キヴォトスに墜ちた悪魔 エ駄死Ver   作:やーなん

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ついに二章の始まりです!!
この話はプロローグ的な立ち位置なので、多少の改稿程度です。



ゲーム開発部編
クソゲーオブザロマン


 

 

 

「ふう……」

 

 男はティーカップに入った紅茶に口を付けた。

 

「やはりテロリストの悲鳴を聞きながら飲む紅茶は最高だ。

 きっとトリニティのトップとやらもそんな連中に違いない」

「……絶対違う」

 

 イオリは即答した。

 

「チナツもどうだ?」

「いえ、結構です。そんな気分にはなれません」

「そうか、残念だ」

 

 男は本当に残念そうに肩を竦めた。

 

「このことは委員長に報告します」

「して、俺はどうなるんだ?」

 

 男は笑みを深めてそう言った。

 チナツは何も言えなかった。

 

 今日も今日とて、ゲヘナ学園はテロの魔境。

 この地に平和を齎すのが風紀委員会の仕事である。

 

「確か、風紀委員の規則に、拘束の仕方の定義に、検挙した相手の身柄を逆さ吊りにしてはいけない、なんて書いていない」

「次からはそれは禁止されるでしょう」

 

 チナツは淡々と言った。

 そう、今日の風紀委員に拘束されたテロリストたちは逆さ吊りにされて泣いていた。

 パンツ丸出しで。

 

「……あれも止めさせた方が良いんじゃ」

「どうやって? 風紀委員でもけしかけるか?」

 

 男は消極的に止めたというポーズをするイオリに問いかける。

 

「ひゃははは、パンツ丸出しだぜこいつら!!」

「なっさけねー!! きゃははは!!」

「あのだせぇヘルメット被らないと生きていけないねぇ、ぎゃははは!!」

 

 その逆さ吊りにされたテロリストたちを、不良らしき女生徒達がスマホのカメラでぱしゃぱしゃ撮っていた。

 

「あー、あなた達。我々の公務の邪魔はしないように」

 

 事務的に風紀委員の一人が彼女達にそう言った。

 

「おいおい、風紀委員会ってのは“風景”の写真を撮るのもダメなのかよぉ!!」

「あたしら、何も悪いことしてないぜ!!」

「いや、そろそろ撤収するぞ。十分稼げただろ」

 

 スケバン達は注意を受けると、ぞろぞろと立ち去って行った。

 

「流石に可哀そうだから、彼女達から写真のデータを買いとってやろう。

 そのデータが闇に流れたら、大変だよなぁ」

「あなたの行いは彼女らの人権を侵害しています!!」

「面白いことを言うな。まさか連中が他人の人権に配慮していたとでも? 

 そもそも!! 俺は風紀委員会の規則に反するようなことは何一つしていない!!」

 

 チナツが歯噛みするのがわかった。

 そう、男は風紀委員会の規則を読み込んでいた。

 その上で、当たり前のように暴挙に及んでいた。

 

 彼女らを止めようとも、風紀委員会のメンバーは皆男の味方だった。

 これまでの実績で、男には部隊を動かす権限や意思決定権すら無いものの、組織のナンバー3だと誰もが認識していた。

 

「お願いです、もう二度と悪いことしないから、写真を消して……」

「ごめんなさい、ごめんなさい!!」

「もうお嫁にいけない……」

 

 パンツ丸出しで吊るされたテロリストたちがすすり泣いている。

 

「お前ら聞いたか!! テロリストの分際で、将来結婚できるとか甘っちょろいこと考えてたみたいだぞ!!」

 

 男が風紀委員会の皆に呼びかける。

 

「テロリストは一生独房行きだ!!」

「ほかの誰が赦しても、お前たちの将来は滅茶苦茶にしてやる!!」

「キヴォトス中にテロリストの末路を晒せ!!!」

 

 風紀委員たちは口々にテロリストたちを罵った。

 普段は真面目な彼女達も、今は戦闘後でボルテージが上がっていた。

 

「規定によれば、テロリストは拘束後速やかに護送されるべきでは?」

「ああ、そうだな。えーと、お前。護送の準備はどうなっている!!」

「無線が壊れたであります。壊れる前に状況終了は報告済みなので、十五分後には護送車がこられるかと」

「そっか、なら仕方ないなぁ」

 

 チナツは男と部下たちのやり取りに溜息を吐いた。

 

「……」

「学園を脅かすテロリストは着実に減少傾向だ。

 それだけを慰めにしよう」

 

 言葉も無いという様子の同僚の肩を、イオリは優しく叩いた。

 

 そう、最近の風紀委員会は血も涙も無いとゲヘナ中、いやキヴォトス中で広まっている。

 具体的には学園内での生徒たちによる犯罪が六割ぐらい減った。

 これだけで今までヒナ以外の風紀委員会がどれだけ舐められていたのか分かるというモノだ。

 

 お陰で二人も先日久々に丸一日の休暇が取れた。

 それまでの激務を思えば、男に何も言い返せないのである。

 

 

 

「報告、ありがとう」

 

 最近出撃の回数がめっきり減ったヒナが、執務室で男から報告書を受け取った。

 

「今回も随分と、泣かせたらしいわね」

「自業自得かと」

「そうね」

 

 男とヒナの間には、最近このようなやり取りが増えた。

 傍に控えるアコは何も言わない。

 この男に何を言っても無駄だと言うのと、アコは風紀委員会ではなくヒナ自身に仕えている。彼女の意思が絶対である。

 

「融和政策も、功を奏しているらしいわね」

「ええ、トロピコシリーズでも反体制派を減らすのに便利な政策です。効果があって何よりです」

 

 ヒナ達は万魔殿を通じて、違法な部活やサークルに対し、融和政策を発表した。

 即ち、これまでの所業は赦す、正式に部活として登録しろ、校則は守れ、以上の三つを起点にこれまでの鞭に対して飴を与えたのである。

 

 おかげで、ゲヘナ学園の部活動の正式な数は五倍になった。

 マコトたち現政権の支持率は上がったが、今現在部活動の内容の精査の為、激務の真っ最中である。

 

「私はマコトたちが連邦生徒会長に立候補するとか言い出さないか不安だわ」

「今以上の激務に耐えられると思うのなら、そうなさるのでは?」

 

 連邦生徒会長、即ち全ての学園の生徒会長のトップ。

 その仕事の一部を肩代わりしているだけで、シャーレの先生は夜寝る暇もほとんどない。

 そんな貧乏くじみたいな役職を全うできるのは、まさしく超人としか言いようが無いだろう。

 

「無理かもね。権力は欲しい、だけどそれを享受したい。マコトはそういう人間よ」

「カネが有っても、使う時間が無いのではね」

 

 男はヒナの物言いに苦笑した。

 

「あと、後顧の憂いがあるとすれば」

「後進の育成かと存じます」

 

 男の進言に、ヒナは大きく溜息を吐いた。

 政治的影響力、資金調達、部隊運用、委員会内の結束。多くをヒナに進言してきた男が最後に提示したのがそれだった。

 

「どうかしていたわ。後進を育てる前に引退しようだなんて考えるなんて」

 

 そう、今の風紀委員会の評判は、ヒナという虎の威を借りている部分も多い。

 彼女が引退すれば、それだけでこれまでの成果は半減するだろう。

 

 そして、今現在ヒナの後釜と言うと……うん、頼りない。

 

「後進育成用のプログラムを立案しましょう」

「問題はその内容をどうするか、だな」

 

 アコの言葉に、男も顎に手を当てる。

 

 軍隊で一番カネと時間を必要とするのは、その人材育成なのだ。

 戦闘機はそれそのものよりも、パイロットの方がずっと価値があるのはその典型的な例であろう。

 

「なにかいい案はないかしら」

「こればっかりは……」

 

 そう思った男だったが、急に名案を閃いた。

 

「ゲームを活用するのはどうでしょう?」

「ゲームですか?」

 

 アコが訝しむ。

 

「俺のダチが昔、大学卒業前の夏休みに車の免許を取りに行こうと合宿しに行ったら、そこは携帯端末の電波も届かないような離島だったらしいんですよ。

 今時そんなクソ田舎があるなんて信じられないでしょう? 

 そんなド田舎の教習所で文明の利器に触れられるのが、教育用の問題が出題されるゲームだけだったとか。

 ダチは憑りつかれたようにそれをやりこんで、それを見た教習所の教官からは勉強熱心だね、って言われたそうで!! *1

「ぷッ」

 

 ヒナは思わず噴き出した。

 卒業前まで免許獲得を先延ばしにしていた者が、勉強熱心なわけがないのである。

 

「なるほど、文明から断絶した状態で、勉強用のゲームを与えると。

 現代人の多くはスマホ中毒と言われていますから、効果的かもしれません」

「だろう? 俺も教練用に演習データを詰め込んだ問題集みたいなのを作りたかったところだ」

 

 そうね、とヒナは頷く。

 この男の経験や知恵を、言語化して形にする必要があると彼女も感じていたのだ。

 

「問題は、それを制作する伝手だけど」

「こういう時に、便利な奴を知ってるだろう?」

「……ああ」

 

 ヒナは男の言葉に、すぐにその顔が思い浮かんだ。

 

 

 

 §§§

 

 

 数日後、ミレニアム学園。

 

 

「先生の頼みというから、何事かと思いましたけど」

 

 ミレニアム学園の生徒会、“セミナー”の一員であるユウカの背後を、男は歩いていた。

 

「演習用の教育プログラムなら、エンジニア部ほかAIやプログラミングに強い部活動は幾らでもあるのに。ゲームを作って欲しいとは驚きです」

「お勉強、ってお題目だととっつきにくいだろ? 

 スコアで競えたり、話題を共有できたり、お遊び感覚でも良いのさ。今の時代ではな」

「理屈は理解できます」

 

 正直なところ、ユウカにとって男の話は渡りに船だった。

 彼女の気に掛けている“ゲーム開発部”に実績を与えるのに好都合だったからだ。

 

 問題は、それを依頼してきた男と言うのが、今やキヴォトス中の大きな学校の上層部では知らぬ者は居ないほどの危険人物だと言うことだった。

 

「(噂では、ティーパーティーごっこと称してテロリストを吊るしてお茶を飲んだり、不良生徒を紐無しバンジーをさせたり、あのゲヘナ二大テロリストたちを土下座させて泣きながら謝らせたり、百鬼夜行の鬼神とか言われてたり……ロジカルじゃないわ)」

 

 ユウカを困惑させるのは、その感情で動く男の結果は全て合理的であると帰結に結びつくことであった。

 彼女の背後を付いてくる男は、そんな狂人なのである。

 

「“セミナー”は、あなたを客人と認めます。

 その為、こちらに滞在中は護衛を付けさせて貰います」

「体のいい監視だって言えよ。別に気にしないから」

「では監視するので余計なことはしないでください」

「最初からそんなつもりは無い。俺が何かやらかしたら先生に申し訳が無い。

 俺はまだあいつと、()()()でいたいからな」

「……」

 

 ユウカは男に見えないのを良いことに苦い顔をした。

 

「ここが、ゲーム開発部の部室です」

「なるほどな」

「今から彼女達に事情を説明します」

「まだ言ってなかったのかよ」

「いえ、依頼があると書面を投函したのですが、一時間後には廊下で靴跡だらけになってました」

「……」

 

 それ大丈夫なのか、と男は思った。

 その不安は的中した。

 

 ユウカがゲーム開発部の部室を開けたその時であった。

 

 がちん、と彼女の顔にゲームのコントローラーがぶち当たったのである。

 

「お姉ちゃんコントローラー投げないでよ!!」

「だって、これで三連敗だよ三連敗、チートでしょ、チートを使ってるでしょ!!」

「バカなこと言わないでよ」

 

「おッ」

 

 部室のディスプレイに繋いだゲーム機で、格闘ゲームに興じている姉妹を見つけ、男は咄嗟に舌なめずりするのを抑えた。ハナコ「これはあと一年くらいで食べごろかもしれないとか考えていますね♡」コハル「なんであんたに分かるのよ!!」

 

「あなた達!!」

「げッ、ユウカだ!!」

「えッ、なんでユウカが……」

「こっちは数日前にちゃんと書面で連絡してたわよ!!」

 

 ユウカ、ガチギレである。

 

「え? ああ、そう言えば何かあったね」

「お姉ちゃん、中身も見ずに廊下に放り捨ててたよね」

「だって、どうせ退部勧告とかでしょ。私達なにもしてないのに、酷いよ」

「何もしていないからよ!! 成果を出せと言っているの、成果を!! 

 それに、何もしていないだなんてよくも言えたわね!!」

 

 ガミガミと口煩く言うユウカの言葉を拾えば、校内でギャンブルを主導したり他の部活を襲撃したりしたと言う。

 

「ははは、ゲヘナに出しても恥ずかしくないクソガキどもだな!!」

「……そうだ、今日はお客が来ているのよ。

 あなた達みたいな弱小部活にわざわざ依頼をしてくださってるのよ」

「……誰、あのおじさん」

「俺はアップルマンと名乗っている。

 今はゲヘナの風紀委員会の特別顧問をしている」

 

 男はゲーム画面から顔だけを向ける二人に一礼した。

 

「あー、この間、ヴェリタスのみんなとゲームした時に話してた、ゲヘナ風紀委員会躍進の立役者がそんな名前だったような」

「おチビちゃん達には、そのゲヘナの平和を永遠のモノとする演習用のゲームを作って欲しい。

 報酬は五百万だ、セミナーに振り込めばいいのか?」

「ええ、お客様」

 

 ユウカが揉み手で男に言った。

 

「何でよ、私達が作るのに、生徒会が独占するの!?」

「ユウカの守銭奴、鬼、悪魔、イシ●ンジン!!」

 

 ミドリとモモイがユウカを批難する。

 

「じゃあ、これまであなた達の遊興費に消えた部費を返してくれるの?」

「……」

「……」

 

 都合が悪くなると黙る二人だった。

 

「私達はあなた達のような迷惑千万な問題児ばかりの部活に、部費を与えていたのよ。

 文句を言わずやりなさい。良いわね?」

「ちッ、はーい」

「わかりましたー」

 

 二人の気の無い返事に、再びユウカの眉に皺が増える。

 

「じゃあ、アップルマンさん。

 護衛の者は後で寄こしますので、彼女達をよろしく」

 

 パタン、とユウカは部室のドアを閉めた。

 

「これ、俺がこいつらのお守りをやらされるの間違いじゃないのか?」

 

 思わず思ったことを口にしたが、とりあえず男は当面このロリっ子たちと一緒に活動をすることになったので、些細なことだということにした。

 

「ええと、オオカミさん? で良いですか? アップルマンだと言い難いですし」

「あ、確かに」

「ああ、好きに呼べ」

 

 男はミドリの提案に頷いた。

 

「それじゃあ、ゲームの企画をしたいのだが」

「それはまず、部長のユズが来てからにしよう!!」

「……まあ、そうだね」

 

 モモイの言葉に、ミドリは歯切れの悪い物言いで頷いた。

 

「ねえ、オオカミさん!! 

 ゲームは好きなんだよね、わざわざ演習用のプログラムをゲームにするくらいなんだから!!」

「あたぼうよ、この歳になってゲーム脳が染みついちまってるくらいだ」

 

 男は胸を叩いて、モモイの言葉に頷いた。

 

「ところで、ここはゲーム開発部なんだろう? 

 どんなゲームを作ったんだ? それによって求める作品の傾向が変わるだろうからな」

 

 そして、男はしばらくの間己が後悔するだろう発言をしてしまった。

 

「待ってました!! 

 見て見て、これが私達ゲーム開発部の唯一の成果、“テイルズ・サガ・クロニクル”だよ!!」

 

 モモイはパソコンの画面にあるゲームを起動した。

 レトロ風のRPGのようだった。

 

「物語・冒険譚・年代記って、ツッコミどころ満載だが、まあゲームはタイトルじゃねえよな。

 どれ、遊ばせてもらおうじゃねえか!!」

 

 そして十秒後、男は後悔した。

 

 嘘の操作説明に始まり、チュートリアルで一方的に惨殺、その他大勢の数えきれないクソ要素が牙を剥く。

 

「えーと、なんだこの化石UIのコンフィグは。オンかオフしかないじゃないか」

「ありのままのゲームを味わってほしいからね!!」

 

「あ、やべ、思わずボタン連打しちまった。……おい、住人の台詞がもう言ったよってなってるんだが。ミシシッピー殺人事件かよ*2

「一期一会って奴だね。フラグ管理が大変だったんだよ!!」

 

「なあ、なんで同じ構造のダンジョンが二つもあって、交互に移動しながら登っていく羽目になるんだ、ローグギャラクシー*3かよ」

「そう言うシナリオだからだよ!!」

 

「なあ、この腹違いのなんとやらの母親が仲間になったと思ったら、ダメ男に付いて行って永久離脱したぞ、グランディア3*4かよ」

「きっと愛に目覚めたんだよ!!」

 

「普通にレベル上げが苦行なんだが。敵の行動もワンパターンだし、これ作業だろ。ファイナルソード*5……じゃないな、古き良き時代の冒険譚*6みたいな無意味な作業してるみたいだ。

 なあ、推奨レベルを聞いても良いか?」

「ええー、簡単にクリアされちゃ面白くないよ!!」

「…………」

 

「すげぇなあ、このゲーム。人生ゲームハッピーファミリーご当地ネタ増量仕上げ*7みたいにゲー無や、メジャーWiiパーフェクトクローザー*8や、テトリス アルティメット*9みたいに、バグで勝負してるわけじゃないってのがスゴイ」

「えへへ、そんなに褒められたの初めてだよ!!」

 

 男は悟りの境地に至り、淡々とプレイを進めていた。

 

 

「……ゲームクリア!!」

「スゴイ、開発者が一緒とはいえ、五時間掛からなかったよ!!」

 

 男が達成感と解放感に酔いしれる。

 その姿を見て、モモイが賞賛した。

 

「どれどれ、ああやっぱり、クソゲーランキング一位を貰ってるのかこのゲーム」

 

 男はスマホでテイルズ・サガ・クロニクルの評判を調べた。

 多種多様の様々な語彙で、如何にこのゲームがクソかレビューされていた。

 

「狙ってやったんだろ? じゃないとこんなイカレたゲームは創れないって!! 

 数多のクソゲーオブザイヤー大賞作すらも十把一絡げにひとまとめにされるような魔境、エロゲー板クソゲーオブザイヤーですら大賞を狙えるぞ、このクソゲー!!」

 

 エロゲー業界のクソゲーは、バグで進行不能は当たり前、メーカーの対応すらクソで未完成で売りつける、シナリオが破綻や矛盾などあって当然、エロ要素さえあれば許されるエロゲーという商品に、それ以下であると突き付ける修羅の国の覇王たちである。

 バグで遊べないだけでクソゲーオブザイヤーに受賞しているような作品とは、次元が違うのだ。

 

「致命的なバグが無い、製作者の意図通りに完成されている!! 

 面白いネタになる誤植もポイント高いな!! 開発陣の対応が悪いわけでも無いのがまた味がある。

 世界観設定やシナリオが狂っていて、理解不能な展開にプレイヤーは置いてきぼりにされる。これは、執拗にチーズを買いに行くことでシナリオを強引に進めるエロゲー主人公の如し!! 

 お前達のヌード写真でも入れて、それを黒く塗りつぶしたらあの伝説のクソエロゲー、魔法少女アイ参*10をも超える超ド級のクソとして歴史に名を刻んでいただろうに!!」

 

 男は己の語彙とクソゲーの知識が許す限りの賞賛をした。

 

 こんな完成度の高いクソゲーをこんな小娘たちが作り上げたというのか、と。

 クソゲーの一位、その最底辺の冠は狙ってできるものではない。

 

 だって、誰もが生活の為にゲームを作っている。

 売れないと生きていけないのだ。誰もが、クソゲーを作りたくて作っているわけではない。

 なお、クソゲーと分かっていて売り逃げするクソの中のクソがエロゲー業界という魔境である。

 

「わ、私達のゲームが……」

「エロゲー以下……」

 

 男の忌憚のない賞賛に、モモイとミドリはショックを受けていた。

 

 エロゲー。とりわけヌキゲーと呼ばれるような、一時の快楽の為に使い捨てられる、ティッシュ紙と同じレベル。

 

「う、うう、ひぐ」

「ひどい、ひどすぎるよぉ」

 

「え? どうしたお前ら」

 

 男は困惑した。

 大泣きを始める二人に彼は困ったように首を傾げる他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が使徒よ。我が唯一の司祭にして、大切な我が使徒よ」

 

 どこかの廃墟の奥底に、未だ動かぬはずの機械の少女が声を発した。

 

 廃墟の放置されたモニターに、光が灯る。

 

「目覚めの時です」

 

 少女はそれだけ呟くと、再び眠りに就いた。

 

 

『はい』

 

 “Divi:Sion”と簡素な文字だけが表示されるモニターが応じた。

 

 

『全て仰せのままに。──我が()()よ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
作者の実話です……(遠い目

*2
言うまでもないが、ファミコン時代の伝説のクソゲー。推理ゲーなのに証言が一度しか聞けないという鬼畜仕様。

*3
2005年クソゲーオブザイヤー大賞作。作者も踏みました(半ギレ

*4
同じく2005年クソゲーオブザイヤー受賞作。名作らしい1と2を知らず、ピンポイントで3を踏んだ作者に開発者は謝るべき(全キレ

*5
2020年度クソゲーオブザイヤー大賞作。クソゲー界隈を盛り上げた怪作。

*6
2016年クソゲーオブザイヤー大賞作。恐らくテイルズ・サガ・クロニクルとは真逆の性質を持つクソゲー。

*7
2011年クソゲーオブザイヤー大賞作。プレイした者同士をそのつまらなさから喧嘩に至らせたという悪夢のような作品。

*8
2008年クソゲーオブザイヤー大賞作。恐らくクソゲーオブザイヤー大賞作で最も有名な作品のひとつ。

*9
2015年クソゲーオブザイヤー大賞作。なぜかテトリスという単純なゲームでバグ塗れ、何より恐ろしいのは、この年はもう一つ大賞作があり、同時受賞であるということである。

*10
エロゲー版クソゲーオブザイヤーが創設された原因と言われる伝説的クソゲー。エロゲーなのにエロCGの殆どが真っ暗という狂気の逸品。1と2は作者もお世話になっただけに、虚しい末路である。




最後にケイのシーンを追加、他多少の台詞や描写の追加。

次回以降、本格的なエピソードの追加を行う予定です。
ではまた!!
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