キヴォトスに墜ちた悪魔 エ駄死Ver   作:やーなん

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今回は、AIイラストを使用しています。
忌避感のある読者の皆様は、右上の閲覧設定から挿絵をOFFにしてください。
オリキャラのイメージを崩したくない人は、その設定を推奨いたします。


【オリキャラ生徒紹介】

元SRT特殊学園、Wolf小隊所属の兜衣トリコさんです。
真面目で実直な性格なので、クセの強い隊員たちの「お姉さん」。
でも隊長なのに潜入工作担当なのは、隊長を他のメンバーが出来ないと
言う理由の為、実力や信認でなったわけでは無いのを気にしているみたいです。

【固有武器】「トリウィア・ヘカトス」
武器種:ショットガン
トリコの愛用しているツインバレルショットガン。
潜入の際に持ち運びな便利で携帯性抜群のショットガン。
威力重視でツインバレルを更に切り詰めて使用している。
十字路の女神の名を持ち、その名の通り十字路で三方の敵に囲まれても、全てなぎ倒せる威力を持つ。



フェアリーテイルの狼 その1

 

 

【絆ストーリー:落ちこぼれの小隊長】

 

 

 

 これは、どういうことだろうか、と先生は思った。

 

「本日、先生の当番に配属されました。

 ──兜衣トリコです」

 

 シャーレのオフィスに、Wolf小隊の隊長たる彼女が敬礼して立っていた。

 

「“君がシャーレに入部したとは聞いていない……”」

「ボスの命令です。それと先日のお詫びも兼ねて」

 

 こちらをお納めください、とトリコはお菓子の箱を差し出した。

 先生は百鬼夜行の件か、と思いながらそれを受け取った。

 

「“今日の当番はアルの筈だったけど”」

 

 先生は当番表を確認する。

 シャーレと事業提携している、と認識している筈の便利屋のアルが今日はこちらに来るはずだったのだが。

 

「それは、アビドス学区で活動中の陸八魔アルです。

 私は名義上、ゲヘナ学園所属の陸八魔アルということになっています」

「“便利屋たちは退学になったと聞いたけど……”」

「ヒナ委員長の計らいで、退学は取り消し、社会奉仕活動として風紀委員会の手伝いをしていることになっています」

 

 そう言えばアヤネの手紙にそんなことになっている、と書いてあったような気がしたのを先生は思い出した。

 

「つまり、ゲヘナ学園所属の便利屋の名義で、我らWolf小隊の四人はシャーレの部員として登録されているのです」

「“まるで、幽霊だ”」

「ええ、我らは亡霊。誰も存在を証明できない部隊。

 そもそも、今の私達はWolf小隊を名乗ることすら許されないはずなのです」

 

 確かに、と先生は頷いた。

 Wolf小隊とはSRT特殊学園の部隊名である。

 そこから離れた彼女たちは、もう誰でもない存在の筈だった。

 

「きっと今もSRTには正しいWolf小隊が存在し、活動している筈です。尤も、もうすぐ廃校になると聞きましたが。

 なれば、我らがその名を頂戴しても問題は無いでしょう」

「“つまり自称Wolf小隊ってことだね”」

「ええ、未練ですよ」

 

 先ほどからずっと敬礼をしたまま、トリコは頷いた。

 

「“とりあえず、ずっとそのままなのは悪いし、こっちで書類整理をしてくれないか?”」

「了解しました、先生」

 

 ぴしっと両手をまっすぐ伸ばして直立すると、トリコは一礼した。

 

「ああ、これだけは言っておきます」

「“なんだい?”」

「シャーレでの活動で得た情報は、決して外部へ漏らしません。

 例えボスが命じても、です。守秘義務、Need-to-knowの原則は守られます。元軍人として、ボス旗下の傭兵としての矜持のようなものです。

 これは他の三人にも徹底されています。ご安心を」

「“わかった、信じるよ”」

 

 そこまでかしこまらなくても良いのに、と思いつつも、彼女の誇りを先生は尊重することにした。

 

 そして午前中の間、トリコは黙々と書類整理を行った。

 整理された書類を流れ作業で処理していく先生。

 

「(すごく、仕事がやりやすい!!)」

 

 先生は感動していた。

 やんちゃで個性的な生徒の多いキヴォトスで、管理職などを担う生徒以外でこんなにもスムーズに仕事を進んだのは初めてだった。

 

「“そろそろ昼食にしよう、何か食べたいものはあるかい?”」

「お気になさらず」

「“今日はベッドで寝れそうだから、そのお礼だよ”」

「……」

 

 トリコが先生を見る目が半眼になった。

 

「では、速やかに昼食を取り、仕事に戻りましょう」

 

 その言葉には、上司のやり方に口を挟むまい、という諦めと、部下としてそれに従う他ない、と言う真面目さがあった。

 

 

 

 二人は最寄りのファミレスへ赴いた。

 

 料理を注文をして、その間に二人は面談のように相対することになる。

 何の話題も無い二人。先生はこれはちょっと失敗したな、と思った。

 

「“ところで、どうして私のところへ?”」

「もう一度言いますが、ボスの命令です。

 もし、我々が先生と共闘する場合を想定し、ボスから別行動をし先生の指揮で戦闘を行う可能性があるからです。私の方から言い出しました」

「“な、なるほど……。真面目なんだね”」

 

 理路整然とした説明に、先生は納得するほかなかった。

 

「いえ、真面目しか取り柄がありませんから」

「“そんなことは無いと思うけど”」

 

 先生はそう言ったが、いいえ、とトリコは首を振った。

 

「私が隊長に選ばれたのは、当時教官役を務めた先輩たちに任ぜられたからです。

 隊員たち全員の信認や、実力で選ばれたわけでは無いのです」

「“そう、だったのか……”」

 

 とてもではないが、先生にはそうは見えなかった。

 徹底して統率が取れた動き、無駄のない行動。

 多くの生徒を指揮した先生は分かる。どうしても、生徒たちの行動は個性が出る。

 それを統率するのが先生だが、彼女達はそれが見えなかった。

 

「私達は、落ちこぼれでした。

 ボスが、ボスが我々を完成させてくれた」

「“彼が……”」

「実際に、私が前線指揮をした戦闘では、皆はバラバラでした。

 勝手な行動をする小隊員、自分の正義感や怒りで行動する仲間たち。私はそれを怒鳴りつけることしかできなかった……」

 

 認められていないんです、と彼女は語った。

 

「“…………”」

「あらゆる状況で、安定した結果を出す。それが特殊部隊と言うものです。

 落ちこぼれの我々は、他の部隊に出来ない専門性を得ることで、差別化を図ろうと思いました。

 私は潜入工作の分野を専攻し、そうやって得た情報から拠点破壊、建物内への強襲等のカリキュラムを受講しました。

 隊長自らが潜入工作を行うんですよ、笑ってしまいますよね」

「“君は自分のやれることを模索しただけだ”」

 

 先生は自嘲する彼女を慰めるほかなかった。

 

「私が、学園を自主退学するに至る決定的なことが起こりました」

「“……教えてくれるのかい?”」

「愚痴のようなものです。聞いてください」

 

 自分を使う上で、と言外に言われているような気がして、先生は頷く。

 

「二年に上がって程なく、潜入工作の実地試験がありました。

 指定された企業に潜り込み、情報を得るという試験です。

 私はそこで二週間、潜入をしていました」

「“それは大変だな……”」

「ある時、その企業に襲撃が起こったんです。

 誰が襲撃をしたと思いますか?」

 

 と言われても、先生は分からなかった。

 キヴォトスにはバイト感覚で犯罪をする不良や退学生徒で溢れている。

 

「“誰だったんだい?”」

「学園の後輩でした。演習の一環として、私が得た情報を基に、不正をしていた企業への襲撃。

 潜入工作員とは、潜入先の信用を得る為なら何でもします。

 たとえそれが、学園の同胞を撃つことであっても」

「“…………”」

 

 それが、彼女に課せられた試験。

 残酷な話だった。だが、それが彼女の選んだ道なのだ。

 

「私は、撃てませんでした……」

 

 彼女は後悔と自責を吐き出すようにそう言った。

 

「潜入工作の試験は赤点。

 憧れて入った特殊部隊の育成学園……そこには私にはあまりにも重い、責任によって成り立つ場所でした。

 私にその責任は果たせない……自ら学園を辞したのは、それが理由です」

「“なるほどね……”」

 

 潜入先で敵に同情してはいけない。信用を得る為に仲間を撃つことも厭わない。

 彼女は、それをするにはあまりにも優しすぎた。

 

「小隊の三人も、似たような理由で自主退学をしました。

 それからは一緒にしばらく山奥でサバイバルをして過ごしていました。

 彼女達が私と共に居たのは、それ以外の生き方を知らなかったからです。

 そして、退学してもSRTの理念と誇りが、罪を犯して生きることを許さなかった」

「“君たちは十分に立派だよ……”」

 

 バイト感覚で、友達に誘われたから、むしゃくしゃしたから、そんな簡単な理由で、このキヴォトスの子供たちは犯罪を行う。

 ここは、そんな世界なのだ。

 

「立派なら、そもそも落第なんてして──先生。厨房が静かです。従業員も、先ほどから出てきません」

「“そう言えば、料理が遅いね”」

「少し見てきます」

 

 トリコは姿勢を低くし、這うようにして床すれすれにまで顔を落としほぼ無音で駆けていった。

 そして、そのすぐ後だった。

 

「動くな!! レストランジャックだ!!」

 

 レストランジャック。

 その斬新すぎる犯罪に先生は衝撃を受けた。

 

「ここは大企業の系列店。お前たちはそこから身代金を貰う為の人質だ!!

 大人しく全員、武器を捨てて手を挙げて地面に伏せろ!!」

 

 食事中の学生や住人たちは驚き、レストランを占拠した十人ほどのヘルメットを被った身代金強盗に渋々指示に従った。

 

「“まさかレストランジャックだなんて……”」

 

 どう考えても成功する未来なんて見えないが、これがキヴォトス。

 常識で犯罪者を測ってはいけないのである。

 

 強盗達はすぐに窓の日よけを下ろして、犯罪の発覚を遅らせた。

 照明を落とし、閉店を装う。

 事前に厨房や事務所を制圧するなど、計画的な犯罪のようだった。

 

「“アロナ、ヴァルキューレに通報を”」

『もうしておきました!! 十五分後には機動部隊が突入する筈です!!』

「おいそこ!! なに喋ってやがる!!」

 

 客から携帯端末などを取り上げていく強盗たち。

 シッテムの箱を取り上げられるのはマズい、そう思った先生だったが。

 

「先生、私です」

「“ッ、トリコか?”」

 

 トリコは既に、強盗犯と同じような格好をしていた。

 彼女はこっそりと先生に話しかけてきた。

 

「敵総数は十一名、武器は全て新品のマシンピストル。

 ただの強盗ではありません。恐らく、別の企業が信用と株価を落とさせる為に雇った使い捨ての兵隊かと」

 

 それを聴いて、先生は納得した。

 企業間の足の引っ張り合い。それがこのレストランジャックなる斬新な犯罪の真相だったのだ。

 

「一人ずつ、折を見て始末します。指示を」

「“分かった”」

 

 トリコは常備しているのか、無線機の親機を先生に渡した。

 

「おい、どうした?」

「こいつがなかなか携帯端末を渡さなかったんだ」

「ち、舐めてると痛い目見るぞ!!」

 

 仲間だと思って強盗に話しかけられたトリコは、別の客から取り上げた携帯端末を見せて納得させた。

 

 そして、強盗たちが離れると、シッテムの箱を腹の下に隠し、アロナの指示を受けてトリコに敵の位置を知らせる。

 

 どんどんと、動けないターゲットが増えていく。

 

「おいッ、他の連中はどうした!!」

 

 そして、三人に減ってようやく彼女らは異変に気づいた。

 直後、トリコが厨房から飛び出し、懐から大きめの拳銃と大差ないツインバレルのショットガンの弾丸を強盗達に浴びせた!!

 数発の銃撃で、強盗犯たちが薙ぎ倒される。それはいっそ爽快なほどであった。

 弾切れになった自分の得物を捨て、強盗から奪っただろうマシンピストルを構える。敵はもう、動かなかった。

 

「クリア。状況終了です、先生」

 

 トリコがヘルメットを脱ぐ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 赤毛がふわりと舞い、戦士が少女へと戻っていく。

 

「“ありがとう、助かった”」

「お気になさらず。やるべきことをやっただけです」

 

 結局、この日は事情聴取などで時間を取られ、先生の仕事は深夜にまで長引いた。

 

 トリコは何も言わず、それを手伝った。

 

「“今日は大変だったし、そろそろ帰った方が良いと思うよ? 彼も心配すると思うし”」

「それは心配ありません。今日は“カスミの日”なので」

 

 なんで個人名の付いた日があるのか、先生はあえて聞かなかった。

 

「ボスは女好きですが、それに反して女性にそこまで執着はしません。

 もし、仮に私が先生に好意を抱いて小隊から抜けても、ボスは気にしないでしょう」

 

 むしろ笑って許しそうです、とトリコは気味が悪いほど客観的に己の上司を評した。

 

「“私はそんなことはしない”」

「ええ、それは分かっています。仮定の話です。

 本来、男性は種の保存の為に女性に執着するものと知識ではあります。

 意中の相手に別の男性が近づくことに忌避感を抱いたり……しかしボスにはそんな感情は無いのでしょう。

 女性に困らないからなのか、性に対しておおらかなのか……」

 

 それは、仮にも肉体関係のある相手に対する評価では無かった。

 

「“困っているなら、相談に乗るけど”」

「あ、すみません。勘違いしないでください。

 文句を言っているわけでは無いのです。

 ボスは平等に私達を愛してくれます。ただ、その平等さが少しだけ寂しいだけです」

 

 自分が特別ではない、という実感が彼女にはあったのだろう。

 

「ボスは私達を完成させてくれた。

 小隊を二組にして、カップル同士にして、愛の絆で不安定な精神を補完するように仕向けた。

 愛の力が、私達の未熟を補ったんです」

「“神聖隊、か”」

 

 伝説によると、同性愛者のカップルで組織されたその部隊は、最強と謳われたギリシアのあのスパルタ軍を打ち破り、最強の名を奪い取った。

 その散り際も、八割以上が戦死するまで戦い、敵国の王もその亡骸を前に涙し、奮闘を湛えたと言われている。

 

「“私は、君たちに死ぬまで戦ってほしくはないな”」

 

 今日一日共にして、先生にも情が湧いた。

 ほんの僅かな時間でも、彼女は自分の“生徒”だったからだ。

 

「それに関してはご安心を。

 ボスは勝てる戦いしかしないので」

「“そうか、安心した”」

「ですが、いつかボスが死ぬ時、それは私が運命を共にする日だとは思っています」

 

 それが、彼女のやりたいこと。

 先生はそれに対して、何も言えなかった。

 

 彼女はどこまでも純粋で、優しく、愛に溢れていた。

 

「明日はウズが来ると思います。

 変わった子ですが、私の愛しい妹分です。どうかよろしくお願いします」

「“わかった。君も、身体を大事にね”」

「はい、先生も。その身が、もうあなた自身だけのモノだと、思わないでください」

 

 肝に銘ずるよ、と先生は言う他なかった。

 

 こうして、この日は最後までトリコは仕事を手伝ってくれた。

 久々に、先生はオフィスのソファーではなく、自室のベッドで三時間以上眠れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【オリキャラ設定:兜衣(かぶとい) トリコ】

 

 身長:153㎝

 部活:Wolf小隊

 年齢:16歳

 趣味:自己研鑽、ウズ、ボス

 誕生日:7月25日

 

 

 名前の元ネタはトリカブト。と言うか、Wolf小隊全員、トリカブト由来の名前である。

 モチーフは赤ずきん+女神ヘカテー+人狼。

 

 人間に化ける人狼の能力を、潜入工作員として見立て、女魔術師の守護者と言うギリシアの女神ヘカテーからその優しさと真面目さを、赤毛の狼という最近は狼属性が付け加えがちな赤ずきんという容貌をしている。

 彼女の固有武器【トリウィア・ヘカトス】も、十字路に現れるという女神ヘカテーのモチーフである。

 誕生日はモチーフ元のトリカブトの誕生花の日であり、トリカブトの花言葉は「騎士道」「栄光」「人間嫌い」「復讐」。この花言葉が、Wolf小隊たち全員の性質を如実に示している。

 

 性格は極めて真面目で実直。

 その気真面目さが災いし、十全な能力を発揮できないでいた。

 先輩達が彼女を隊長に指名し、その為、隊員にはウズ以外には若干舐められている。

 能力的にも、部下を指揮する小隊長より兵士として指示を受ける方が有効活用できるだろう。

 

 バディは毒島ウズ。有能で可愛い妹分だと思っている。なお相手は……。

 

 ゲーム的にはストライカー、ポジションはフロント、クラスはアタッカーだと思われる。

 ウズと同時編成すると能力が上がるパッシブ持ちで、敵のモブに変身してヘイトを逃れるスキル、ショットガンを乱射し範囲攻撃するEXスキルを持っていそう。

 

 

 

 

 





若干生々しい描写はコハルちゃんが検閲しました。
ウズは大修整するんだろうなぁ。

それ以外はトリコに多少詳しいプロフィールを追加しました。
次回はウズになります。
あと、あらすじに多少手を加えました。
ではまた!!
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