キヴォトスに墜ちた悪魔 エ駄死Ver   作:やーなん

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今回は元の倍くらいの量の追加エピソードを書きました。
前々回のあれは、深夜テンションでした。ごめんなさい。反省してます……。

あと、今回AIイラストを使用しています。
お気をつけて!!



伝説の武器

 

 

 

 アリスの武器を探しに、エンジニア部へと行くことになった。

 そして。

 

 

「お嬢さん、俺と一緒に夜のベッドで君の次世代型有機ユニットを作らないかい?」

「ははは、そんな直球に口説かれたのは初めてだな。意外と悪い気はしないね」

 

 部長のウタハを男は口説いていた。

 

 おい、と皆が思った。

 

「宇宙戦艦建造には途方もない時間と予算が必要だろう。

 ここは我が子に夢を託すと言うのも悪くない選択かもしれない」

「おっと、思いがけない好印象」

「だが!! それを成すにはまだ私は若い!! 

 十年後くらいを視野にプランニングをしておいておくれ」

「よっしゃ、じゃあ十年後な!!」

 

 男はウタハを口説き終えると、何食わぬ顔で一行の下に戻って来た。

 

「さて、欲しい武器は決まったのか?」

「“なにからツッコめば良いのかわからない……”」

「何を突っ込むって、……俺のナニ?」

 

 先生は手の裏で男をバシンと叩いた。いい音がした。

 見事な漫才であった。

 

「“子供たちの前なんだが”」

「俺が誰を口説こうが、俺の自由だろ!! 

 しかもちゃんと十年後に予約を付けたぞ!! あんたに文句を言われる筋合いは無い!!」

「“うぐぐ”」

 

 目の前でナンパを成功させてみせた男に、先生はウタハの自由意思なのもあって言い返せないでいた。

 

「今のって、体よく断ったんじゃないの?」

「いや、ウタハ先輩のことだからマジかも……」

 

 モモイとミドリはお互いに鏡合わせのように顔を見合わせ、困惑していた。

 

「これは、オオカミさんの部長さんルートのフラグが立った!! ということですね!!」

「うん、まあそうだね……」

 

 とりあえずユズは消極的な相槌をアリスにしておいた。

 

「わー、流石先輩!! モテモテですねぇ!!」

「とりあえず先生よ、俺に何か言う前にそこの痴女の着こなしを指導した方が良いんじゃないか?」

「“絶妙に指摘しずらいことを言わないでくれ……”」

 

 コトリに煽てられ、優越感マシマシのドヤ顔を披露するウタハ。

 そして彼女の後輩を示し、難しい顔をする大人二人だった。

 

「……部長、そろそろ彼女達を案内してあげよう」

「それもそうだね!!」

 

 ご満悦なウタハに対し、ヒビキが軌道修正を図る。

 

「お、こっちの子もなかなかに良いが、今日はもうウタハちゃんを口説いたしな。君は一年生だっけ? 三年後に予約するかい?」

「え、……いや、その、……困る」

「おっと、これはごり押ししたら行けるかもな……」

「“いい加減にしなさい”」

 

 ヒビキから男を引き離す先生。

 この数分で何度目か分からない溜め息を吐いた。

 

「俺が悪いんじゃない、彼女らが魅力的なのが悪いんだ」

「じゃあ、私も口説いてくれますか!!」

「ははははは、失せろ痴女」

「そんなぁ!?」

 

 コトリ、撃沈!! 

 

 

「“まったく……”」

「安心してください、先生!! 

 オオカミさんはちゃんと18歳まで待ちます!! 

 エロゲーを18歳未満がプレイできないのと同じです!!」

「“……そうだね”」

 

 それって女性をエロゲー扱いしているのと同じでは、とは言えない先生だった。

 

「保管庫はあっちだってよ、さあ行こうかマイフェアレディ」

「はい、オオカミさん!!」

 

 男とアリスは仲の良い親子のように手を繋いで保管庫に向かう。

 

「“マイフェアレディ、か”」

 

 彼の言う“マイフェアレディ”。それは同名のミュージカルにちなんでいるわけではないと、先生は思った。

 ミュージカル、その原作、元ネタと呼ばれるお話しが存在する。

 

 それは、戯曲『ピグマリオン』である。

 現実の女性に失望したピグマリオンという男が、理想の女性の彫像を掘った。

 彼はそれを人間のように扱い、そして恋をしてしまう。

 恋するあまりに男は衰弱し、それを憐れに思った美の女神が彫像に命を与え、男は彼女を妻に向かえる。そう言うお話だ。

 

 男は彼女達を見た。

 

「オオカミさん、アリスだけ特別扱いしていない!?」

「そうです、私達の扱いだけ雑じゃないですか!?」

「はあ? いつか劣化する憐れな生き物どもが、アリスこそ至高の美少女だろうが!! 特別扱いして当然だ!!」

「ふ、ふざけるなぁ!! このロリコン!!」

「私たちももっと女性扱いを要求します!!」

「あー、じゃあ三年後な」

 

 双子は男の雑な対応にカチンと来たようだ。

 

「先生、私達は私達でいちゃいちゃしよう!!」

「見せつけてやりましょう!!」

 

 先生の両脇を双子が固める。

 先生は遠い目をしながらなすがままになった。

 そそそ、とユズも控えめに先生に近づいてくる。

 

「はははは、愉快だな彼女達は!!」

「うぐぐ、いつか見返してやります……」

 

 そんなゲーム開発部と大人たちを、ウタハは笑って、コトリは歯噛みし見ていたのだった。

 

 

 

 §§§

 

 

 一行は保管庫にある武器を物色する。

 保管庫には所せましと無秩序に多種多様の物品が保管されていた。

 

「これは?」

 

 男は置いてあった拳銃を手に取った。

 

「それを手にするとはお目が高い。

 それはBluetooth機能付き拳銃だよ」

 

 ヒビキが作成したのか、事細かくその機能について説明してきた。

 コンビニ決済もできるだの、ファイルの送信も可能だの、凄まじいカタログスペックである。

 

「それ、銃弾をぶっ放した時の衝撃でイカレたりしないのか? 精密機械だろ?」

「あ、試作品だし、耐久試験はまだやってない」

「おいおい、大丈夫か。銃ってのはな、こう言うので良いのさ」

 

 男は己の愛銃を取り出した。

 

「漫画ブラックラグーンのヒロイン……ヒロイン? まあヒロインとしておこう。彼女みたいに銃は弾が出れば良い、だなんてのは言語道断だが、銃に求められるのは機能美。それに尽きる」

「まあ、武器として最低限の安全性を担保した上で、そう主張するのも理解できる。

 でも私達はミレニアム学園のエンジニア部、最先端を行く集団だから」

「ならその最先端技術で、ゴルゴ13に出てくる超一流のガンスミスみたいな、ゴルゴのクソ細かい要求を満たせるような銃も作れるのか?」

「当然」

 

 ヒビキは自信満々に頷いた。

 

「なら作って欲しいものがある」

 

 男は事細かくヒビキに己の要求を伝えた。

 

「出来るか?」

「余裕」

「今後ともミレニアム学園とは良い取引が出来そうだ」

 

 明日には用意できると、ヒビキは豪語した。

 

「ゲーム開発部の連中に会わなかったら、俺はお前たちに依頼しただろうな」

 

 ユウカの言う通り、その方が確実だったのかもしれない。

 だが、それだと男はただ客人のままで終わっただろう。

 実益では得られない価値を、男は既に手に入れていた。

 

 

「ん?」

 

 すると、アリスがなにやら一点を見つめていた。

 

「これは?」

「ふっふっふ、お客さん、お目が高いですね」

「コトリちゃん、これはなに? 大砲みたいに見えるけど」

 

 アリスが注目する物体を解説すべく近づくコトリ、同じく気になったミドリが尋ねた。

 

「良い質問ですね、ミドリ。これはエンジニア部の下半期の予算、その七割近くをかけて作られた、エンジニア部の野心作!! 

 ────宇宙戦艦搭載用レールガンです!!」

「レールガン!! では大型二足歩行ロボットに搭載して、どこからでも核弾頭を発射できるのですか!?」

「あ、いえ、宇宙戦艦搭載用ですので……」

「アリスが言っているのはこう言うのだ」

 

 男が携帯ゲーム機を起動して、元ネタを見せる。

 

「おお、こういう大型の二足歩行兵器もロマンがあっていいな!! 

 なになに、他にもレーザーやガトリング、ミサイルも搭載しているのか!! 

 わざわざ弱点があるのも可愛らしいじゃないか」

「“作れるの!?”」

「作ってみたいな!! デブリ迎撃用の搭載兵器としてなら活用できるな!!」

「“ぜひ作ってみて!!”」

 

 先生とウタハも大盛り上がりである。

 

「これがあれば、シャドーモセス島の猛吹雪の中でも狙撃戦ができますね、オオカミさん!!」

「ああ、牛の泣き声みたいなモーター音の二足歩行戦車も一捻りだな!!」

「アリス、これ欲しいです!!」

 

「そうか、欲しいのですか。この『光の剣:スーパーノヴァ』を!!」

 

 コトリがそのレールガンの名称を口にすると、アリスがもっと目を輝かせた。

 

「聞きましたかオオカミさん!! 

 これを装備すれば、アリスも手術無しで星辰奏者(エスペラント)になれるみたいです!! “勝つ”のはアリスです!!」

「総統閣下ごっこが出来るな!!」

「他にもバルザイの偃月刀とかありませんか?」

 

 アリスは他にも面白い武器が無いか探し始めた。

 

「“バルザイの偃月刀って……確実に悪影響を受けてる”」

「安心しろ、ちゃんと全年齢版をやらせた。デモベ主人公の股間のフランスパンと比べられたくないしな」

「“そう言う問題じゃない……”」

「くくく、その様子だとまだ気づいていないようだな、先生」

「“なに黒服みたいな笑い方を……”」

 

「アリスにやらせたエロゲー……デモンベイン、シルヴァリオヴェンデッタ、ランスクエスト、沙耶の唄、これらエロゲーに共通するのは何だ?」

 

 言われて、先生はハッとなった。

 

「“ッ、まさか!! メインヒロインがロリ属性!?”」

「やっと気づいたか。アリスは俺が真性のロリコンだろうと、もはや嫌悪感を抱くことはないのだ!!」

「“……どうやら君とは本格的に話し合いが必要そうだね”」

 

 先生は上着を脱いで、ワイシャツとズボンだけになった。

 

「良いぜ、来いよホワイトカラー、相撲でもプロレスでも相手になってやる」

 

 男も軍服を脱いで、上半身裸になった。

 

 そして始まる、お互いに譲れないモノを掛けた戦い。

 

 

「なにやってるの、あの人たち」

「さあ……」

「あ、あわわ、喧嘩はやめてください!!」

 

 なお、ゲーム開発部の面々は話に付いて行けなかった模様。

 

 男たちが信念を掛けた戦いをしてる横で、アリスとエンジニア部は本格的に持ち出しの話をしていた。

 

「光の剣:スーパーノヴァ」を気に入ったアリスだったが、エンジニア部の面々は難色を示した。

 キヴォトスではガトリング砲をぶっ放す生徒が珍しくない為忘れられがちだが、あんなのはヘリとかに搭載する兵器である。

 それと比べてもこのレールガンは個人携行するにはあまりにも重すぎる。

 

「持って行けるのならば、本当にあげたいところなのだけれど……」

「魔剣カオスのように、所有するには資格が必要なんですね!!」

「ああうん、まあ有り体に言えばそうだけど」

 

 そんな人間居るのかな、と思うウタハだった。

 

「大丈夫です、アリスのレベル限界は無限です!!」

 

 そう言って、アリスはレールガンに触れる。

 

「これで、無敵結界も怖くありません!!」

 

 ぐ、っとアリスは140キロの鉄塊を持ち上げた。

 それはまさしく、アーサー王が岩に刺さったカリバーンを抜くかのような、そんな光景だった。

 

「……も、持ち上がりました!!」

 

 自分の体積よりも大きな物体を、アリスは手にしていた。

 

「うそ、クレーンでもないと持ち上がらないのに……」

 

 ヒビキはその光景に絶句していた。

 

「えっと、これがBボタンでしょうか?」

 

 無邪気にアリスはレールガンの引き金を引いてしまった。

 

「待っ──」

 

 ヒビキが止める間もなく。

 

 轟音!! 

 

 レールガンから発射された飛翔体が閃光のような軌跡を描いて、エンジニア部の部室の天井が消失した。

 

 その爆音に、友情を深め合っていた男たちの手も止まる。

 

「すごいです、白色破壊光線みたいです!! 

 これは魔剣カオスではなく、クリスタルロッドだったのですね!! アリスはまそーさんになりました!! 魔法技能レベル2を獲得です!!」

 

 皆が呆然としている中で、アリスだけが無邪気に喜んでいた。

 

「まさか、本当に使えるなんて……で、ですが、それだけは、その!! 

 予算とか諸々の問題で、出来れば他のでお願いしたく!!」

「いや……構わないさ。持っていってくれ」

 

 本当に使えると思わずにコトリが動揺していると、それを遮りウタハは言った。

 

「ウタハ先輩、本当に良いんですか?」

 

 相当高価な代物をあげると言われて、ミドリも不安そうだった。

 

「ああ。どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね」

 

 そしてウタハはレールガンに取っ手と肩ひもを付けるようにヒビキに言った。

 

「……前向きに考えると、実戦データを取れるようになったのはありがたいかも」

 

 戦艦搭載用の武器なんて、そうそう使う機会に恵まれるわけもない。

 そもそも、試射するのにも毎回重機を使って持ち上げる必要がある。彼女たちはそこまで暇ではない。

 

 本当に貰えるということになり、モモイもアリスも大喜びだったのだが。

 

「ただし……条件がある。ヒビキ、以前に処分要請を受けたドローンとロボットを全機、出してくれるかい?」

「……うん」

 

「その武器を本当に持っていきたいのなら」

「私達を倒してからにしてください!!」

 

 そして早速、実戦データの採取が始まったようだ。

 

「先生、一時休戦のようだ」

「“……そのようだね”」

 

 先生にヘッドロックしていた男は技を解いて彼を放した。

 そうしている合間にも、次々と戦闘ロボやドローンが展開されていく。

 

「……おじさんも、私達に道具を作って欲しいのなら、それを使いこなせるというところを見せて欲しい」

「だそうだ、お前ら」

 

 ヒビキの言葉を受け、男が部室の入り口を振り返る。

 直後、Wolf小隊がドアを蹴破り、突入してきた。

 

「さて、状況開始と行こうかね」

 

 戦闘が始まり、男がニヤリと笑った。

 

 

 

 

 結果として、「光の剣:スーパーノヴァ」はアリスのモノになった。

 

「先生、気づいてるか?」

「“まあ、ね”」

 

 帰りの道中、子供たちが喜んでいるのを後ろから見ながら、大人たちは小さく会話を交わす。

 

「普通、あんな子供みたいなロボットにあんなデカ物を発射する姿勢制御装置や、武器管制システム、射撃統制システムが積んであると思うか?」

「“……いや”」

「恐らく、ウタハって嬢ちゃんも気づいてたはずだ。

 くくく、いったいどっちのデータを取りたかったんだろうな、彼女は」

「“……”」

「この世で唯一、機械では代替できない部品がある。

 それは、“人間”だ。人間の汎用性は、機械では再現できない。彼女が人間に似せられているとしたら、その用途は明確だ」

「“汎用的な戦闘兵器”」

「ああ、エヴァンゲリオンと同じだ」

 

 男は無邪気に喜んでいる少女たち、いやアリスを見やる。

 

「少なくとも、うちのガラテアに命を与えた存在は、アフロディーテのような美の女神ではないということだ」

 

 だと言うのに、男は笑っていた。

 ゲーム開発部はとんでもないモノを掘り当てたかもしれないと言うのに。

 

「まったく、モノにし甲斐があるぜ」

 

 そこまで分かっていて萎えない男に、先生は心の底から呆れたような顔を向けた。

 

「“彼女はもう、私の生徒だ。彼女を守る為に、そしてその周囲を守るために、私も全力を尽くそう”」

「良いだろう、俺も卒業までは待ってやる」

 

 保証はしないがな、と内心付け加える男だった。

 そうして話し合いが終わった大人二人は、楽しそうにしている四人の青春がずっと続くことを願った。

 

 

 

 

 §§§

 

 

「アリスの情緒を鍛える一環として、TRPGをやろう。

 モモイ、この間の奴で良いな?」

「え、あー、うん……」

 

 数日ほどテレビゲーム三昧だったので、紙のゲームは御無沙汰だった。

 

「紙とペンで遊ぶゲームですか? アリスもやってみたいです!!」

「よしユズ、アリスのキャラを作るのを手伝ってやれ」

「う、うん」

 

 ユズは初心者のアリスに、ルールブックを開いて説明し始めた。

 

「お姉ちゃん、本気であのプロットでやるの?」

「……キャンペーンの結果が全滅で終わることなんて、珍しい事じゃないし」

「あのプロットは吟遊詩人じゃない!!」

「でももう、動画には衝撃的な結末が待つって予告しちゃったし……」

 

 双子がこそこそと言い合っている。

 

「なに日和ってるんだ。アリスはあのマルチバッドエンドも乗り越えた。

 そもそもテイルズ・サガ・クロニクルのクソシナリオを看過した時点でお前らにシナリオをどうこう言う権利など有るか」

「悪かったね、クソシナリオで!!」

 

 モモイは男をポカポカ叩き始めた。

 

「えーと、今日のゲームマスターは俺の番だったな。

 あ、そうだ、先生もやるか?」

「“うーん、悪いけど今日はまだ仕事が残ってて”」

「そうか、残念だ」

 

 本当に先生は残念そうに、帰って行った。

 

「オオカミさん、アリスは光の剣を使いたいです」

「あー、光の剣っていうと、それ?」

「はい、これです!!」

 

 アリスは部屋の隅に置かれているレールガンを指差した。

 

「えーと、ルールブックにも一応レールガンのデータはあるな。

 個人携行用レールガンのレギュレーションは70か。千年魔導王国のある世界のレギュレーションは65だし、どうすっかな」

「ダメ、ですか?」

「うーん、可愛いからゲームマスター権限で特別に許す!!」

「わーい!!」

 

 男は他の三人から白い目で見られつつも、許可を出した。

 

「でもゲームバランス的に、大抵の敵を瞬殺できるな。

 ……よし、セッションごとに毎回一度だけ使用を許可する。

 だがアリスのキャラの初期レベルじゃ、物理的に持つことできないな」

「え、そうなんですか……」

「ああ、最低でも十回はセッションしないと持つことも出来ない」

「そんな、何とかなりませんか?」

「うーん……」

 

 男が頭を悩ませていると。

 

「じゃあ、ロボの携行武器にすれば良いんじゃない?」

「ああ、その手が有ったか」

 

 モモイの提案に、男はポンと叩いた。

 

「一セッションに一回だけ使えるロマン武器、いいなそれ。

 ロボ専用にすれば、ゲームバランスも調整しやすいし、何よりアリスのキャラビルドでお荷物になり難い。それでいいか、アリス?」

「はい、仲間と協力して撃つ最強魔法ってことですね!! ミナデインです!!」

「ああ、まさしく勇者の武器って感じだな」

 

 そんな感じで、アリスのキャラの方向性が決まった。

 

「では今回予告をしよう。

 勇者に憧れるアリスはアンドロイド故に魂を持っていなかった。

 勇者とは剣技と魔法に優れた者のこと。

 魂が無ければ魔法が使えない。神は憐れんで、アリスに魂を手に入れる旅路を示したのだ。一振りの光の剣と共に」

 

 と言った感じで、男は今回のセッションの概要を示した。

 

「まあ、そんな感じで合流シナリオを即興で書いたぞ」

「はい、アリスはキヴォトスからやってきた勇者です!!」

「あー、そう言う感じのロールプレイで行く?

 じゃあアリスがレールガンを持てない理由付けが必要だな。

 ……うーむ、そうだ!! アリスは直前で大怪我をして、本来の性能を発揮できないってのはどうだ?

 セッション終了後のレベルアップ処理で、本来の性能に戻ってくみたいな?」

「はい、それで構いません!! レベルアップはRPGの醍醐味ですから!!」

「んじゃ、お前ら始めようか」

 

 そうして、セッションが始まった。

 

 

 

【いつものように王城に召集された騎士ユズリハと従者たち。

 あなた達を呼び出したのは色々と因縁のある貴族、財務郷のレッグフット郷が現われました】

 

 アリス:「れっぐふっと卿……? れっぐ、ふっと、あし、ふと、あッ、アリスは分かりました、ユウカのことですね!!」

 モモイ:「ち、違う、違うからね!? ここはカット、動画でカットしてよね!!』

 ミドリ:「多分、もう遅いと思うよ、お姉ちゃん……」

 ユズ:「気づいていないと、いいね……」

【描写を続けるぞー】

 

「フラワーヒル卿、南の遺跡は御存じか?」

 

 知識判定省略。成功、ユズリハ。

 

「はい、王都の直轄地だと聞いております」

「ああ。まあ直轄地とは言え、管理などされてはいないが。

 その遺跡付近に魔獣が出たと言うのだ」

「えッ、魔獣がですか!?

 あの、魔物の十倍は強いという……」

「近隣の村々や街に被害が出てからでは遅い。

 最近活躍著しいお前達ならば、魔獣の討伐も容易いことだろう。

 出撃の度にマジックポットを破壊して帰還する、卿らの活躍は実に誉れ高い騎士の在り方である」

 

【対人判定必要か?】

 

 ユズ:「必要無いです。嫌味だって事くらいわかりますんで」

 モモイ:「あれは五十体ぐらいヘルメットゴブリンどもを戦ったんだから仕方ないじゃない……」

 

「何か言ったか、そこな獣人よ」

 

 モモイ:「ねえ、今のはプレイヤー発言でしょ!!」

 

「まあいい、とにかく、魔獣の討伐の件は任せたぞ。

 貴公も聞いているだろうが、預言の件で我々も忙しいのだ」

「はい、仰せのままに」

 

【そう言うわけで、お前たちは遺跡に現れたと言う魔獣を倒すことになった。何かしたいことはあるか?】

 

 アリス:「ところで、思ったのですが、レッグフット郷って男性ですか?」

 モモイ:「そうだよ」

 

【AIイラストだけど、挿絵あるぞ。ほれ】

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 アリス:「ぷぷッ。たしかにユウカが男の人だったらこんな感じかもしれません」

 ミドリ:「や、やめてよ、このイラスト見るたびに、笑いが!!」

 

 しばらく笑いが止まらない一同。

 

 ユズ:「とりあえず、情報収集します。図書館で魔獣の出現記録とか、強さとか」

 

【ふむ、流石ユズは堅実なプレイングをする。

 知識判定をどうぞ】

 

 判定省略。全員成功。

 

【ではお前たちは全員知っている。王都セミナルの近衛兵の団長にして、総ての騎士達を束ねる騎士総長、ネルライト・ミッカーマは魔獣殺しとして有名であり、総ての騎士の尊敬の対象である、と】

 

 モモイ:「あー、ネル先輩か……」

 

【ユズは十面ダイスを振れ】

 

 ユズ:「はい」

 

 判定省略。出目は3。

 

【ふむふむ、関係性表によると、同期の知人に当たるな】

 

 ユズ:「ええッ、じゃあ騎士学校の友人ってことになるのかな」

 ミドリ:「知り合いなら情報が簡単に得られて楽じゃん」

 ユズ:「でもこれ、ネル先輩に比べられて落ちこぼれみたいな立ち位置になるんじゃ……」

 モモイ:「むしろ美味しい立ち位置じゃん!! ロールプレイに役立ちそうだし」

 ユズ:「あ、それもそうか……」

 アリス:「アリスの、アリスの出番はまだですか!!」

 

【もうちょっとだから待ちなって。

 えーと、そんな感じでユズリハ達はネルライトの下へ向かいました。

 おい、アカネ、居るだろ、出て来いよ】

 

 アカネ:「はい、お呼びですかお客様」

 

【マジで出て来たよこいつ……。

 俺ら、お前らの部長のキャラ知らないから、台詞のアテレコ頼むわ】

 

 アカネ:「それくらいでしたら、構いませんよ」

 

【えー、ネルライトはユズリハの訪問を、快く受け入れ、歓迎してくれました。とりあえず、挿絵がこれな】

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 アカネ:「うーん、粗野さが少々足りませんが、これはこれでウケがよさそうですね」

 

【無料のAIイラストにそこまで期待するなよ、こういうのはイメージが大事なんだ。俺だって実物は見たこと無いんだしな。ほれ、台詞だ】

 

「えー、あ、お前ユズリハはか!!

 久しぶりだな、元気してたか? 最近は活躍してるって聞いてるぞ、俺はお前ならやればできるって思ってたんだよ!!」

 

 アカネ:「そんな感じで、肩をバシバシ叩く感じのパワハラをします」

 ユズ:「陽キャのコンプレックスを抱いていた先輩相手に委縮します」

 アリス:「んん? このイメージで陽キャなのですか?」

 アカネ:「ギャップ萌えが期待できます。こんなダウナーっぽい美少年が笑顔で親し気に話しかけてくるなんてそそりませんか?」

 ミドリ:「あ、やっぱり男なんだ」

 

【だってダイスで性別が男になったし……。

 とにかく、早く聞きたいことを聞けって、時間は有限だぞ】

 

「えーと、ネルラ君。レッグフット郷から魔獣退治を請け負ったんだけど、なにかコツとかあるかな?」

 

 ユズ:「そんな感じの質問をします」

 

【ふむ、じゃあこんな感じで頼む】

 

「魔獣だって? ついにお前も実力を認められたのか!!

 魔獣なんて凡百の騎士には相手にならない。同期として俺は誇らしいぞ。

 ああそれで、魔獣対策だったか? 

 魔獣ってのは魔物の突然変異だから、元になった魔物の対処法が通用するんだ」

 

【そんな感じでユズリハはレクチャーを受ける。戦闘時の判定にボーナスを与えよう」

 

「いざとなったら気合いだ、引いた方が負ける。最後まで命を張った方が勝つんだ!! ぶちかませ!!」

 

【……メイド部ってそんな精神論でまかり通るのか?】

 

 アカネ:「正直、部長は例外ですね」

 

【ああ、そうなんだ……】

 

 その時、アカネのスマホに電話が掛かって来た。

 

 アカネ:「おっと失礼。ああ、部長からです。申し訳ございませんが、ここで失礼します」

 

【おう、サンキュー。(やっぱり盗聴してんのかよ……)】

 

 アカネが退出し、シナリオは進む。

 

 モモイ:「偵察部隊とか居ないの? 報告が来たってことは、何か痕跡があるってことでしょ?」

 ミドリ:「確かに。どんなタイプの魔物が元か、判断できるだけでも対策はできるし」

 ユズ:「とりあえず、どうですか、ゲームマスター?」

 

【ふむ、確かに報告が来ている以上、完全に情報が非公開はありえんな。

 では偵察部隊と接触してみようか】

 

 その後、ユズリハ達は報告に来た伝令と接触し、魔獣の痕跡を聞くことが出来た。

 

「四足歩行に、蹄の跡、か。馬形の魔物かな?」

「キマイラかもしれませんよ、ユズリハ様!!」

「そんなの出てきたら、どうしようもないよ……」

 

 なんて、三人が怖気づくロールプレイをしていると。

 

 アリス:「アリス分かりました!! これは合流クエスト、即ち、光の剣の試し撃つをするイベントだと思います!!」

 ユズ:「ああー、そういうメタ読みもアリか……」

 モモイ:「でもオオカミさんなら、魔獣を倒したな、よかったな、お代わりをどうぞってやりそう……」

 

【にやにや】

 

 ミドリ:「この悪い顔だよ……まあ、このレギュレーションでレールガンを耐えられる敵は出てこれないし。その判断は妥当だよね」

 ユズ:「とりあえず、獣系の魔物に有効なカノン砲とか準備しておこう」

 

 こうして、準備を終えた一行は、遺跡へと向かった。

 

 

【移動中のランダムイベントの時間だぜ】

 

 判定省略、魔物と遭遇する。

 

【話の途中だが、ワイバーンだ!!】

 

 モモイ:「誰も話なんてしてないよ!!」

 ユズ:「王都から直轄地までの道中なんだけど……」

 

「ユズリハ様、レーダーに敵影を確認。ワイバーンです!!」

「なんだ、この間みたいにスケバンオークの集団かと思った」

「まあ、一体だけなら……」

 

 カノン砲でワイバーンを蹴散らし、ドロップした戦利品を獲得しつつ一行は無事遺跡に到着した。

 

 

【さて、遺跡に到着したな。どうする?】

 

 モモイ:「ゲームマスターがダイスを持ってニヤニヤしてる……」

 ユズ:「これは絶対、行動ごとに遭遇判定がある奴だ……」

 ミドリ:「アリスと合流前に戦うと面倒かもよ」

 アリス:「はい、アリスも早くみんなと合流したいです!!」

 

 四人が話し合うと、結論が出た。

 

「ユズリハ様、マジックポットで待機をお願いします。

 我々従者共が魔獣の動向偵察してきます」

「う、うん、この子と一緒に行動すると大きな音が出るし、不意を突かれるかもしれない。

 向こうの行動範囲を見極めたり、寝床を見つければそこを襲うこともできるしね」

「ユズリハ様はここでどんと待っていてください!!」

「うん、気を付けてね、ピンキー、グリーンベル」

 

 そんなロールプレイをしながら、メタ読みに理由付けをしながら彼女達は行動に移した。

 

 ゲームマスターは、ダイスを振った。

 

 何も起こらない。

 

 ゲームマスターはダイスを振った。

 

 何も起こらない。

 

 ゲームマスターはダイスを振った──。

 

 子供たちが息を呑む。

 

 

【おお、お前ら運が良いな。

 ピンキーとグリーンベルは、光の剣を枕のようにしながら遺跡のど真ん中で眠っているアリスと遭遇した】

 

 四人はほっと息を吐いた。

 なお、セッション後にマスタースクリーンを確認したモモイが、今のクローズドダイスの判定は全て空振り、つまり演出だと知ってキレるのだが、それは別のお話。

 

「ベル、こんなところに誰か居るよ!!」

「本当だ、姉さん。とりあえず起こそうよ!!」

 

 モモイ:「アリスのほっぺたを叩きまーす!!」

 アリス:「えー、そんな、酷いです!!」

 

【えー、ピンキーのビンタで、アリスは目を覚ますな】

 

「起きて、起きてよ!!」

「こんなところに寝てると危ないよ」

 

 

 以下、ダイジェスト。

 

 

 アリスと合流した二人は、ユズリハの下へと向かう。

 

 

「ほら、あれがマジックポット“バレルフッド”だよ!!」

 

【ほれ、これが挿絵だ】

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「……ダサいです」

 

【今のはキャラ発言と捉えさせてもらうぞ】

 

 アリス:「だって、このロボ、全然カッコよくありません!!」

 

【味があって良いだろ!! カッコいい二足歩行ロボがAIイラストじゃ出来なかったんだよ!! 装甲悪鬼政宗でも、モブのロボはわざとダサくしてるらしいし、汎用機っぽくていいだろ!!】

 

 

 魔獣に遭遇し、戦闘に入った一行。

 

 

「ワイバーンも撃ち落とせる魔導カノン砲が、豆鉄砲じゃん!!」

「魔法式振動ブレードもまるで歯が立ちません!!」

「黙って撃って!!」

 

 巨大な魔獣相手に、魔法ロボは激戦を繰り広げる。

 

【ほーら、頑張れ♡ 頑張れ♡】

 

 モモイ:「やっぱりこのゲームマスター鬼畜だよ!! この魔獣、レギュレーション75の化け物じゃん!! レギュレーション違反だよ!!」

 ミドリ:「クトゥルフ神話TRPGで初心者にショゴスぶつける人だもんね……」

 ユズ:「多少はダメージ与えてないと、レールガン当てても最大値出さないと倒せない……」

 

【レギュレーション違反はお互い様だろう? ほら、アリスの寝ていた場所まで移動しないと、レールガンを装備できないぞ】

 

 ユズ:「えーと、私達のターンだね。振動ブレードで攻撃します】

 

 判定省略。クリティカル!!

 

【お、土壇場で引きがいいな!!

 ではユズリハはブレードを水平に構え、大口を開けて突進してきたイノシシの魔獣の口にブレードをぶち込んだ!!】

 

 アリス:「おお、カッコいいです!! これは決まりです!!」

 モモイ:「演出上はね。でもこれゲームだからHPがゼロにならないと倒せないんだよ……」

 ユズ:「でも、これでレールガンでのダメージで確殺圏内に入った。移動してレールガンを装備するよ!!」

 

【クリティカルのサービスだ。魔獣は突き刺さった剣を抜くために一ターン動けないってことにしよう。

 あ、勿論、レールガンの命中判定に失敗したら、仲良く全滅してもらうぞ♪】

 

 子供たちの罵声を浴びながら、ゲームマスターは笑っている。

 

【ダイスの女神は絶対だ。忖度はしない。

 それじゃあ、運命のダイスロールだ!!】

 

 

 

 

 

 ……

 …………

 …………

 

 

【おめでとう、諸君は強大な魔獣を倒した。

 セッションクリアだ。お疲れ様でした】

 

 おつかれさまでしたー、と四人は仲良く挨拶した。

 

「レベルアップ処理は次にしよう。ふう、楽しかったか、アリス?」

 

 初セッションで、アナログなゲームを体験したアリスに、男は尋ねた。

 

「はい、テレビゲームにはない面白さがありました!!」

「だろう? さて、もうこんな時間だし、明日また遊ぼう」

 

 

「いや、遊ばないでゲーム作りなさいよ!!」

 

 その時、夜遅くまで部室の明かりがついていたのを心配してユウカが突撃してきた。

 

「あ、レッグフット郷です!!」

「誰よそれ!!」

 

 アリスが無邪気に笑ってそう言った。

 

 事実を知られたモモイ達に、彼女の雷が落ちるのは数分後の事だった。

 

 

 

 

 





一時期精神をやられて会社を出勤できなかったりとかしたので、もしや自分って躁鬱の気とかあるんでしょうか。
でもその会社の総務のクソ野郎、徐々に出勤したいって言ったら、会社はあんたの治療の為にあるんじゃないとか言われました。モラハラで訴えてやればよかったです。辞めて正解でした!!
世の中クソですね!!ははは!!

あと、いつも誤字脱字を報告してくださり感謝しております。
作者の国語力は二十年近く執筆活動していてもまるで上達してないのです……。
信じられないかもしれませんが、いつも三回ぐらい読み返してるんですよ?
もう終わってますねww ははは!!

ではまた次回!!
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