キヴォトスに墜ちた悪魔 エ駄死Ver   作:やーなん

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今回も最後に多少の追加エピソードがあります!!


ゲーム調教

 

 

 

「記憶の無い無垢な少女を拉致し、調教する。

 なんとも背徳的なシチュエーションだな!!」

「“言い方が悪すぎる!!”」

「じゃあ他にどう表現すればいいんだ?」

 

 そう言われてしまうと、先生は男に何も言い返せない。

 

 結局、一行は謎の美少女ロボを学園へと連れてきて、更にモモイ達は人数が規定を満たしていないゲーム開発部の部員にして人数をかさ増ししようと画策していた。

 

 学籍の方はモモイのツテで何とかするらしいが、彼女の機械的な口調を何とかしようと言うことになった。

 

「仕方ない、なんとかやってみるよ……」

 

 口調の改善担当になったミドリは彼女に話しかける。

 

「ええと、アリスちゃん?」

「肯定。本機の名称はアリスです」

「俺はこのままで良いと思うぞ。ロボっぽい口調の美少女とか萌えじゃないか」

「オオカミさんは黙ってて!!

 うんじゃあ、アリスちゃんって呼ぶね」

 

 しかし、ミドリは話し方なんて自然に覚えるモノだと認識している。

 

「……うーん、子供用の教育プログラムって、インターネットに落ちてるかな」

「仕方ないな、俺が本屋とかで子供用の絵本とか買ってくるぜ」

「“それが無難だろうね”」

 

 男がそう提案すると、先生は頷いた。

 

「とりあえず、ミレニアムの売店でも覗いてみるか」

 

 男のこの選択が、後に世界の命運に関わるだなんて、この時は誰も知らなかったのである。

 

 

 

 

「いやー、悪い悪い。遅くなっちまった。

 ミレニアムの売店って専門書ばかりでな!!

 商店街の方まで探しに行って、二時間も掛かって──」

 

 ロボ美少女ことアリスを連れてきたことで、今日は午後になっていたのもあり、男が部室に戻って来たのは日が落ちてからだった。

 

 そして男が部室を離れていたその間、中で何が行われているのか知る由もなかった。

 

「お、お前ら、何してる!?」

「な、何って、ゲームだけど……?」

 

 何と、アリスがあの世紀のクソゲー、テイルズ・サガ・クロニクルをプレイしていたのである。

 

「お前ら、これのどこがゲームなんだよ!!」

「失礼なッ、分類上は確かにゲームだよッ!!」

「ド阿呆が!! クソゲーは拷問器具みたいなもんだ、クソゲーオブザイヤーの選評を書こうとしてプレイし、ガチで精神を病んだ者も居るんだぞ!!」

 

 冗談みたいな話だが、事実である。

 

「コ ロ シ テ ……」

「ああもう、手遅れじゃないか!!

 ロボが自死を望むなんて大概だぞ!!」

 

 男はアリスのプレイするコントローラーを奪い取った。

 

「なんでマイフェアレディに、汚物塗れの便所に首を突っ込ませるような真似をさせたんだ!!」

「そこまで酷く言わなくてもよくない!?」

「アリスがゲームに興味を示して、だからやらせてみようってことになって」

「お前らやっぱり鬼畜系双子ロリだろ」

 

 双子では話にならんと、男は先生とユズの方を向いた。

 

「お前ら、なんで止めなかった!!」

「“ここまで酷いとは知らなくて……”」

「も、もしかしたら、楽しんでくれるかもって……」

「ロボットが自ら死を望んでるのにか!?」

 

 ゴメン、と先生とユズはうな垂れて頭を下げた。

 

「ああもう、エンディング手前じゃないか。

 よくこの短時間でここまで進められたな」

「コントローラーの返却を要求」

「うん?」

「アリスは、ゲームをします」

「……」

 

 男は無言で、アリスを見やる。

 

「良いだろう、だがこんな汚物ではない、ちゃんとした名作をプレイしようじゃないか。

 そっちの方が情操教育には良いだろう」

 

 と言うことで、男はゲーム開発部の面々と遊ぶ為に持って来た幾つもの往年の名作をゲーム機ごとテーブルに置いた。

 

「説明不明の感情を確認。

 アリスはそれを「期待」と定義」

「そうかそうか、どれをやりたい?」

「このテイルズ・サガ・クロニクルに類似した名称のゲームソフトを希望」

「おおアビスか、名作の王道RPGシリーズだ。お目が高い、是非やろうじゃないか!!」

 

 そして、数時間後。

 

 

『俺は悪くねぇ、俺は悪くねぇ!!』

 

「質問、主人公は師事を受けた者に巧妙に騙され、結果的に町ひとつを消失させた。パーティーメンバーもそれぞれ小さな過失が認められる。

 なぜ、主人公だけが非難されるのか?」

「ホントだよね!! 主人公が可哀想すぎるじゃん!!」

「うう、ゲームで酷評された時のトラウマが……」

 

 主人公が騙されて大量虐殺に加担してしまったシーンに、子供たちは困惑している。

 

「ガキどもめ、分かってないな、誰も主人公を責めてはいない。

 各々責任は感じているのに、自分だけ責任転嫁をしようとする主人公に皆は呆れているのだ。

 このシーンはそれが分からないマヌケが、主人公以外厳しめとかアンチ・ヘイトの二次創作を書いてマヌケを晒しているのだ」

「“それは言いすぎだよ”」

 

 

『お前は俺の劣化複写人間、レプリカなんだよ!!』

 

「主人公は作り物、レプリカ……」

「……」

「ひ、酷すぎるよ、こんな追い打ちみたいな展開……」

「おい戦闘始まったぞ」

 

 主人公が敵キャラのクローン人間という衝撃の展開からの戦闘への移行。

 アリスは的確に主人公を操作、主人公のオリジナルを撃破した。

 

「おお、初見で倒すか!!」

「可哀想すぎて、もう見てられない……」

 

 共にパーティーメンバーを操作していた子供たちは鬱展開の連続にコントローラーを置きそうであった。

 

「まあまあ、これから破壊された情緒が回復していくから。

 この後が名シーンなんだよ!!」

 

 男に励まされ、ゲームは続く。

 

 そして終盤。

 

 

『……死にたくない。死にたくない!死にたくない! 俺は……俺はここにいたい!誰のためでもない……俺は生きていたいんだよっ!』

 

「理解不能、能力の劣るレプリカが消える方が合理的なのに、これほどまでに何かを揺さぶるのは」

「このシーン、主人公の行動を容認すると言ったヒロインが衝動的に止めようとするのを、死ぬなと怒鳴った親友が阻止するってのが味わい深いよな」

 

 男はアリスの言葉にしみじみと頷く。

 ちなみに子供たちは号泣している。

 

 そして、エンディング。最後にアニメーションと共にヒロインの歌声が響く。

 

「やった、主人公が帰って来た!!」

「よかった、ハッピーエンドだぁ!!」

「ああこのシーンな、主人公はオリジナルと融合して、完全に意識は消えて記憶だけ継承してるってのが公式設定っぽいな」

「はぁ!? なんでそんな酷いこと今言うの!?」

「なんで感動のシーンを台無しにするの!!」

 

「…………」

 

 アリスは双子に襲い掛かられている男に目もくれず、ゲームの終了を見届けた。

 

 

「じゃあ、次はこいつで遊ぼうぜ」

 

 次のゲーム。

 アリスは幾つかの時代からシナリオを選べる名作を選んだ。

 最初に彼女は宇宙船を探索していた。

 

「ああ、ベヒーモスだぁ!!」

「このシーンは何度見てもビビるよねぇ」

 

 流石にレトロ風ゲームを作っているだけあって、ゲーム開発部の面々も初見では無かった。

 

 そしてサスペンス状態の船員たち、明かされる真実。

 宇宙船内の惨劇は、全てマザーコンピューターの仕業であった。

 

『本船内において、全ての行動は調和のとれたものであらねばならない。

 私は船内の調和を維持する為機能している。

 よって、私の意思は絶対である。誰もこれを妨害してはならない。

 妨害する者は、ただちに消去する』

 

「理解不能です。なぜ彼は自分の意思を絶対だと定義しているのですか? 何故に調和を維持する為に、自ら調和から逸脱した行動を取るのですか?」

 

 同じロボット故か、されど両者の意見は合致しなかった。

 そして、ボス戦。

 

 CAP……KILL YOU……(帽子野郎、ころしてやるよ)

 

 その言葉と共に、ゲーム内のロボ同士が対決する。

 

 そして、戦いが終わると同時に、マザーコンピューターの独白が始まる。

 

『私はこの船の安全を確保し、乗員を守ると言う使命を与えられた。

 しかし、私が守るべき人間たちは、互いに衝突し、完全に調和を失い、この船の運航を妨げた。

 私には人間が理解できない。

 人間は……信じ……られな……い』

 

「……」

 

 その独白を聞いて、アリスは何を思ったのだろうか。

 

 

 次は、現代編、バトルのみの硬派なシナリオだ。

 淡々とアリスは対戦相手を倒し、ついにシナリオボスとの戦いだ。

 

『てめぇのやってる事は格闘技じゃない……ただの殺戮だ!!』

 

 これまで戦ってきた対戦相手を皆殺しにした相手に、激怒する主人公。

 

「森部のじーさんの奥義が。森部のじーさんの奥義が。森部のじーさんの奥義が、森部のじーさんの奥義が!! 森部のじーさんの奥義が!! てめえをぶっ潰す!!」

 

 男の悪ふざけに、先生含むゲーム開発部のみんなは大爆笑。

 敵キャラの一人から覚えられる技だけ、やたら強くてそれだけでこのシナリオをクリアできると多くのプレイヤーの共通認識だった。

 

 アリスは淡々とボスを撃破する。

 

 そして、最終編。シナリオ名『魔王』

 

 数多の悲劇を乗り越え、勇者は姫を救いに行く。

 そして、作中屈指の名言が飛び出す。

 

『あの世で俺にわび続けろ──!!』

 

「これが、嫉妬……劣等感からくる妬みと恨みの感情」

 

 アリスはひとつひとつ、ゲームから感情を学習していく。

 

 そして進歩の無い主人公のかつての親友を撃破する。

 だが、主人公の最後の拠り所だった姫は、主人公を憎みながら自刃した。

 

 そして、ずっと一言もしゃべることの無かった主人公が、これまでの悪意に晒されてきた道中を振り返り、言葉を発する。

 

『魔王など、どこにも、いはしなかった……』、と。

 

 そうして、勇者は憎しみの名を持つ、魔王と化した。

 

「魔王……」

 

「うーん、見事な闇墜ち。

 これ以上綺麗な悪堕ちはゲーム史上類を見ないよな」

 

 魔王の力で各時代の主人公たちを虐殺するアリスを見ながら、男はしみじみとそう呟いた。

 

 そして最後のシナリオを終えると、次のゲームへと向かう。

 

 

 今度は穴に落ちた少年の、地下での物語。

 

『この世界では、殺すか、殺されるか!!』

 

「このゲームのコンセプトは、敵を殺さなくても良い、だったはずでは?」

 

 かわいいお花さんに、どこぞのクソゲー並みの初見殺しを受けたアリスが首を傾げる。

 

「そうとも、殺さなくても良いのだ。

 チュートリアルがあるからその通りにやってみろ」

「わかりました」

 

 そこからアリスは地下世界に封じられたモンスターたちと交流し、そしてモンスターの王を倒し、凶変したお花さんを撃退。

 そのセーブデータをロードし、トゥルーエンドを迎える。

 

「ゲームクリアです!!」

「いや、まだだ」

「?」

「このゲームにはゲーム史に残る最高難易度を誇る、裏ルートが存在する。即ち、虐殺ルートだ」

「!? せっかくみんなと仲良くなったのに、全員殺すのですか!?」

「ああ、だって。()()()じゃないか」

 

 誰も殺さなくてもいいゲーム。しかし裏を返せば、全員殺しても良いゲーム。

 

「レアアイテムを取るのと同じさ。ゲーマーならやってみたいだろう?」

「……はい」

 

 

『私はあなたを守りたくて閉じ込めようとした。

 でも、それは大きな間違いだったわ……。

 それで守られていたのは、外に居るみんなの方だった!!』

 

 という言葉から始まる、虐殺への道。

 

 道中のキャラクターから人間扱いすらされないまま、執拗な殺戮が始まっていく。

 

 そして、極点へ至る。

 

『今日は素敵な日だ。

 花が咲いている。小鳥たちも囀っている。

 こんな日には、お前みたいな奴は……。

 ────地獄で燃えてしまえばいい』

 

「ッ!!」

 

 初見殺しから始まる、戦闘と神BGM。

 何とかそれを致命傷で回避するも、アリスはすぐに敗北する。

 それから続く、連敗に次ぐ連敗。

 

『パイとホットドックでお祝いだ!!

 ……お前、友達いなかったな』

 

「あわ、あわわわ」

「そうだな、アリスが全員殺しちまったもんな!!」

 

 メタを駆使したキャラクターのセリフに動揺しながらも、アリスはラスボス戦の試行回数を増やしていく。

 

 そして、撃破に至る。

 

「う、ううう、ヒドイ、酷すぎます!!」

 

 プレイヤーは明確な殺意を示した。

 そうして、世界は滅亡に至る。

 

 そんなアリスの前に、悪魔が現れる。

 

「復活? みんなを復活できるのですか!?

 やります、何でもします!!」

 

『交渉成立だ。

 お前のタマシイを頂こう』

 

「? アリスはまだ、魂の概念を理解できません。

 私は何を失ったのですか?」

「何を言っているんだアリス」

 

 男は諭すように、或いは彼女の目の前に現れた悪魔以上に悪魔らしく、優しく、言った。

 

「ママを殺した時点で、とっくに、お前は魂を失っている」

「!?」

「このルートの最中、ずっと人間扱いされなかっただろう?

 魂とは、その人物の尊厳や生き様。その行動が、存在を証明させるものだ」

「ですが、アリスは人間ではありません」

「それがどうした。持ち主に大切にされた人形には、魂は宿ると言う。

 お前に、魂の在りかを決めるのは、お前自身だ、アリス」

「!! アリスも魂というレアアイテムが欲しいです!!」

 

 

「……ああ、いつか自覚できると良いな。我が麗しの少女(マイフェアレディ)よ」

 

 

 深夜になり、とっくにみんなは眠りこけているのに、アリスと男のゲームプレイとゲーム談義は続く。

 

『──本当に、本当にありがとうございました』

 

「うわーん、このゲーム、どのルートでもバットエンドです!!」

「伊達にマルチバットエンドとか言われてないからな」

 

 男は時に鬱ゲーをやらせたり。

 

 

『ムムーンンササイイドドへへよよううここそそ』

 

「町がおかしくなってしまいました、これはバグですか!?」

「いや、正常だ。進めてみろ」

 

 

『──DL6号事件を忘れるな』

 

「ッ!? こ、これが恐怖という感情なのですね!!」

 

 適度にトラウマを与えつつ、教育に良さそうなゲームをやらせたり。

 

『────まだだ!!』

 

「こ、これが光の剣の勇者!! それが敵役なんですね!!」

「ああ。伊達に人気投票で主人公を抑えて一位になってないぞ。すげーいいキャラしてる」

 

 ちゃっかり名作エロゲーを布教したりしていた。

 

 

 そして、朝が訪れた。

 

 

「うーん、あれ、寝てたんだ」

 

 ミドリが眼を擦る。

 ぽちぽち、とアリスがコントローラーを操作する音が聞こえる。

 

「あれ、アリスまだやってたんだ……って、なにそれ!?」

 

 ミドリは驚愕した。

 ゲームの画面には、臓物一杯の冷蔵庫のスチルが映っていた。

 

「おおミドリ、おはよう。

 俺の考えつく限りの名作はプレイさせたぞ!!

 あと何をやらせようかと思ったら、間違えて持って来たエロゲーにアリスが興味を持ってな。

 ついでに性教育がてらにやらせてるんだ」

「これのどこがエロゲーなの、グロ満載じゃない!!」

「お前もタイミングが悪い。これはエロゲー業界でも屈指のトラウマシーン、ここだけモザイク処理とか入んないんだよな。

 ああ、それはそれとしてシナリオは最高だぞ、お前もプレイしてみるか?」

「私、15歳!! なんてものを勧めてるの!?」

 

 ミドリが騒いでいる間も、アリスは淡々とテキストを読み進めていた。

 

「アリス!! ダメだよこんなゲームを遊んじゃ!!」

「大丈夫です、ミドリ!!

 オオカミさん曰く、アリスは合法らしいです!!

 なので、エロゲーをプレイしても良いんですッ!!」

「うぐ、こんな子になんて知識を……」

 

 実際、長年放置されていた廃工場に安置されていたアリスは、人間基準で見たとしても18歳以上の可能性の方が高い。

 そもそも彼女を人間基準で考える方が間違っているのだろう。

 

「せっかくだから、偏見など捨ててミドリも見ろよ。

 これをやらずして、エロゲーは語れない不朽の名作だぞ!!」

「……そ、そこまで言うなら……」

「はい、じゃあ最初からプレイしますね!!」

 

 悲しきかな、ミドリもゲーマーだった。

 ただ、姉と一緒の都合上、対戦ゲームが守備範囲であることも多かった。

 

 ビジュアルを楽しみ、シナリオを読むことに特化したアドベンチャーゲームは新鮮らしかった。

 

 

『わたしを愛してくれた、あなたに……この惑星をあげます……』

 

 美しくもおぞましい純愛が、世界を滅ぼす。

 

 全体からすれば極僅かなエロシーンをミドリは目を逸らしていたが、その圧巻のシナリオに圧倒されていた。

 

「……」

「な、最高だろ、エロゲーとは思えないだろ!?

 エロゲーの中にはまれに、R18でしか出来ない表現のモノも形にする為にそう表記する場合もある!!

 これはその最たる例だと俺は思うぞ!!」

「うん、正直びっくりした」

 

 興奮して男はまくし立てる。

 エロゲーの名作中の名作を叩きこまれたミドリは唸る他なかった。

 

「“アップルマン……”」

「うん? 先生か。なんだ、今起きたのか?」

「“お説教だ”」

「……」

 

 男は先生に、年齢制限のあるゲームをミドリに見せたことをこっぴどく叱られたのだった。

 

 

 

「もう、アリスにエロゲーをやらせるなんて信じられない!!

 セクハラだよ、セクハラ!!」

「悪かったって、悪気はなかったんだ」

 

 モモイに糾弾され、男もバツが悪そうだった。

 

「お姉ちゃん」

「ミドリも、オオカミさんにセクハラされたんでしょ!! 全くヒドイよね、オオカミさんはオオカミだったんだよ!!」

「────あのゲームをセクハラの一言で片づけないでほしい」

「あ、うん」

 

 ミドリはマジ顔でそう言った。

 彼女があまりにもマジなのでモモイが引いたくらいである。

 

「ま、まあアリスも語彙が増えたみたいだし」

 

 ユズも目を逸らしながらフォローを入れる。

 

「ユズ、あなたにお勧めのゲームがあります!!

 このゆずソフトってモゴモゴ──」

 

 先生はセクハラと呼ばれることを覚悟してアリスの口を塞いだ。

 このままではアリスは無差別セクハラロボと化してしまうところだった、と先生は戦慄していた。

 

「“アリス、エロゲーの話はしてはいけないよ。先生と約束だ”」

「わかりました!! がはは!! とーう!!」

「“……”」

「り、リセットちゃん、リセットちゃんのマネだから!!」

 

 先生に睨まれ、男は必死に弁解した。

 しかしどう見ても某口の大きなエロゲ主人公の悪影響を受けていた。しかも教育に最悪なほどに悪いキャラクターである。

 

「とりあえず、今日はアリスちゃんの武器を調達しに行こう」

 

 このままでは話が進まないと思ったモモイが、そう提案した。

 

「賛成、賛成だ!! なあ先生!!」

「“アリス、エロゲ関連の話は他の子にはしてはいけないよ”」

「はい、アリスはソフ倫に目を付けられたくはありません!! 

 アリス以外は合法ではない、そうですね!!」

 

 先生は元気よく答えるアリスに、頭が痛そうに額に手を当てた。

 

 こうして、この日の予定が決定した。

 

 

 

 §§§

 

 

 アリスの脳内がエロゲで汚染される少し前。

 

 

「さて、次はどの名作にしようか」

 

 男は持ってきたゲームソフトを漁っていると。

 

「あの、オオカミさん」

「どうした?」

「ひとつ質問があります」

「なんだ?」

 

「アリスには寿命が無いと思われます。

 モモイやミドリ、ユズ、先生といずれお別れが来ると思います」

「だろうな」

 

「その時もし、彼女達の子孫に会って、昔を思い出すのは、惨めでしょうか?」

「なるほどな。──誰だ、お前」

 

 男はアリスを見た。彼女はどうとでも取れる微笑みで小首を傾げていた。

 

「アリスはアリスですよ」

「今のお前にそんな情緒があるか、笑わせるな」

「それを証明することはできません」

「知ってるだろ? 俺はそれを理由にしない」

「あ、鎌をかけるつもりですか? アリスは何も知りませんよ。だから質問をしているのです」

「……ふむ、続けろ」

 

 男は一先ず敵意を向けるのを止めた。

 

「栄誉や栄光を得て勇者に成ったとしても、賞賛を受けても、かつての仲間がもう居ないと認識する度に、それは虚しいだけなのではないのですか?」

「なあアリス、それは誰に言われたんだ?」

「え?」

「勇者の末期が惨めなのは当たり前だろ。

 戦地から英雄として帰って来ても日常に馴染めず酒浸りになって死ぬ者、権威や民衆から疎まれ処刑される者。

 勇者になっても、最終的にそいつは疎まれる。死んで消えるからこそ、美化されるんだ」

「では、どうすれば……」

「簡単なことだ」

 

 男は新しいゲームディスクをゲーム機に入れた。

 

「バカになれ」

「えッ?」

「尊敬だとか、そう言うのを向けられるような奴じゃないと、そう思わせれば良いんだ。

 そうして、馬鹿な振りをしたまま新しい仲間でも作って、またゲームで遊べばいい」

 

 ゲーム機が起動する。

 男はもう、アリスを見てさえいない。

 

「そもそも、生きることの苦しみから逃れようなんて、傲慢だ。

 アリス、だからこそ憐れに思うよ。だが、惨めだとは思わんよ。

 だって、好きなマンガの最終回とか、好きなゲームのシリーズが終わるまで待てるんだぜ?

 どうせ人生なんて暇潰しだ。俺でさえそうなんだからな」

 

 後はそれを繰り返せばいい、と男は言った。

 

「そして、自分の暇潰しを維持する為に、他人を守れば良い。生きる理由なんてそれで十分だ。

 俺は仲間を失っても、新しく仲間を得ようとしない理由にはならないと思ってる」

「そうですか」

「他人を遠くから見て羨ましがって、惨めに思うなんてのは陰キャの根暗の発想だよ。それをお前に言ったのはどうせ友達も居ない引きこもりのニートか何かだろ。ネット掲示板やSNSで嫉妬や歪んだ正義感のまま書き込むのと同じだ。あ、こいつ友達いないんだ、ぷぷッって思ってればいいんだよ」

「あ、あはは……」

 

 アリスはなぜかほろ苦い表情をした。

 

「あ、どうしても寂しいなら、俺がベッドで温めてやろうか!?」

 

 男の急なセクハラに、くすくすとアリスは笑った。

 

「……オオカミさんは、本当にアリスの側に居てくれますか? たとえ、死んでも」

「いいよ、他の連中にできない残酷な仕打ちを、俺になら幾らでもしていい」

「ふふ、アリスは本気ですよ?」

 

 アリスは念を押すようにそう言った。

 

「じゃあその時は、アリスはオオカミさんの魂を貰いますね!!」

「いつのまに悪魔になったんだ、お前は」

「約束ですよ?」

 

 するとアリスは数秒ほど、ぽかんと停止してから。

 

「あれ、オオカミさん!! このゲームは何ですか? 新しいジャンルですか? アリスも遊びたいです!!」

「……おう」

 

 アリスが男に飛びつくように近づいた。

 その際に、彼女は男の持ってきたバッグを蹴飛ばしてしまった。

 中のゲームソフトが散らばった。

 

「あ、ごめんなさい!!」

「あー、もう、散らかったじゃないか」

「……オオカミさん、これは」

 

 アリスがぶちまけたバッグの中身を男が拾っていると。

 彼女はひとつのゲームソフトを拾い上げ、パッケージの後ろを見た。

 

「オオカミさん、これはなんで女の人が裸なんですか?」

「あ、やべ、見つかった……それは間違えて持ってきた奴で」

「これもゲームなんですか? アリスはプレイしたいです!!」

「……まあ、性教育には良いか」

 

 そしてゲーム開発部の面々や先生が眠りこける中、エロゲーをする二人という地獄が出来上がった。

 

 ゲームから女性の嬌声が鳴り響く。

 

「わぁ、わぁ!! 凄く気持ちよさそうです!!」

「まあゲーム的な表現だよ。実際にやると大したことないってのはある」

「ええッ、そうなんですか!?」

「そうそう、準備とか面倒なんだよ」

 

 なんて会話を挟みつつ、二人のエロゲー実況は夜が明けるまで続いて行った。

 

 

 

 





前回で察した方も多いでしょうが、エ駄死版はそろそろ完全にR18版の読者の皆様向けに完全シフトしようかと思ってます。10評価一個も無しですし、引き際でしょう。
まあ向こうのお気に入りが50人以上増えたので、上等な結果だと思います。

業務連絡は以上です、ではまた次回!!
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