「要するに、だ」
男はホテルに仮設されたオペレーションルームで焼きトウモロコシを齧りながら言った。
手元には、情報部に調べさせた敵陣営の戦力分析の資料があった。
「我らの麗しのヒナ委員長閣下に、休暇を楽しんでほしい。
その為に外的要因を排除したい。そういうことだな?」
「ええ、その認識で間違いありません」
「なるほど」
男はアコ、イオリ、チナツ、そして先生をぐるりと見渡してから。
「……手伝ってほしいか?」
意地悪そうに笑ってそう言った。
「いいから手伝え!! その為に来たんだろう!?」
イオリが声を荒げてそう言った。ちなみに男の視線がイヤらしいからパーカーを羽織っている。
「いいや。俺はトウモロコシを差し入れに来たんだ。そもそも合宿で不良の全面戦争なんて想定してないだろ?
だから今日は俺の手足達も不在だ」
「アコ行政官……」
チナツが恨めしそうにアコを見た。
お前がハブったからだろう、と表情が全てを物語っていた。
「あー、やる気でねぇなぁ!!
麗しのヒナ委員長閣下の水着が見れたらやる気が出るかもなぁ!!」
「だーれが、貴方に頼りますか!!
ヒナ委員長を貴方のような下種の視線に晒させるわけがないでしょう!!」
男の挑発に、アコはそうなじって返した。
「先生、なんとかしてください……」
「“どっちもどっちとしか……”」
チナツに縋るような視線を向けられた先生は、どっちも悪いので困り顔だった。
「先生も食うか? 下でハルナ達が焼いてるぞ。一本300円だ」
「“それは勿論後で食べるけど、私からもお願いだよ。ヒナを休ませてあげたいんだ”」
「……先生」
男は先生を真正面から見返した。
「俺は、あんたの、生徒じゃない。
だからあんたに従う義理も無い」
「“じゃあ、私が君を雇うと言ったら?”」
「ふむ、ならお前は我が麗しのヒナ委員長閣下のお休みに、いくら出せる?」
男は笑って先生を見ている。
「連邦生徒会の財務担当はシャーレの予算割に厳しいらしいな。
まあそうだよな、あんたは別に金銭的な利益を出す存在じゃないし、あんた自身も運営資金を運用できる人間でもない」
男は、先生を、シャーレを見ている。
「もう少し政治を上手く扱えよ、先生」
「“そう言うのは、肌に合わないかな”」
「肌に合わない、じゃねえよ」
男は立ち上がって、先生に詰め寄った。
「別に政治にどっぷり浸かれって言ってねえよ。
上手くやれって言っているんだ。それであんたが救える生徒が増えると、そう思わないのか?」
「“でも、それで私に頼りづらくなる生徒も現れるよね?”」
「なるほど、自分が誰を救うか選ぶのは、傲慢だと?」
「“そうは言わないよ。だけど、私はみんなの先生でいたいから”」
「……」
男は先生の言葉を吟味するように、顎に手を当てた。
「……悪いのはお前ではなく、社会の方か」
男は一口で残っていたトウモロコシの粒を全部平らげた。
「どうやら、俺の出る幕は無いようだ」
「あ、おい!!」
男は踵を返して仮設オペレーションルームから立ち去った。
「全く、なんなんだ、あいつは!!」
「先生、その……すみません」
アコは珍しく、申し訳なさそうに先生に頭を下げた。
「私だって、あの男に手を貸してもらう方がいいことぐらい、わかっているのです。でも……」
「“アコは……ちょっとだけ反省しようね”」
喧嘩両成敗だよ、と先生は微笑んでそう言った。
「ですが、何も状況は改善していません」
「“そうだね……”」
チナツが肩を落とすのを見て、先生は頷いた。
だが、同時に彼は確信もしていた。
あの男がこの海岸の平穏を脅かすテロリスト達を、見逃すことなんてしない、と。
§§§
「おや、おやおや!!」
リゾートホテルなんて無縁だった男は、ホテル内を暇潰しに散策していた。
すると、己の恋焦がれる白いモフモフが廊下を歩いていた。
「そこに在らせられるのは、我らが麗しのヒナ委員長閣下ではありませんか!!」
「ん? ああ、あなたも来たのね」
モフモフが振り返る。水着姿のヒナだった。
すぐに男は跪いた。
「ああ、素晴らしい造形美、芸術的なまでの細い少女的な肉体のライン……己の語彙力の低さがこれほど恨めしいと思ったことは無い」
「……そう、ところで、先生は見なかった?」
「あいつなら、アコ達とちょっとした会議をしてましたよ」
「そうなの。じゃあ邪魔するのは悪いわね」
男は気持ち悪いくらい笑っていたが、ヒナは社交辞令ぐらいにしか受け止めていなかった。
「……ヒナ委員長。閣下はハリーポッターシリーズをお読みになったことはありますか?」
「急にどうしたの? まあ教養程度には」
「あのシリーズに登場する主人公の通う学校に、ダンブルドアっていう老齢の校長先生が登場します。
多くの生徒に慕われ、魔法の腕も作中随一。その標語は“より多くの善の為”だそうで。
でもおかしいと思いませんか?」
「なにが?」
「作中に登場する大臣は無能で主人公たちの足を引っ張るばかりだ。
もしダンブルドアがより多くを救うのなら、大臣にでもなるべきだった。そうは思いませんか?」
「たしかに、その通りかもしれないわね」
「閣下は考えたことはありませんか?」
男は、ヒナに問う。
「学校を本当に愛するのなら、あのタヌキどもを巣穴から蹴り飛ばすべきだ、と」
「……」
「どうせ、ゲヘナでモノを言うのは暴力です。
貴女がそうしたいと言えば、多くの生徒は従うでしょう」
違いますか、と男は尋ねた。
「ええ、きっとそうなるでしょうね」
男の考えを、ヒナは否定しなかった。
「でも、私がそうしたところで、この学校が良くなるとは思えない」
「それはなぜでしょう?」
「忌々しいことだけど、万魔殿は風紀委員会よりずっとまともな組織だから」
「左様ですか」
そのこと自体は、男は否定しなかった。
彼女らはお金の使いどころを分かっているし、組織として風紀委員会よりもよほど盤石だ。
「だからこそ、例の条約の件があるの。
それを成し遂げることこそ、私の思う“より多くの善の為”よ」
「感服致しました、俺のファム・ファタール」
「貴方には、難しい任務を押し付けることになると思うけど」
「いえ、我が身を賭す価値があると存じています」
そう、とヒナは頷いて見せた。
「……これは持論ですがね」
「なに?」
「才能は運命が運んでくるのです。
貴女だけでなく、アコ達は何も分かっていない。
閣下は例の条約を機に職を辞そうとお考えているようですが」
男は顔を上げる。男の笑みの質が変わっていた。
「──キヴォトスは貴女を放ってはおきませんよ」
ヒナの才能を、誰も無視などできない。
男はそう言っているのだ。
「この世界は、どうしようもなく呪われているんですから」
「そうかもね」
ヒナは廊下の窓から見える海辺を見渡す。
青い海が、どこまでも美しく広がっていた。
「でも、こんな世界でも、こんな世界なりに私は好きなのよ」
貴方も同じでしょう、とヒナは言った。
男は何も言わなかった。ただ、笑みを深めただけだった。
「才能は運命、か。なら、貴方のすべきことも分かっているわよね?」
「ええ、勿論」
男はもう一度、頭を下げた。
「貴女様に、この世界の平穏を捧げます」
それが、彼女の望む生贄なのだと、男は理解した。
「それでは、試してまいります」
「何を?」
「我がおぞましい呪われた才覚と、この世界を覆う呪いのどちらがより醜悪なのかを」
「……ほどほどにね」
ヒナは、またこいつなにかやらかす気だ、と悟ってそう釘を刺すのだった。
§§§
約二時間後。
ヘルメット団とスケバンどもを撃退した風紀委員会と先生は、くたくたになって集結していた。
彼女らの奮闘により、両者は退却し、全面戦争は中断となった。
ホテルの支配人からも感謝され、面々は達成感に浸っていた。
「やってやりましたよ、あんな最低の下種野郎が居なくてもどうにもできるんですから!!」
苦労の果てに、アコはご満悦だった。
「もうこの際だから使えるものは使っておけばよかったな。
適当に言いくるめて、元美食研究会の奴らも使えばよかった」
と、愚痴るイオリだった。
「“それなんだけどね……私も考えたんだ”」
「流石は先生ですね。やっぱり断られたんですか」
トウモロコシを売りに来たと嘯く四人を、先生は勿論声を掛けようとしていた。
先生はこう見えても使えるモノは使うタイプの人間だ。
しかし先生はチナツに首を横に振って見せた。
「“それが、どこにも居なかったんだ”」
「……え?」
「“私もトウモロコシを貰うついでに協力してくれないかって頼もうとしたんだけど”」
「なぜでしょう、無性に嫌な予感がします……」
「あいつらを使うなんてグッドなアイディアを、私だって思いついたんだしな」
水面下で、どこぞの誰かが動いているのをチナツとイオリが察していた。
だよねぇ、と先生も遠い目になった。
「ですが、結局あの男は何もしなかったじゃないですか!!」
「まあ、そうだけど」
アコちゃんだってわかってるくせに、とぼやくイオリだった。
うぐぐ、とアコは唸った。
「“とりあえず、彼女達が置いて行ったトウモロコシは保管してあげよう”」
先生がそんな優しさを見せたのだった。
そしてその日の予定を消化しつつ、一抹の不安を感じながら、翌日の日程へと進んだ。
海で泳ぎたい、と言ったヒナのささやかな希望を叶えるために、先生含めた幹部達はアコに付き合わされる形で厳戒態勢を敷いていた。
そんな時である。警報が鳴ったのは。
「まさかこれは、いえ、どうして!?」
敵対勢力は昨日撃退したはずなのに、とアコは困惑したが。
「情報部から連絡です!!」
「ホテル裏手のスラム街に現在、スケバン集団「破茶滅茶」と「びしょびしょヘルメット団」が集結中!!」
「その規模……二個大隊以上と予想されます!!」
即ち、最低でも六百人以上。
現在合宿中の風紀委員会の数倍の規模である。
「どうして、どうしてあの二つの集団が一緒に!?」
「向こうから丁度通信が入りました、繋ぎます!!」
オペレーターの風紀委員は通信機を操作した。
『私達がどうして一緒にいるのか……今頃、さぞかし驚いていることだろう!!』
『ふははは!! あたしらは一時的に、同盟を結ぶことにした!!』
『なにせ、丁度いい情報がはいったからな!!」
『どうやら、あの風紀委員長が不在らしいじゃん!?』
『そうと聞いたら話は別。委員長が不在のゲヘナ風紀委員会など、そこまで怖いものでもない!!』
『待ってろよ烏合の衆め、私たちの闘いを邪魔したけじめ、きっちりとつけさせてくれる!!』
『まあ、つまりは宣戦布告ってところだ。あはははッ!! あたしらに手を出したこと、後悔させてやる!!』
と、自分たちを誇示するようにそんな通信が入ってきた。
「こ、このッ、エキストラの分際で!!」
アコが激怒した、その時であった。
『その情報は、少々古いですわね』
通信機から、ハルナの声がした。
「こ、これは、通信に割り込みです!?」
オペレーターの風紀委員会が困惑気味に叫んだ。
『えー、我々は海岸美食の会です。
決して風紀委員会や美食研究会とは関係の無い集団ですわ。
海岸を平穏をこれ以上に荒すのならば、あなた達に制裁を加えます』
『はあ!? 誰だお前、何言ってんだよ!!』
『あたしらを馬鹿にしてんのか!?』
ああ、とこの通信を聞いている全員が思った。
あの男だ。あの男がやってきた、と。
『ふふふ、仲良しですわね。
では、これをお聞きください』
ハルナは通信に音声を乗せた。
『リーダー、本当にあいつらと組むんですか?』
『まさか!! 体よく焚きつけて消耗させるんだよ!!
その後、うまーく漁夫の利を得るって寸法さ』
『そうだよな、ハチャメチャだとか、あんなダサい名前の連中と組むなんて真っ平っすよ!!』
『そうだとも、しかも他所から流れてきた負け犬なんだからな!!』
それは、今まさに通信で宣戦布告をしたヘルメット団のリーダーの声だった。
『……おい、どういうことだ、てめぇ』
『あ、いや、これは、その……』
『おやおや、これだけでは不公平ですわね。
そちらの裏垢の画像を送りましょう』
なぜかアコ達のスマホにも画像が送られてきた。
そこには、裏垢でスケバン達がヘルメット団を馬鹿にしているチャットが無数に流れてきていた。
『お、おい、ふざけんなよ、お前ら!!』
『やっぱりあんたらとは分かり合えないな、同盟は無しだ!!』
『こっちから願い下げだ!!』
そして、すぐに通信越しに銃撃音が聞こえた。
「“え、えぐい……”」
容赦の無い男の離間工作に、先生は遠い目になった。
『あー、あー、我々は温泉ヘルメット団……って、聞いていないな、これは』
『おうカスミ、部員は連れて来たか?』
『ぶ、部員ではない!! 我々は先日結成した温泉ヘルメット団で、ゲヘナの温泉建設部とは何の関わりもない!!
我々は温泉を守るために活動する、正義のヘルメット団で……』
『とりあえず建前は良いから攻撃するぞ』
『う、うむ、そうしよう』
「わざわざこの回線で連絡を取らないでください!!」
遂にはカスミと男の声が掛け合いを始めたので、アコが通信機に怒鳴り散らした。
『アコ、そっちに連中の位置を送る。挟撃するぞ。出来るよな?』
「……三分でやらせます」
『上出来だ。委員長閣下も鼻が高いだろう』
そして、通信が途絶えた。
「何をしているんです、総員、厳戒態勢から戦闘態勢へ移行!!
あの連中に後れを取ることは許しませんよ!!」
アコの怒声に、はいはい、とイオリとチナツが応えた。
一方その頃。
「くそッ、重戦車が動かない!!」
「誰かが細工したんだ!!」
「スケバンどもの仕業か、やっぱり最初から裏切る気で」
重戦車部隊のヘルメット団達が騒いでいる。
昨夜のうちに、重戦車は男の破壊工作で動かなくなっていた。
だが、動かない筈の重戦車の砲塔が動いた。
「あ、そっちは動くのか、よし、これであいつらに!!」
「あれ、なんで砲塔がこっちに……」
ドンッ、と重戦車が榴弾を放った。
周囲に集まっていたヘルメット団達は吹き飛ばされる。
「次弾装填用意、弾種は榴弾でよろしくお願いします」
「は~い★」
装填手を務めるアカリが、抱えるほどの砲弾を装填する。
「照準、オッケーよ!!」
「Fire」
車長のハルナが優雅に答えた。
砲手のジュンコがトリガーを引いた。
ヘルメット団達が榴弾で吹き飛ぶ。
「次弾装填。弾種は同じで」
「はーい☆」
「おい、流石にこっちが敵だと認識されたっぽいな、集まってきた」
レーダーと通信手を務めていた男がそう言った。
「イズミ、指定の位置まで移動してください。
混乱している敵の中央を蹂躙します」
「了解、部長!!」
イズミが操縦手としてペダルを踏みこんだ。
重戦車の巨体が唸りを上げて発進した。
「ジュンコ、撃ちまくりなさい」
「はい、部長!!」
ジュンコが機銃で道すがらの敵をつるべ打ちにする。
ヘルメット団達の悲鳴が上がる。
『こちらカスミ、RPG部隊がそちらに向かったぞ。こちらは航空戦力を無力化した』
「よくやったカスミ、あとで撫でてやる」
『い、いや、ちゃ、ちゃんと海岸の温泉事業拡張の交渉は頼むからな!!』
「海岸の恩人にならよろこんでやってくれるだろ」
『ああ、居なくなった客や店を、我々の開発した温泉で呼び戻さなければな!!』
カスミとの通信が切れた。
「だそうだ、二時の方向から部隊が接近中」
「躱すんでしょ、任せてよ!!」
イズミがハンドルを大きく切った。
無数のロケット弾が重戦車を横切っていく。
「射角確保オッケー、いつでも撃てるよ!!」
「では榴弾、Fire」
「了解!!」
榴弾がロケットランチャー部隊を吹き飛ばした。
すかさずハルナは装填を指示する。
「それにしても、お前ら、よくこんな古い重戦車動かせるな」
キヴォトスヤベーよ、とぼやく男だった。
「これくらい、淑女のたしなみですわ」
「ガルパンじゃあるまいし……」
諦めてレーダーに専念する男だった。
そんな感じで、彼女らは鹵獲した重戦車で無双し、敵勢を薙ぎ倒していった。
「典型的な騎兵突撃ですね……」
遠くからでも、重戦車が大暴れするのが良く見えた。
「ああ、内側からあれをやられたらどうしようもないな」
チナツに続き、イオリも敵陣が総崩れになるのを見ていた。
彼女達が前線に出なくても大丈夫なくらい、余裕の戦いだった。
ヘルメット団達は重戦車が暴れまわり、スケバン達はカスミ率いる温泉建設部が抑え込んでいる。
ただでさえ混乱している敵部隊は、統率された風紀委員会の部隊を先生とアコが適切に運用するだけで掃討されていく。
盤面は既に、チェックメイトだった。
程なくして、暴れに暴れた重戦車がホテルの前へとやってきた。
「ふう、戦車でドライブってのも乙だな」
重戦車が停車し、ハッチから男が顔を出した。
「この夏は戦車で海に行くのが流行るな!!」*1
「そんなわけあるか!!」
イオリがツッコむ。
「ただ、ランデブーはジュンコちゃんだけとが良かったぜ……」
そんなことをほざいた男は、下からアカリが砂浜に突き飛ばした。
すぐに元美食研究会の面々も中から這い出して来る。
「知っていますか、イズミ。
牛やクジラの陰茎は、珍味や薬剤として重宝されているらしいですよ」
「え、食べられるの!?」
じゅるり、と涎を垂らすイズミに、男は咄嗟に股間を手で隠した。*2
イズミ止めようね、と先生は同じ男性として珍しく彼を庇ってイズミを止めた。
「丁度ホテルがありますわね、皆さん、温泉に入ってからトウモロコシを焼きましょう」
狭くて暑い重戦車の中に居た彼女らは全員汗だくだった。
ハルナの音頭に、元部員の三人も付いて行く。
やれやれ、と男はその場に座り込んだ。
「“今回は君にしては大人しかったね……”」
「そう思ったのなら、先生。あんたも十分この世界に毒されてるよ」
「“……そうかもね”」
男に釣られるように、先生も浜辺の先の水平線を見やった。
「俺も素直に毒に浸かれるのなら、良かったんだけどな……」
先生はそう言って物悲しく笑うこの男の表情が、ひどく印象に残った。
「くそッ、なんであたしらがこいつらと」
「それはこっちの台詞だ……」
風紀委員会とその他大勢にぶちのめされた不良たちは、戦場になった砂浜や周辺の片づけをさせられていた。
「“二人共、喧嘩しちゃダメだよ”」
「うう……」
「くそー」
「“もしよかったら、だけど”」
先生は二つの不良たちのリーダーに言った。
「“これからは一緒にこの砂浜を守っていったらどうかな?
皆も、海は好きなんでしょ?”」
「……そうだな」
「ああ……」
先生に諭され、二人は海を見やった。
「……海は広いな」
「うん、ちっぽけだな、私達」
「……先生が、私らに湾岸警備をしないかってこの辺りの人達と話を付けてくれるってさ」
「私達にも言ってきたよ」
「……トウモロコシでも食うか」
「そうだな……」
何とか両者の話が付いて、先生もホッとした。
「先生!!」
遠くからヒナが先生を呼んだ。
すぐに先生もそちらに向かった。
「さあ、どんどん焼きますわ」
「大繁盛ですね♪」
「私達の食べる分、残るかな……」
「昨日十分に食べたでしょ!!」
グリルコンロを追加しても、焼きトウモロコシの製造が間に合っていない。
風紀委員会にカスミ達温泉建設部、不良たちまで食べに来ていた。
あれほど大量に持ってきたトウモロコシが、もうほとんど残っていない。
「……食べないのですか?」
「昨日食った」
アコが男のところに焼きトウモロコシを持ってきた。
彼は双眼鏡で、砂浜を歩いている先生とヒナを見ていた。
時折、ヒナ閣下美しい、尊い、キヴォトス全部貢ぎゅ、と気持ち悪い声が漏れている。
「結局夜にまでもつれ込んでしまいました。
午後四時には学園に帰投するはずだったのに」
「予定なんて、予定通りにならないから組むもんだろ」
「それはそうですが……」
はあ、とアコは居住まいを正してからこう言った。
「今日は助けていただき、ありがとうございます」
「どうした急に。胸の栄養が頭に登ったのか?」
「どういう意味ですか!!」
気味の悪いものを見る目で男はアコを見やった。
「……私はまだまだ未熟です。
委員長の為に、もっと、もっと学ばねばなりませんから」
「まあ、ゲヘナの連中には俺の対応くらいで丁度いいのかもな」
男はおもむろに、アコの焼きトウモロコシを手から抜き取った。
そして、端の方を一口齧った。
「あッ、あなたって人は、どこまで意地汚──」
「ほれ」
だが、それだけで男は焼きトウモロコシを彼女に返した。
「……まったく、まったく、もう!!」
アコは返された焼きトウモロコシをがしがしと平らげた。
「思えば、お前と一緒に飯を食ったこと無いな。
今度イオリ達と何か食いに行くか? ああ、これは勿論ナンパじゃないぜ」
「分かってますよ!!」
アコは風紀委員の仲間たちと男が食べ物をよく分かち合っていると聞いている。
これは、彼なりの儀式なのだ。
「いつかあなたを追い越して、ぎゃふんと言わせて見せますからね!!」
「おう、やって見せろ」
男はアコに笑みを返した。
ほんの少し、彼に認められたような気がしたアコだった。
これにて、イベントストーリー、ヒナ委員長のなつやすみは終わります。
他にやりたいイベントは、百夜堂海の家とかですけど、もう既に半分解決してるような……。
まあ、読者の皆さんもやってほしいイベントとかあったら教えてください!! 殆ど内容忘れてるんで……。
ではまた、次回!!
そろそろ、二章に行こうかな!!