ですが、これまでの追加エピソードとは意味合いが異なります。
まあ読めばわかります!! では、本編どうぞ。
あの後、ユウカの襲来もあったが、アリスは無事ゲーム開発部の部員として認められた。
ゲーム開発部も晴れて正式な部活として生徒会の承認を受けた。
だが、同時に規則の変更で今月いっぱいまでに成果を出さなければ廃部は免れないとユウカは告知した。
それを避けるには、十日後に行われるミレニアムプライスでの受賞以外にはあり得ない、と言う状況に陥った。
「ま、頑張れ」
まるっきり他人事のように男は言った。
「何で他人事なのよ!! このロリコン!!」
「何を言う、俺はちゃんとユウカを説得したじゃないか」
そんな態度にモモイはぷんぷん怒っているが、男は先ほどの出来事を上げ連ねる。
「待てユウカ、その部長会議とやらの参加義務があったとして、当時部活動として認められていなかったゲーム開発部にそれがあったとは思えない。もっと慈悲を与えるべきだ」
「それは道理が通らないわ。私は彼女達に期待して個人的なポケットマネーを部費として支給し、仮にもテイルズ・サガ・クロニクルという成果を出した。
これは部活動としての活動の証明よ、部長会議に参加しなかったのは間違いなくそちらの非よ」
「……ユウカ、お前、そのテイルズ・サガ・クロニクルをプレイしたのか?」
「? いえ、ヒドイ評判だと言うのは」
「じゃあ、プレイしてみろ」
十数分後。
「なに、これ、なんなのよ!?」
「これを見て、分からないのか!?
こいつらはお前の日頃からのせっつきの所為で病んでいるんだ!!
そうじゃないとこんな精神異常者が作ったようなゲームが出来上がると思うか!?」
「うッ、でも、これは私個人ではどうにもならないことなのよ。
規則は規則、ミレニアムの学生として、校則には従って貰うしかないのよ!!」
「最終的にユウカは涙目になって逃げだし、お前たちはそれを喜んでみてたじゃないか」
「でも私達のことを精神異常者扱いしてたよね!!」
「大事な会議に代理として参加する筈だったどこかの誰かさんが、ゲームにかまけてたのは精神の異常じゃないのか?」
「うぐ」
それを咎められては、モモイも言い返せなかった。
「やっぱり、G-Bibleしかないのかな」
ミドリはこの逆境を打開する為の存在を口にする。
「この期に及んでまだ他人頼りか。情けない」
「でも、今から一からゲームの開発なんて」
「この際だから、レトロ風ゲームというお前たちのこだわりは捨てろ。
まずは受賞の為だけのゲームを作り、開発力を示せばいい」
男はユズに諭すようにそう言った。
「某ダウンロード専門サイトでは、傷だらけの奴隷の少女を愛でるだけ、というシンプルなエロゲーが伝説的な売り上げを記録した。
最近では延々と地下通路を間違い探ししながら出口を目指すと言う作品がゲーム配信者界隈で人気を博した。
ゲームってのは作りこみや製作期間、予算や人数だけじゃない。
ユーザーのニーズやゲーム性、それに応えることもまたゲーム開発と言えるだろう」
男の正論に、子供たちは何も言い返せなかった。
「俺が最初にお前たちと会った日のことを覚えているな?
その時俺は言ったはずだ、お前たちはゲームが好きな“だけ”だと。
お前たちの作品がクソゲーなのは、自分たちが面白い、としか思ってないゲームだからだ。
プレイするユーザーへの配慮はしたか? どんなゲームを求められているのか調べなかったのか?
そもそもあれは誰をターゲットにしたゲームなんだ?
俺の言ったこと、何一つお前たちは答えられないだろ?」
本当の企業のようなゲーム開発を彼女達に求めるのは酷であろう。
だが、それを差し引いてもテイルズ・サガ・クロニクルの出来は酷過ぎた。
技術力が追いついていないから想像通りのゲームが作れなかったとか、そういうレベルですらなかった。
「断言するよ。お前たちの求めるGバイブとやらを手に入れても、お前たちが作るのはあのクソゲーと同じような出来の代物だ」
「そこまで、そこまで言わなくても良いじゃん!!」
「モモイ、TRPGは楽しかったか?」
「なんで今その話になるの!!」
「お前たちと何の意味も無く、あれで遊んでいたと思うか?」
男は泣きそうになっているモモイを見て、目を細める。
「TRPGのシナリオを作る際、ひとつの鉄則がある。
それは、どんな馬鹿にでも理解できる内容で話を作る、と言うことだ。
プレイヤーは自分の想像の斜め上を行く行動をするから、相手の知能水準を想定より低く見積もれと言うことだな。
お前はそれを、学んだか? 無邪気に遊んでいただけか?」
「ッ、私達がバカだって言いたいの!!」
「違う、バカだと思ってシナリオを作れ、と言っているんだ」
「“……”」
先生は成り行きを見守りながら、内心感心していた。
遊んでいるように見せて、男はその実、彼女達にゲーム作りに必要な能力を養わせようとしていたのだと。
「シナリオ制作者が楽しむだけのシナリオを作るゲームマスターを揶揄して、吟遊詩人と呼ぶこともある。
だが俺はお前の奇怪なシナリオを評価しているんだぜ?
今回はレトロ風ゲームというこだわりを捨てて、シンプルで単純で大衆受けをするゲームを作り受賞を目指せ」
男は真剣に彼女達を思って助言していた。
彼女達の望む形で、この部活動を存続させる為の方法を教えていた。
男の言葉を受け、3人は話し合いを始めた。
そして、結論は出た。
「オオカミさん、私達は、私達のゲームを作る。
私達が面白いと思った、誰もが面白いと納得するゲームを作りたい。その為に、G-Bibleを手にする」
部長のユズが、確固たる意志でそう告げた。
「……そうか。ならこれ以上、何も言うまい」
男は優しく笑って頷いた。
「わぁ、魔王を倒す為に伝説の剣を求める旅路に向かう勇者パーティみたいです!!
アリスも、アリスも皆さんと一緒に、ゲームを作りたいです!!」
「うん、アリスももうゲーム開発部の一員だもんね」
ぴょんぴょんと自己主張するアリスを認め、ミドリは頷いた。
「じゃあ、先生、オオカミさん、準備するから」
「“わかった”」
「おっと、悪い。丁度用事が入ったらしい。俺は行けん」
モモイの言葉を受ける直前から、男はスマホを操作していた。
「こいつらの面倒は先生に任せた。
一度言った場所なら大丈夫だろ?」
「“それは勿論だけど……”」
「それじゃ、女の
別に上着を羽織ったり武器の整備をするくらいなのに、男は先生と一緒に部室の外に出た。
「マジで頼むわ。急に用事が入った」
「“一つだけ聞かせて欲しい”」
「ん? なんだ?」
スマホでぽちぽちとメールか何かの返信をしているらしい男に、先生は問いかけた。
「“あそこまで彼女達に肩入れする理由を教えて欲しい”」
「ああ? ああ。別に大したことじゃない。
久々に、ゲームで遊ぶなんて、させて貰ったからな」
先生は一瞬、その言葉を額面通りに受け取れなかった。
なにか意味深な言い回しなのかと、思ったからだ。
「ああいや、特に深い意味はないぜ?
お互い、ガキの頃みたいに無邪気にゲームで遊ぶ時間なんて無いだろ?
俺も最近、エロ同人ゲーを買ってもネットで適当にセーブデータを拾うような大人になっちまった」
「“それは、寂しいね……”」
「だろ?」
その気持ちは、先生にも理解できた。
「何だろうな、ゲームを遊んでるあいつらを見てると、ダチの事を思い出す。
……ああ、羨ましいのかもな」
先生は何も言えなかった。
ゲームは遊ぶ為にやるものだ。
だが、自分の愛するソーシャルゲームなどは、結局惰性やモチベーションの維持を目的に続けてしまう。
本当に面白いゲームを体験する機会は、どんどんと減って行っているのだ。
「あとは、その電マとやらが、超高性能なRPGツクールみたいな便利ツールだと良いんだがな」
「“もはやガンダムですらない!?”」
先生のツッコミを受けながら、男はスマホのメールを送信した。
ゲーム開発部の面々と先生が廃墟探索に向かったすぐ後、男は食堂に併設されているカフェで好みのロリっ子を探すついでに、メールの返信を待った。
「遅いな……」
モモトークに、モモイがそろそろ帰るね、とメッセージが来るくらい待った。
カフェから人気が掃け、夕方頃に男のスマホに、メールが届いた。
「……おい、誰がそこまでしろと言った」
男は事前に、先方に直接会うか胸部から上の顔写真を送れと伝えていた。
返って来たのは、手で目元を隠して、下着をはだけさせた女子生徒の自撮り写真だった。
男はすぐに電話を掛けた。
「……あのな、初対面の相手になんてものを送ってるんだ、お前。
え? 使用しても構わないって? 意味わかってるのか、お嬢ちゃん」
男は電話の相手と、少しやり取りをすると。
「……わかった、じゃあ直接会おうか。
この後すぐで良いな、俺も予定が空いている。
わかった。わかった。じゃあすぐ会おう」
なぜか相手がグイグイと来ることに困惑しながらも、男は頷いた。
「じゃあこの後でな、ヒマリお嬢ちゃん」
男は通信を切って、先生達にちょっと出かけてくる旨のメッセージを送りながら、移動を開始した。
男はそのまま特異現象捜査部の部室まで赴いた。
「部長がこちらでお待ちです」
「お、おう……」
部室の前で待機していたエイミの格好にドン引きしつつも、男は中へと入った。
「部長、それじゃあ私はエナドリを買いに行ってくるから」
「お願いします、大事な話なので」
部室の主が、独りで男を出迎える。
エイミが部室から離れるのを、男は感じていた。
「それじゃあ、用件を聞こうか」
「その前に、こちらに来てくれませんか?」
「うん?」
男は車椅子の少女に言われるがままに近づいた。
そして、まじまじと彼女を見た。
「うーん、見た目は好みだな。どうだ、一回無料で何でも引き受けるぜ?」
「次に屈んでくれますか?」
「こうか?」
「ええ」
男がヒマリの前に膝を突く。
すると、彼女は男の両肩に手を回し、引き寄せた。
「おっと、情熱的だな。嫌いじゃないぞ」
「ええ、知ってますとも」
「……もしかして、俺達って知り合いだったか? 君みたいな女性なら忘れる筈無いんだが」
「ふふふ、そうですね。これは所謂、──運命ですよ」
男を抱き寄せるヒマリの目の端に、涙が溜まり、流れた。
その時、パソコンの置かれているデスクに放置されているヒマリのスマホに、文字が浮かぶ。
§§§
5人は無事、G-Bibleを手に入れてきた。
だが、肝心のそのデータには強固なプロテクトが掛かっていた。
ゲーム開発部が解析を依頼したミレニアムのハッカー集団、ヴェリタスにそのプロテクトの解除を依頼するが、その反応は芳しくない。
G-Bibleは正真正銘本物だが、パスワードが分からないと中身を取り出すことは出来ないと言う。
「セキュリティファイルを取り除いて丸ごとコピーするって手段なら、きっと出来るんじゃないかな」
と、ファイルを解析したマキは言った。
その為には通称「鏡」って呼ばれるツールが必要なのだと。
そしてそれは、かつてヴェリタスが所有していたが、生徒会に押収されてしまったのだという。
ヴェリタスもそのツールを取り戻したい。
ゲーム開発部も、そのツールが必要である。
ここにお互いの利害が一致した。
「まさか、ヴェリタスと組んで生徒会を襲撃するつもりじゃ!?」
その意図を察した、ミドリが叫んだ。
話の方向性は生徒会への襲撃に、固まっていた。
それが現実になるのは、不可避に思われた。
「ちょっと待て、お前ら」
その男が、居なければ。
「どうしたの、オオカミさん」
「俺の聞き間違いか? 生徒会を襲撃するだと?
冗談にしては笑えないぞ」
「冗談じゃないよ!! もうそれしか方法が無いんだよ!!」
モモイの主張に、男は溜息を吐いた。
そして、先生の方を向く。
「あんたはどう思う?」
「“まだミレニアム学園内の事だし、子供のうちは間違いをしても取り返しが付くとは思う。素直に賛成は出来ないけど”」
先生も苦々しい表情をしていた。
精一杯彼女達の所業を擁護しようと、苦しい言い訳のような何かが出ただけだった。
彼女達を何とか味方したい、しかしユウカ達もまた彼の生徒。先生は板挟みの中、自縄自縛に陥っていた。
「よし、あんたまで、それが生徒のしたいことなら尊重しよう、なんてふざけたことを言い出さないで良かった。
お前たち分かってるのか、生徒会を襲撃する──それは紛れもないテロリズムだ」
さながら反政府組織と政府に囚われている要人を救い出すために収容所に襲撃を掛ける、と言ったところか。
「この俺が、それを許すとでも思うのか?」
ここで皆は、ようやく彼が誰かを思い出した。
「ゲヘナ学園、風紀委員会の特別顧問官……」
「ご紹介どうも。そんな俺が、よその学校とは言え、風紀を乱すような真似を見過ごしてやるわけにはいかない」
ハレは男を見て、歯噛みした。
そもそもこの危険人物のことをヴェリタスは知っていた。
過激な手段を用い、グレーな方法でテロリストを私刑にする、イカレた狂人であると。
「今なら聞かなかったことにしてやる。
今すぐ部室に戻って、ゲームの開発の企画会議でもすることだな。
それが出来ないなら、セミナーにテロを仕掛けようとしたとしてお前たちを通報する」
「オオカミさん、私達を裏切るの!?」
「間違えるな、所属する学園を裏切ろうとしているのはお前たちだ!!」
モモイの悲痛な叫びに、男は容赦なく怒鳴り返した。
「アリス、なぜ俺がこんな真似をするか分かるか?」
「……魂を失うから、ですか?」
男の問いに、アリスは答えた。
「そうだとも。こいつらがテロに加担し、それで得た知識でゲームを作っても!!
その作品にこいつらの魂の輝きは無い。罪を犯し、その結果であると汚点が付く。
万が一、それでミレニアムプライスに出展しても、不正な機器によって、不正に作られた作品だと俺が告発してやろう!!」
男の言葉は一点の曇りも無く嘘偽りも無かった。
本気で、彼女達が生徒会を襲うならそのようにするだろう。
「なんで、どうしてそこまで、私達、あんなに仲良く……」
その男の姿勢に、ミドリまでも絶句していた。
「真の友情とは、相手の間違いを笑顔で肯定することではない。
俺はお前たちを愛しているからこそ、お前たちに嫌われることを厭わない」
男の瞳がミドリに問う。お前はどうなんだ、と。
「……お姉ちゃん、私も反対だよ」
「ミドリまで、何を言い出すの!?」
「それはこっちのセリフだよ!!
生徒会を敵に回して、なんのペナルティも無いと思うの!?」
実の妹に言われ、モモイは言葉に詰まる。
仮に生徒会を襲撃し、目的のツールを手にしたところで、ハイ持って行ってください、なんて連中は言わない。
「……部活動の休止や停学、ミレニアムプライスへの出展禁止などと言われたらどうしようもない」
ユズがぼやくように言った。
ゲーム開発部はミレニアム学園の部活で、逃げ場など無いのだから。
もう彼女達は、正式な部活として認められているのだから。
「今更、今更後に引けないじゃん!!
G-Bibleは目の前にあるのに!!」
「今から、全力を尽くせば、間に合うかもしれないよ」
取り乱しているモモイに、ユズが励ますように声を掛ける。
だが、それを振り切るようにモモイは武器を手に取った。
「オオカミさん、手を挙げて!!」
「お姉ちゃん!!」
「やりたくないなら、ミドリ達は協力しなくていい。
ヴェリタスのみんなと私だけでやる!!」
「そう言う問題じゃないでしょ!!」
ミドリが叫ぶ。
姉の銃口は、男に向けられていた。
「オオカミさん、しばらくここで大人しくしてて。お願い、私に撃たせないで……」
「“モモイ!!”」
「落ち着け、先生。こいつは幼いだけだ。
癇癪を起して、暴力を使う以外の方法が思い浮かばない、ガキなだけさ。
お前の言う通り、幼い故の間違いって奴だ。後で幾らでも叱ってやればいい」
取り乱す先生。
しかし、男はゆっくりと手を挙げ、笑って彼を諭した。
そんな彼を見て、先生はかつてアビドスの面々に聞いた彼の言葉を思い出した。
──銃があれば相手を黙らせられる、ふとした瞬間にそれが頭に過る。銃は、暴力は麻薬であると。
先生には分かっている。モモイが暴力で誰かを思うがままにしようとするような人間では無いと。
だが、いざとなったら銃を取り出す。まるで、一度抜いたら血を見ないと鞘に納められぬ呪われた魔剣のように。
この世界の誰もがそうなのだ。
この世界は、呪われている。
「アリス、良く見ろ。これが魂を失う瞬間だ。
銃に、自分と同じ顔をした悪魔に、魂を売り渡す瞬間だよ!!」
「黙ってよ!!」
「なら撃てばいい。お前もアリスと一緒に、こいつがゲームの登場人物を虐殺していくのを見ていただろう?
そいつらと同じように、暴力で黙らせればいい。
……ぴろりろりん、モモイのLOVE……レベルオブヴァイオレンスが1上がった!!」
男は笑いながらモモイを挑発する。
それを見て、ヴァリタスの面々と彼女達は心底理解した。
この男は、本当にモモイに撃たれる覚悟で挑発している。
狂気だった。同時に、底知れぬ、愛だった。
愛ゆえに、モモイ達が道を踏み外すのを身を挺して止めようとしている。
それが結果的に、彼女達に破滅を齎そうとも。
男は、モモイの尊厳を守ろうとしていた。
彼女達の創るゲームを守ろうとしていた。
場が硬直する。
その状況を動かす人物が、男とモモイの間に割って入った。
「アリス!!」
「マイフェアレディ……」
「……モモイ」
そう、アリスだった。
「モモイはまだ、“はい”を押していません!! 交渉は成立していません!!
今ならまだママ……オオカミさんを殺していないので、ガイコツさんに嫌味を言われたりしません!!」
「……アリス」
「モモイはまだ、何もしていません!!
私達はパーティを組んでいて、間違いを犯しても私達は責めたりはしません!!
断髪してヒロインの前で決意表明し、その後の姿勢を皆に認めて貰えば良いんです。今ならまだ間に合います!!」
「いや、髪切れるほど長くないんだけど」
「今ならアリスが弁護します!! オオカミさんが告発しても、意義あり!! とその供述に意義を唱えます!!
そうなると嫌味な検事は……ユウカになるのでしょうか?」
「いや、知らないよ」
「もしそれでもモモイを責める者がいるのなら、アリスはクラスチェンジします!!
勇者から、憎しみで──魔王に成ります!!」
後から聞けば、笑えないことをアリスは笑顔で言う。
「アリスはモモイから本当に多くのモノを貰いました!!
名前に、学籍、ゲームに、居場所……。
本当に、本当に沢山の、大事なモノ欄のアイテムを……。
だからッ、その、モモイの魂は、モモイだけのモノであるべきです!!」
まだアリスの語彙では、彼女の言いたいことの説明が難しかったのだろう。
いや、この世の一体誰ならば、魂の在り処を問えるのだろうか。
「だからモモイ、自分と同じ顔の悪魔の誘惑に、乗ってはいけません!!」
「あの、一応私……同じ顔なんだけど」
「大丈夫です、ミドリ達はビック・サイバのクローンで、他にも姉妹がいるんですよね? オオカミさんの仲間のように、本当は潜入工作員なんですよね!! コードネームは、リキッド・キャットとソリッド・キャットとかですか?」
「いったい誰が吹き込んだの、その設定!?」
「俺だ」
「あんたかー!!」
ミドリはアリスに適当なことを吹き込んだ男に食ってかかった。
「……わかった、わかったよ」
もう銃が必要な場面でもなくなった。
モモイは銃口を下ろした。
「ごめん、みんな。私が悪かった……」
「え、私は悪くないと主張し、アリスは責められるモモイを弁護するのではないのですか?
断髪式は? アリスはヒロインじゃないのですか!?」
「だから髪を切れるほど長くないって……」
モモイは力無く笑って見せた。
「はあ、参りましたね」
「この光景をみて、皆で生徒会に襲撃を掛けよう、なんて言えないよね」
コタマは肩を落とし、双子と仲の良いマキは苦笑いをした。
押収されたツールの件は部長に謝ることにしたらしい。
「“何も無くて良かった”」
「安心するにはまだ早いだろ」
男はふてぶてしく先生に笑って見せた。
「これから企画会議、そしてゲーム開発だ」
「“そうだね”」
先生は思った。
この世界は確かに呪われている。
だけど、それと同時に、それを打ち破るなにかも存在していることを。
それを、彼はこの一件で確信したのだった。
「ああ、そうだ。モモイ」
「なあに?」
ヴェリタスの部室から出る前に、ハレがモモイを呼び止めた。
「G—Bibleと一緒に、君のゲーム機から無関係だと思われるプログラムファイルがあったんだけど」
「うん? 無関係なら別にどうでも良いけど」
「まあウイルスやその他危険なプログラムっぽくなかったし。
ただ、ソースを解読して見ても、意味が分からなくてさ」
「意味が分からない?」
「うん、何かのゲームの、所謂ステータス画面みたいなのが出て来てさ。
何かの暗号かなって思って、念の為、部長に報告して、データを送信しておいたんだ。一応報告しておこうかなって」
「あ、もしかして、私のゲームのセーブデータか何かじゃ!!」
「部長も興味を持ってたし、もしかしたら復元できるかもね」
ハレも少々不可解そうな表情をしていたが、モモイは消えたセーブデータが戻ってくるかもしれないことに喜んでいた。
モモイ達が去っていく。彼女達がヴェリタスの部室を出ていく。
「でも、セーブデータのファイルっぽく無いんだよね。
それにモモイって──」
彼女は疑念を口にした。
「 “Pawn mas” なんて戦略ゲームみたいなソフトで遊ぶのかな?」
かしゃん、とどこかで分岐器が切り替わった音が聞こえた。
明日でこの小説も一周年なので、ここで発表します。
R18版の方で書くと約束した、カルバノグIFルートこっちでやりまーす!!
まだまだ先の話になると思いますけど、四章までの折り返し地点までいますし、多分来年頃までにはそこまで行けると思います。多分!!
では、また次回!!