Blue Archive / The Dark Knight: Requiem   作:藤子F藤浪

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2.騎士の昼間

ユウリ・ウェインはバットマンに呪われている。

 

ユウリと最も長い時間を過ごしているトキにとっても、それは自明の理である。

朝はニュースを確認して事件を確認。昼は社長と生徒を兼任しながらヴィランへの対策を構築。

夜はご存じの通りコウモリに化けて犯罪と戦う。

 

とてもじゃないが、マトモな人間ではない。

そして、その原因を作ったのが──

 

「…………どうしたんだ、トキ。俺と”ブルース”の写真なんか睨んで」

 

”ブルース・ウェイン”

ユウリを孤児から拾い上げた救世主であり、ユウリにバットマンとして戦う術を与えた戦犯──

というのが、トキの認識だった。写真には、バットマンのマスクを脱いだブルースと、ロビンのコスチュームを着たユウリの姿がある。この頃のニコニコとした明るい笑顔はどこへ行ったのか、今ではブルースと同じ仏頂面へと変わってしまっている。

 

”ブルース許すまじ”というスローガンを掲げているトキにとって、ユウリが自分以上に信頼している相手がいる、それも今は遠く離れた地にいるにも関わらず、ということは勝ち逃げにも等しい行いである。

 

「ユウリ様。私はとても不満です」

「………何が」

「どうして私とのツーショットは飾ってはくださらないのですか」

 

ぐいぐい迫るトキに対し、ユウリは目線を逸らし困った顔を浮かべる。質問の意図が分からないのか。どうしてトキがここまでブルースを目の敵にするのか、鈍感中の鈍感であるこの男が理解するのには後何年かかることやら。

 

「ここはバットケイブだからだ。君との写真ならリビングにあるだろう」

「ですが、ユウリ様は在宅中のほぼ全ての時間をここで過ごされています。私との写真よりこちらの写真を見る時間が多いのは納得できません」

「いや、そんな常日頃からジロジロ見てる訳じゃない。第一、俺は──」

「言い訳は結構です。こんなに可愛いトキちゃんを蔑ろにしている自覚を持ってください」

 

そんなこと言われても…ユウリは心の中で文句を垂れる。どんなヴィランよりも厄介な自慢のメイドに、ユウリは一度として勝てたことがない。こういう時は大抵自分が負けるのだ。そして、何かしらの要求を聞くことになる。となれば、その要求の内容が重要になるが…………

 

ユウリの視線に勝利を確信したトキは再びユウリに大きく迫る。あまり表情の動かない二人の顔が接近する。ここまでしてトキの意図を理解できないユウリは、不思議そうにトキに視線を向け続けている。

 

「ユウリ様」

「どうした」

「現在の時刻は22時です」

「そうだな」

「一緒に寝ましょう。同じベッドで、向かい合って」

「…………構わないが、呼ばれるかもしれない」

 

視線がコンピューターに移る。キヴォトス全域を監視するそれは、夜空に上るシグナルの出現を待っている。どんな団欒の時でも、ユウリの頭の片隅にはいつもバットマンがいる。彼は誰よりもキヴォトスの平穏を願っておきながら、自分がバットマンになることを強く望んでいる。矛盾する二つの感情が、ユウリを常に迷わせる。

 

「今日はきっと大丈夫です」

「根拠はあるのか?」

「そんな気がします」

「…………ああ、分かったよ」

 

強気なトキの態度に、ユウリはとうとう今宵の空から目を離した。

ロビンだった頃も、毎晩活動していた訳ではない。ブルースはユウリを厳しく訓練したものの、人間の情はあった。独りぼっちで放置されたり、実戦形式と称して本気で殴られたりもしたが、それでも父親であろうとしてくれた。

 

 

二人が寝そべってもスペースが余るベッドの中で、二人の身体は触れ合うほど近い。

とうとう眠ろうとしていたトキは、ユウリは未だ眠ろうとしていないことに目を向ける。

 

「どうされました、ユウリ様」

 

ユウリがトキの存在に気が付く。もう眠っているものだと思っていたのか、明らかに動揺した表情は、普段見ることのできないものだった。

 

「…俺は、本当に眠ってもいいんだろうか」

 

その問いに、トキの目は一気に醒めた。

 

「眠ろうとしたとき、誰かが俺に囁いてくる。「バットマンにならないユウリは、本当にユウリなのか」と」

「……ユウリ様は、ユウリ様です。バットマンはあくまで仮面を被った貴方に過ぎません」

 

その言葉に、ユウリは小さく息を吸い込んだ。まるで、幼い子供が悲惨な真実を知ったように。自分の願望を、理想を、現実の前に打ち砕かれたように。

 

「ブルースが言ったんだ。”人の心は分からない。だが、本性は行動に出る”って。なら、俺の本性は何だ。本当にユウリが本性なのか。バットマンのことばかり考えているのに」

「──私は、知っています」

 

二人の目が合う。普段とは違う、前髪を下ろしたユウリがトキの目には幼く映る。不安を抱え、迷い、自分に自信が持てない──そんな、普通の少年に見える。

 

「トキ、君には俺が見えているか。ユウリはいるか。君の知る俺は、ちゃんと眠れる人間か」

「はい、ちゃんとユウリ様がいます。不思議で、ちょっと変わった、普通の人間の貴方が」

 

トキのその言葉に、ユウリは漸く安心した。今、この瞬間、自分は間違いなくユウリであることの確証を持てたからだ。普通であること。ユウリが一度として知り得ない称号を、トキは容易く与えてくれる。

 

「…………ありがとう、トキ。やっぱり、俺は君がいないとダメみたいだ」

 

その言葉を最後に、ユウリはとうとう眠りについた。普段の仏頂面とはまるで違い、安らかな寝顔だった。──一方、トキの方は完全に目が覚めてしまっていた。

 

『俺は君がいないとダメみたいだ』

 

分かっている。この男は平然とこういったことを言う。酷いのは、この言葉が純然たる親愛に他ならぬということだ。ユウリの家族に対してトキに送る言葉は、いつだってトキの心を乱れさせる。トキの向ける恋愛の感情は、ユウリにはまだ知り得ないものだから。

 

「……バカっ」

 

やり場のない怒りと羞恥心を抱えたまま、トキはしばらく眠れない夜を過ごすことなった。

 

 

 

 

 

 

ミレニアムサイエンススクール。通称ミレニアムは、ユウリとトキが所属する学園である。科学技術の開発、新たな法則の解明などに力を入れ、歴史は浅く自由な校風ながら、キヴォトスの三大学園の一角を担う学園でもある。

 

ユウリとしては、自分の研究に役に立つ設備やアリバイを学園という背景から誤魔化せることが学園に所属している一番の要因である。ユウリは自分の会社「ウェイン・エンタープライズ」での業務は信頼できる重役に任せているため、多忙ながら学生として過ごせる時間は長い。

 

それなりの研究成果を残し、ミレニアムに対して多額の出資をしているユウリは学園から与えられた自分専用の部屋で研究に没頭することが多く、今もホワイトボードに数式を書きなぐっていた。

 

「なあユウリ。ここにあるお菓子食べていいか?」

「ああ。C&Cのメンバーにも持って行ってくれ。取引先から貰ったものだから味は保証する」

「おお!めっちゃウメェ!これ何処のなんだ………なあユウリ、ネットで見たら値段に0が5個もついてんだけど」

「……?そんなものだろう。お菓子なんて」

 

安いか?でも味はいいぞ。なんて言うユウリの戯言を他所に、ネルの口は開いたまま塞がらなかった。そして後悔した。どうしてこの金銭感覚バグ野郎を信じてしまったのかと。

 

美甘ネルは珍しい、ユウリが友人だと認める人物の一人だった。ネルの誰に対しても分け隔てなく接する態度は、普段遠巻きに見られることの多いユウリにとって新鮮で、互いに興味を持って今に至る関係にある。

 

「そんなことより、テストはどうだったんだ。分からないと嘆いていたが」

「そんなことって……いや、まあ7割ぐらいは解けたんじゃねぇかな。お前に教えて貰ったところばっかり出たから」

「あの講師は誰も見てないような教科書の隅から出題する傾向があるからな。でも、一番は君が真面目に取り組んだからだろう。尊敬するよ」

 

ユウリの純度100%の善意と尊敬の言葉に、ネルは思わず咽返った。この男は誰に対しても、聞いてるこちらが恥ずかしくなるような言葉を投げかける。それが良い所ではあるのだが、同時に悪い所でもある。いつか刺されて死ぬんじゃないかとすら思う。コイツに恋でもした奴は大変だな、とネルは心の中で思う。

 

ユウリがホワイトボード一杯に書き殴り、とうとう隙間もなくなったところで、ユウリは持っていたマジックにキャップを付けた。それがまだ途中なのか、終わったのかはネルには分からないが、ソファで寛ぎだしたということは、一段落ついたのだろうと買ってきたコーヒーをユウリに渡す。

 

「すまない、助かる。ところで今日は休憩か?何か用があるのなら構わないが」

「あー……今ユウカに追われててよ。この前、結構ド派手に戦っちまって………」

 

成程、とユウリはコーヒーに口を付ける。ユウカというのは、セミナーの早瀬ユウカだろう。会計である彼女は学園の財政の切り盛りを任されている立場である。つまり、ネルの所属するC&Cの活動により損壊した建物などの修理費や、武器の整備に必要な金額は、全て学園から出すことになる。余計な出費を出したくないユウカが、怒って部長であるネルを追いかけている、という構図な訳だ。

 

「それは君が悪いんじゃ……」

「いや、でもなっ、収穫はあったんだぜ!?怪しい奴とっちめたら、「自分は指示されただけ」だとか「アイツに脅された」とか訳わかんねぇことばっかり言いやがるんだよ」

「……何?」

 

ユウリの探偵としての目が、その情報への興味を惹いた。

 

「誰なんだ、その”アイツ”とは」

「それが顔も名前も知らないらしくてよ、マスクを着けてたら分からねぇって言うし、確かよく変な名前だったし、確か……”デスストローク”とかなんとか」

 

デスストローク、その名前にユウリは聞き覚えがあった。強盗から殺しまで幅広く活動する敏腕の傭兵。その高い依頼料に見合う仕事ぶりとクライアントとの関係を秘密にする徹底した工作により、闇社会では名の知れた存在。名前と素顔は不詳、女性であることくらいしか情報は掴めていない。

 

そして、噂ではバットマンへの挑戦を目論んでいるとか。

 

ジョーカーの言う”アイツら”。もしかすると、デスストロークもその一人かもしれない。

 

「まあ、安心しろよ。こっちには関係なさそうだし、いざとなればC&Cが解決してやるから」

「頼もしいな。だが気を付けてくれ、君が怪我でもしないか心配になる」

 

大丈夫な筈だ、とユウリは予想を立てる。デスストロークの仕事を調査して分かるのは、大企業や権力者の依頼のみしか受けないということだが、正確に言えば、依頼料が個人で払える額ではないということである。ミレニアムはウェイン・エンタープライズ傘下の企業がほとんどであり、クリーンで透明な会社経営をモットーにするこのグループではデスストロークの登場があっても、先読みして監視することができる。少なくとも、ミレニアムのメンバーが被害に遭う可能性は少ないだろう。

 

……では、デスストロークは何の為に部下を使った?何を探ろうとした?誰の依頼を受けてこんなことをしている?

 

ゲヘナ、トリニティ、レッドウィンター、百鬼夜行……どれも有り得るが故に疑問は止まらない。

 

 

コンコン、ノックの音が響く。誰だろうかと返事をする。

声の主は──ユウカだった。

 

「げっ、どっか隠れる場所…!」

 

ネルが辺りを見渡すが、この部屋にはとにかく物がない。研究にしか部屋を使用せず、娯楽を嗜むこともないユウリが部屋に持ち込むものは研究資料やホワイトボードくらいである。万事休すかと思われた時、ユウリは着ていたコートをネルに被せ、自分の膝の上にネルごとコートを被せた。

 

「なっ!?」

「静かに、バレたくないなら」

 

 

「ユウリ先輩?今お時間大丈夫ですか?」

「ああ、構わない」

 

ユウリとしても、この部屋にいる時は予定がないということなので、下手に追い払うと余計に疑念を生むことになる。ならば、正面からアリバイを偽造してやればいい。幸いにもネルの身体は小さく、自分の身長ならば多少の膨らみがあってもばれないだろうとユウリは考えていた。

 

ユウカが入室し、ユウリの向かいのソファに座る。幸いにもネルの存在には感づいていないらしく、普段と変わりない態度でユウリと会話する。

 

「ここに来たということは、会計で何かあったのか」

「そうなんです!どこも研究に没頭するだけで、こっちの都合は無視ばっかり!今日だって、ネル先輩を追っかけて来たんです!……因みに、ユウリ先輩は知りませんよね?」

「ネルの行方か、知らないな」

 

ユウリは至極自然に、先輩としてユウカを気遣う様子を見せた。先程までネルが食べていたお菓子を差し出し、少しでもユウカの怒りのボルテージを抑えようとした。ユウカもミレニアムへの多額の出資者である、それ以上にミレニアムでは珍しいマトモな研究者であり、率先して迷惑を被る側のユウリの手前、冷静にならざるを得ない。

 

二人の雑談が始まる。ユウカは初めこそユウリの手前、当たり障りのない話を続けていたが、段々そのメッキも剥がれ、溜まりに溜まった鬱憤をユウリに向けて吐露する。普段から聞き手に回ることの多いユウリは相槌を打ち、少しでもユウカのストレスが解消されることを願う。

 

──その間、ネルは恥辱の限りの拷問を受けていた。

ユウリの衣服の素材、鍛えられた男性の体格、鼻孔を擽る香水の匂い。今まで知らなかった、一人の男性としてのユウリに、ネルは一人頬を赤らめて耐えるしかなかった。

 

──コイツっ!なんで無駄に良い体格してやがんだよっ!

 

悲痛な叫びが、人知れずユウリの膝の上で漏れることなく叫ばれる。

 

そして、話は先日の騒動について移る。

 

「そういえば、例の騒動は大丈夫だったか。ワカモと…いや、だいぶ暴れたらしいが」

「ええ…それはもう疲れました。あの連邦生徒会の…!こっちに不良の相手なんかさせて…!」

 

再熱するかと思われたユウカの怒りは、溜息と共に、とある人物の名で落ち着く。

 

「”先生”の指揮があったからまだいいけど……」

 

──先生。

あの日、バットマン越しに見た彼の姿…年齢は20代半ばから後半、身長は170㎝程度、一見パッとしない普通の成人男性という印象を受ける。しかし、その指揮能力は規格外と言ってもいい。

キヴォトスに訪れて短時間の内に状況を把握、世界を理解し、見事にシャーレを不良達から奪還した才能は、並大抵のものではない。

 

極めて丁重に観察する必要がある存在──というのがユウリの評価だ。

 

それに対し、一方のユウカは──

 

「先生ったら、また玩具にお金を使って、領収書も変なことばっかり!まったく……私が管理してあげないとダメなんですから!まあでもそんな先生も嫌いじゃないですしむしろそれも…………」

 

早口で捲し立てるようにユウカは永遠と先生の話題を続ける。しかし、それはユウリの期待していた権限範囲や人格というよりは、所謂、()()のようなものだった。

 

((──チョロいな))

 

ユウリとネルの心の声が一致する。というよりは、誰が聞いてもこの感想しかでてこないだろう。普段の早瀬ユウカとはこんな人物ではない。責任と業務に追われる多忙で真面目な生徒である筈だ。………忙しすぎて壊れたのだろうか、名だたるヴィランにも恐れることのないユウリも、少し怖く感じた。

 

「ユ、ユウカ。すまない、リオに呼ばれていてな、そろそろ行かなければいけないんだ」

 

これ以上はユウカの大切な何かを壊れてしまうのではないかと、ユウリはさり気なく忙しいという体を作る。事実、これは嘘ではない。元々今日はリオに呼ばれていたからこの教室に残っている。予定の時間まではまだ30分程あるが、この辺りで切り上げても不自然ではないとユウリは考える。

 

「えっ、会長ですか?それなら仕方ないですね…本当はもう少し話したかったんですけど……」

「「勘弁してくれ」」

「え?」

「いや、何でもない」

 

 

退室したユウカの足音が過ぎ去ったのを確認して、ネルはやっとユウリの膝の上から出ることができた。

 

その表情に滲む、ネルの赤面の理由をユウリは疑問に思いつつも探ることもしない。

密封状態でコートに包まっていたからだろう、と彼なりの論理で解を出す。

 

「大変だったな」

 

そして、そんな軽い言葉を放つ。

ユウリにしてみれば、自分の様な人間の膝の上でコートに包まれて耐えるのは辛かっただろう、という気遣いからの言葉だったが、ネルはその言葉にカチンとくる。

 

ユウリとネルは1年生からの付き合いのある友人である。出会った当初のユウリは、ネルから見ても表面的にも、内面的にもどこか闇を抱えた憂鬱の塊の様な男──という認識だった。変わったのは、彼の口からメイドを雇ったという言葉が聞こえた時辺りだろう。しかし、ユウリの本質的な部分は今尚変わっていないことをネルは確信していた。

 

いつでも自分を過小評価し、自己犠牲を当然に行う、その真っ当ではない精神状態は、出会った頃から何も変化していないのだ。

 

「ユウリ」

 

だからこそだ、自分くらいはきちんと彼を”友”として見張っておかなければいけない。

 

「ありがとな」

 

対等な友として、軽口を叩きあえる、いざとなった時に躊躇いなく背中を預けられる”親友”として。

 

「──ああ」

 

ネルが差し出した拳に、ユウリも同じくそれを合わせる。グータッチというやつだろうか。こういった友人同士の軽いコミュニケーションに関わる知識を、ユウリは持っていない。

 

──しかし、それでも、ネルが自分の良き友人であることを、ユウリは決して否定しない。

 

ユウリは誇りに思う。自分に、こんなに素晴らしい友がいることを。

 

 

 

 

「──ユウリ先輩、リオ会長いたから連れてきましたよ」

 

ガチャリという音と同時にユウカがドアから入り、その光景を見る。

グータッチの姿勢で固まる両者が、信じられないという顔でユウカを見つめ、ユウカもまたあんぐりと口を開けて固まる。

 

ほんの数秒が永遠に感じる。異様な空気におずおずと顔を出したセミナーの会長──調月リオが扉の隙間から顔を出し、ユウリと目が合う。

 

「その…迎えに来たのだけれど、大丈夫かしら」

 

リオの言葉に、ユウリはそっと深呼吸の後に、ネルの方へと振り向く。

両者の視線が交差する。そう、彼らは友人なのだ。その関係は利益でも権力でもない、時に互いに不都合が生じようとも、許容できる間柄なのだ。

 

──そう、ユウリは()()()解釈する。

 

「すまない、ネル」

 

 

ユウリはリオと共に部屋を出る。二人の足音が徐々に遠ざかり、最後には全く聞こえなくなった。ユウカとネル、二人だけの空間を静寂が蝕む。

 

「──ネル先輩、ちょっとお時間いただけますか?」

 

ネルの絶叫が、廊下に響き渡った。

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