「あたしはお茶の用意をしてから行きますね」
いざ執務室へ、と地下室を出た途端に鴉羽さんが切り出す。
「あぁ、ありがとう。頼んだよ」
「はい」
「私も手伝いますよ☆」
「助かるわ」
そう言って鴉羽さんと箒星さんは厨房へと向かっていく。
そして特に何か話すでもなく、残りのみんなで執務室へと向かった。
ちなみに、そんな慣れない空気感でそわそわしているわたしに気づいて、話題を振るか振らまいか、はたまたどんな話題にするか悩んでいた月下さんが可愛かったことをここに記しておきます。
1年くらい前の月下さんは、もっと機械的だったような?
レーツェルさんはそんな月下さんを微笑ましく見守ってる。誰目線なんだろう?
なんて考えていると、意外とあっという間に到着した。
無言のまま扉を開け、それを押さえているナギさんは、
「適当に座ってくれていいからね」
と言うので、お礼を言いながら横を抜けて、対面する形で置かれたソファーの片方の、奥の方に座る。
「じゃあ、ただ待ってるのも勿体無いし、始めちゃおうか」
と、わたしの対面に座りながら言った。
月下さんとレーツェルさんは、わたしの後ろに立っているつもりだったようだけど、ナギさんに止められてわたしの両隣に座ることになった。
「鴉羽さんたちはいいの?」
「まぁ、状況整理くらいなら問題ないでしょ」
楽観的にそう言うナギさんだが、その表情からは鴉羽さんたちへの確かな信頼が見えた。
「それで灰桜のことだね」
「うん。灰桜さんはどうなったんですか?」
「まず、イナバの単純極まりない論理機関を、桜花型の論理機関と組み合わせ、何年もかけて改良を重ねたことで、1匹のウサギに芽生えた魂を少女へと仕立て上げることに成功した。その結果が灰桜だってことは伝えてたよね?」
「うん。お見舞いに来てくれたときに話してくれたよ。騒動のこと、灰桜さんのこと、そして夕霧お姉ちゃんのこと...」
「あっ!そういえばナギさんに会ったら言わなきゃって思ってたんだった!」
「ぅん?何をだい?」
「病院代、払ってくれてありがとうございます」
わたしは立ち上がって頭を下げる。
「あぁ、そのことか。そのお礼はもう受け取ってるよ。それに...」
「灰桜たちと仲良くしてくれてるからそのお礼がしたいっていうのも本心なんだ。だから気にしないでくれるとありがたいかな」
ナギさんの言葉からもわかるように、ほぼ同じ会話を入院中にもしたことがある。
灰神楽さんの一件の後、ナギさんは奥宮少佐率いる警務隊と一緒に行動していた。
だから忙しかったはずなのに、何度かお見舞いに来てくれたのだ。
「それでも、だよ」
「思ってることなんて、言葉にしないと伝わらないんだから。もう一回ちゃんと言っておきたかったんだ」
そう言うとナギさんはフッと軽く笑う。
「君は本当に大人びた考え方をするんだね」
「えへへ、そうかなぁ〜?」
「治療費に関してなにか思うなら、これからもみんなと仲良くしてくれればいいよ」
「そんなことでいいの?」
「もちろん。未だに
「そんな状態で
「?」
「つまりは、『
「わかった!」
「もちろん、黒猫亭で働いてくれた分の報酬もちゃんと出すからね」
その時、コンコンと軽いノックの音が鳴る。
「お茶をお持ちしました」
鴉羽さんたちが帰ってきたみたいだ。
皇都博覧会編の振り返りと、アニメで飛ばされていた間の補完、そして千代ちゃんの闇のお話でした。
次回、物語が動く...かも?