「それで、どのように美食研究会を無力化するのですか?」

 

 アコはプロジェクターの電源を切る。

 部屋の照明を点けると、室内に今回の作戦の為に選抜された五十人の風紀委員が浮き彫りになった。

 

「とりあえず、一番キレイにハマったパターンを説明する」

 

 男は黒板にチョークで作戦の概要を説明した。

 アコは唖然とした。

 イオリとチナツも、衝撃を受けていた。

 

 召集された風紀委員もざわつく。

 誰もが思った。

 

 ──こんな悪意に、狂気に塗れた作戦が許されるのか、と。

 

 そして全員が確信した。

 確実な、美食研究会の崩壊を。

 

「まだ生徒会に話を付けてないが、俺の望む法案が通れば即座に作戦の実行が可能となる」

「まて、待て待て、この作戦はゲヘナ内でのみ有効なはずだ!! 

 他の学区に逃げられた場合、どうする!!」

 

 イオリはすぐに男の作戦の穴を指摘した。

 彼女は決してバカではない。むしろ冷静で頭も回る。

 でもすぐに熱くなるので指揮官としては並以下だが、兵士としてはキヴォトスでも最高水準の一人だ。

 

「その時はヒトを雇う。

 連中は常時追跡し、24時間体制で監視する。

 そして連中が()を上げるまで、続ける」

 

 アコは、イオリは、チナツは。

 本物の悪魔が居ることを、確信した。

 

「そうだな。チナツ、テロリストの一番厄介なところは、わかるか?」

「いえ、こちらが常に後手に回ることでしょうか」

「違うな。俺の経験上、テロリストの何が厄介なのかと言うと」

 

 男は講師のように語った。

 

「協力者がいることだ」

「……」

「地元出身のテロリストほど厄介なのはいない」

 

 だからそれを断つ。

 今回の作戦の肝はそれだった。

 

「こんなの、魔女狩りですよ」

 

 アコが忌々し気に吐き捨てた。

 

「そうかもな。だが連中を無力化すれば治まる」

「効果的、その一点だけは確信しました」

 

 チナツは苦渋を舐めたような表情でそう口にした。

 医学が是とする仁に反する行いのオンパレードのような作戦だからだ。

 

「混乱は予想されるだろうが、そんなのゲヘナじゃ今更だしなぁ」

 

 イオリは諦念を見せて溜息を吐いた。

 

 その時、男の携帯端末に着信が入った。

 

「はい、俺だ。おお、我が麗しのファム・ファタールじゃないか!! 

 ああ、分かった。そうか、すぐ行く」

 

 男の電話の相手はヒナだった。

 

「万魔殿とのアポが取れた。

 これから了解を得てくる」

 

 男は黒板の前から、ドアの前へと移動する。

 

「アコ、人員の割り振りの計画を頼む」

「一先ず、従ってはおきましょう」

 

 アコは仕事と割り切って室内に残るメンバーに差配を始める。

 その姿を背に、男はヒナと合流する為に移動を始めた。

 

 

 §§§

 

 

「ここの生徒会ってどんな感じなんだ?」

「一言で言えば、野心を隠さない独裁者、かな」

「割といるパターンだな」

 

 そういうタイプの権力者を男は割と見て来た。

 

「ゲヘナの住人や生徒が政治に関心がないのは今時の若者らしいと思ってたが、そもそも生徒会に何も期待していないのか」

「そうね、でも油断ならない。

 連中は間違いなく、政治を操る独裁者だから」

 

 ヒナが自分たちの上司をタヌキ呼ばわりしたのは、そう言う理由だ。

 

 道中、二人がそんな会話をしていると、生徒会室の前にたどり着いた。

 

「失礼します、風紀委員会の空崎です」

「勝手に入れ」

 

 ヒナが礼儀正しくドアをノックすると、苛立たし気な声が入室を許可した。

 

 そして生徒会室に入って、ヒナは少し驚いた。

 

 マコトとイロハが、書類を整理しているように見えたのだ。

 しかも割と忙しそうであった。

 

「アポまで入れて何の用だ。

 こっちはお前の寄越した仕事で大忙しだ」

 

 マコトは入室した二人に視線も向けず、右から左へと書類を次々に移動している。

 

「と言うと、アビドスの件の?」

「ああ、うちを退学した生徒を選別して送り込む予定だ。

 トリニティの連中に買収されてこっちに戻ってきたらたまったもんじゃないからな」

「おかげでシャーレの当番の時もろくに休憩も出来ません」

 

 マコトとイロハは二人揃って愚痴っていた。

 ヒナはただただ驚いた。

 実際に、本当に忙しいようだった。

 

「それで、いったい何の用だ」

「初めまして、マコト議長。

 俺はアップルマンと名乗っている。先日風紀委員会の臨時顧問官の任を頂いた」

「そうか。勝手にしろ」

「ええと、それと畏れながらお願いが。

 “パンではない派ソースだけ”の議長にお頼み申し上げるのは恐縮なのですが──」

万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)だ!! どういう覚え方だ!!」

「え……。議長を始めとした議員の皆さんは、朝はご飯派で目玉焼きにソースを掛ける主義者で構成されておられたのでは?」

「どこの情報だ、ふざけてるのか!!」

 

 ツッコミを入れるマコトにイロハは面倒そうな視線を向けた。

 

「(どう考えても、会話の主導権を得る為の挑発でしょうね)」

 

 男の道化芝居に冷めた視線を送りつつ、イロハは次の言葉を待った。

 

「それで、忙しい我々に何の用だッ」

「こちらの法案を明日中に通してほしい」

「ふん、ついに政治にまで口を出して来たか。ヒナ」

「読めばわかる」

 

 マコトはヒナから資料を受け取った。

 それに彼女は目を通すと、その三白眼が見開かれた。

 

「美食研究会の活動禁止法案だと!? 

 我々に弾圧をしろと言うのか!!」

「おや、むしろまだされていなかったのですね」

「いい度胸だな貴様、名前と顔は覚えたぞ」

 

 男の皮肉に、ようやくマコトが話のテーブルに着いたのを彼は確信した。

 

「仮にも連中は学園の生徒だぞ。

 こんな狙い撃ちにしたような法案を通せるものか。我が校の校是を知らんのか」

「でも先日、便利屋は退学にしたではないですか。

 あれは生徒会の指示だと伺いましたが」

「うッ」

 

 正門の爆破など、ゲヘナではよくあること。

 本来なら検挙して指導室に放り込んで罰金なりなんなり取って、それで終わるはずだった。

 

「あれはたしか、偶然朝早くイブキが登校して巻き込まれそうになったんでしたっけ?」

「イロハ、余計なことは言うな」

 

 まさかそれにキレたから便利屋を退学にした、だなんて身内以外に言うのは恥ずかしい。

 

「美食研究会は明確にゲヘナ学園に仇なすテログループじゃないですか。

 その法案を通すのに何が問題あるので?」

 

 他のテロリストに関する法案と一緒だ、と男は口にした。

 

「だが、これを許せば他の連中も、これと同じことをして弾圧しにくると苦情を言いに来るぞ」

「ではなさらなければいい。これっきりで、このような法案は終わりだとマスコミに宣言すれば良い。

 そして美食研究会が解散すれば、しばらくして法案を廃棄すればよろしい」

「まあ、どうせ民衆は我々の政策に興味などないでしょうけど」

「イロハ、お前どっちの味方だ?」

 

 部下を睨みつつ、ううむ、とマコトは唸った。

 

「これを施行して、我々に何の得がある」

「自治区内の治安向上、学園に仇なすテロリストの検挙。

 すべてマコト議長の差配だと、報道させましょう」

「…………」

「支持率は、多いに越したことはありませんか?」

「……キキキ、良いだろう」

 

 マコトは腹黒い笑みを浮かべて頷いた。

 支持率と既得権益を嫌いな政治家は居ない。

 

「イロハ!!」

「はあ、結局私の仕事が増えるんですね」

 

「ありがとうございます、議長!! 

 では、我々はこれで」

 

 男とヒナは退出していった。

 

「……議長、これの内容をちゃんと読みましたか?」

「ん? いや表題しか」

 

 イロハはマコトから受け取った法案の内容に戦慄した。

 これは、厳密には美食研究会を弾圧する法案では無かった。

 

 マコトが改めて、その法案の条文を読んだ。

 美食研究会の活動に対して、罰金を科すというモノだ。

 とても活動を直接禁止する法案には思えない。

 

 だが、聡明な二人はすぐにその本質を理解した。

 

「ヒナの奴!! 万魔殿に、本物の悪魔を呼びこんだか!!」

 

 マコトは思わず立ち上がり、拳をテーブルに叩き込んだ。

 寒気がしたのだ。こんなにも悪意を感じたことはない。

 

「イヤな予感がして、イブキの面倒をサツキに任せておいてよかった。

 あんな化け物を、イブキに会わせるわけにはいかない」

「まったく、こっちは忙しいっていうのに。

 議長、法案可決の確定を条件に、彼らの監視を申し出てきます」

「頼む」

 

 面倒臭がりでサボり魔のイロハが、形振り構っていられない状況。

 マコトも余裕をかなぐり捨て、重々しく頷いた。

 

 イロハはすぐにたった今去って行った二人を追った。

 

「……いや、考えようによっては、上手く使いこなせるかもしれん」

 

 一人になった生徒会室で、マコトは頭脳をフル回転させる。

 

「いずれにせよ、イロハの報告待ちか」

 

 キキキ、とマコトは笑みを浮かべた。

 自分たちと長年敵対していたトリニティの連中が、子供のお遊びに思えるような──純粋な悪意。

 この混沌を、楽しまねば損とでも言うように。

 

 

 

 §§§

 

 

 

「あの、本当に私は必要でしたか?」

 

 給食部、部長のフウカは半眼で尋ねた。

 

「大丈夫、フウカたそ。

 君には指一本触れさせないからねぇ」

 

 フウカにデレデレな男を、横で見ていたイロハはキモッと思った。

 

 フウカは何と、ロープでぐるぐる巻きにされていた。

 勿論きつく縛ってなどないし、美食研究会をおびき出す演出に過ぎない。

 

「申し訳ありません、確実に呼び出す為に必要なんです」

 

 代わりにチナツがぺこぺこ謝っていた。

 

「おい、来たぞ」

 

 ライフルを担いだイオリが顎をしゃくる。

 

 ここは先日銃撃戦が行われた大橋。

 その片面を風紀委員会が封鎖し、その反対側から人質を迎えに来るように要求したのである。

 

「イロハちゃんも、戦車に戻っていてね」

 

 男の猫なで声に、イロハは無言でハッチから車内に戻った。

 確実に来てくれるように、風紀委員会のメンバーは少数精鋭だ。

 

 だが、彼女達は大人数でもやって来ただろう。

 

「フウカさん!! 助けに来ましたわよ~!!」

 

 車を爆走し、聞き覚えのある声にフウカは呻いた。

 

「あれが、例の四人か」

 

 男は戦車の上に陣取りながら、双眼鏡で己の標的を見た。

 

 黒舘ハルナ。

 獅子堂イズミ。

 鰐淵アカリ。

 赤司ジュンコ。

 

 とてもテロリストには見えない、華やかな見た目のメンツだった。

 男はゆっくりと口を歪めた。

 オオカミの(あぎと)に自ら飛び込む、憐れな羊たちを見て。

 

 ききーッ、と車が急ブレーキをして、飛び出すように四人が飛び出した。

 

「風紀委員会!? なぜあなた達がフウカさんを!!」

 

 即座に銃を構え、相対す四人と風紀委員会。

 

「お前達、銃を下ろせ」

 

 男は風紀委員の面々に告げた。

 スッと、男の命令に全員が従った。

 

「お初に御目に掛かる。

 俺はアップルマンと名乗っている。

 先日、風紀委員会の臨時顧問官に就任した者だ」

 

 男は慇懃に自己紹介をした。

 

「大人が、何故に風紀委員会に?」

「そりゃあゲヘナの治安維持の為さ」

「そうですか、頑張ってくださいまし」

 

 ささ、行きましょうフウカさん、と敵意の無いと分かった途端に彼女に近づいてくるハルナ。

 

「おい待て。

 俺はお前たちがテロリストだと聞いた。

 なのになんだ、その態度は」

「それは大きな誤解ですわ」

「誤解?」

 

 男が尋ねると、ハルナは饒舌に語り出した。

 先日行ったレストランの対応が杜撰だったり、料理が不出来だったりと。

 

 料理やマナーに対するその知識量、味覚のセンスに気品。

 どれをとっても完璧だと、男は思った。

 

 だが。

 

「で、なぜ爆破するんだ?」

「?? 今申し上げませんでしたか?」

 

 男は思わずチナツの方を向いた。

 彼女は力無く、首を横に振った。

 

 男はイオリの方を向いた。

 彼女も力無く、首を横に振った。

 

「よかった、俺がついにイカレたのかと思った」

 

 とりあえず、男はまだ自分が正気であることを確認した。

 

「で、なんでわざわざ店を爆破するんだ?」

「なぜって、食への冒涜ではありませんか」

 

 男はハッチの中のイロハを見下ろした。

 彼女は無言で首を横に振った。

 

「それはつまり、雑な対応で食事の時間を穢したとか、未熟な腕で料理を振舞うのは食材を無駄にするようなモノってことか?」

「よくわかっていらっしゃるじゃありませんか」

 

 男は言い分は理解した。

 だが、なぜ爆破に至るのかが分からなかった。

 

「じゃあそれを店側に指摘して改善を求めたりしないのか? 

 あんたが爆破して営業が出来なくなり結果として食材が無駄になったことに対して何も思わないのか?」

 

 男にとって、初めての経験だった。

 テロリストの言い分をこんなにも理解しようと思ったことは。

 

「残念だとは思います。

 ですが、杜撰な対応をする店に訪れる人や未熟な腕で調理される食材の方が可哀想ですわ。

 それは赦し難い食への冒涜。だから、爆破するのです。

 誰だって、蛇口が開いていたら閉めるものでしょう?」

 

 なるほど、と男はようやく彼女の思考の順序が理解できた。

 

 最後に彼はフウカを見た。

 彼女は諦めたように首を横に振った。

 

「つまり、こういうことだな」

 

 男は結論を下した。

 

「お前は、自分の行いを、悪いことだと微塵も思っていない」

 

 ハルナはゆっくりと端正な顔と小首を傾げた。

 

「悪いのはあちらではありませんか」

「もういい、お前を理解しようとした俺が馬鹿だった」

 

 もしかしたら、厳密には彼女は悪とは言えないのかもしれない。

 ただ純粋で、無垢なだけかもしれない。

 赤子が何でも口にするように、彼女は店を爆破するだけなのかもしれない。

 

 案外個人で付き合いを持てば、親しみの持てる一面を見て親しい間柄になれるのかもしれない。

 

 だが、それで納得するにはあまりにも、彼女は社会と共存する為の倫理観が欠けていた。

 

「風紀委員会より美食研究会へ告ぐ。

 明日より万魔殿より、新しく“美食研究会活動禁止法”が施行される。

 お前たちの活動には、毎回罰金五千円が科せられることになる。

 直ちに違法な部活動を解散せよ」

「ほう、それは誰が徴収するのですか?」

「我々、風紀委員会だ」

「そうですか」

 

 後ろの三人が、横暴だー、理不尽だー、と野次を飛ばす。

 男はそれを無視した。

 

「今、勧告を受け入れ解散するのならば、これまでの破壊活動による修繕費は慈悲深いマコト議長が立て替えてくれるそうだ。

 その後、部長のハルナは卒業までの社会奉仕に従事しろ。それで風紀委員会はお前たちのこれまでの暴挙を許すと言っている」

 

 男の言葉に、イロハがギョッとする。

 マコトの立替えなんて初耳だったのである。

 

「……施工は、明日からなのでしょう? 

 フウカさん、行きましょう」

「…………」

 

 ハルナはフウカの身柄を確保すると、三人の部員と共に車の方へと向かう。

 

「では、ごきげんよう」

「お前たちに、ひとつだけ忠告してやる」

 

 ハルナは男の方を振り返らない。

 

「俺には一つ、特技がある」

「丸のみですか、オオカミさん」

「いいや」

 

 男はハルナの背に向け、言った。

 

「誰でも、憎むことが出来るんだ」

「…………」

「お前のような見ず知らずのガキも、憎しみを持って容赦なく追い詰めることが出来る」

 

 チナツは恐れを持って、男の乗る戦車を見上げた。

 彼は手に、美食研究会の被害報告と住人の嘆願書が握られていた。

 

 一枚一枚、それを男は捲っていく。

 

 まるで、俳優のようだと、彼女は思った。

 憑依型と呼ばれる、台本の架空の登場人物の感情をそのまま演じれる俳優のように。

 

 男の瞳に、本物の憎悪が宿った。

 

「クソガキ。社会の恐ろしさを教えてやるよ」

 

 悲しいことに、彼の憎悪は台本の架空の存在ではなかった。

 美食研究会に事業や夢を破壊された、本物の怒りと憎しみがそのまま男に乗り移ったかのようだった。

 

 さながら、占い師に化ける人狼のように。

 怪物が、殺意を持って執拗に、獲物を見定めた。

 

 

 彼女の、ハルナの失敗はもしかすれば、その眼を見なかったことかもしれなかった。

 

 

 

 フウカを連れた美食研究会一同を乗せた車が走り出す。

 

「……アコ、総員に通達。

 本日零時より、全てのオペレーションを開始する」

『了解。まあ、結果はわかっていましたけれどね』

「法令は国民に周知させるものだろう? 

 当事者に伝えなければ、俺たちが批判されるだろうが」

 

 どの口が言う、とアコは内心吐き捨てた。

 同時に、彼女は初めて美食研究会に同情した。

 

 今日の零時、或いは早朝、彼女達の地獄は始まるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、ジュンコはバイト先に向かう途中にお腹が空いたので、買い食いをすることにした。

 

「おじさん、たこ焼きください!!」

「あいよ、朝から元気だね!!」

 

 気の良いたこ焼き屋のおじさんは、元気のいいジュンコにたこ焼きを差し出した。

 

「はい、お金」

「おう、丁度だな。確かに」

 

 あつあつのたこ焼きを受け取り、早速ジュンコはひとつ頬張った。

 

「おいしぃ~」

 

 だが、彼女の視界に食事の喜びを邪魔する存在が目に移った。

 

 ゲヘナ学園風紀委員会の制服だ。

 

「美食研究会の活動を確認。罰金の徴収を行います」

 

 風紀委員はたった一人で、ジュンコの方へと向かって行った。

 

「なに? 私は罰金なんて払わないからね!!」

 

 銃を向けて威嚇する彼女の脇を、風紀委員は通り過ぎた。

 

「え?」

 

 困惑する彼女が見たのは。

 

「ゲヘナ学園の風紀委員会です。

 あなたは“美食研究会活動禁止法”の条文の一つ、美食研究会活動幇助の項目に違反しました」

 

 自分がたった今、たこ焼きを購入したお店の店主に『罰金箱』と書かれた段ボール製のお粗末な箱を突き出す、風紀委員の姿だった。

 

 

「罰金五千円を、お支払いください」

 

 

 

 

 

 





そもそもアップルマンというキャラクターは、拙作が書いているオリジナル小説の一登場人物だったのです。
彼がもし美食研究会や温泉開発部と戦うならどうするか、そう言う趣旨でこの小説を書き始めました。

彼の過去編まではこの作品では書きませんが、そういう経緯なのでご了承ください。
では、また次回!!
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