這々の体で物陰に隠れ、治安局のパトカーをやり過ごす。不幸中の幸いか川に突っ込んだ仲間の方へと注目しているようだ。
前を走ってた奴には貧乏くじを引かせてしまったが、後続にいた俺たちは車両を乗り捨て治安局を撒くことができた。
にしても、餓鬼を追うだけだと言うのにとんでもない被害だ。俺たち全員首切られるかもしれないが、せめてけじめくらいはつけなければ……。
「行ったな?」
「はい」
通り過ぎていく車両を確認し、機を見て物陰から移動する。幸い周囲には野次馬がおり人混みに混じることができた。
やって来たのは工事現場。知ってか知らずか、餓鬼共は組の系列の会社が担当する現場に潜り込んだようだ。
「おい、お前らは見張ってろ。鼠一匹通すなよ」
周囲は壁で囲まれている。壁は高く道具無しでは越えられないし、越えた先も塀だ。出入り口を部下に見張らせ俺たちは現場の中へと入った。
「隠れるとしたら建物の中だろうが……二手に分かれるぞ、お前ら二人は反対の作業用の足場を登っていけ。残りは俺と一緒に正面から突入する。良いか?もう生かす必要はねぇ。見つけ次第ぶっ殺せ」
「「応!」」
部下二人が行くのを見送り、懐中電灯で辺りを照らしながら進む。
「一応、その辺の物影もしっかり探せ。俺たちが行くのを見計らって逃げ出すつもりかもしれん!……おい、お前どうした?」
ブルーシートの上で仲間の一人が地面にのめり込んで倒れている。
「す、すまんリーダー。ハマっちまった……」
どうやらブルーシートの下に固まっていないコンクリート材が敷き詰められていて足を取られたようだ。膝まで沈み込んでいる。
「下手に動くな、余計に沈む。数人がかりで引き上げるぞ!せーっのっ!」
部下とともに引き上げ少しずつ体を引き上げる。
「なぁ、なんか変な臭いしないか?」
「たしかに……」
不意に部下2人の会話が聞こえた。変な臭い?鼻を鳴らして嗅ぐと確かに異臭のようなものを感じる。何の臭いだ?
「おい!とにかく引っ張る手を緩めるな!沈んでるぞ!」
「す、すんません」
今はとにかくこいつを引き上げようと叱咤する。その時、部下が叫ぶ。
「今なんか通ったぞ!足音もした!」
足音がした。その方向に向け全員が建物を照らす。そして照らされ顕になったのは、こちらを覗き込む人影。
「餓鬼だ、撃ち殺せ!」
部下の一人が叫び、銃を向け弾を撃つ。そして──大爆発が起きた。
吹っ飛ばされ何度も地面に体をぶつけ転がる。
今のはガス爆発現象か!?溜まっていた比重の重い可燃性ガスが銃によって一気に爆発燃焼した。異臭の正体は可燃ガスだな。
「ガス漏れの臭いだったか!無事か、お前ら!?」
煙が張れると一人、爆心地に取り残されている。
もしや、死んだか……?
「──がはっ……スリーゲート製のヘルメットが無ければ即死でした……」
「よし、息があるな」
コンクリートに深く嵌っていた奴が重傷を負った。爆心地におりふっ飛ばされず衝撃を真に受けたはずだが、逆にコンクリートが衝撃を緩和したようだ。
「無理するな、下がれ。一人で歩けるな?」
「すんません……」
肩を担いでコンクリートの沼から抜ける。負傷者を連れて行くと足手まといになるからだ。情からでは無い。
にしても奴ら俺達を殺す気か……いや、こちらも殺す気だがな。だが今時の餓鬼のやることか?
先ほど見た餓鬼の様子は、まるで何かを観察するようだった。さながら科学実験のように……。
見た目10歳前後の餓鬼だ。頭は切れるが倫理観が薄い。ふん……旧都陥落以来、裏社会ではよく見る目だ、善悪も分からぬ餓鬼の目。新エリー都の教育制度の賜物だな。時代の被害者か。だが、同情はしない。仲間の多くが既に攻撃されている。
「とにかく早く追うぞ。銃はなるべく使うなよ」
怪我の浅い仲間とともに階段をのぼっていく。
「ゲホッゲホッ、今度はなんだ?」
上階段から煙が川のように流れてくる。煙幕のつもりか?あるいはまたガス──それも呼吸器を侵す毒ガスの役割か?だが悪手だ、これは道標になる。煙の元をたどればそこに餓鬼もいるだろう。
「ヘルメットを深く被れ、目と呼吸器に異常があればすぐに伝えろ」
一階一階慎重に上がっていき、4階、煙はこの階から流れているようだ。未だ壁ら建設途中であり、柱しか存在しない開けた空間に出ると、一階上の組まれた足場からあの餓鬼がこちらを見下ろしていた。
「こんばんわ、羽林組の皆さーん。こんな夜遅くまでご、く、ろ、う、さ、ま。鬼ごっこは順調かしら?なんだか調子悪そうだけど」
「クソ餓鬼……っ!」
仲間が銃を撃とうとする。
「あら?あらら~?撃っちゃうの?その場合あなたたちもまとめてドカーン!と大爆発。あんたたちは頑丈みたいだけどこのビルはどうかしらね……?」
「……」
ガスの臭いはしない。ブラフか?一般使用するガス類は危険感知の為に予め臭いが付着されている。だが無臭のガスならどうだ?
ここは組が後ろ暗い取引を使うのにも使っていた。万が一、可燃物の1つや2つあってそれを使っているとしたら?それにあのボンプの姿が無い。知識の出処が奴なら何か企んでいるはず……。ビルを倒壊させる程の爆発物を仕掛けたのか?
後方の仲間にハンドサインを送りボウガンでの狙撃を命じる。暴力団は銃の規制が厳しいためボウガンを自作し標準装備することが多い。今回も持ってきている。引火はしないはずだ!
「──コソコソしてるみたいだけど、私ばっかり見てて良いのかしら?」
「痛ってぇ!?誰だ、俺の脛蹴ったの!」
部下の一人が脚を持ち上げ叫んだ。
「どうした!?」
「ちょ、足になんか絡まって……やべ、転ぶ」
「押すな、押し倒すな馬鹿ッ!」
密集していたことが仇となり、そのままドミノ倒しのように床に倒れる。
なんだ……?くそっ!脚になんか絡まって上手く立ち上がれんッ!
「これは……網か?」
「んな」
背後から声が聞こえる。振り返ると煙の中に一匹のボンプが立っていた。両手にたくさんの武器を抱えて走り去っていく。
「おい武器取られてんじゃねーか!!」
「早く網を解け、取り返すぞ!」
「なんで一瞬でこんなに固く結びつけられるんだ!?」
煙を焚いたのはボンプの姿を悟られないためかだったか!上から注目を集めたのも視線を下に向けさせないため。初手のガス罠にこだわり過ぎたな、俺としたことが……クソッ。奴は煙の中這うように俺達の足を巻き取りやがったのか……。
餓鬼は俺達が武器を失い身動きが取れないのを見て笑いながら言葉を発する。
「ちなみに、ガスはブラフなの。ビビらず撃てば私を倒せたのにね。腰抜けお間抜けさん。羽林の羽はチキンの羽かしら?」
「餓鬼が……舐め腐りやがって──ッ!」
喧喧囂囂、罵声を浴びせるが勝利の余裕か、餓鬼は飄々とした様子で俺たちを嘲ると満足したのか去っていった。その顔に満足そうな笑みを浮かべて……。
「あーあ、最高にスッキリしたわ。ザマァ無いわね!」
【後書き】
ギャング、頑丈定期。まぁバーニスで燃焼起こしても生きてるし多少はね?ガス爆発なんて所詮数千ダメージそこらでしょ。
あとキャッチ-ザ-パエトーンって題名なのにパエトーン全然出てこないな。まだ!まだ出番じゃないだけだから!
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